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ちっちゃな黒猫の話。

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  • 1:

    せぇ

    なぁなんで?
    どこに行ったン?
    いつも一緒だったじゃん
    嬉しい時も悲しい時も
    あんたゎ何にも言わずに
    側にいてくれたよな。
    あたしゎあんたの顔を見ただけで
    あんたのふわふわの毛をなでるだけで
    心が温かくなるのを感じてん。
    なぁチビクロ
    なんであんたが先に死ぬん?
    人を幸せにするあんたが。

    2005-11-17 17:26:00
  • 191:

    せぇ

    ー嫌やった。
    チビクロはあたしのことを忘れるかもしれへん。あたし以外誰もいないあの淋しい家より、仲間がいっぱいいる、楽しいこの家のほうが好きになるんじゃないか。
    何かある度あたしのトコロへ 来てたチビクロは、もういなくなるんじゃないか。

    2006-02-15 13:45:00
  • 192:

    せぇ

    送ってもらっている間中、あたしはずっとそんな不安を感じながら、窓の外を見ていた。流れる景色のところどころに、チビクロを探しながら。

    2006-02-15 13:48:00
  • 193:

    せぇ

    窓から見える風景が、見覚えのある風景に変わった時、ずっと黙っていたあたしは、やっと口を開いた。『もうすぐ…』 『えっ?』とキョンママはあたしの視線の先を見た。『あそこ!あの川原でチビクロ拾ってん!』12時はとっくに回った、深い暗闇の中で、あたしはその場所を見つめた。運転中のキョンママは、ちらっとそっちを見たけど、結局見つけられへんかったみたいやった。『そっか…。』キョンママはなんとなく淋しそうな、うれしそうな声で話しだした。

    2006-02-15 13:55:00
  • 194:

    せぇ

    『あのな、せぇちゃん。』車は家の前に着いた。かけていた音楽を小さくしてから、キョンママは続けた。『地震があった時、一番最初に何をもって逃げる?』唐突な質問に、あたしはびっくりして、しばらくしゃべれなかった。やけど、それは迷ってたんじゃない。『絶対チビクロやな。』あたしははっきりそう言った。ふふっとキョンママは笑う。『絶対そう言うと思った。』キョンママが笑った顔は、本間にやさしそうだ。『やけど、その必要はないねん。』『なんで?』『動物のカンで、地震は来る前にわかるから』『そうなん?!』会話が弾む。『うん。やから、チビクロ以外で、なんかある?』
    あたしは考えこんだ。『…ないなぁ。』
    今のあたしにとって、大切なものはチビクロ以外になかった。

    2006-02-15 14:11:00
  • 195:

    せぇ

    『…それも、言うと思った。』そう言って、またふふっと笑う。笑った顔がキョンに似てるなぁ…って、あたしは、なんとなしに、だまってそれを見てた。
    『せぇちゃんは、愛情深いなぁ。』ポツリと言ったその言葉に思わず(重い)と言う言葉が浮かぶ。
    あたしの返事を待っているのか、そこで話を止めたキョンママに、あたしは言った。『重いだけやねん…。』ハンドルに肘をついて、聞く態勢に入ったキョンママに、あたしは話した。しょーちゃんのこと、今までの彼氏のこと。

    2006-02-15 14:21:00
  • 196:

    せぇ

    『重いって何なん?』最後にあたしは、ずっと思ってたことを初めて人に、キョンママに聞いた。『好きとどう違うねん…。』
    −別れた男達を、しょーちゃんを。まだ好きだとは思わない。なのに、涙がでてくるのはなんでだろう。今まで失恋で泣いたことなんてなかった。やけど、涙はポロポロ落ちて止まらなかった−今までの分が、全て溢れ出たみたいに−涙が止まらなくて、あたしはバカみたいに泣いた。

    2006-02-15 14:28:00
  • 197:

    せぇ

    『重い』。
    その言葉は
    言われる度に
    毎回毎回
    心に突き刺さった。

    2006-02-15 14:30:00
  • 198:

    せぇ

    愛し方がわからへんかった。愛されたことがないわけじゃない。何よりも、大好きなママには、たくさん愛されてたと思う。ただ、側にいないだけで。
    あたしは、見返りを求めてる。あたしは、貴方だけだよ。こんなに好きだよ。だから側にいて。あたしだけを見ていて。
    強がって、泣いたりなんかしなかった。だけどあたしも、ホントは、人一倍、一人になるのが嫌やった。

    2006-02-15 14:38:00
  • 199:

    せぇ

    なぁチビクロ。
    あんたに出会ってから
    あたしは泣いてばかりやった。
    今まで、泣いたことなんて、
    滅多になかったのに。

    やけど本間は、
    いつもギリギリのトコロで我慢してただけで。

    ずっと泣きたかったんやと
    あの夜思った。


    大声で笑ったり
    声を出して泣いたり

    それがこんなにスッキリすることやなんて。

    あんたは知ってたん?

    嬉しい時に
    いっぱい涙が出ることも。

    2006-02-15 14:47:00
  • 200:

    せぇ





    2006-02-15 14:48:00
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