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ちっちゃな黒猫の話。
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1:
せぇ
なぁなんで?
どこに行ったン?
いつも一緒だったじゃん
嬉しい時も悲しい時も
あんたゎ何にも言わずに
側にいてくれたよな。
あたしゎあんたの顔を見ただけで
あんたのふわふわの毛をなでるだけで
心が温かくなるのを感じてん。
なぁチビクロ
なんであんたが先に死ぬん?
人を幸せにするあんたが。2005-11-17 17:26:00 -
301:
せぇ
窓に手を掛けた丁度その時、ブンブンと単車が近づく音がした。あたしの家は、前にも言った通り、駅から遠く、そして小さな住宅街の中にある。あたしは長年この家で一人過ごしてきたけど、ここら辺でこの音を聞くことは結構めずらしいものやった。
2006-04-09 00:11:00 -
302:
せぇ
チビクロもその音に反応して、めずらしく窓を覗き込んだ。その様子がかわいくて、あたしはチビクロを外の景色がよく見えるように胸元に抱いた。どこに行くつもりなのか、道に迷ったようにバイクの音は近くなったり遠くなったり、だけど次第に近づいてきている。しばらくたった時、もう飽きたのか、チビクロはあたしの胸元から飛び降り、あっという間に部屋の隅に置いてあるオモチャに突進した。丁度その時、あたしの家の前にある道に、バイクの音の持ち主の姿が遠くに見えた。
2006-04-10 01:40:00 -
303:
せぇ
メットをかぶっているせいで、顔は全く見えなかった。だけど、なぜか胸がドキドキする。
どうしてわかるんだろう。
あれはきっと−…。2006-04-10 01:42:00 -
304:
せぇ
変に自信があった。案の定、バイクに乗った彼は、あたしの家の前で止まり、表札を確認している。バイクから下りて、キーを抜く。メットを取って、つぶれた髪をばさばさと直す。あたしの視線を感じたのか、彼は髪を直しながらあたしのいる二階を見上げる。
学校で見る彼とは少し違う。私服のせいだろうか。
あたしと目が合い、あの独特の笑顔を見せる。
やっぱり−それは仁だった。2006-04-10 01:49:00 -
305:
名無しさん
ちびくろちゃんがナ〜って鳴くの想像したらめっちゃかわいい?
2006-04-10 18:18:00 -
306:
かぁ
あげ
2006-04-12 00:01:00 -
307:
せぇ
仁はその笑顔のまま、ちょいちょいと降りてくるよう手招きした。あたしは急いで玄関に向かう。なんで?なんでいるの?
2006-04-13 23:19:00 -
308:
せぇ
−ドキドキしながらドアを開いた。夕焼けのオレンジ色を背中にあびながら、彼の髪の毛は、あの日と同じ色に染まっていた。
ねぇ仁、
好きだよ。2006-04-17 01:21:00 -
309:
せぇ
『入って?』自然と言葉が出る。月末の締日で、ママは家にいなかった。別に、変な意味でいったんじゃない。だけど、そのことを忘れていたわけじゃ決してなかった。
『いいの?』彼はまた、あの笑顔で笑った。最近わかったことがある。彼はうれしい時や照れている時に、必ずこうして笑うこと。2006-04-17 01:26:00 -
310:
せぇ
その笑顔に、下心がないのはなんとなくわかった。『だって寒いじゃん。』そういったあたしに、彼は意外に靴をきっちりとそろえて、合図を返した。彼の大きな靴の隣に、ちょこんと並んだあたしのローファーが、やけに小さく見えて、印象的だった。
2006-04-17 17:19:00