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3Ldkの城・?
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1:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
?は、↓です。
http://bbs.yoasobiweb.com/test/mread.cgi/yomimono/1132987687/-52005-12-19 14:05:00 -
60:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
「誕生日やのに、困らせて‥ごめんな。でも、軽い気持ちじゃなく‥マジで好きやから」
瞳を逸らすことなく、千草は彼女を熱く見つめる。
花は、緩んだ唇をきつく噛んだ。
「返事はまだいらん。これからの俺みて‥考えて」2005-12-21 12:44:00 -
61:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
そう言って、千草は自分の部屋へと入っていった。
残された花は、陽平を横目にその場を離れようとした。
「花、何かあったら‥言えよ」2005-12-21 12:46:00 -
62:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
陽平は、ドアノブに手を伸ばす彼女に声をかける。
花は、何も答えず‥部屋へと入った。
蛇口をキュッと閉め、陽平はため息をついた。
こらえる思いを表すかのように、濡れた手は強くシンクを掴んでいた。2005-12-21 12:51:00 -
63:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
千草は、部屋の電気もつけずに‥布団に寝転がった。
そして、目元に置いた腕を‥ゆっくりと剥がしていく。
暗い視界に、ぼんやりと広がる天井。
千草は、まぶたを閉じた。2005-12-21 12:55:00 -
64:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
‥陽平は、気持ちを誤魔化してる。でも、俺はわざと‥それを鵜呑みにした。
‥遠慮なんか、絶対したくない。素直に引き下がるほど、適当な気持ちじゃないし。
やっと見つけた女や。遠慮なんかして、手放したくない。
絶対、花がほしい。2005-12-21 13:00:00 -
65:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
千草は、どうしても花を手に入れたかった。
陽平が本音を言っていないことも、花が困っていることも、全て気づいている。
でも、遠慮なんかしたくない。
枕元に置いていた煙草に手を伸ばし、千草は気持ちを落ち着つかせようとしていた。2005-12-21 13:05:00 -
66:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
一方、花は部屋のテーブルに頬をつけ‥瞳を閉じていた。
冷たい感覚が、混乱を溶かしていく。
深いため息が漏れていく。
花は、捨てきれない思いに胸を苦しめていた。2005-12-21 13:09:00 -
67:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
“幼なじみとして”
陽平の言葉が‥つらかった。
やっぱり、あたしたちは‥それ以上へは進めない。
期待なんか‥してなかった。2005-12-21 13:12:00 -
68:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
‥解ってた。
でも、なんでやろ。
「なんで‥泣いてんやろ」
テーブルへと流れていく‥一筋の涙が、本音を知らせていた。2005-12-21 13:15:00 -
69:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
‥消したつもりやった。陽平への想いは、捨てたつもりやった。
でも、消えてない。‥捨ててなかった。
あたしは、陽平の優しさや笑顔に期待をしてた。
こんな気持ちに気づいても、何か変わるわけでもない。2005-12-21 13:20:00 -
70:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
花は、首にかけたネックレスを手のひらで包み‥息を漏らした。
こらえても‥こらえても、溢れ出す気持ちは粒へと化して‥頬に水たまりを作る。
花は、声を小さく震わせながら‥泣いた。
【つづく】2005-12-21 13:25:00 -
72:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
10代の時は、22歳って‥もっと大人やと思ってた。
2005-12-21 17:44:00 -
73:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
「あああーっ!めっちゃ可愛いっ!」
翌朝‥ロッカーの前でネックレスを外していると、リンリンがパタパタと駆け寄ってくる。
「誰かにもらったんですかぁ?」
チェーンに飾られた“ダイヤの花”を手に取り‥うらやましそうに問いかけてくる。2005-12-21 17:48:00 -
74:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
「‥あぁ。同居人の2人から」
花は、ネックレスを眺め‥ポツリと呟いた。
ダイヤで作られた花ビラは、きっと‥あたしの名を意識して買ってくれたもの。
でも、今のあたしが‥これをつけても、きっと綺麗な花ビラには見えない。2005-12-21 17:53:00 -
75:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
「なぁんや、彼氏からかと思いましたよぉ!あたしも、彼氏から‥なんか欲しいなぁ」
リンリンは、ネックレスから手を放し‥ブツブツと独り言を言っている。
花は、ロッカーの中にネックレスを直しながら‥ため息をついた。
‥誕生日が来ても、まったく成長しない自分。いつまで経っても、あたしは陽平に期待を持ち続けている。
そして、現実を見て‥勝手に傷ついてるアホな女。‥陽平は、昔からずっと‥あたしを女として見てないのに。2005-12-21 17:59:00 -
76:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
花は、ロッカーを閉めて‥駅へと向かった。
「あ、同居人の人ら来ましたよ!」
トイレでバケツに水を入れていると、リンリンが声をかけてくる。
花は、バケツを手にトイレを出た。2005-12-21 18:03:00 -
77:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
眠たそうな顔をして歩いてくる2人。
花は、深呼吸をして‥彼らに挨拶をした。
「おはよ」
いつも通りに挨拶を返す陽平。2005-12-21 18:05:00 -
78:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
花は、苦しくなる胸を抑え‥笑顔で見送る。
「花、今日‥デートしよう」
明るく振る舞う彼女に、千草は誘いを持ちかけた。
その言葉に、陽平は振り返る。花は、驚き‥ポカンと口を開いた。2005-12-21 18:11:00 -
79:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
「‥いいやろ?」
千草は、立ち止まる彼に問いかけた。花も、彼の反応を伺う。
2人の視線に、陽平は目を背けた。
「勝手にしたら?」2005-12-21 18:13:00 -
80:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
そう言って、彼はトントンと階段を降りりていく。
去っていく陽平の背中を眺め、花は唇を噛んだ。
「いや?」
うつむく彼女の顔をのぞき込み、問いかける千草。2005-12-21 18:16:00 -
81:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
恐る恐る返事を待つ‥千草の顔。
花は、彼を見て‥小さく微笑んだ。
「‥うん。しよっか」
いい加減、陽平のことを想うのは‥やめにしよう。
花は、前に進みたい一心で‥彼を受け入れた。2005-12-21 18:20:00 -
82:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
みるみると嬉しさを顔に表し、「やった!」と言って‥拳を作る彼。
花は、喜ぶ彼を眺め‥小さく笑った。
‥陽平、あたし‥ちゃんと諦めるから。2005-12-21 18:23:00 -
83:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
約束を交わし、花は彼を見送った。
「常盤千草と松浦さんって、付き合ってるんですかぁ?」
千草に手を振る彼女の隣に並び、リンリンがひそひそと問いかけてくる。
花は、彼女に優しく微笑んだ。2005-12-21 18:27:00 -
84:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
「‥どうやろな」
曖昧に答える彼女。
リンリンは、その返事に興奮し‥冷やかしてくる。
バケツの中にモップを入れて、花は彼女の言葉にケラケラと笑っていた。2005-12-21 18:31:00 -
85:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
あたし、いつから‥嘘の笑顔を覚えたんやろ。
嬉しくないのに、笑顔が作れる。
本音を隠した顔。
花は、頭の中にいる陽平の顔をもみ消すかのように‥笑みを振りまいていた。2005-12-21 18:35:00 -
86:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
【つづく】
2005-12-21 18:36:00 -
87:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
「飯食う前に、行きたいとこあるねん」
夕方‥駅で待っていると、千草は嬉しいそうに片手を上げて現れた。隣にいる陽平と離れて、花の元へ駆けつける。
花は後ろめたさを感じ、陽平の目を見ることが出来なかった。
2人で街に繰り出すと、千草は照れた様子で声をかけてくる。2005-12-22 11:22:00 -
88:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
何かを秘めているかのような彼の言葉に、花は頭の上にハテナを浮かべる。
そして、彼に連れて行かれたのは‥華やかな光を放つ宝石店。
千草は、マフラーをまき直し‥店内へと入っていく。
「2人で買ったネックな‥陽平が渡したから、俺の手で何か渡したいねん」2005-12-22 11:27:00 -
89:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
ケースの中を覗きながら、千草は口を尖らせて‥呟いた。
花は、慌てて遠慮をする。だが、彼は口を“への字”に曲げて‥身を引かない。
周りを見渡せば、白い店内には‥肩を並べて寄り添うカップルがチラホラといる。
そして、ケースの中を見る。そこには、“0”が沢山書かれた数字ばかり。2005-12-22 11:31:00 -
90:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
「ちょっ‥、ちゃんと貰ったから‥もういいって!」
花は、困った顔で彼の腕を引く。
すると、千草の目は一点に集中した。
「これ、いいやん」2005-12-22 11:34:00 -
91:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
そう言って、彼はケースに人差し指を当てた。
花は、冷や汗をかいたまま‥指が差す先に目を向ける。
目に映ったのは、ネックレスと同じ“ダイヤの花”の指輪とピアス。
その隣には、今‥首にかけているものがあったかのように、スペースが空いていた。2005-12-22 11:38:00 -
92:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
「金なら、気にせんでいいから。‥俺、自分の手でプレゼント渡したいねん」
彼女の頭に軽く手を置いて、彼は満面の笑顔を見せてくる。
店員がケースから出したのは、指輪とピアス。
千草は、そこから指輪を手に取り‥花の右手に手を伸ばす。2005-12-22 11:48:00 -
93:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
「左手は嫌やろ?だから、右手」
そう言いながら、千草は指輪を指に通していく。
‥ひんやりと冷たい感覚が、指先から伝わってくる。
「マ‥マジでいいから!指輪とかっ」
唇をきつく噛み、花は声を張り上げた。2005-12-22 11:53:00 -
94:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
静かな店内に、彼女の声が響きわたる。
同時に、指輪を持つ‥千草の手がピタリと動きを止めた。
花は、困った表情でうつむいている。2005-12-22 11:56:00 -
95:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
‥きつく言い過ぎた?
花は、すまなさそうな顔で彼を見上げた。
「じゃあ‥ピアス」
千草は、苦笑いで指輪を元の場所へ戻した。2005-12-22 11:58:00 -
96:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
「ピアスやったら安いし、いいやろ?」
耳に飾るピアスを眺め、千草は口元をクイッと動かした。
鏡に映る‥小さな耳。耳たぶには、ネックレスと同じ‥ダイヤの花ビラ。
チラッと隣を見れば、千草は寂しそうな笑顔で見つめてくる。
花は、コクリと頷き‥礼を言った。2005-12-22 12:06:00 -
97:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
きっと‥さっきの言葉に傷ついてる。
宝石店を出て‥街を歩く彼を横目に、花はため息をついた。
‥気持ちは嬉しいけど、指輪って‥なんか特別な気がするから。
だから、指の根元まで‥通されたくはなかった。2005-12-22 12:11:00 -
98:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
「何食いたい?」
“何も気にしていない”と言うかのように、彼は明るく笑いかけてくる。
我に返り、花は慌てて考える。
千草は、そんな彼女を見下ろし‥クスクスと笑った。2005-12-22 12:14:00 -
99:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
「えっ、なんで笑っ‥」
自分を見て笑い出す彼に、花はポカンとした顔で問いかけようとした。
すると、目の前に黒い色が広がる。
彼は、ふわりと首にマフラーを巻きつけた。2005-12-22 12:19:00 -
100:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
「強引なことして‥ごめんな。俺、なんか‥張り切りすぎたっ」
自分のマフラーを彼女の首に通して、彼は恥ずかしそうに目を伏せた。
毛糸に残っている‥わずかな体温。
花は、髪の毛をかきあげ‥彼にピアスを見せた。2005-12-22 12:28:00