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ちっちゃな黒猫の話。

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  • 1:

    せぇ

    なぁなんで?
    どこに行ったン?
    いつも一緒だったじゃん
    嬉しい時も悲しい時も
    あんたゎ何にも言わずに
    側にいてくれたよな。
    あたしゎあんたの顔を見ただけで
    あんたのふわふわの毛をなでるだけで
    心が温かくなるのを感じてん。
    なぁチビクロ
    なんであんたが先に死ぬん?
    人を幸せにするあんたが。

    2005-11-17 17:26:00
  • 2:

    せぇ

    『金とか入ってたりして。何百万って!』なんでかテンション上がったキョンがピョンピョン飛びはねながら言った。そのカゴは、ぅちらの地元全体を流れる川の土手下に捨てられてあって、草が生い茂る緑によく目立っていた。『んなわけないやろ。ここでピクニックしたやつが忘れていったんちゃうん。汚いし、お前触んなよ。』『ピクニックって…今冬やで?(笑)』キョンが馬鹿にしたように笑ったからあたしは無視して先に行った。『ちょぉ待ってや〜。』

    2005-11-17 17:42:00
  • 3:

    せぇ

    家に着くと、あたしは直ぐにベットに倒れこんだ。『しょうちゃん…』思わず元彼の名前を呼ぶ。たった二ヶ月足らず。たったそれだけで、人の気持ちゎ変わる。しょうちゃんはあたしの二個上の18歳。バイト先の焼肉屋に客としてやってきたしょうちゃんゎ、あたしに一目惚れしたと言った。それから毎日店に来てはあたし携帯の番号を聞いた。あまりの強引さとしつこさに、とうとう負けて、あたしはめずらしく番号を教えた。

    2005-11-17 17:51:00
  • 4:

    せぇ

    元々嫌いなタイプじゃなかったから、付き合うことになるまで、そんなに時間はかからなかった。初めのころはすごく上手く行ってて、『せぇ好きやで』そう言ってはあたしを抱き締めるしょーちゃんに、あたしはどんどんはまっていった。あたし達の関係がおかしくなりだしたのは、あたしがバイトを辞めてから。半年やってた焼肉屋をやめたのは、しょーちゃんと会う時間をもっと増やしたかったから。だけど、一緒にいる時間が増えるからこそ、わかることはたくさんあった。

    2005-11-17 17:59:00
  • 5:

    せぇ

    すごくヤキモチ焼きなあたしは、だんだん束縛をしだした。携帯を隠れて見てみたり、電話しているしょーちゃんにわざと大きな声で話しかけたりした。
    でもな、しょーちゃん。それゎしょーちゃんのことが好きやから。好きやから束縛すんねん。好きやから、他の女見て欲しくないねん。

    2005-11-17 18:13:00
  • 6:

    せぇ

    『お前俺の携帯見てたやろ。わかってんねんそんくらい。初めて見た時は純粋そうで優しそうやって思ったから付き合ったけど、実際むっちゃわがままやし、その束縛もうざいねん!』あたしはいっぱいいっぱいになりながら、それでも言い返した。『しょーちゃんが疑われるようなことするからやろ?束縛が嫌やったらあたしみたいに男のメモリー消去するとかしたらいいやん!』

    2005-11-17 18:26:00
  • 7:

    せぇ

    一字一句覚えてる。
    『誰が頼んでん?俺そんなことしろなんか言ってないやろ。勝手に自分がしたこと俺に押し付けんなや。しかもなんかそれ恐いし。』

    『お前重たいねん』

    2005-11-17 18:29:00
  • 8:

    せぇ

    またこれだ。あたしはモテないほうじゃない。告白だって、回りに比べたらたくさんされるほうだ。だけど、付き合ったら必ずフラれる。理由は『重いから』。重いって何なん?あんなに好き好き言うてくれたやんか。なのにみんなこう言ってあたしから離れてく。好きやからやん。それが何でだめなん?

    ―重イッテ何ナン?

    2005-11-17 18:36:00
  • 9:

    せぇ





    2005-11-17 18:36:00
  • 10:

    せぇ

    あたしは寝ていたみたいで、気が付くともう夜の九時だった。そういえばお腹が空いた。でも今日ゎ作るのだるいしな…。ウチは母子家庭で、ママゎ深夜にならないと帰ってこない。『今日ゎコンビニ弁当でいいや』あたしは財布を持って玄関に出た。『げっ最悪。』思わず呟く。外は雨がポツポツ降っていて、凄くジメジメしている。透明のビニール傘を開いてあたしは歩いてコンビニに行くことにした。

    2005-11-17 18:43:00
  • 11:

    せぇ

    川沿いにある一番近いコンビニに行くことにした。品揃えゎ悪いけど、雨のなか遠い所まで歩いていくよりはマシだった。目的のコンビニ前の橋を渡ろうとした時、丁度夕方見たカゴバックを見つけた。雨のせいで増えた川の流れに今にも流されそうだった。『何百万も入ってたりして〜』夕方聞いたキョンの言葉を思い出した。『そんなわけないよな』『ありえへん』だけど、妙な胸騒ぎがした。

    2005-11-17 18:50:00
  • 12:

    せぇ

    あたしは、自分で言うのも何だけど、日常生活において熱くなることがあまりない。周りの同級生みたいに何かあるごとに騒いだりしなかったし、大きな声で喜んだり、泣いたりしたこともなかった。だから、失恋したばかりでもこうしてお腹も空くし、そりゃ悲しかったけど、泣くほどでもない。だから、こんなにも胸騒ぎがしたのは、ホントに初めてだった気がする。

    2005-11-17 18:56:00
  • 13:

    せぇ

    『あっ…』また少し水カサが増えたのか、カゴバックがゆっくりと動きだした。『溺れる…!』何が、かゎわからない。だけど漠然とそう思った。それから、人目も気にせず傘を捨てて、土手への階段を急いで降りた。

    2005-11-17 19:00:00
  • 14:

    せぇ

    カゴはもう流されかけていた。それと同時に沈みそうで、あたしはとにかく走ってカゴバックを川からすくい上げた。お金が入ってると思ったわけじゃない。だけど、何も入ってないとは思えなかった。

    2005-11-17 19:02:00
  • 15:

    せぇ

    カゴバックを抱きかかえて、取りあえず川から離れた。土手の階段の上のほうへ座りこんだ。膝から下は川につかって感覚がないし、全身雨でびしょ濡れだった。季節は真冬。12月上旬で、とにかく馬鹿みたいに寒くて、体は病気みたいに震えてた。だけどあたしはそんなことすら忘れながらカゴバックの紐をほどいてふたを開けた。
    小さな小さな黒猫が一匹、あたしと同じくらい震えていた。

    2005-11-17 19:09:00
  • 16:

    せぇ

    ねぇチビクロ。
    最初アンタを見たとき
    あたしは普通に
    カビの生えたパンかと思ってん(笑)
    だけどよく見るとまだ目も開いてない仔猫で、ホントに小さくて。
    なんかのオモチャみたいに震えるアンタを、素直に守ってあげたいと思った。

    2005-11-17 19:13:00
  • 17:

    名無しさん

    続きみたい?

    2005-11-17 19:41:00
  • 18:

    せぇ

    名無しさんありがとう?
    実話やから見てってなぁ?

    2005-11-17 20:05:00
  • 19:

    せぇ

    カゴバックの中にはホニュウビンとビニール袋に入った粉ミルク、ボロボロのタオルと、冷たくなったホッカイロ。雨と川の水で、にじんで読めなくなった手紙見たいなものが一緒にいれてあった。多分ミルクの作り方とか、仔猫の育て方とかが書いてあったんだと思う。段ボールにまとめて何匹も入れて、ごみ捨て場に置いて行くバカよりはよっぽどマシな飼い主なんだろうけど、川の近くに置くのはかしこくない。危うくこの小さい猫ゎ流されて死ぬところだった。

    2005-11-17 20:12:00
  • 20:

    せぇ

    それからタウンページで片っ端から近くの動物病院に電話をしたけど、時間は夜の11時近くで、どこにかけてもつながらなかった。あたしはテンパりすぎて、普通の緊急病院に電話をかけて、『猫ですか?!』って電話の受付につっこまれて、『猫じゃアカンの?何でやねん、死にそうなのに!』とか言ってた。今考えたら馬鹿なことしたなぁ(笑)

    2005-11-17 20:32:00
  • 21:

    せぇ

    どうしよう…どうしよう
    猫どころか動物なんて一回も飼ったことがなかったあたしは、本間にどうしたらいいのかわからなくて、部屋の中をぶつぶつ言いながら行ったり来たりしていた。
    やっと『落ち着かな…』って思えたその時、不意に爆音のトランスが流れて、あたしはまた心臓が飛び出るかと思うくらいびっくりして、テンパった。けど、よく考えたら携帯が鳴ってるだけだった(笑)

    2005-11-17 20:42:00
  • 22:

    せぇ

    着信>>キョン
    何やねん!こんな時に!あたしが急いで電話をとると、大きな声でキョンは話だした。『もしー?せぇ?ちょ、聞いてや〜』『今忙しいから後で聞くわ!』そう言ってキョンの返事を待たずに電話を切った…瞬間、そういえばキョンが猫を何匹も飼ってることを思い出して速攻で書け直した。

    2005-11-17 20:46:00
  • 23:

    せぇ

    発信>>キョン
    ワンコールで出たキョンゎ『何やねん!(笑)』って相変わらず馬鹿でかい声で電話にでた。あたしが急いで大まかに事情を説明すると、キョンが行き着けの動物緊急病院を教えてくれたけどそこは結構遠かった。あたしにゎ足もなかったから、連絡から何から全部キョンとキョンのママがしてくれて、車で迎えにも来てくれた。さすが猫バカ家族(笑)本間にあの時ばかりゎキョンが神様に見えた(笑)

    2005-11-17 20:53:00
  • 24:

    名無しさん

    それで???

    2005-11-17 20:55:00
  • 25:

    せぇ

    新しく渇いたタオルでおそるおそる仔猫を包んで、あたしはキョン達が迎えに来てくれるのを今か今かと待ってた。カゴバックはびしょ濡れで使えそうになかったからあたしは洗面器にタオルを引いて、その上にタオルでくるんだ仔猫を入れた。

    2005-11-17 20:56:00
  • 26:

    せぇ

    それから数十分でキョン家族が到着して、あたしは財布と猫の入った洗面器を持って車に飛び乗った。仔猫の震えは止まらんかった。
    『何やねんその格好!』キョンと目があった瞬間またあの大きな声で笑われた。川に入った時に付いた何かわからん草やゴミ、乾ききってないスウェット、ボロボロのメイクと髪型。冷静に自分を見ると、本間に汚くて、本間に不細工やった。あたしは恥ずかしいのを隠すために『うるさいねん!』ってキョンを怒ったけど、キョンの大爆笑ゎなかなか止まらなかった。

    2005-11-17 21:02:00
  • 27:

    せぇ

    だけどキョン家族にもあたしは少し笑えた。運転席には明らかにさっき起こされただろうキョンのパパ。助手席には洗面器の中の仔猫を心配そうに見つめるキョンのママ。あたしの隣にはあたしを見て相変わらずケラケラ笑ってるキョン。家族総出かよ(笑)『すいません、こんな遅くに…』キョンが笑い終るのを待ってからあたしはキョンの両親に謝った。時刻はもう12時だ。『全然気にせんでええよ。こんなに可愛い猫捨てるなんて酷い人もいるもんやね…』キョンママゎ泣きそうになりながらそう言ってくれた。キョンパパも『元気になったらいいな』と励ましてくれた。本間に優しい家族なんやなぁとあたしは少し羨ましかった。

    2005-11-17 21:09:00
  • 28:

    せぇ

    『名前は決めたん?!』キョンが楽しそうに聞いてきた。『慌てててそれどころじゃなかってん。何にしよ…?』キョン『せぇが飼うつもりなんやろ?』セェ『ぅん、絶対守ったげたいねん』キョン『だったらゆっくり考え。せぇの家族になるんやから』

    …家族。

    2005-11-17 21:15:00
  • 29:

    せぇ

    あたしは小さいころからママと二人きりだった。あたしのために一生懸命働くママを見て、片親なんを嫌やと思ったことは一度もない。だけど、学校から帰っても『ただいま』って言う相手がおらんのはやっぱり寂しかった。
    だからキョンの口から出た『家族』って言葉に、あたしは不覚にもその時、少し感動してしまった。

    2005-11-17 21:19:00
  • 30:

    せぇ

    『…チビかクロ。どっちがええかな…?』あたしは少し考えてからキョンに聞いてみた。『またまんまやな!(笑)』そう言ってキョンゎまた笑いだす。あたしはそれをおさえて『うるさいな!まんまでもええやんか!』って反論した。『しかもチビとクロってどっちもかわいないし!(笑)』キョンが言い返す。『かわいなくてもえぇねん!愛がこもってるから!(笑)』ぅちらの話を聞いてキョンママ達も笑ってた。ずっとチビかクロで悩んでるあたしに、キョンパパが『どっちも捨てがたいならくっつければいいやん。チビクロ。』…チビクロ。いいかも!

    2005-11-17 21:25:00
  • 31:

    せぇ

    この小猫の名前が決まった。本間に小さくて真っ黒やから、【チビクロ】。いつか大きくなるけど、運命みたいに出会った、今日のこの姿を忘れへんように。

    2005-11-17 21:28:00
  • 32:

    せぇ

    『お前は今日からチビクロやで〜』そう言いながらそっとチビクロを撫でた。気が付くとチビクロの震えがやっと止まってて、寝てるみたいだった。一瞬、死んだかと思って本間にあせったけど(笑)

    2005-11-17 21:31:00
  • 33:

    せぇ

    震えは止まったけど、やっぱりまだまだ心配だったので、そのまま病院で見てもらうことにした。診察カードを作るときに『猫ちゃんのお名前はなんですか?』って聞かれて、『チビクロです』と少し照れながら答えた。社交事例かもしれんけど、看護婦さんに『可愛い名前やね』と言われてすごくうれしかったんを今でも覚えてる。

    2005-11-17 21:35:00
  • 34:

    せぇ

    お医者さんに見てもらった結果、今は少し風邪気味程度やけど、これから激しくなるかもやからよく見て気を付けること。小さすぎるから予防接種や薬もまだあげれないけど、生後半年までは親からもらった免疫力があるからある程度は大丈夫だろうということ。まだ生後2〜5日だということ。ミルクのあげかたやおしっこの処理の仕方。(仔猫のうちは助けてあげないと一人でおしっこもうんちもできない)
    それと、女の子だと言うこと。

    2005-11-17 21:43:00
  • 35:

    せぇ

    女の子なのにチビクロ?とは思ったけど、気にしないことにした。
    病院の診察料はキョンのパパが、いいって言ったのに払ってくれた。ホントに猫が好きなんだなぁとなんだか嬉しかった。お礼を言って、家まで送ってもらった時にはもうすでに夜の二時わ回っていた。キョンの車の中にあったキャリーバックを借りて、その中にいれるとチビクロゎ何故か気持よさそうに眠った。そのままそのキャリーバックを借りて、チビクロが起きないようにそっと運んだ。

    2005-11-17 22:25:00
  • 36:

    那未

    今はじめから読みました??ガンバって完結させてください?

    2005-11-18 01:03:00
  • 37:

    名無しさん

    2005-11-18 06:20:00
  • 38:

    あい

    チビクロって可愛い名前ゃね★うちの家も黒猫飼ってるねぇん!!続き気になる?頑張って下さいね☆

    2005-11-18 06:28:00
  • 39:

    名無しさん

    続き楽しみにしています?

    2005-11-18 07:09:00
  • 40:

    せぇ

    皆さんありがとうございます?頑張って完結するので最後まで見てってくださいね??

    2005-11-18 08:45:00
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