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【平成の童話物語】
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1:
◆Cfzsl6NSeo
ながい ながい
夜は、とてもながくて
くらい くらい
夜は、底無しにくらい
そして その中の唯一の灯りは、きれいに輝る、ちいさなちいさな子供たち。2005-11-01 17:54:00 -
11:
◆Cfzsl6NSeo
私はよろよろと歩みよる。もちろん、拒否する権利などない。従う事でしか、ここで生きていくすべを見出だすことができない。
奴はにやにやだらしない笑い方をすると、甘ったるい声でいつものように言う。
『今日も良い子にしてたか?』
『淋しかっただろう?』
『愛してるよ』2005-11-10 23:15:00 -
12:
◆Cfzsl6NSeo
体中が紫色のよどみで包まれる。気分が悪い。頭が、ひどくクラクラする。だが、私はいつも平気な顔を作り、決まってこう言う。
『はい。淋しかったです。私も愛しています。』と。そのことば以外を言ったり、うっかり外れたことを言うと、容赦なく平手がとぶ。
奴は私のくちから吐き出された感情のかけらもない嘘を、うっとりしながら聞き、私を抱き締めた。
『お前は俺から離れられないんだよ。わかるだろ?俺がお前から離れられないようにね。』2005-11-10 23:25:00 -
13:
◆Cfzsl6NSeo
もう何年もこんなやりとりが続けられている。
この男に捕まえられた瞬間から、私のいくつかの神経は崩壊したようだ。
その証拠に、もう本当の笑顔なんて作れなくなった。楽しい事もうれしいことも無くなった。すべてあの日、捕まえられた。
あの日、私のすべては奪われつくされたのだ。2005-11-11 10:56:00 -
14:
◆Cfzsl6NSeo
私には、生まれた時から肉親がいないので、数年間ある孤児院で育った。
他の家庭とは違ったところもたくさんあり、両親がいないことを悲しんだり恨んだりして、よく泣いた事もあった。それでも孤児院の先生は皆優しくていい人ばかりだったし、ともだちにも恵まれ、それなりに毎日幸せだった。
だけど、幸せは、長くは続かない。
ある日、私の兄だと名乗る人間が、孤児院に現われた。
2005-11-11 11:15:00 -
15:
名無しさん
(略なし)
2005-11-11 11:23:00 -
16:
◆Cfzsl6NSeo
『よかったわね、お兄さんがみつかって』
おにいさん?
『あいたかったよ。さぁこれからは二人で仲良く暮らそうね。もう一人じゃないよ』2005-11-11 11:38:00 -
17:
◆Cfzsl6NSeo
ふたりで?
なぜ?
おにいさんて誰?2005-11-11 11:40:00 -
18:
◆Cfzsl6NSeo
突然現われた若い男が二人。
先生は彼らを『本当のおにいさん』と呼んだ。
私は孤児院で仲良くしてくれていた年上の子達を、おにいちゃん、おねえちゃんと呼んでいたので、突然あらわれた大人の男を『おにいちゃん』と呼ぶことに抵抗があった。それに、何かの違和感、不信感のようなものも、同時に感じていたのだった。2005-11-12 10:47:00 -
19:
◆Cfzsl6NSeo
その時感じた、違和感や不信感は、『本当のおにいさん』が現われ、共に暮らすようになる日から、徐々にかたちになっていく。
それは決して、甘い幸せのかたちや、爽やかな喜びなどのかたちでは、ない。
2005-11-12 10:56:00 -
20:
◆Cfzsl6NSeo
どうこう考えている間もなく、その日のうちに私は彼らに引き取られた。
孤児院をでるのは、ともだちや先生と離れ離れになること。今まですごした居心地の良い場所を離れるのは、辛かったけれど、私は目の前に突然広がった真新しい別世界に、目を奪われていた。2005-11-12 11:03:00