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大阪心中24時50分
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1:
NN
携帯電話ってものが存在してるのに 人と人の距離は全く埋まりそうにない それどころか日々遠のいているような感覚にさえなる どうしてだろう どうして携帯電話ひとつでここまでひどく憂鬱な気持ちになるのだろう 寂しい夜は 電話で声が聞きたいんじゃない 抱きしめたいんだと 強く思った
2005-12-16 15:49:00 -
2:
NN
◆「人間だから嘘や矛盾なんていくらでもある。」そう思って生きてきた。平気で嘘をついてきた、それは自分を守るための嘘ばかりだった。人は生きている間にどれだけ人を深く愛せるのだろう。そしてどれだけ傷つけてしまうのだろう。この街で窒息死してしまいそうになる。最近、少し息苦しい。そんな夜は君をグッと抱きしめる。言葉はいらない。君の体から全部伝わってくるから。だからー..。
2005-12-16 15:50:00 -
3:
NN
ド派手なネオン街。競い合うかのように看板は過激化してる。ピンク、黄色、赤。チカチカ光って目が痛くなる。深夜0時。「おはよう」から始まる一言は、朝も夜も変わらなくって何だかおもしろい。その中でも一際ド派手な看板を抱えた風俗店があった。ラブタイムジュールだ。この街でも3本指には入るだろう有名風俗店。
2005-12-16 15:51:00 -
4:
NN
店の近くの案内所や、風俗雑誌にバンバンと顔を載せ指名も稼ぐと呼ばれる風俗のアイドル、いわいる有名フードルが多数在籍している。あたしも半年前、この店のドアを叩いた。自分が載った風俗雑誌を見るたび笑いがとまらないのは、今も昔も変わらない。
2005-12-16 15:52:00 -
5:
NN
「得意プレイは?」「うーん、今勉強中やで!何でも好きやし頑張る!」「性感帯は?」「全部!すごい感じやすいねんっ」ハイ、バカ丸出し。バカでえっちなキャラクター・ジュリはあたしのもうひとつの顔。雑誌のインタビューは、うちの店の店長が作り上げる。ヤラセみたいなものだ。たまに店長がどんな顔してあんなバカ女キャラを考えてるんだとうかと思うと笑える。だけど雑誌に出ることで客は増えるし、あたしはきっとこれからも出続けるんだと思う。
2005-12-16 15:53:00 -
6:
NN
「今週、ジュリすごい反響あったなぁ。昨日今日と予約で全部埋まったし、ある意味有名アーティストのコンサートチケットみたいなもんや。数分で完売する、みたいな感じやな。」満足気に店長が微笑む。「そんないいもんちゃうよ」私が笑う。店長は嫌いじゃない。年齢は42歳。「コデブ」なルックスと、のんびりした性格
い。何か憎めない。2005-12-16 15:54:00 -
7:
NN
↑すみません訂正です。正しくは ○のんびりした性格、何か憎めない です
2005-12-16 15:56:00 -
8:
NN
「風俗店に勤めたきっかけは?」とよく客に聞かれる。ここで「エッチが大好きやねん!」と言えば客は喜ぶんだろうか?だけどメチャクチャにやられそうで、私は口が裂けてもそんなことは言わないようにしてた。「学費やな」といい子ぶっていたら、店長に「ジュリはバカエロなキャラやねんから!」と少し怒られた。きっかけは..やっぱりお金。お金はいくらあっても困らないものだと思う。
2005-12-16 15:58:00 -
9:
NN
家も出たかった。あたしの家庭はあんまりいい家庭じゃない。寮付きだったしお金もいいし、もともとセックスは嫌いじゃなかったし、風俗の求人雑誌を見て「なんとなく」流されるようにして始めた。そして「なんとなく」続けてる。特にといって風俗にいる理由、目標がない。「じゃあ明日も頼むで」店長は私に茶色の封筒を渡す。今日は日曜日だった。学校がない。オーラス出勤してたから、封筒の中はいつもよりも断然、お札が多かった。「うん、お疲れ」私は封筒をカバンの中に入れると、タクシーに乗り込んだ。
2005-12-16 15:59:00 -
10:
NN
風俗って仕事は目標もなく、ダラダラと続けるなんて意味のないこと。それならはっきり辞めた方がいい。って、よく誰かが言ってる。だけどはっきり辞めることも、私にとっては意味のないようなことに思える。
2005-12-16 16:00:00 -
11:
NN
ねぇユウちゃん。ユウちゃんはあたしの希望の光やった。ちっぽけで汚らしいあたしの体の中に、ユウちゃんの優しさが伝わってきたとき、胸が痛くなったの。だから、いつも素直になれないで、ユウちゃんを傷つけた。人って愛する相手にほどワガママいって傷つけてしまうものなんだって。人間は恋愛をすると今まで自分の知らなかった感情まで振り乱して、時には狂気に狂い、愛する相手なのに殺してしまうってこともあるんだと何かの本で読んだ。
2005-12-16 16:01:00 -
12:
NN
もしそうだとすれば、人間である時点で、人には、満され合う愛なんて存在しないのかもしれないよね。だけどあたしは、それでもいいよ。ユウちゃんと愛し合えないなら人間になんてならなくっていい。あたしはユウちゃんの「モノ」になりたい。そうしたらユウちゃんを傷つけず、殺さずにすむ
2005-12-16 16:02:00 -
13:
NN
◆翌日、あたしは夕方の4時半に目覚めた。何だか最近眠りが浅い気がする。あたしは冷蔵庫から水を取り出し、ペットボトルに口をつけ一気に飲みこむ。授業は5時半から始まる。あたしは化粧を済ませ、時間割を確認してタクシーに乗り込む。うちの学校は私服だ。スエットのコもいれば、お姉系・お兄系全開でキッチリ決めてくるコもいる。学校には仲のいい友達は、正直いない。1、2年で学校に行かなさ過ぎて、友達を作るタイミングを失ってた。学校で1人でいることには慣れた。別に無視されてるわけじゃない。特別仲のいいコがいないだけだ。
2005-12-16 16:03:00 -
14:
NN
1限は英語だった。あたしがノートを取っていると、横から声をかけられる。「安藤さん」あたしは横を見る。金髪の髪の毛を綺麗にセットしてまさにホスト!みたいな髪型をした男の子。このコ名前なんやったっけ..あたしは一瞬考え込んだ。「あんな、安藤さんって今彼氏とかおるん?」真剣な顔をしてあたしにつぶやく。ああ、確か名前田村だっけ。そんな感じだった気がする。「いいひんけど..」困惑するあたしの表情を見て、田村は微笑む。「そーなん!よかった。やったらさ、西野ちゃん、のことどう思うん?」西野ちゃん?あたしは首をかしげる。
2005-12-16 16:05:00 -
15:
NN
「そこ!うるさい」先生の視線がとまる。「あーごーめんごーめん!先生気にせんと続けて!」田村が先生をシッシッと追い払う。お調子者タイプとはこういう奴のことなんやろう。「ごめん西野ちゃんって誰?」あたしがそういうと、田村が、あ、知らんの!?と声を大きくする。知るわけない。今、一番クラスでうるさい男・田村の名前をやっと思い出せたのに。クラスメイトの顔と名前が完全に一致しない。
2005-12-16 16:06:00 -
16:
NN
「ほんま知らん!?ずっと同じクラスやん!」知らないことがすごくおかしいみたいな言い方をする田村の言葉が妙に気に触った。「知らんわ」少しキツイ言い方になってしまった。田村はそれを察してか、少し低姿勢に出た。「まぁ怒らんといてや」「怒ってへんよ」そんな掛け合いをした時、教室のドアが開く。「西野!お前また遅刻か」「すみません」田村の斜め後ろに西野が座る。明るい金髪と茶色のメッシュが混ざり合った派手な髪の毛。ああ、この人が西野くん。ああ、この人知ってる。
2005-12-16 16:07:00 -
17:
NN
やたらに男子に人気がある男子..そんな響きがちょっと虚しい。男子に人気があるってゆっても、筋肉がスゴイ!とかスポーツができる!とか、すごい男前!とかそんなんじゃないと思う。見る限り、色は白いし、身長は175?ぐらいで背丈としてはまぁまぁだけど、ガリガリで細いから、叩いたらボキっと折れちゃいそうだ。けして不細工じゃないけど、目が細くって派手な顔立ちじゃない。むしろ、顔が薄い。「西野君はルックスはまぁまぁだけどへたれそう」と、女子の間でも一時話題になった。多分、彼は3、4番目タイプなんだと思う。男としてこれから色々苦労しそうだなと他人事ながら思う。
2005-12-16 16:08:00 -
18:
NN
へたれそうだし。よく田村がちょっかいかけてるの見る。「この人?」あたしが小声でいうと田村は「そや!」と声を大きくした。後ろで男子と西野くんの会話が聞こえた。「お前年中肌白いやんなぁ焼かねぇの?」「白いのいやなんけど・・俺なぜか焼けへんねん。」男子の言葉を気にしてか西野くんはカッターの袖をめくる。本当に白い。「やばいって西野ちゃん、白すぎやから!」「うおえー西野ちゃん白い白い!」「っーか西野ちゃん昨日のエンタメ見た?」
2005-12-16 16:10:00 -
19:
NN
だけど西野君って不思議な人だと思う。学校にはいつも遅刻。だけど来た途端、男子の群れに囲まれる。みんな西野ちゃん西野ちゃん、と、西野君の周りに集まる。遠くから聞いてる限り、だけど、西野君は口下手そうだし、話が特におもしろいってわけでもなさそうだ。なのに不思議と男子は集まる。このクラス、男子15人。西野君、男子人気、No1。へたれそうでどうもスキじゃない。
2005-12-16 16:11:00 -
20:
NN
「あ、安藤さん、メアドと番号教えてぇや、今後のために。あとジュリちゃんって呼んでええ?」「いいけど..」田村に半分強制的にあたしの携帯の番号を登録する。今後のためにって何やねん..そう思いつつ、初めての学校での男友達?男の知り合い?だし..と登録した。
2005-12-16 16:13:00 -
21:
名無しさん
ャッパこの人文ぅまぃね
2005-12-16 18:29:00 -
22:
ファンィチゴゥ
ァゲ?
2005-12-17 02:52:00 -
23:
ひなこ?
NNさんの小説ゃァ?待ってましたゾ?
2005-12-17 03:36:00 -
24:
マリナ
新作待ってましたぁ〜??今回も期待してます??
2005-12-18 00:57:00 -
25:
NN
たくさん感想ありがとうございます!!年末でちょっと仕事が忙しいので更新が遅れることもありますが、見守っていただければ嬉しいです。本当にありがとうございます。
2005-12-18 02:02:00 -
26:
NN
時計は9時過ぎ。下校しようとした時だった。「安藤さん」背後から声をかけられる。「あの」そこには西野君が立っていた。黒いトレーナーに薄い色のGパン。髪の毛は派手やけどカジュアル系..なんかな。「なに?」あたしがそいうと、西野くんは顔を真っ赤にした。ちょっとかわいく見えた。「俺、西野優介っていうんやけど..」ああ、優介っていうんだ。あたしは心の中でつぶやいた。
2005-12-18 02:04:00 -
27:
NN
「これ、よかったら読んでくれん!」そういってあたしに白い小さな紙を押し付け、走り去ってしまった。今時青春ドラマでも見ない光景。あたしはあっけにとられた。あたしはタクシーの中で紙を開けた。すると、メアドと番号が書かれてるだけで、文がなかった。一体あの西野くんは何がしたかったんやろうか..あたしはメモを小さくたたみ、かばんの中にしまう。するとすぐに携帯が鳴る。画面を見ると「田村くん」..一体今日は何の日なんだろう。
2005-12-18 02:05:00 -
28:
NN
あたしが携帯に出ると「ジュリちゃん、西野にメアドもらったやろ?」とイキナリ聞かれた。「もらったけど」短く返事をすると「あいつめっちゃうれしそうに渡せた!ゆうて喜んでてん」「そうなん..でもメアドと番号かいてあるだけやってんけど」そういうと、連絡したりーや!と田村に言われた。何であたしが西野君に連絡しなくちゃいけないのだろうか..あたしはうん..と適当に返事をして切った。同時に西野君ってほんっとヘタレやなぁと思った。そういえば女の子とあんまり話してるとことか見たことないし、シャイそうやしへたれだし..色々考え込んでる間に店の前についた。
2005-12-18 02:06:00 -
29:
NN
あの時のあたしはきっと愛することも知らず、人を想うという感情さえ知らない女だった。そんなあたしが色んな男の性欲を処理して、彼らの性にまみれたほんの少しの愛を気がつかなかった。愛することを知っていたなら、あたしはもう少しこの仕事を、性欲だけじゃなくって彼らの愛だって同時に受け止めてるんだよって、少しだけ胸をはって言えたかもしれない。
2005-12-18 02:07:00 -
30:
NN
プレイルームに入ると「ジュリー久しぶりだね」予約客第一号・前田さんが微笑む。前田さんは42歳。職業は謎..。だけど腕に光る時計が彼の「ステイタス」みたで、相当金は持ってるんだと思う。東京から長期の出張できた、という話通り、前田さんはバリバリの東京弁。2週間前に雑誌を見てやってきてくれたのだけど、彼は絵に描いたような「紳士」客。風俗で遊びなれてるというか、無理矢理なプレーや本番を頼んでくることもない。アッサリした人。前田さんはいつもロングコースだし取り分もいい。そんな人ばっかりだとこの仕事も少しは楽なんだろうなとフッと思った。「また綺麗になったんじゃない?」「またまたーうまいんやから」あたしは笑ってタイマーをセットする。
2005-12-18 02:08:00 -
31:
NN
マニュアル通りのことを繰り返す。体を寄せ合って愛撫して..。仕事してる時、あたしはあたしじゃない。風俗嬢ジュリになりきる。ふと、頭の中に西野君の顔が浮かんだ。その瞬間、あたしは前田さんの体から反射的に離れた。「どうしたの?」「あ、ごめん。なんでもないわ」あたしはプレーを続ける。どうして今一瞬西野君の顔が浮かんだのだろうか。「ねぇジュリ」前田さんはベットの上でつぶやく。「何?」あたしが顔を上げる。「なんでもないよ」そう微笑むとタイマーが鳴り、プレイ終了を告げた。その日は予約分を全部こなして体がヘトヘトだった。
2005-12-18 02:09:00 -
32:
NN
あたしはクローズした店内の待機室に座り、かばんを開ける。「お疲れさん」他の女の子は着替えたり化粧直しをしている。あたしはかばんから、紙キレを取り出す。西野君のメアドと番号。彼はあたしに好意を持ってくれているのだろうか?西野君はあたしの学校での顔しか知らない。裏をめくれば風俗嬢..。結局、仕事を恥ずかしいと思っていたのは、自分自身だったのかもしれない。家に帰れば時計は深夜3時を回っていた。また、紙を開けてみる。今メールするのも遅いし非常識かなと思った。だけど何であたしが西野君に連絡するはめになってるんやろうか。結局その日あたしは西野君に連絡をすることはなかった。
2005-12-18 02:10:00 -
33:
NN
翌日、夕方いつものように校門をくぐると、門の真横で原付きを止めてたまっているヤンキー集団みたいな集まりと目があう。「安藤さん!」ヤンキーグループの真ん中でしゃがみこんでいる田村に声をかけられる。正直ゲッと思った。「昨日西野ちゃんに連絡したったん?」単刀直入だ。「ごめんしてへん」あたしは声を小さくする。と、いうか何であたしが謝らなくちゃいけないんだろう。「えっこの人が西野ちゃんの好きなオンナなん?」変な色のスエット着た男があたしを指差す。「そやでー」田村が軽快に答える。「キレーやん!」「西野ちゃんて面食いねんなぁー」と次々あたしに言葉を浴びせる。さすが西野君。スゴイ男子人気。「昨日安藤さんから連絡こなくてすんごい落ちてたんやであいつ」トドメを刺すように田村がつぶやく。
2005-12-18 02:12:00 -
34:
NN
そんなこと言われたって..。はぁ。あたしは小さくつぶやき、教室へと向かう。すると正面から西野君が歩いてきた。不意にあたしは背中を向ける。「不意」にではなく、「モロ」、だったかもしれない。「安藤さん!」それを見てかあたしの方へ駆け寄ってくる西野君。あたしは内心ゲッと思った。「なんか、ほんまっごめんっ」そしてイキナリ頭を下げた。「なんか迷惑かけて、でも、俺、安藤さんが好きねんか」
2005-12-18 02:14:00 -
35:
NN
は?あたしは硬直する。突然の告白?宣言?何これ?「やから、あの、前から大人っぽくてキレイやなって思ってて、俺なんて相手してもらえへんってわかってるねんけど」顔を真っ赤にさせてうつむき気味にボソボソと言葉をつぶやく西野君に、あたしの鋼鉄だった心臓がその瞬間「ときめき」を覚えたのは事実だ。
2005-12-18 02:15:00 -
37:
NN
「あっありがとう」突然の告白にあたしが声を詰まらせると「いきなりでごめんっ!でもほんっま前から綺麗やなぁって俺なんか全然つりあわんってわかるんやけど好きねん」西野君は必死になってあたしに「想い」をぶつけてくる。恥ずかしそうな顔して目をそらしてはまた、あたしの目を見る。ドキドキした。初めて人の心臓が自分に伝わることを知った。「話したことないし、俺かっこわるいし。ふられるのわかってるし俺なんて全然あかんと思うしでも想いだけでも伝えたかってん!」そういうとまた顔を赤らめた。「ふふ」あたしは声を小さくして笑う。
2005-12-19 00:44:00 -
38:
NN
「あたしも西野君を知りたいと思った、今」そう笑うと、西野君は「ほっほんまに!?」と目を大きく開いた。あたしは正直、興味本位からOKを出した。だけどもしかして、あたし、この時の時点でもう、西野君が「光」に見えてたのかもしれない。「よかったら安藤さんっ今日一緒に帰ろうっ」西野君はまだ顔を真っ赤にさせたままあたしを見る。「今日?」今日はこの後仕事だ。「あっあ、無理やったらいいから」「ごめん今日はちょっと..明日なら」「あっうん、ぜんっぜんいい!!」西野君が言葉を詰まらせながら顔を大きく縦に振る。メッシュの髪の毛が左右に柔らかく揺れる。
2005-12-19 00:46:00 -
39:
NN
「じゃあね」軽く手を振ると西野君はあっうん!と声を大きくさせた。1限は男子は体育。別の教室だ。「おいおい、西野ちゃんやるやーん!!ばっちり見たで!!」いつからいたのかわからない田村がいきなり顔をのぞかせる。「うん!」「よかったなぁー西野ちゃんほんっまよかった!」2人がじゃれているのが遠くからうっすら見えた。
2005-12-19 00:47:00 -
40:
NN
◆「あたしも西野君を知りたいと思った、今」そうやって安藤さんが俺の前で笑った時、ドラマじゃないけど、頭の中で耳元で大好きな歌が流れたような錯覚がおこった。いつから好きやったんだろう。多分、1年ぐらい前からすごく彼女が気になってた。スラっとした細身のスタイル、切れ長の目元、明るい栗色の髪の毛が胸まで伸びている。とにかく女の子と話すのがすごく苦手で自分から話しかけるなんて絶対できないし、クラスでもほとんど誰かと話してるのを見たことがない、安藤さんは謎だらけだった。
2005-12-19 00:48:00 -
41:
NN
男子が集まりいっせいにバスケを始める。今日の1限は体育。いつもなら少し張り切る俺だけど、今日は夢心地で顔がニヤけたままだ。「今日から安藤さんが西野ちゃんの彼女かーうらやましいわ。あんなキレーな子。」右手にボールを抱え田村が笑う。「あっほんま色々協力してくれてありがとう」「ええってことやん、俺ら友達やん」よいっしょ、と、軽くジャンプし投げたボールはゴールにスッポリ入った。
2005-12-19 00:50:00 -
42:
NN
田村は男から見てもすげぇカッコイイし、うちの学校の女子にも一番人気だ。毎日違う女を連れて歩いていて、女をとった!とかなんとか上級生とよくトラブルになってるのを校内でも見る。やけど、いい意味でも悪い意味でも、どんな時にでも自分のスタイルを貫く正直な田村の姿が、羨ましくもあった。だけど安藤さんの横の席っていうのが、一番の羨ましいところだったわけやけど。
2005-12-19 00:51:00 -
43:
NN
◆男子が体育をしている時、女子は保健だった。ボケっと黒板を眺めていると、最後に彼氏がいたのはいつだろう。ふとそんなことを考えた。そういえばあたし、「ちゃんと」男の子と付き合った記憶が最近ない。処女を捨てたのは13の時。なんとなく同じ学校の年上と流れるようにセックスした。そのセックスには「愛」も「理由」も存在しなかった。そんなセックスをその男と繰り返してたら1年経ってた。恋人関係なんかじゃなかったと思う。今思えばセフレっていうのだろうか。かろうじて男の名前と顔はうっすら覚えてるけど、セックスに関しては何ひとつ記憶にない。触れ合った体の体温も、重ねあった唇の感触も、何ひとつ覚えてない。
2005-12-19 00:52:00 -
44:
NN
「あっ、あっ安藤さん、バイバイ!!今日、絶対電話するから!!」9時、下校しようとしたあたしに、西野君が手を振る。隣には田村とそのツレのヤンキーがいる。本当に西野君と田村君って仲いいんやなぁと思いつつ、派手な外見に中身も派手なイケイケ田村と、派手な外見にシャイでへたれな中身を持つナヨナヨ西野君は、中身は全くアンバランスで友達としてはいいバランスなのかもしれないと冷静に思った。一生懸命手を振る姿が何だか愛しく思えた。
2005-12-19 00:54:00 -
45:
NN
あたしは細い道に入るとすぐにタクシーを捕まえた。「今日は深夜から雪が降るんだって」と、タクシーの運転手がミラー越しにあたしを見る。「ほんまに?いややな、雪なんて。寒いし。」あたしは小さくつぶやきタバコに火をつけた。
2005-12-19 00:55:00 -
46:
NN
◆店に着けばあたしの「影」が目を覚ます。今あたしは風俗嬢ジュリ。風俗嬢.ジュリ。西野君や田村が知ってるじゅりじゃない。店に着くと一本目から「なぁ本番やらしてや」を連呼する客にあたりイライラした。だけどあたしだってそんな客は毎日見てる。うまくかわす。「いいやん、こんな仕事してるんやし、エッチ好きなんやろ?」断ると客は笑いながらあたしにそう吐き捨てた。こんなことはよくある。こんなかえされ方もある。今、あたしは「影」だ。負けそうなればあたしは何度だってそう言い聞かす。仕事。あたしは今、じゅりでなく「ジュリ」なんだから。傷ついちゃ駄目。あたしは自分でこの仕事を選び、今、自分の意思でこの仕事を続けているのだから、、、。
2005-12-19 00:56:00 -
47:
NN
あたしは仕事を終えると、店長から日給をもらう。「今日も人気者やったねジュリ!」店長が微笑む。あたしもつられて笑う。笑った、つもりだったけど、鏡にうつった自分が苦笑いになってたことに気がつかなかった。ボケっとしたまま、ロッカールームへ戻る。何となく気が重かった。壁に貼られている女の子のパネルを横目で見る。この中の女の子のどれだけが、このパネルの中で本当の笑顔を見せてるんだろう?あたしはこれからも人に嘘をつき続けるのだろうか?風俗を辞める日が来たとき、「過去」を「空白」にすりかえて…。
2005-12-19 00:57:00 -
48:
NN
近頃あたしは作り笑いだけがうまくなってしまった気がする。あたしは風俗で働いていたのは寂しいからじゃない。理由なんてなかった。なんとなく足を踏み入れた世界に溺れ、抜け出す勇気さえなかった。いつから「あきらめた」が口癖になってしまったんだろう。死に物狂いで戦ったことなんて一度とさえなかったくせに。結局、「あきらめた」って言葉は自分へのいいわけだ。ロッカールームに入ると、携帯で大声で話してる金髪の女の子と目が合った。ユウナだ。あたしと同期で、ユウナとは店で一番よく話す。「お疲れー」ユウナが携帯片手に小声でつぶやく。「おつかれ」あたしも小声でつぶやく。
2005-12-19 00:58:00 -
49:
NN
バックから携帯を取り出す。着信2件。ん?珍しい。あたしは画面を開ける。22時01分、0時05分。同じ番号から2回。自慢じゃないけど、あたしは電話もメールも全然使わない。携帯は時計がわりに使ってる状態だ。頻繁に連絡を取り合うような仲のいい友達もいない。あ、たまにユウナから電話がくるぐらいだ。着信のほとんどが店という寂しい携帯だ。それにしても近くて見たことのある番号..あたしは携帯の画面を凝視した後、リダイヤルを押す。3コールで電話は繋がる。「もしもし?」あたしは低い声でつぶやく。「もしもし!」あ。あたしはハッとする。西野君だ!これ、西野君の番号だ。あたしってば番号もらったまま携帯にも登録してなかった..画面を見ると時間は2時。一般的に真夜中..という時間だ。
2005-12-19 00:59:00 -
50:
NN
「ごめんね!?遅くに連絡して!寝てたやんな?」あたしが必死に謝ると「ううん、ううん、ぜんっぜん大丈夫やで、起きてたから、俺こそ何度も連絡してごめん!」と、逆に謝り返された。と、いうか西野君は「ぜんっぜん」が口癖なんだと気がついた。今日も何度か言ってた。あたしは携帯を握り締める。「電話してくれたのにごめんな。あの、寝てて..」とっさにあたしの口から嘘が出る。何してたの?も聞かれてないのに、いきなりいいわけ。あたしって本当にうそつきオンナ体質だ。
2005-12-19 01:01:00 -
51:
NN
「ほんっとぜんっぜんいいから..安藤さん何してるかな思ってかけただけやし、大事な用事とかちゃうから」また出た、口癖の『ぜんっぜん』。優しい声。どれだけあたしが醜い人間かということが、嘘の中から浮き上がってくる。初めて電話で話してるのに、不思議な人だ。何かあったかくなる。さっきまで凍り付いてた体が。「今、家?」「あ、うん、そうやで」またあたしは嘘をついた。1回の電話であたしは何度嘘を重ねてるんだろう。家じゃない。だけど勤めてる風俗店のロッカールームです、なんて口が裂けてもいえるはずがない。
2005-12-19 01:02:00 -
52:
NN
「じゃあ、安藤さん、窓の外、見た?雪、すごいねん。粉雪みたいなんが」電話越しからガラッと、西野君が窓を開ける音が伝わる。「外?」あたしはかばんを取り、無言でユウナに手を振り店を急いで出る。雪だ。粉雪が降ってる。そういえばさっきタクシーの運転手が言ってた。深夜に雪が降るって。「ほんまに降ってるわ..」あたしは目の前の光景に声が詰まる。やたら派手に光り続ける蛍光色のネオン看板が立ち並ぶ、この街にも、粉雪が..こんな性欲に溢れかえった街にも、こんな白くて小さな雪が、降るなんて..妙に感傷的になる。
2005-12-19 01:02:00 -
53:
NN
もしかしたら真っ白い雪の中には、見えないようにと少しだけピンクに色づいた愛が隠れこんでたりするのかな。だとしたら雪は真っ白じゃなくってほんの少しだけ桃色が混ざり合ってるのかもしれないね。そんなことを思った。
2005-12-19 01:05:00 -
54:
NN
「あ、俺、下の名前優介っていうねん。」「知ってる。田村から聞いた」「あっそうなんやっ、やから、もう好きに呼んでいいしっ」また笑ってしまう。「優介かーじゃあ、ゆうちゃんやね。」「ゆうちゃん!?」「え、嫌?」あたしが聞き返す。「いやなわけないやん!嬉しくて」アハハ、あたしは笑ってしまった。「俺はジュリ..ちゃんって呼ぶし、まだ呼び捨てするの恥ずかしいし..。」ジュリちゃん。何だかゆうちゃんが言うとくすぐったい。「うん。そうして。」「あっジュリちゃん、ほんっま深夜電話かけてごめんな」いいよいいよ、と、あたしは電話越しに手を横に降る。「じゃあ寝よか」「あ、まって、あたし、言い忘れてたことがあるねん」「え?」今度はゆうちゃんが、聞き返す。
2005-12-19 01:06:00 -
55:
NN
言い忘れてたこと。今気がついたこと。「あたし、ゆうちゃんが、めっちゃ好きになってしまったみたいやわ」そう受話器越しに初めてつぶやいた日、その言葉にゆうちゃんが、ありがとうと照れくさそうにつぶやいてくれたあの瞬間。初雪の降った12月11日、時間は深夜02時30分。あたし達の小さな小さな、恋が、雪の中で、そっと、静かに、生まれた。雪の色は、桃色。確かに、その時、真っ白なはずの雪が、桃色に見えた。
2005-12-19 01:07:00 -
57:
マリナ
ぅわぁ〜?初々しいっ?はがゅぃっ??この先のストーリーに期待大です?
2005-12-19 05:27:00 -
58:
NN
マリナさんいつも本当にありがとうございます。いつも感想いただけてすごく励みになってます(^^)
2005-12-20 01:00:00 -
59:
NN
嘘をつき続ける自分に嫌気がさしてるはずなのに、一向に嘘をやめられない自分は、結局嘘にまみれて動けなくなってるだけなのかな。5時を過ぎて学校の門近くにタクシーを止める。門の前に見覚えのあるシルエットを見つける。田村だ。あたしに気がついていないのか、門の前で茶色の派手な巻き髪の女の子とキスしてる。何だかすんごく気まずい。あたしは下を向いて足早に校門をくぐる。「ジュリちゃんおはよー」あたしに気がついた田村は満面の笑みであたしに声をかける。「あ、おはよ..」どっちが当事者かわかんない。あたしが何でこんな気まずい思いをしなくちゃいけないんだろう。あいさつをすませると、あたしは教室に急ぐ。
2005-12-20 01:02:00 -
60:
NN
授業開始を知らせるチャイムが鳴り響く。教室を見渡すとゆうちゃんはまだ来ていないようだ。「さっきはのぞき見してくれたなー」田村が笑いながらあたしの顔を覗き込む。「のぞき見じゃないわ。あんなとこでキスしてれば嫌でも見えるやん」あたしが顔を上げると、田村はそかそか、と笑う。きれいな八重歯。金髪の髪の毛にクッキリ大きい目。こりゃあ『モテ顔』だ。教室にはやる気のない顔した先生がやってくる。小さな声でボソボソと出欠を取る。「西野ちゃんまだ来てんのかーまた遅刻やなーあいつ。」「さっきの女の子彼女?」「気になるん?」何やねんほんっまコイツは..あたしは小さくため息をつく。
2005-12-20 01:03:00 -
61:
NN
「ホストみたいやね、田村くんて」「わかる?」は?配られたプリントが手から落ちる。「俺、ホストしとんねんーやっぱわかるー?」−ゲッ。ヤバイ。血の気が引く。ホストってことは風俗雑誌とか見てるのかもしれない。そこには毎週のように堂々と、あたしは顔出ししてる。「クラブヘブンって店やねんけど」コイツもしかしてあたしの正体を知ってる?心臓が音を立てる。「そうなんや」平然を装おうってことの難しさを知った。
2005-12-20 01:05:00 -
62:
NN
「よかったら来てや」そういってグッチの財布から、黒色をした名刺を出す。クラブ・へブン、田村カムイ。「本名でやってるん?」「そやで。」カムイ..そんな変な名前してたんだ。「何であたしに営業すんの?」言葉を裏返せばあたしの正体を知っているの?と言った。「何か同じ匂いがするから」そう言って田村は黒板に目を向ける。答えになってない。
2005-12-20 01:06:00 -
63:
NN
「田村っていうのよそうや。カムイでええよ。」「うん」短く返事をする。あたしは黒の名刺を裏向けにして、乱暴に財布の中に詰め込む。「名刺、大事にしてや。その名詞は天国行きの切符やで」田村は笑った。あたしには、どうしてもこの名詞が天国行きの切符には思えなかった。名刺。カムイの笑顔。全部胡散臭くってたまらなかった。
2005-12-20 01:08:00 -
64:
NN
その日、ゆうちゃんは2限に現れた。授業中の教室に隠れるようにコソっと入ってきて、あたしに小さく頭を下げる。あたしはうつむいて小さく笑う。今日は仕事が休み。一緒に帰れる。そう思った瞬間、携帯電話が振動する。あたしは画面を見る。メール受信一件。「また遅刻や」同じ教室にいるゆうちゃんからメール。不意に笑いが小さくもれる。メール受信。些細なことで幸せになれる。2限が終わると、ゆうちゃんが何気なくあたしの席に近付いてくる。「にっしのちゃーん!」その様子を見てか田村が割り込む。邪魔者..正直にそう思った。
2005-12-20 01:09:00 -
65:
NN
「お前ら付き合ってるの秘密にしときや。」「えっなんでなん?」田村のむちゃくちゃな提案にゆうちゃんが驚きの表情を浮かべる。「クラスの奴らに茶化されたりしたらめんどいやーん!な、秘密にしとけ!3人の秘密な!」どうしてあんたが入って3人なんねん..そう思った。だけど確かに学校中に知れわたったらめんどくさいこともある、っていうのには納得した。「さすがホストやんな」あたしが小さくつぶやく。「何で?」田村がニッコリ笑う。「人を丸め込むのがすごく上手い。」そういうと、それは職業病ちゃうくって俺の性格やって、と、また笑う。何だかこの笑顔が全部作り物に見える。あの頃はカイムがいい奴なんだか悪い奴なんだか全然わからなくて、たまにうっとおしく感じてた。
2005-12-20 01:10:00 -
66:
NN
↑すみませんカムイがカイムになってます訂正です↑
2005-12-20 01:11:00 -
67:
NN
だけど今考えればカムイもきっとあたしに似た気持ちを持ってホストって仕事に染まったんだと思う。カムイがあたしにつぶやいた言葉が今も脳裏に張り付く。「感情持って生まれてきたことに後悔してばかりして生きてきた。」と。クラブ・ヘブン。英語で天国。「絶望の中で必死に息をして至福の世界を求めて辿り着いたのがあの店、ヘブン。天国って意味やろ。単純な理由やねんけど。もしかしてここなら、って思った」ってカムイはあたしにいった。あの日カムイは天国を見たん?あたしはカムイがくれた天国行き切符、今も財布の中に入ったままだよ。
2005-12-20 01:12:00 -
68:
NN
その日学校が終わった後、別々に正門を出て、門裏で待ち合わせ。気持ち悪いぐらい胸がはずんでる自分に気がついた。今年2回目の雪が窓をうつ。地面に溶け込んで消えていく。かけ足で歩いてくるゆうちゃんが目に映る。黒いトレーナーに細身のGパン。明るい髪の毛に黒い色がとてもよく映える。「ごめん待たせて」「ええよ」そう微笑んで、抱きしめてくれる。寒さなんか吹っ飛ぶ。微笑んだ瞬間、ゆうちゃんの顔が近付く。あ、キス。そう思った瞬間、ゆうちゃんがあたしにつぶやく。「髪に雪ついてる」そういってあたしの髪から雪を落とす。優しい手で。何だキスがくるんだと思った。勝手にドキドキしてからまわりした自分が恥ずかしかった。
2005-12-20 01:13:00 -
69:
NN
ぎこちない仕草で手を繋いできたゆうちゃんにあたしが微笑む。あたしはずるい。わかってる。自分の影を隠して、まるで自分の影を雪みたいに溶かしてる。明日からはまた風俗嬢に戻らなくちゃいけない。この手を離しこの手を離れこの人に嘘をつきこの人の感触を忘れあたしは風俗嬢なのだからー..「ほんまに夢みたいやわ、ジュリちゃんと一緒にいることが」その日、ファミレス2人で語り合った。美容師になる夢を語るユウちゃんの目は輝いていた。「ジュリちゃんの夢は?」って聞かれてあたしは口ごもる。「考え中」と笑った。
2005-12-20 01:15:00 -
70:
NN
時計は22時過ぎていた。23時になるとあたしはゆうちゃんと手をつなぎ、ファミレスを出た。1人暮らししてるから家寄ってく?と聞くといいと断られた。何か誘ったように見えたかな、と、自己嫌悪に浸りながら静かに雪が降る道を歩いた。好きな気持ちが溢れてきてる。こんな気持ちになったことなかった。ゆうちゃんのことが好きだ。本当に好きみたいだ。「えーいいとこやなぁ」ゆうちゃんがマンションを見上げる。「いや、外観だけやから!中身はけっこう狭いねん」真っ白な8階建てのオートロックつきのマンション。18歳の1人暮らしには分不相応。だけどこのマンションが風俗店が用意してくれた寮です、とはいえるはずがない。
2005-12-20 01:15:00 -
71:
NN
「あっジュリ!」背後から声をかけらるれる。シュナ..あたしは顔が青ざめる。うちの店のNO1の女の子だ。先月東京からやってきた子。ワケありって店長から聞いたけど、詳しいことは本当に店長も知らないようだ。家出少女っぽい感じもする。だけど見た目は完全にコテコテ「キャバ嬢」。派手な巻き髪にでかいファーのついた白いコート。「えー彼氏?彼氏?」シュナがゆうちゃんの周りをチョロチョロ動く。「あ、初めまして。シュナです!ジュリちゃんの友達です!」「あ、初めまして。優介です」2人が自己紹介をしあってる間、あたしは気が気じゃなかった。こんな言い方よくないけど、はっきりいってシュナは「場の空気」を完全によめない子だ。風俗嬢だということがバレかねない。
2005-12-20 01:16:00 -
72:
NN
「もう寒いしいいやん、ほらっシュナ、家はいろ。ゆうちゃんありがとね、バイバイ!」シュナの背中を押しあたしはユウちゃんに手を振る。これ以上シュナとゆうちゃんを喋らせたら危険だ。「あ、ジュリちゃん、バイバイ、また明日!」ゆうちゃんが手を振る。また、明日。なんかいい言葉だ。ゆうちゃんが好きで、ゆうちゃんもあたしを好き。そう、ゆうちゃんとあたしに、明日がある。それだけで嬉しかった。
2005-12-20 01:18:00 -
73:
NN
ねぇゆうちゃん。今思えばゆうちゃんを愛しく思えば思うほど、苦しくなったのは、真っ直ぐで嘘のないゆうちゃんが眩しすぎたのかもしれへん。あたしはいったやんな。あきらめたが口癖になってしまったって。死に物狂いで戦ったことなんて一度さえないのに、いいわけばかりしてたと。だけど、あたし、最後に1つだけ死に物狂いになって戦ったことがあってん。それが、あの冬の日。最後の雪が降ったあの日の夜。
2005-12-20 01:19:00 -
74:
NN
◆「ねぇジュリちゃん、私の部屋で飲もうよー今日ムカつく客いてさっ」シュナとあたしの部屋は横で、会ったら会話をする、あいさつする程度の付き合いだ。正直あんまりシュナのキャラクターは好きじゃない。無鉄砲というか何というか。店でも女の子の中でシュナは浮いていて、店長も心配してた。ジュリ、仲良くしてやってなぁと言われたけど、あたしは特に何もしてない。シュナに引きずられるようにしてシュナの部屋に入る。予想通りの部屋だった。カーテンがピンク色、ベッドもピンク、ディズニーのプリンセスのグッツとシャネルが散乱している。薄ピンクのテーブルにはビールのあき缶が散乱してる。シュナは確か19かそこらだったと思う。この年でもうアル中..。
2005-12-20 01:20:00 -
75:
NN
「もう疲れちゃってさぁ」冷蔵庫からビールを3,4個取り出し、ドン、とテーブルに置く。その姿は19歳の女の子っていうより、オヤジに近かった。「ねぇさっきの人彼氏なの?」プシュっと缶を開けると、シュナは笑う。「うん、そうやけど。」「かっこよかったねっ!」「ありがとう」シュナと話す会話が思いつかない。しばらく沈黙になる。「シュナはなんで大阪来たん?」ビールを一口、口にする。「うーん失恋したからかなぁ」−本当かどうかわからないけど意外な答え。あたしは少し驚いた。「ホストの子が好きだったんだーカムプリって店の彩人って子。だけど、何か、気まずくなっちゃって。」それって失恋なのか?とあたしは心の中で思った。
2005-12-20 01:20:00 -
77:
NN
「でも大阪のホストかっこいいね。昨日行った店の子すごいかっこよくて。またはまりそうだなぁ。関西弁って可愛いよね。」あたしはとりあえずふむふむうなずいておいた。シュナは床に落ちていた雑誌を取り出す。「この雑誌、あたしもジュリちゃんも載ってるよねっ」シュナは嬉しそうに雑誌をめくる。あたしは雑誌をのぞきこむ。ああ、確かに。あたしのページの横にシュナが載ってる。
2005-12-20 01:22:00 -
78:
NN
「この雑誌の、ほら、見て!クラブ・ヘブンのカムイ!!もーめっちゃかっこいいでしょ??」シュナが雑誌を指差す。嬉しそうに写真を指差すシュナを横目に、雑誌を見たあたしは硬直した。田村だ..。胸まではだけた白いシャツ、シルバーのダイヤが入ったクロスネックレス。金髪の髪の毛。写真で微笑むカムイは、あたしが知ってる田村カムイと同じ人間なのに、学校のカムイの笑い顔も、雑誌で笑うカムイの笑顔も、なんだかどっちの笑顔もうそ臭く見えた。あたしとカムイが同じ雑誌に載ってる。カムイはあたしが風俗をしてること、知ってるんだろう。
2005-12-20 01:23:00 -
79:
NN
「ほんっまかっこいいんだよカムイ。東京で一番人気あるカムプリって店のNo1..氷咲カオルとよく似てるんだよー。今度へブン一緒にいこーよー」あたしはシュナの話をほとんど聞いてなかった。「ねぇシュナ..今から行かない?ヘブン」「えっなになにいきなりどーしたの??」シュナが目を白黒させる。「なんかシュナの話を聞いてたら行きたくなってん。」シュナには適当に話を作り、行きたいと言うと、シュナは即座にOKし、髪の毛を巻きだした。とにかくカムイとすぐに話がしたかった。
2005-12-20 01:24:00 -
80:
名無しさん
おもろすぎ?天才やん?
2005-12-20 05:30:00 -
81:
マリナ
NNさん、こっちこそいつもゎたしの感想に返事くれてぁりがとぅ??
ぅゎァ?東京心中も出てきてる??まじで楽しぃ??頑張って下さぃ?p(^^)q?2005-12-20 06:05:00 -
84:
名無しさん
続き楽しみ?
2005-12-20 20:18:00 -
85:
NN
86さんありがとうございます。すごく嬉しいです。マリナさん、ありがとうございます。東京心中を応援してくださった方へちょっとした感謝の気持ちでちょこちょこキャラを出す予定です(^^)いつも温かく見守って居てくれて本当にありがとうございます。また気軽に感想ください。りんさん、ありがとうございます!東京心中から今まで読んでもらえて嬉しいです。期待にこたえられるように頑張ります。90さん、更新頑張りますので、また見てやってください。本当にわざわざ感想をくれた方ありがとうございました。
2005-12-20 22:33:00 -
86:
NN
ホストクラブ初体験は妙な形で殻を破った。時計は深夜2時半。ホストクラブの夜は、まだまだこれから、前半戦らしい。マンションからタクシーで15分くらいの距離。驚くことに、あたしの店のすぐ裏にクラブ・ヘブンがあった。タクシーの中で、シュナが嬉しそうにカムイと電話をしていた。「今から友達と行くねー」と告げたシュナの言葉を、カムイは新規が来ると店では言っているのだろうか。ビルの3階。エレベーターを押して3階のフロアにつくと、真っ白なジュウタンが広がり爆音でヒップホップが流れる。店内にヘブンのロゴが踊る。TVで見るまんまだな、冷静にそう思う自分がいた。
2005-12-20 22:36:00 -
87:
NN
入口に貼られたパネルには、NO1からNO5まで飾られている。NO2..あカムイだ。パネルの中でクール決めるカムイは何だか知らない人に見えた。「いらっしゃいませー」ホストの声が響く。シュナは笑顔で店内を見渡す。あんまり今までシュナと絡むことなんてなかったけど、よく見るとやっぱりこの子可愛いわ、冷静にそう思った。「シュナ!おーいらっしゃい!」「きゃーカムイっきちゃったきちゃったぁ!」目の前に現れたのは..間違いなくカムイ。スーツのシャツからのぞく素肌にネックレスひとつついてない。腕も耳も、ピアスや時計ひとつついていなかった。カムイに抱きつくシュナを見てあたしは呆然とする。
2005-12-20 22:37:00 -
88:
NN
「あオトモダチさん?いらっしゃいませ」カムイがあたしの顔を見ると同時に、顔色が変わる。「はじめまして」あたしは言った。「あ、初めまして。新規やしいろいろホスト回すな」あたしはどんな顔をしてはじめましてと言ったのだろう?カムイはあたしのどんな気持ちを察して初対面を演じてくれたんだろう?「いいです。決まってるから。カムイくん指名する」あたしは強くつぶやく。「えーっジュリもカムイ気に入ったんだぁさすがカムイ!ジュリホスクラ初体験なんだよーっこのヴァージンキラー!!」シュナが意味の分からない言葉を連呼させている間、何かいいたそうな顔をしてカムイはあたしを見ていた。あたしが聞きたい。あんたの目的は何?と。
2005-12-20 22:37:00 -
89:
NN
ゆうちゃんとあたしの仲をとりつくったと思えば、名刺を出して店への勧誘、しかも同じ雑誌に載ってたからあたしが風俗嬢だということを知ってる。カムイ、あんたは何がしたいの?テーブルに着くと、シュナが嬉しそうに鼻歌を歌う。「ご機嫌やなぁ」カムイが笑いかける。「だってシュナ、大阪に来て初めてだもんっホスクラ一緒に来てくれた友達!嬉しいよーっ」はしゃぎ続けるシュナを「そっかーよかったなぁー」と、頭を撫でて微笑むカムイ。ホストって恐い。こんな行動も発言も全て『擬似恋愛』、愛は金に変えられるってか。まぁ、人のこといえない。あたしも性と体を金に変えているのだから。
2005-12-20 22:38:00 -
90:
NN
「これからもジュリちゃん仲良くしてねっ」「うん」シュナがあたしの手を握る。この子の『こういう』キャラクターは雑誌の中だけだと思ってた。だけどこの子は風俗の中の自分と、現実の自分を、全く変えてない。『自然体』っていうんだろうか。影の匂いがしない。ちょっと羨ましく思った。シュナとカムイは楽しそうに話している。「シュナはカムイがスキなん?」2人の会話を破ってあたしがつぶやく。「いっきなりやなぁー」カムイがあたしを見る。何よ。言いたいことがあるなら言えよ。あたしはそう思った。
2005-12-20 22:39:00 -
91:
NN
「シュナはスキだよーでもねっでもカムイ、ちょーオラオラで枕しまくりだし」は?あたしは一瞬目が点になる。枕しまくり?あんたこんなこと客に堂々と言われていいわけ?あたしは驚く。「そうそう。伝説の枕ホストめざしまくり」カムイが手を叩いて笑う。何だかあほらしくなってきた。あたしは深くため息をつく。もう帰ろう。一体何しにきたんだか、全く意味わかんない。携帯を見るとメール受信一件。あたしは急いで携帯を広げる。ゆうちゃんだ。「今日はありがとう。また時間があったら一緒にかえろな。明日も朝からバイトやー!ジュリちゃん寝る時メールしてな、ちょっと話したい!」..受信時間01時..今は恐る恐る時計を見ると3時。
2005-12-20 22:40:00 -
92:
NN
またやっちゃった..あたしは一気にテンションが落ちる。寝る時メールしてなって..もう3時だ。あたしは急いでメールを打つ「シュナとちょっと飲もうって話になってちょっと話してたらとろーんとしてきて寝ちゃってた..ごめんね!!」と。どうして嘘をつくメールのときは、あたしこうして打つのがすごく早いんだろう。「ごめんシュナ、あたし帰るわ」財布から1万出し、テーブルに置く。「えーっうんわかった、また一緒に付き合ってね!」シュナに手を振りあたしは店を出る。
2005-12-20 22:41:00 -
93:
NN
あたしには愛してると言ってくれる人がいる..たとえ田村カムイがあたしが風俗嬢だと知っていても、あたしがゆうちゃんを愛してる。それだけでいい。だってそれは偽りのない真実なのだから。人に愛されるということがここまで力強くなれるなんて知らなかったよ。
2005-12-20 22:42:00 -
94:
NN
あたしがエレベーターのボタンを押そうとすると背後から手が伸びる。ハッとして振り向く。「えらい冷たいねんな。」そこにはカムイが1人立っていた。「お客さんのお見送り?そんなことしなくったってええよ。はよシュナんとこ戻りいや。」あたしがうっとうしそうな顔をすると、何でそんなことゆうんよ、カムイは笑った。エレベーターはやく、来い。あたしは頭の中で何度も繰り返した。「あたしが風俗してること、知ってるんでしょ?」「うん、雑誌で見て前からずっと知ってたで。ジュリちゃんは口止めにきたんやろ?言わないでって」カムイは即答した。その答えは間違いなく正解だった。「そうやで」あたしもごまかすつもりはない。黙ってろ。そういいにきたのだから。
2005-12-20 22:43:00 -
95:
NN
その瞬間、カムイが力いっぱいあたしの腕を引っ張る。「ちょっとなにす」あたしの口を封じるようにキスでふさぐ。あたしの体を引き寄せて、強く抱きしめる。舌が強引にかたくなに押さえつけられた唇の中で踊る。カムイの肌からはかすかに甘い香水の匂いがする。さっきは誰とキスしたの、さっきは誰を抱きしめてたの、その唇でその体であたしに触らないで!!
2005-12-20 22:45:00 -
96:
NN
あたしの唇からカムイのぬくもりが離れた瞬間、放心状態になった。カムイはあたしを見て笑う。はじめてじゃないくせに、そういわれてる気がした。あたしはつまる呼吸を抑えてつぶやいた。「カムイ。天国を探すなんて死んだ人間のすることやで」エレベーターのドアが閉まる。何なんあの男、最低!!!あたしはエレベーターの中で何度も、何度も服の袖で唇を拭く。
2005-12-20 22:46:00 -
97:
NN
外は雪に似た雨が強く降っていた。涙が頬から流れる。雪に似た雨じゃなくて。雨に似た涙なんだということに、気がつかないでいた。あの頃、純粋にあたしを愛してくれてた、本当に真っ白で汚れを知らないゆうちゃんと、ただ愛されたくて自分に嘘ばかりついて他人を傷つけてまで幸せになろうとしてたあたしと、世間から見放されてただ安らかな天国を探し続けて走り続けてたカムイと。あたし達3人の夢はきっと幸せになること、だったと思う。
2005-12-20 22:47:00 -
98:
NN
人生がよかったか悪かったかなんて死ぬときにしかわからないことだよ 今が不幸だとしても 死ぬ瞬間に幸せだったと思えたら ねぇカムイ カムイはどう思った?カムイの人生は 幸せだった?今さらだけど、聞いておけばよかったよ
2005-12-20 22:49:00 -
100:
名無しさん
めっちゃ楽しみ?バリおもろい?
2005-12-20 23:11:00 -
101:
りん?
東京心中見てました??
大阪心中この先楽しみにしてます?応援してるんで頑張って下さい??
?しおり?2005-12-21 02:34:00 -
103:
名無しさん
しおり?
2005-12-21 19:25:00 -
104:
NN
読んでくださってありがとうございます。本当に毎度同じ言葉ですみません。本当に嬉しいです。
2005-12-22 00:09:00 -
105:
NN
◆今更ゆうちゃんに電話をかける気になれなかった。カムイの挑発にも似たキスにあたしは気がめいっていた。あたしは部屋のベッドの中で何度も何度もカムイのキスを思い出した。気持ちが悪い。眠れない。むかつく。涙が出てくる。何だか悔しい。色んな感情がごっちゃまぜになって頭の中が壊れそう。あたしは携帯を握り締める。風俗を辞めなくちゃ。ゆうちゃんを傷つけないためにも。だけど今辞めてどうするの?このマンションを出なくちゃいけなくなる。貯金ならある。大丈夫..。あたしは目を閉じる。今日は眠るんだ。あたしは明日何もなかったフリをしてゆうちゃんに笑いかける..。
2005-12-22 00:10:00 -
106:
NN
夕方、うっすら目を開ける。ひどい頭痛..あたしはだるい体を引きずって携帯を広げる。『全然気にしてないし大丈夫(^^)今日も一緒に帰りたい』可愛い..あたしは携帯を前に笑う。本当にあったかい人。何て返信しようかな..そう思っていると玄関のチャイムが鳴る。あたしは黒いスエットのまま、玄関をチェーンを引っ掛けたまま、ドアを半開きにすると、「ジュリちゃーんっ!!」騒がしい声があたしの耳に飛び込んでくる。シュナだ。あたしはチェーンを外す。ピンクのファーを着てサングラスをかけている。まるで芸能人みたいな格好。
2005-12-22 00:11:00 -
107:
NN
「ねぇジュリちゃんっ今日出勤でしょっ?ラストまででしょ?シュナもなんだぁその後ホスクラ一緒に行かない?ヘブン!」目覚めの一発を食らった気持ちになった。あたしが苦笑すると「あれ?ジュリちゃん暖房つけすぎ?顔赤いよ?熱?」シュナがあたしのおでこに手を当てる。そういえばさっきから頭が痛い。「うわっやばいよ絶対熱ある!」そういうとシュナはあたしの腕を引っ張りあたしの部屋に入ってくる。「寝て寝て!ヤバイってほんっとに」確かにすごく体がだるい..昨日寒かったからなぁ風邪ひいたのかも..そんなことをぼんやり考えていると、シュナが何か買ってくる??大丈夫??と心配そうな顔であたしを見る。大丈夫、とあたしが返事をすると本当に?とまた心配そうな顔をした。
2005-12-22 00:12:00 -
108:
NN
「店長には今日休みってこと、シュナがいっといてあげるよっ」シュナがピンクの携帯を取り出す。あきらかに携帯より大きいバラのストラップがついている。ありがとう..あたしが小さくつぶやくと、テーブルの上においてある携帯が音を鳴らす。「あ、ジュリちゃんの携帯なってるねっ」シュナがあたしの元へ携帯を持って走ってくる。シルバーの携帯。ストラップはなし。本当にシュナとあたしは正反対みたいだ。シュナは嬉しそうな顔であたしの携帯の画面を見る。「あー電話彼氏からだよ、ゆうちゃんっていうんだよね!ねぇ出ていい?」は?「ちょっと!」あたしはベットから飛び起きる。だけど、時、すでに遅し状態だった。
2005-12-22 00:13:00 -
109:
NN
シュナはニコニコしながら電話に出ている。「もしもーしゆうちゃんですか?シュナですっ!昨日お話した!はいっ!あのね今シュナ、ジュリちゃんのお部屋にきてるんですけどっ、ジュリちゃん風邪ひいてて熱がすごいのっ!お見舞いきてあげて!うん、うん、はーいまってまーす!」呆然とするあたしを前に、シュナは電話を切り、「今から来てくれるって!」と、あたしににっこり微笑む。仲のいい子でもないのに勝手に電話出られるなんて、あたしは怒り心頭してしまうタイプなんだけどシュナは何だか憎めない。本当に不思議な子。
2005-12-22 00:15:00 -
110:
NN
「じゃー邪魔者は出てこっと!オートロック、シュナがあけといてあげるねっ。お大事に」シュナはいいことしちゃったぁと言いながら、部屋を出て行く。ありがとう、とあたしがつぶやくと、シュナは一度振り返り、つぶやいた。「ねぇジュリちゃん、今の彼氏大事にしなね。あの人ならきっと大丈夫だよ。あたし達のこと、風俗嬢って以前にオンナだっていうこと、人間だって言うこと、ちゃんとそう見ててくれるよ」シュナなんて何も考えてない子なんだと思ってた。だけど今、シュナの言葉に身が震えた。結局、何も考えずに風俗嬢をズルズル引きずってきたのはあたしだけってことだ。
2005-12-22 00:15:00