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淫らな女達

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  • 1:

    ユリア

    ミナミのとある路地裏にひっそりと佇むおおよそその場所には似つかわしく無い可愛らしい喫茶店。扉を開けると、少女のようなあどけない顔をした一人の女。この店の主であろう彼女が「いらっしゃいませ」満面の笑みで迎えてくれる。こんな場所で危なくはないのだろうか?などと一人考えながらコーヒーを注文する。ほんのりと店の中にコーヒーの香りが漂って来た頃、彼女がトレーに湯気の昇るカップを運んできた。白く綺麗な肌。顔に似合わぬ大きな胸に知らず知らず目がいく。運ばれてきたコーヒーをゆっくりと飲み干しタバコに火をつけ一服すると俺は店を後にした。

    2005-09-11 16:41:00
  • 151:

    ユリア

    暫くすると背後からパタパタと廊下を走る音が近づいて来る。振り向くと俺より青い顔をしこっちに走ってくる彼女の父親と、その後をさすが経験者とゆうべきなのか、ゆっくりと歩いてくる彼女の母親の姿が目に映る。俺は何とか立ち上がり二人に深々と頭を下げたのはいいが、ガシッと彼女の父親に肩を掴まれ「それで?春海は?子供は?!」と詰め寄られ危うく転びそうになる所を「大丈夫だから!少しは落ち着いて下さい!」とピシリと諫める彼女の母の一言に救われた。「恭也君も、ここにへばりついていても仕方無いんだし、私も手伝うから春海の着替えを取りにいきましょう」と言われ気にはなるものの、彼女の母の提案に従った。

    2005-09-18 01:39:00
  • 152:

    ユリア

    入院の支度を済ませ、彼女の母と軽くお茶をし病院へ戻ると俺の両親も駆けつけていた。彼女の母に気づくと両親は深々と挨拶した後、母親同士こんな時にお喋りに花を咲かせているのを聞くともなく聞きながら、中の様子に耳をそばだてていたが何もわからなかった。どれぐらいの時間が経ったのだろうか、すっかり外は薄暗くなり院内は静まり返っていた。突然「オギャー」とゆう産声と共に分娩室の堅く閉ざされた扉が開かれ、看護婦が「元気な双子の女の子ですよ」とにこやかに告げた。

    2005-09-18 01:46:00
  • 153:

    ユリア

    ホッと俺と親父と彼女の父親は胸を撫でおろすと互いに顔を見合わせた。妙な親近感が湧き手を取り合い喜んだ。
    それから俺は毎日、彼女と二人の愛らしい娘のいる病院へと通った。二人の子には、それぞれ蓮美と美桜と名付けられた。

    2005-09-18 01:51:00
  • 154:

    ユリア

    もちろん考えたのは、俺では無く春海だ。理由を聞くと蓮華のように強く美しく真っ直ぐに花を咲かせて欲しいとゆう願いを込めて蓮美。
    美桜(ミウ)は、桜のように誰からも愛され、人を包み込むような優しい子にとゆう彼女の願いが込められていた。
    突然、二児の親となった僕と彼女は、初めての育児に追われ慣れないこともあってか、何度か喧嘩しながらも家族四人仲良く暮らしていた。

    2005-09-18 01:56:00
  • 155:

    ユリア

    すっかりとはいかないが育児にも慣れ、二人が生まれてから三度目の春が訪れていた。
    活発に動き回る子供達から目を離せないので、家で僕が二人を見ながら買い物に出かけた彼女の帰りを待っていたが、夕方を過ぎても帰って来ない。僕は妙な胸騒ぎを感じたが、すぐさま頭を振ると、不安を紛らわそうと椅子から立ち上がった時だった。

    2005-09-18 02:01:00
  • 156:

    ユリア

    上機嫌に遊んでいた、蓮美と美桜が突然火がついたように泣き出した。
    僕は何事かと慌てて二人をあやすが一向に泣き止まない。
    途方に暮れていると一本の電話が鳴り急いで受話器を取ると「もしもし―」と返事をしたが、掛かってきた電話にショックを受け言葉を失った。遠くで二人の子供の泣き声が聞こえる以外なにも耳には届かなかった。走馬燈のように、彼女と過ごした日々が浮かんでは消えてゆく。

    2005-09-18 02:07:00
  • 157:

    ユリア

    明るく輝いていた目の前が突然暗闇へと変わり僕は、受話器を手にしたまま、立ち尽くしていた。
    そこへ母がいつのまにか駆けつけ、僕の頬を強く叩くと「今は、あんたがしっかりせんと!この子達は、どうするの!」と叱り飛ばされやっと我に返り、いつのまにか泣き止んだのか子供達が不安気に瞑らな瞳で、こっちを見つめていた。

    2005-09-18 02:12:00
  • 158:

    ユリア

    子供達を急いで車に乗せると母と二人で搬送先の病院へと向かう。恐怖をなんとか追い払い駆けつけると、彼女の横たわるベッドの脇で泣き崩れるお義母さんとお義父さんの姿が飛び込んだ。

    2005-09-18 02:16:00
  • 159:

    ユリア

    呆然と立ち尽くす僕の手から離れ子供達は、無邪気に母親である彼女の方へと行くと「ママ?おっきして。ママ?」と声をかける。子供達のママを呼ぶ声に悲しみが一層増したのか更に泣き崩れる彼女の両親をまるでドラマのワンシーンを見るかのように見つめていた。彼女は買い物をすませると、僕達の待つ家へと急いで帰る途中、信号を無視し飛び出してきた車に跳ねられ、外傷はほとんどなかったものの、頭部を強く強打し、この病院へと搬送される途中、息を引き取ったそうだ。

    2005-09-18 02:25:00
  • 160:

    ユリア

    それから感傷に浸る暇もなく慌ただしく葬儀が行われ、警察は、ひき逃げた犯人を追跡したが、僕にはどうでもいい事だった。
    ただ彼女にもう会えない、明るい彼女の笑顔を見れないとゆう現実だけが僕の肩に重くのし掛かった。それまでも大切にしてきたし想ってきたつもりだったが、彼女を失って初めてどれ程、彼女の笑顔に、優しさに支えられてきたかを痛感した。

    2005-09-18 02:35:00
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