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……イノチ……

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  • 1:

    夏苅

    市立病院…
    その隣に今では誰もいなくなったマンションがある。来年には建て直しの為、取り壊されると言う。
    2005年夏−
    「拓海……。」一人の女性はそう呟き、手を合わせた。隣では男性が同じ様に屈んで手を合わせる。二人は暫くそうした後、立ち上がりその場を後にした。

    2006-06-03 20:22:00
  • 5:

    夏苅

    少年は大勢の視線を浴びながらゆっくりと教室へ入って来ると、「すみません…」と頭を下げた。
    「ハァ…開いてる席に座りなさい。」先生は一つため息をついて言った。
    少年は安堵の笑みを零し、言われた通りに席へ着いた。

    2006-06-03 21:01:00
  • 6:

    夏苅

    彼女はその間ずっと立ち上がったままだった。「…続き行こかぁ!」先生の声で、自己紹介の途中だった事を思い出した。
    「えっと…○×中学校から来ました、岡本夏苅です。宜しくお願いします。」彼女は、喋り出しにくい雰囲気の中なんとか自己紹介を終えた。

    2006-06-03 21:06:00
  • 7:

    夏苅

    夏苅は「フゥ…」と息を吐き席に着くと、隣に座ったさっきの少年をチラッと見た。
    夏苅は隣が空席だったのにも関わらず、さっきまで全く気にもしていなかった事に気が付く。
    《入学式に遅刻…?》
    成長期にしては小柄でまだまだ幼い顔をした少年は、そんな視線に気が付いたのかクルッと夏苅の方を見た。

    2006-06-03 21:16:00
  • 8:

    夏苅

    目が合ってしまったが、何となく反らす事が出来ず夏苅はジッと少年を見た。
    「ゴメンネ…」「エッ?」
    急にそう言われ思わず聞き返した。すると少年は小声でもう一度「さっきはゴメンネ。」と言った。
    夏苅が焦って「全然大丈夫やで…気にせんといて!」と答えると少年はニコッと微笑んだ。

    2006-06-03 21:22:00
  • 9:

    夏苅

    夏苅はそんな少年を見て何故だか違和感を感じた。《…悲しそう。》
    そう思った瞬間、チクンッと胸に痛んだ。
    少年のさっきの顔が気になっていた夏苅は、クラスメイトの紹介をそっちのけでぼぉっとしていた。

    2006-06-03 21:31:00
  • 10:

    夏苅

    「じゃ最後…遅れて来た奴!」その先生の声で夏苅はハッと我に帰った。「ハイ。」隣を見ると少年が返事をして立ち上がった。
    「○×中学校から来た、岡田拓海です。宜しくお願いします。」
    パチパチと静かに拍手をされると、少年は軽く頭を下げて席に着いた。
    「ハァ…早々に遅刻か…岡田あとで職員室な。」先生はそう言うと淡々と話しを進めた。

    2006-06-03 21:38:00
  • 11:

    夏苅

    先生の声だけが教室に響いていた。
    《話し長いなぁ…》
    夏苅は黒板の上に掛かってある時計を見て思った。時刻は午前11時を回った所だった。
    先生は夏苅の気持ちを察知したかの様に腕時計にサッと目を向けると話しを切り上げ次の話題に移った。
    「では、残った時間で委員を決めて行きます。」

    2006-06-03 22:17:00
  • 12:

    夏苅

    その言葉に生徒達からは不満の声が出る。「チャイムまでに決めろよぉ。決まるまで帰えられんからな〜!」
    先生はお構いなしに言うと、委員名を黒板に書きだした。
    《委員長…風紀…絶対いややな。図書?!中学と変わらんやん…》夏苅は黒板の文字にイチイチ反応して、自分は当たらない事を願った。「まず委員長からやな…誰かやる奴おらんか?」先生はそう言うと生徒を見渡した。生徒の殆どが目を背けている。

    2006-06-03 22:35:00
  • 13:

    夏苅

    そんな中一人の男子生徒が手を上げた。必ず一人はいるものだ…
    「おっ!お前やるか?」「はい!」先生の問いに迷わず答える男子生徒。黒板の委員長の文字の下に名前が書き足された。
    そして先生の指示でその男子先生は教卓前に立ち、次々に委員を決めていった。

    2006-06-03 22:42:00
  • 14:

    夏苅

    「図書委員…誰かいませんかぁ?」委員長の問い掛けに答える生徒はおらず、後少しと言う所で行き詰まった。
    困っている委員長を見兼ねたのか先生が立ち上がった。「後、図書委員だけか………。」言葉の後の沈黙が重い。
    「よし!岡田…お前やれ!」先生達はその言葉に胸を撫で下ろし拓海を見た。「遅刻の罰や…」「ハイ。」
    拓海は引き受けるしかなかった。

    2006-06-03 22:51:00
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