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東京、曇のち雨、晴れ

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  • 1:

    ■「ねぇ、リョウはさぁなんでホストになろうと思ったの?」「全部捨ててこの街にかけたんだ俺は。」あの頃 愛がほしかったんじゃなかった 地元で失ったもの全部取り返そうとして この街に身を捨てた。歌舞伎町には俺が欲しかったもの全部あるんだと思った。 だけどどうしてだろう。また、どんどん全てが消えていっている気がする。あの頃の友情も、思い出も、なにもかもが酒と金、嘘に色を染めていく。見えない明日なら、ないものと同じ。だけど、戻れない過去にすがり続けるなら、見えない明日を信じて、生きていくしかない。

    2006-03-26 22:22:00
  • 2:

    「イケメンって、もう死語じゃないか?」「マジで!?やべっそうなんだ、いや、まだ大丈夫だろ!」ミズキの明るい茶色の髪の毛に、方耳4つ空いたピアスが光る。ワタルと2人で馬鹿話をしながら廊下を歩く。女なんて中身を開けてみれば、どいつもこいつもたいして変わらない、薄っぺらい生き物で、キスしたりセックスしたりなんていうのは、「男だから」するわけであって、俺はキスしてもセックスしても愛してるから、好きだから、なんて気持ちにはならない。いや、人を愛することを知らなかった。知ろうともしなかった。あの時まで。新学期の授業初日だっていうのに、俺とワタルは屋上で寝転んでいた。

    2006-03-26 22:25:00
  • 3:

    ***********

    「いいよなぁ・・・藤堂ミサキ」「は?」俺が聞き返すと、顔を真っ赤にしたワタルが声を上げる。「えっ今、俺、声に出した!?」「おお、出した」「いや、冗談、冗談!忘れろ!」ワタルは煙草を加えたまま、手を左右に大きく振る。かなり動揺している。「藤堂ミサキって、ああ、俺、1年のとき同じクラスだった..あの黒髪で目がでっかい、昔の清純派みたいな子だろ?」人の名前と顔を覚えるのが苦手な俺でも、藤堂ミサキだけは色々な意味で覚えている。今年も確か同じクラスになったはずだ。なぜ俺が藤堂ミサキを覚えているかって、それは1年のとき1年間「藤堂ミサキ」の名前をクラスの男子から聞かなかった日はないくらい、あいつはなぜかすごい男にモテていた。

    2006-03-26 22:28:00
  • 4:

    ***********

    俺は、藤堂の魅力がよくわからず「???」な状態だったが、ツレや藤堂のファンとされる男どもから聞くところによると「あんな可愛い子なかなかいない!」「そうだ。白い肌に黒い髪の毛、大きな目。アイドル並にかわいくって、しかも清楚で優しくて・・」と、語りだし、藤堂について何時間も話してる奴さえもいたのだ。嫌でも顔と名前を覚えてしまったわけだ。「なに、お前本当はあんなのがタイプだったわけ?」「うるせーよっ」ワタルは顔を真っ赤にしたままだ。おもしろいからからかってやろうと思ったけど、ワタルがあまりに真剣な顔で「悪いかよ、好きなんだよ」とつぶやいたので、俺は「そうか」と短くつぶやいた。

    2006-03-26 22:29:00
  • 5:

    ***********

    5分くらい沈黙が続き、お互いの煙が行き交う間、俺は気になったことを、ワタルにつぶやく。「でも、どんなとこが好きなんだよ?」すると、ワタルは煙草の煙を吐き「そりゃあお前、可愛いとこと優しいとこだよ。」と早口で答える。「可愛いところ優しいとこ?なんか単純だな」「うるせーよ。人を好きなんのは単純なことなんだよ。恋におちるのは簡単。だけど、難しいのは人を好きになってからなんだよ。」なんだか名言。俺は心の中でつぶやく。

    2006-03-26 22:29:00
  • 6:

    ***********

    だけど、ワタル、ごめん。俺にはやっぱりそういう気持ち、よくわかんねぇわ。人を好きなんのは単純なこと。確かにそう思うよ。だけど、難しいのは人を好きになってからって何なんだろう。恋愛って人を好きになればなるほど難しくなるのか?ごめん、俺にはよくわからない。
    今思うと、あの時ワタルの気持ちを少しでも俺が理解できてれば、あんな終わり方をせずにすんだのかな。だとしたら俺は、ワタルに何度謝っても謝っても足りないくらいだな

    2006-03-26 22:31:00
  • 7:

    ***********

    ワタルと俺ほど性格が180度違う人間がどうしてここまで仲良くなったのか..なんてことを最近、ふと考えたことがあった。中学の入学式の時だ。俺の名字が、上川、ワタルの名字が木村で、名簿が横で入学式での座席が横同士になった。ぼーっと校長の話を聞く俺に「なぁなぁ俺、木村ワタルっていうんだけど、仲良くして!」といきなり大声で叫ばれた。俺はぼーっとしていたので一瞬、耳のコマクが破けそうになった。色黒、短髪で大きな声で話しガハハと笑う。なぜか見ていて気持ちいいと思った。

    2006-03-26 22:33:00
  • 8:

    ***********

    。それからなぜか話すようになり、サッカーが好きが共通して深夜にお互いの友達を集めて学校に忍び込んでサッカーをしたり、深夜のプールに入り込み泳ぎ回ったり馬鹿な行動をしたり、同じサッカー部に入ったものの2人で4ヶ月で辞めてしまったり、他校の喧嘩に巻きこまれ一緒に補導されてしまったりと、中学の思い出アルバムを開けると、俺の隣にはつねにワタルがいた。

    2006-03-26 22:34:00
  • 9:

    ***********

    ワタルとは、今までで1つ、俺にとって忘れられない思い出がある。それは中学2年の時だ。ワタルが同じクラスの女子に恋をした。今思えば少し藤堂ミサキに通じる子だった。色の白い、おとなしい、サッカー部のマネージャーをしていた子だ。ワタルは、男の前ではガハハなんて馬鹿笑いするくせに、好きな女の前に出ると声もかけられず、黙ってみてるだけ、の意外にシャイボーイで、毎晩深夜に何時間も何時間も恋の相談を俺はワタルから受けた。正直、俺はワタルの相談がかったるかった。

    2006-03-26 22:35:00
  • 10:

    ひぃ

    期待ぁげ?

    2006-03-26 22:36:00
  • 11:

    ***********

    悩んでる暇があったらさっさと告白しろとも思ったし、毎度のように「好きなんだよなぁ」と聞かされるのも飽きてきて(と、いうかうっとうしくて)、適当に聞き流してるだけだった。ある時ワタルは告白する!と意気込み、「おおがんばれ」と俺は本当に適当に答えた。まぁ告白すれば今のように何時間も恋愛相談を受けなくてすむ..俺は正直ほっとしていた。2時間後、「フラれた」という泣きそうな声の結果報告の電話がかかってきた。俺はその時ゲームをしていて、コントローラーを片手に「ああ、そう」と短くつぶやいた。

    2006-03-26 22:36:00
  • 12:

    ***********

    すると、ワタルは恋愛相談のときから適当な態度だった俺に対して、明るい声で、言った。「でも、ミズキが真剣に相談に乗ってくれてうれしかった。マジありがとうな!フラれたけど、お前が色々聞いてくれたりして、本当によかったよ。本当にありがとうな!後悔してないよ、俺。今まで聞いてくれたお前には申し訳ないけどな。」俺は驚いた。けしてワタルは嫌味でそう言ったのではない。真剣に俺が、ワタルの相談に乗っていたとワタルは思い込んでいたのだ。その瞬間、すごく強い罪悪感に包まれた。

    2006-03-26 22:38:00
  • 13:

    ***********

    「ありがとなミズキ、ずっと友達でいてな!美形でクールな少女漫画のヒーローみたいなお前と違って・・俺はあほでパっとしねーうるさい奴だけどさっ末永く仲良くしてな!」そういうと電話は切れた。ワタルっていう人間はなんてすごいんだろうと思った。適当に友情してた俺に対して、ワタルは全力で俺にぶつかってきて、俺を100%信頼して、俺にあんな長い恋愛相談をしてきたのだ。あいつは今失恋して辛いはずなのに俺に気を使って、聞いてくれてたお前に悪いな、とまで言ったのだ。

    2006-03-26 22:39:00
  • 14:

    ***********

    ひぃさんありがとうございます^^

    2006-03-26 22:41:00
  • 15:

    ***********

    「でも、ワタル、お前、昔小学校の先生になりたいっていってなかったっけ?」「あーお前よく覚えてたな!」確かワタルは中学の卒業アルバムか何かで、学校の先生になってサッカーを小さな子に教えたい!とかなんとか書いてた記憶があった。「でもさぁ俺バカだしセンセなんかにゃなれねぇなぁって最近思ってさぁ」ワタルは笑う。「んなことねぇよ。今から勉強したって遅くねぇだろ?お前頭いいんだけど集中力がねぇだけなんだから、落ち着いてやれば今からでも成績は大丈夫だよ」俺がつぶやくと、ワタルは驚いたような顔で俺を見る。「なんだよ」「いや、俺、ミズキに初めて励まされたなぁとおもって」

    2006-03-26 23:10:00
  • 16:

    ***********

    「励ましてねぇよ別に、本当に思ったこといったんだよ」俺の言葉に、また、ワタルは目を白黒させる。「そうだとしたら、もっと嬉しいじゃねぇかよ。お前ずっとクールボーイだから、俺、ミズキが俺のこと友達だと思ってくれてないのかなとかたまに心配でさ。でも、今ので、吹っ飛んだよ。すげぇ嬉しい!今からでも、勉強、頑張ってみるよ」ワタルはニコっと白い歯を見せて微笑んだ。嬉しいのはこっちだよ。俺は心の中でつぶやく。嬉しいだとか、友達だとか、そんな恥ずかしい言葉、堂々と伝えてくるワタルは、本当にすごいと思う。

    2006-03-26 23:12:00
  • 17:

    ***********

    卒業したって俺達の友情は続くよな。本当はそうワタルに伝えたかったけど、俺は口に出せなかった。「あの、ミズキくん!」その瞬間、女子生徒が俺の前にやってくる。「まぁまぁ可愛いじゃん」ワタルが小さくつぶやく。うるせーよお前は、俺がワタルを軽くドツくとワタルは笑う。「あの、私、1年の時からずっとミズキくんが気になってて・・」「それはありがとう」俺が微笑むと、女は顔を赤くした。「あの、これ、よかったら食べてくださいっ!」俺に小さな箱を押し付けると、女は逃げるように去っていた。

    2006-03-26 23:13:00
  • 18:

    ***********

    「すげぇ、ミズキ!あいつ、なんちゃらアユミって子だよ!鈴木・・田中・・あっ、田村だ、田村アユミ!テニス部!学年では3番目くらいに可愛い子!」「ワタル・・お前相変わらずそういうことは詳しいな」「中開けてみろよ!」ワタルは俺の背中を押す。「興味ねぇもん」「えっじゃあそれどうするんだよ」ワタルは女の置いていった、ピンク色の箱を手に持つ。甘い匂いがする。手作りのお菓子か何かだろう。

    2006-03-26 23:13:00
  • 19:

    ***********

    「捨てる」「はぁ!?お前モテるからってバチあたりだなー。さっきはありがとうなんて微笑んでたくせにさ。」「人にモノもらったらありがとうっていうのが普通だろ?その後どーするかは俺の勝手―」ミズキがそういうと、ワタルはうわぁひでぇと声を低くする。「そうだ、ミズキ、お前はイケメンだし、卒業したら売れっ子ホストだな!そしたら俺の世話、みてくれよな!女騙しまくれっ!」「ほめてねぇよ」「怒るなって、冗談だよ」笑い声が教室に響く

    2006-03-26 23:14:00
  • 20:

    ***********

    なぁ卒業から1年経った今でも俺は、この街でワタルの笑い声がたまに聞こえる時があるよ。あの頃いった「売れっ子ホストだな!」っていうお前の冗談が、まさか現実になるなんて、思いもしなかった。人は、何かを失うから何かを得るんだっていうよな。だけど、俺はお前との友情を失ったあの日から、お前以上に信じられる「何か」が見つけられないでいる。

    2006-03-26 23:15:00
  • 21:

    ***********



    2006-03-26 23:16:00
  • 22:

    ***********

    ■ワタル、お前の中に俺がいないなら、俺という存在が消されてしまったのなら、俺もお前との友情を忘れる。そうすることで、少しはお前が楽になるのなら。

    2006-03-26 23:17:00
  • 23:

    ***********

    スーツのポケットに入った携帯電話が鳴る。「もしもし?」「リョウ?何時に店くるの?」客だ。すぐ行くから待っててな、そう優しくつぶやくとリョウは携帯を切る。交差点ですれ違う女がつぶやく。「見た?今のカムプリのNo1のリョウだよね?前TVでやってた」「見た見た!やっばいすごいカッコイイ!!」店のドアを開けると、すでに営業時間中だった。時計は深夜2時半。No1リョウの出勤時間だ。

    2006-03-26 23:21:00
  • 24:

    ***********

    「リョウ、お前待ちのお客さん、3組いるから、うまくまわれよ。」店につくと先輩ホストに背中を押される。「はい」リョウが返事をすると、「明日から、No1になってから初のバースデーイベントだな。派手に2日間やるんだから、きっと盛り上がるよ。売り上げ、期待してるよ」店長の雷(ライ)がリョウの肩を叩く。リョウは微笑む。「リョウさんは明日で19かぁーカムプリ入ってホストになって1年ですよね。半年でNo1になって。僕も頑張らないと」新人ホストの声が重なる。

    2006-03-26 23:22:00
  • 25:

    ***********

    どうか誰も上川ミズキを探さないでほしい。俺はあの日、上川ミズキを捨てた。今はこの店のNo1のリョウなんだから。上川ミズキなんてもう、どこにも存在しないのだから。

    2006-03-26 23:26:00
  • 26:

    名無しさん

    2006-03-26 23:44:00
  • 27:

    ***********

    「ほんとにお前、大学いけるんじゃねぇ?」俺はワタルの模試の結果を片手に驚く。放課後の屋上で、地面に参考書を開けたまま寝そべり、ワタルは空を見つめる。「アハハいやーありがとな、ミズキ。俺、頑張るよ。それで、恋愛も頑張る。俺ミサキに告白しようかなと思ってさ。」「え」風が少し強くなる。夏を知らせる風だろうか。どこか生暖かい。校庭から野球部の声が、そしてバットの音が空まで響く。「最近さ、ガンバって藤堂の番号聞き出せてさぁ。メールとかしたりしてんだよね」「すげぇじゃん、ワタルにしてはすげぇ進歩じゃん!」

    2006-03-27 00:24:00
  • 28:

    ***********

    好きな女には恥ずかしがって声さえかけられないワタルが..。そこまで藤堂のことが本気なのか。「もーあっという間に卒業だし、それまでに想い、伝えたいんだ」こいつも立派になったなぁ・・俺は小さくうなずく。「で、脈はありそうなんだ?」「いやー女って難しくて全然わかんねぇよ。だけど、今度遊びに行くんだ、2人で。で、どこ行ったらいいかなーとミズキに相談しようと思ってさ」「すげーじゃん!そこまで進んでるんだ」何だかすごく嬉しかった。ワタルはすごくいい奴だ。俺はそれをよく知ってる。だから藤堂にだってちゃんと、気持ちは伝わるはずだ。

    2006-03-27 00:25:00
  • 29:

    ***********

    「わかった、デートする場所でいいとこ色々教えてやるよ」俺は微笑む。なぁワタル。俺はあの頃、恋愛なんて全然興味がなかった。それはどうしてだったんだろうって考えたんだ。1年経った今になってやっとわかったんだ。あの頃、俺はお前と一緒にいるのが楽しくて、恋愛なんかどうでもよかった。お前に彼女ができた時、俺も適当に彼女なんか作って、4人で遊んだりするのを夢見てたのかもしれない。

    2006-03-27 00:26:00
  • 30:

    ***********

    恋愛はやり直しが何度だってきく。ダメになったらだめになったで、次にいけばいい。だけど友情は違う。恋愛と違って一瞬で信頼関係なんか築けない。友情は、ダメだったら次なんてわけにはいかないんだ

    2006-03-27 00:27:00
  • 31:

    ***********

    ■夏休みを1週間前に控えた教室は、いつにもまして騒がしい。「あれー今日、ワタル休み?」ボッと教室の窓から外を眺めていた俺に、背後から田中が声をかける。ちなみに田中も中学が同じだ。「ああ。来てないな。」珍しいと思った。ワタルは授業はよくさぼっても、1日まるまる休むということはあまりないから、だ。

    2006-03-27 00:28:00
  • 32:

    ***********

    「夏風邪でもひいたかぁ?あいつ受験勉強の鬼だからな、今。なれないことしてるから、頭がイッちまったのかもな」田中が冗談っぽく笑うと、俺も「ありえるな」とつられるように笑った。しかし、翌朝もワタルは学校に姿を見せなかった。田中は「昨日連絡した?」と俺に尋ねる。「したんだけど、でねぇんだよ。一応メール送ったけど返事こねぇし」俺はため息をつく。「なんか気味悪ぃなぁ、あんな元気な奴が音信不通で学校2日も休むなんてよ。」田中の言葉に、俺もうなずく。

    2006-03-27 00:30:00
  • 33:

    ***********

    「きゃーこんなとこ、トイレがあったんだぁ!」「ほんとだねーすごいっ!」女子4、5人の群れだろうか。壁越しにある女子トイレが一気に騒がしくなる。うるせぇ..俺は内心イライラした。人がこうしてゆっくり煙草吸おうとしてる時に..イライラしながらも煙を吐き出す。「ねぇねぇ、ミサキーこんなとこにトイレあるの知ってた?」−..ミサキ?俺は動きが止まる。壁越しだから顔がよくわかんねぇけど、3年の女子の群れか。ミサキ..って、多分、ワタルの好きな、藤堂ミサキ..のことだよな。

    2006-03-27 00:32:00
  • 34:

    ***********

    「知らなかったよ。すごいねぇ、でも意外にきれいだねぇ。」おっとりした口調。間違いない、藤堂ミサキだ。トイレの鏡の前で化粧直しでもしているんだろうか?「あのさぁミサキぃーうちら、聞いちゃったことがあるんだけどッ」「あるんだけどッ」女は声をハモるように、して大声で騒ぎ出す。「えっなになにえっ・・?」藤堂ミサキは驚いたような声で答える。うるせぇ集団、はやくどっかいけよ..そう思った瞬間、集団の女の1人が声をあげる。「とぼけちゃだめだめっーミサキッ、木村君に告白されたんだって?」木村君・・ワタルのことか?自然と聞き耳がたつ。告白?あいつ藤堂ミサキに告白してたのか!俺は勢い余って煙草を床に落とす。

    2006-03-27 00:33:00
  • 35:

    ***********

    「うっうっそ誰から聞いたの?のんちゃん!?もぉおしゃべりなんだから・・」のんちゃんとはミサキの親友らしい。藤堂ミサキは、ツレの女達にどうなのよーどうなのよーとからかわれると、動揺した声で「うん・・3日くらい前に、夜、電話で・・」とつぶやいた。「えーっさすがミサキモテるねぇ!」「でも木村くんとミサキ、仲良かったっけ?」と交互に女集団が会話を盛り上げる。「その日遊びに行ったの。で、その夜電話で、ね。」言いずらそうに藤堂ミサキはつぶやく。そうかデートした帰りか..俺は床に落ちたタバコをローファーで踏み消す。「で、どうやって返事したのっ?」女が確信にせまっていく。藤堂ミサキの言葉をさえぎるように女の1人が言った。

    2006-03-27 00:34:00
  • 36:

    ***********

    「そりゃあ、ミサキはふったんだよね?だって、ミサキ、1年の時からずーっと上川ミズキが好きだったんだから」

    2006-03-27 00:35:00
  • 37:

    ***********

    は?
    なにいってるんだ?
    嘘だろ?俺は握り締めていたライターを床に落とす。カチャっと小さな音が響く。

    2006-03-27 00:36:00
  • 38:

    ***********

    藤堂ミサキが俺のことを好き?ふざけるな。話したことなんてないじゃないか。木村君には悪いけど?本当に悪いと思ってるのかよ。大体、俺なんかよりワタルのほうがよっぽどいい男じゃねぇか。あんな素直であんなまっすぐで、あんなに嘘のない男いねぇよ。俺なら女なんかセックスしたら終わりだ。女をモノとしか思ってない。でもワタルはあんなに嬉しそうに藤堂とデートできるって喜んでたんだぞ?あんなに藤堂が好きで、あのシャイな男が番号を聞きにいったんだぞ?ふざけるな。お前ら女はなにもわかってねぇ。

    2006-03-27 00:39:00
  • 39:

    名無しさん

    2006-03-27 23:18:00
  • 40:

    ***********

    すると突然、鼻が痛くなって掻きました。鼻血が出てきてショックで死にました

    2006-03-27 23:26:00
  • 41:

    名無しさん

    主さんって東京心中や大阪心中書いてはった人ですか?だとしたらめっちゃ嬉しいです\(^O^)/これからも頑張って下さいm(__)

    2006-03-28 00:46:00
  • 42:

    見つけちゃった?
    続き楽しみにしてます。

    2006-03-28 02:16:00
  • 43:

    52さん、すみません、荒らさないでください。53さん、そうです^^ありがとうございます。 流威さん、ありがとうございます^^!!!

    2006-03-28 23:24:00
  • 44:

    ■俺はその足で、ワタルの家へと走った。家に行ってどうするとか全く考えていなかったけど、とにかくワタルの様子が心配だった。息を切らしてチャイムを鳴らした俺を出迎えたワタルの表情は、いつもと全く変わらず「風邪ひいてると思った?俺が風邪ひくわけねぇじゃんーなんかだるくてさぁやすんじまっただけ!入れよ!」と笑いながら俺を部屋に招きいれた。

    2006-03-28 23:26:00
  • 45:

    久しぶりに入ったワタルの部屋は、前と変わって「受験部屋」と化していた。参考書が積まれた机は消しゴムのカスがたまっていた。そういえばワタルは髪の毛の色も、派手なメッシュから薄い茶色に変わっているし、耳にピアスもなくなっている。大学合格する、という、ワタルの気持ちからなのだろうか。

    2006-03-28 23:27:00
  • 46:

    「お前いきなり休むから受験疲れかって田中も心配してて」なんだか気まずかった。俺はうつむいたままつぶやいた。俺はまだ、藤堂とのことを知らないってことになってるんだ。変にする必要はないんだ。何度も言い聞かせる。「そっかそっか、心配してくれてありがとなぁ」ワタルは微笑む。少し沈黙が流れると、ワタルは口を開ける。「俺さ、すげぇミズキに憧れてた。お前顔も小さいしすげぇ男前だし、中学の時声かけたのだって、かっこいいしこいつといれば女のおこぼれくるかもーなんて考えててさぁ」ワタルは笑う。

    2006-03-28 23:28:00
  • 47:

    「でも、俺とお前は違う人間だし、どう願ったってどう意識したって俺はお前にはなれないし。聞いたんだろ?誰かに。藤堂にフラれたこと。めんどくさがりのお前がこーして何も考えずに息切らして俺んちまで来たってことはさ」さすがワタルだ。全部隠しても全部お見通し。こいつに嘘はつけない。

    2006-03-28 23:29:00
  • 48:

    「ああ・・偶然聞いた」「ミズキ、もーやだなお前、変な気つかうなよー!」ガハハといつものようにワタルは笑うと、低い声でつぶやく。「あのなぁ・・中学2年のときのこと。お前覚えてる?俺がいつも相談してたじゃん。電話で告ってさ。まぁふられたんだけど。」「ああ」あの時のことなら明確に覚えてる。俺はあの出来事を忘れないだろうから。

    2006-03-28 23:30:00
  • 49:

    「中2のとき、ふられた理由さ、話したっけ?」「いや、聞いてない。あの時お前が一方的に切ったから」「ああ、そうだっけな。」またしばらく沈黙すると、ワタルはつぶやく。「あいつも、お前のこと好きだったんだよ」ワタルの言葉に一瞬耳を疑う。固まる俺を見て、ワタルは続ける。「ミズキくんのことが好きだからって、あの時もそういわれたんだよ」

    2006-03-28 23:31:00
  • 50:

    ・・・知らなかった。中学の時の女も、俺が原因・・。「いっつもミズキは俺の大事なもの、横からとってく。女にしろ、成績にしろ、スポーツにしろ。お前がいる限り俺はずーっとお前の、影みたいな存在だ。お前は俺の欲しいもの全部もってる」ワタルは、どんどん強い口調になる。

    2006-03-28 23:32:00
  • 51:

    俺は顔をあげ「俺はお前のこと友達だと思ってる」とつぶやくと、俺の言葉をさえぎるように、「俺はずっと、お前が憎くてしかたなかった。俺はずっとお前になりたかった」とワタルはつぶやいた。「もう帰れよ!!人の気持ちもわかんねぇような王子様にはもううんざりだよ!!」ワタルの声に背中を押されるまま、俺はワタルの部屋を出る。

    2006-03-28 23:32:00
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