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東京、曇のち雨、晴れ
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1:
■「ねぇ、リョウはさぁなんでホストになろうと思ったの?」「全部捨ててこの街にかけたんだ俺は。」あの頃 愛がほしかったんじゃなかった 地元で失ったもの全部取り返そうとして この街に身を捨てた。歌舞伎町には俺が欲しかったもの全部あるんだと思った。 だけどどうしてだろう。また、どんどん全てが消えていっている気がする。あの頃の友情も、思い出も、なにもかもが酒と金、嘘に色を染めていく。見えない明日なら、ないものと同じ。だけど、戻れない過去にすがり続けるなら、見えない明日を信じて、生きていくしかない。
2006-03-26 22:22:00 -
32:
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「夏風邪でもひいたかぁ?あいつ受験勉強の鬼だからな、今。なれないことしてるから、頭がイッちまったのかもな」田中が冗談っぽく笑うと、俺も「ありえるな」とつられるように笑った。しかし、翌朝もワタルは学校に姿を見せなかった。田中は「昨日連絡した?」と俺に尋ねる。「したんだけど、でねぇんだよ。一応メール送ったけど返事こねぇし」俺はため息をつく。「なんか気味悪ぃなぁ、あんな元気な奴が音信不通で学校2日も休むなんてよ。」田中の言葉に、俺もうなずく。
2006-03-27 00:30:00 -
33:
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「きゃーこんなとこ、トイレがあったんだぁ!」「ほんとだねーすごいっ!」女子4、5人の群れだろうか。壁越しにある女子トイレが一気に騒がしくなる。うるせぇ..俺は内心イライラした。人がこうしてゆっくり煙草吸おうとしてる時に..イライラしながらも煙を吐き出す。「ねぇねぇ、ミサキーこんなとこにトイレあるの知ってた?」−..ミサキ?俺は動きが止まる。壁越しだから顔がよくわかんねぇけど、3年の女子の群れか。ミサキ..って、多分、ワタルの好きな、藤堂ミサキ..のことだよな。
2006-03-27 00:32:00 -
34:
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「知らなかったよ。すごいねぇ、でも意外にきれいだねぇ。」おっとりした口調。間違いない、藤堂ミサキだ。トイレの鏡の前で化粧直しでもしているんだろうか?「あのさぁミサキぃーうちら、聞いちゃったことがあるんだけどッ」「あるんだけどッ」女は声をハモるように、して大声で騒ぎ出す。「えっなになにえっ・・?」藤堂ミサキは驚いたような声で答える。うるせぇ集団、はやくどっかいけよ..そう思った瞬間、集団の女の1人が声をあげる。「とぼけちゃだめだめっーミサキッ、木村君に告白されたんだって?」木村君・・ワタルのことか?自然と聞き耳がたつ。告白?あいつ藤堂ミサキに告白してたのか!俺は勢い余って煙草を床に落とす。
2006-03-27 00:33:00 -
35:
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「うっうっそ誰から聞いたの?のんちゃん!?もぉおしゃべりなんだから・・」のんちゃんとはミサキの親友らしい。藤堂ミサキは、ツレの女達にどうなのよーどうなのよーとからかわれると、動揺した声で「うん・・3日くらい前に、夜、電話で・・」とつぶやいた。「えーっさすがミサキモテるねぇ!」「でも木村くんとミサキ、仲良かったっけ?」と交互に女集団が会話を盛り上げる。「その日遊びに行ったの。で、その夜電話で、ね。」言いずらそうに藤堂ミサキはつぶやく。そうかデートした帰りか..俺は床に落ちたタバコをローファーで踏み消す。「で、どうやって返事したのっ?」女が確信にせまっていく。藤堂ミサキの言葉をさえぎるように女の1人が言った。
2006-03-27 00:34:00 -
36:
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「そりゃあ、ミサキはふったんだよね?だって、ミサキ、1年の時からずーっと上川ミズキが好きだったんだから」
2006-03-27 00:35:00 -
37:
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は?
なにいってるんだ?
嘘だろ?俺は握り締めていたライターを床に落とす。カチャっと小さな音が響く。2006-03-27 00:36:00 -
38:
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藤堂ミサキが俺のことを好き?ふざけるな。話したことなんてないじゃないか。木村君には悪いけど?本当に悪いと思ってるのかよ。大体、俺なんかよりワタルのほうがよっぽどいい男じゃねぇか。あんな素直であんなまっすぐで、あんなに嘘のない男いねぇよ。俺なら女なんかセックスしたら終わりだ。女をモノとしか思ってない。でもワタルはあんなに嬉しそうに藤堂とデートできるって喜んでたんだぞ?あんなに藤堂が好きで、あのシャイな男が番号を聞きにいったんだぞ?ふざけるな。お前ら女はなにもわかってねぇ。
2006-03-27 00:39:00 -
40:
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すると突然、鼻が痛くなって掻きました。鼻血が出てきてショックで死にました
2006-03-27 23:26:00 -
41:
名無しさん
主さんって東京心中や大阪心中書いてはった人ですか?だとしたらめっちゃ嬉しいです\(^O^)/これからも頑張って下さいm(__)
2006-03-28 00:46:00 -
43:
52さん、すみません、荒らさないでください。53さん、そうです^^ありがとうございます。 流威さん、ありがとうございます^^!!!
2006-03-28 23:24:00 -
44:
■俺はその足で、ワタルの家へと走った。家に行ってどうするとか全く考えていなかったけど、とにかくワタルの様子が心配だった。息を切らしてチャイムを鳴らした俺を出迎えたワタルの表情は、いつもと全く変わらず「風邪ひいてると思った?俺が風邪ひくわけねぇじゃんーなんかだるくてさぁやすんじまっただけ!入れよ!」と笑いながら俺を部屋に招きいれた。
2006-03-28 23:26:00 -
45:
久しぶりに入ったワタルの部屋は、前と変わって「受験部屋」と化していた。参考書が積まれた机は消しゴムのカスがたまっていた。そういえばワタルは髪の毛の色も、派手なメッシュから薄い茶色に変わっているし、耳にピアスもなくなっている。大学合格する、という、ワタルの気持ちからなのだろうか。
2006-03-28 23:27:00 -
46:
「お前いきなり休むから受験疲れかって田中も心配してて」なんだか気まずかった。俺はうつむいたままつぶやいた。俺はまだ、藤堂とのことを知らないってことになってるんだ。変にする必要はないんだ。何度も言い聞かせる。「そっかそっか、心配してくれてありがとなぁ」ワタルは微笑む。少し沈黙が流れると、ワタルは口を開ける。「俺さ、すげぇミズキに憧れてた。お前顔も小さいしすげぇ男前だし、中学の時声かけたのだって、かっこいいしこいつといれば女のおこぼれくるかもーなんて考えててさぁ」ワタルは笑う。
2006-03-28 23:28:00 -
47:
「でも、俺とお前は違う人間だし、どう願ったってどう意識したって俺はお前にはなれないし。聞いたんだろ?誰かに。藤堂にフラれたこと。めんどくさがりのお前がこーして何も考えずに息切らして俺んちまで来たってことはさ」さすがワタルだ。全部隠しても全部お見通し。こいつに嘘はつけない。
2006-03-28 23:29:00 -
48:
「ああ・・偶然聞いた」「ミズキ、もーやだなお前、変な気つかうなよー!」ガハハといつものようにワタルは笑うと、低い声でつぶやく。「あのなぁ・・中学2年のときのこと。お前覚えてる?俺がいつも相談してたじゃん。電話で告ってさ。まぁふられたんだけど。」「ああ」あの時のことなら明確に覚えてる。俺はあの出来事を忘れないだろうから。
2006-03-28 23:30:00 -
49:
「中2のとき、ふられた理由さ、話したっけ?」「いや、聞いてない。あの時お前が一方的に切ったから」「ああ、そうだっけな。」またしばらく沈黙すると、ワタルはつぶやく。「あいつも、お前のこと好きだったんだよ」ワタルの言葉に一瞬耳を疑う。固まる俺を見て、ワタルは続ける。「ミズキくんのことが好きだからって、あの時もそういわれたんだよ」
2006-03-28 23:31:00 -
50:
・・・知らなかった。中学の時の女も、俺が原因・・。「いっつもミズキは俺の大事なもの、横からとってく。女にしろ、成績にしろ、スポーツにしろ。お前がいる限り俺はずーっとお前の、影みたいな存在だ。お前は俺の欲しいもの全部もってる」ワタルは、どんどん強い口調になる。
2006-03-28 23:32:00 -
51:
俺は顔をあげ「俺はお前のこと友達だと思ってる」とつぶやくと、俺の言葉をさえぎるように、「俺はずっと、お前が憎くてしかたなかった。俺はずっとお前になりたかった」とワタルはつぶやいた。「もう帰れよ!!人の気持ちもわかんねぇような王子様にはもううんざりだよ!!」ワタルの声に背中を押されるまま、俺はワタルの部屋を出る。
2006-03-28 23:32:00 -
52:
足が震える。頭の中がグチャグチャになる。俺達の歴史が、音をたてて崩れていく。あんなに月日をかけて積み上げてきたもの全てが、今、たった一瞬で..壊れていく。
2006-03-28 23:33:00 -
53:
「願ったって 祈ったって どれだけ憧れたって 自分が誰かになるのは無理 だから 俺は 俺を大事にしたいんだ」 いつかお前そういったよな。じゃあなんだよ俺になりたいって。俺だって願ってた。お前みたいになりたいって願ってたのにー・・・・・。
2006-03-28 23:34:00