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ちっちゃな黒猫の話。
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1:
せぇ
なぁなんで?
どこに行ったン?
いつも一緒だったじゃん
嬉しい時も悲しい時も
あんたゎ何にも言わずに
側にいてくれたよな。
あたしゎあんたの顔を見ただけで
あんたのふわふわの毛をなでるだけで
心が温かくなるのを感じてん。
なぁチビクロ
なんであんたが先に死ぬん?
人を幸せにするあんたが。2005-11-17 17:26:00 -
437:
せぇ
『女好き』『ヤリチン。』
ここぞとばかりに耳に入ってくるこれらの言葉が、<ただの噂>だということは、仁といつも一緒にいるあたしが一番よくわかっていた。
ただ、『何かある−…。』会ってくれない金曜日。不振に思わないほうがおかしい。2006-06-05 00:14:00 -
438:
せぇ
いつか、仁が言っていた
『…っていうことは、あの噂も知らん?』
。仁が何気なく言った一言は、絶対にこのことなんだとすぐにわかった。2006-06-05 00:37:00 -
439:
せぇ
ねぇチビクロ
笑っちゃうよね。
あの頃のあたし達は
余りにも幼くて、純粋で、
だけど汚くて、大人びた嘘を平気でついた。
嘘をつかなきゃ、近付けなくて、引き止められない。
あの頃は、
そう思ってたから。
ねぇチビクロ。
みんな猫になればいいよ。
そうしたらもう
あたしは二度と嘘をつけないでしょ?
そうなったらきっと、
もっともっと
あんたに近付けそうな気がするの。2006-06-05 00:46:00 -
440:
せぇ
仁は、ホストをしていた。
2006-06-05 09:12:00 -
441:
せぇ
彼にだけは嫌われたくなかった。だから、しょーちゃんの時みたいに携帯を見ることもなかった。だけど、それをしなかったのは、仁を信用してたからだ。
噂を聞いた数日後、心の準備をしてから、あたしは隣で眠る仁の携帯を手にとった。出会った頃と、同じ寝顔の仁の隣で。2006-06-05 09:19:00 -
442:
せぇ
着信>>せぇ、代表、代表、代表、せぇ、代表…
何これ…?『代表』っていう人ばっかりやん…。自然とボタンを押す手が早くなり、そして…『あゆみ(客)』20件目、最後の着信履歴で、手が止まった。
やっぱり…−。日付は丁度、金曜日。2006-06-05 09:33:00 -
443:
せぇ
ただの噂話。信じたくなんてなかった。でも、それとは逆に、絶対の確信があった。だけど、それでも−。
ねぇ仁。
あなたはあたしのヒーローじゃなかったの?
あの日、あの意地悪な笑顔で、照れながら好きだって、そう言ってくれたのに。2006-06-05 09:40:00 -
444:
せぇ
発信履歴にも、しっかりと『あゆみ(客)』の名前は入っていた。
2006-06-05 09:42:00 -
445:
せぇ
隣の仁に目をやる。相変わらず起きそうな様子もない。あたしの気持ちなんて知らないまま、子供みたいに眠る彼の顔を見て、あたしは思わずそのやわらかい髪を撫でた。
それから、目線を携帯に戻し、もう一度深呼吸をしてから、次はメールボタンを押した。
−<メールセキュリティ>『末端暗証番号は?』
あぁ、やっぱり…。隠し事がある人は、必ずこれをする。メールセキュリティなんて、そのための機能だ。2006-06-06 14:54:00 -
446:
せぇ
カチカチ...仁の寝息しか聞こえない、あたしの部屋で、携帯のボタンを押す音がやけに響く。
誕生日?ゾロ目?電話番号?思い当たる数字は、どれもハズレで、あたしは次第にうんざりしだして、どうでもよくなっていった。2006-06-06 14:59:00