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傷跡

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  • 1:

    名無しさん

    初めて書きます。よかったら読んで卞さい。

    2006-03-25 01:45:00
  • 11:

    体が痺れる…。
    ふと、自分の体に目をやると、昨日、彼に殴られた”証拠“がくっきりと――、あたしの体に、刻み込まれていた。たくさんの痛々しいアザは、その証。       
    龍二があたしに残した…   
    あたしの心を縛りつける、最後の 証だった―――。
    「ほら、コレ塗れって!」帰ってきた彼が、少し強引にあたしの腕を掴む。   
    『……痛いって。』
    あたしはそう言いながら、龍二の顔を見上げる。    
    「薬局のおっさんにいっちゃん効くやつ貰ってきたったからなぁ〜。コレ塗ったら、一発で治るわ!」
    自信満々に言う龍二の手には、市販の”湿疹、アトピー性皮膚炎、ニキビ“などに効能があるらしい…塗り薬が、握られていた。    
    「ほら、塗れって。」
    『…。…ありがと。』   
    あたしはそれを、鏡を見ながらゆっくりと顔や、体に塗っていった。
    それが効いたとしても、効かなかったとしても。
    この時のあたしには、そのまま何もしないよりは…遥かに気休めになった。      
    『…少し、寝るわ。』    
    あたしは、やつれた顔で、少し笑顔を見せると、

    2006-04-10 23:02:00
  • 12:

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    あぼ~ん
  • 13:

    今日は、珍しく龍二は朝から出かけている。
    あたしは久しぶりに、部屋で一人になった気がした。相変わらず、袋に入ったフランスパンを噛る…。
    『…固。』
    最近は、本当にこんなものしか胃を通らなくなっていた。あたしが体調を崩してからも、龍二がスーパーまで行って、買ってきてくれていた。

    【ピンポーン―――。】     
    突然、部屋のチャイムが鳴った。
    《珍しいな……誰やろ?》あたしは、ゆっくりと立ち上がり、玄関へ迎う。
     『…はーい。どちら様?』【ガチャ――。】    
    玄関の扉が、開く。あたしは、目の前に立つその人物を見て、少し驚いた。     

    『……おばちゃんっ!?』廊下には、龍二のおばちゃんが立っていた。
    「…それ…より、理都ちゃん。それ、どうしたの?」    
    おばちゃんが、心配そうに顔を見上げる。
    ――ハッとする。アザは、スウェットのおかげで全て隠れていた。てことは、こっちか……            
    『……あっ、なんか突然肌荒れしちゃって。ヒドイ顔でしょ〜?』
    あたしは、苦笑いしながら取り繕うように答えた。

    2006-04-10 23:05:00
  • 14:

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    あぼ~ん
  • 15:

    「…まぁ、若いからニキビとかは仕方ないけどね。」おばちゃんは、また優しく微笑んだ。
    『…。』
    「少しお邪魔してっても、いいかな?」
    『あ、はい…。どうぞ。』   
    あたしは、持っていた扉を大きく開き、二人でゆっくりと、家の中へ入った。
    「理都ちゃん…龍二と、うまくいってる?」  
    テーブルの前に腰を下ろし、一息ついたおばちゃんが、台所にいるあたしに声をかける。
    『……え?…あ、はい。』    
    ――あたしは、手に持ったヤカンから目を離さずに、紅茶を入れながら、答えた。     
    おばちゃんには言えない。どうしても…
    《理都ちゃんに出会えて…あの子はほんまに――…》《理都ちゃんっ…龍二を、よろしく――…ね?》     

    言えるわけ、ないよ……     
    「そういえば…龍二は?」おばちゃんが、部屋にいない彼に気付き、言う。
    『あっ…、』
    この展開はマズイ・・・。   
    「龍二は、仕事なの?」 『……あ、あのっ、』      
    いいフォローが思いつかない。こういう時、昔から、あたしは頭が回らない…。思いっきり、言葉を、詰

    2006-04-10 23:12:00
  • 16:

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    あぼ~ん
  • 17:

    テーブルに座り、おばちゃんと二人で、向かい合う。…。               
    「……いつから、行ってないの?」
    先に、口を開いたのは、彼女だった。仕事の事を、聞いているのだろう。 
    『えっと…色々あって。』  
    那智さんの事は、絶対に、言えるはずがない…
    「…そう。」
    再び、沈黙が流れる―― 『…。』           
    「理都ちゃん、少し顔色悪いけど大丈夫?それより…あなただいぶ痩せた?」    
    …痛いところを、突かれた。やっぱりまだ、体調は良くない。顔色も、熱も、戻っていない――…。
    『あ…えっと実は……ダイエットしてて。慣れてないからかなぁ。栄養不足で、肌も荒れるし、顔色もなぜかこんなんで。笑』  
    あたしは、咄嗟に出た言い訳を、精一杯、平然を装って言った。          
    「……そう。」        
    おばちゃんの、【間】が恐かった。気付かれたくない。              
    おばちゃんには、龍二を、信じていて欲しい…
    【ガチャッ―――】   
    その時――。勢い良く、玄関のドアが、開いた。   

    2006-04-10 23:13:00
  • 18:

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    あぼ~ん
  • 19:

    「アンタ、何処行ってたん?」
    おばちゃんが、間髪入れず彼に、言う。
    「は…!?コレ、買いに行ってただけやん。」
    そう言って、手に持った袋を胸の辺りで、ブラブラとさせると、龍二はそのままベッドに、寝転んだ。
    「ドラッグストア…?」 無造作に置かれた、その袋の中から、おばちゃんが、一つ一つ中身を取り出す。栄養ドリンクに、ビタミン剤、パックのおかゆに、風邪薬………。
    ――袋の中から出てくるモノは、全て【あたしあて】の、 モノだった。      
    「…。」
    おばちゃんは、黙ったままそれを…テーブルの上に、ゆっくりと置いた。
    胸が、痛い――…           

    「…理都ちゃん、ちょっと付き合ってくれない?」 『…え?』
    「夕飯の用意、買いに行くから、一緒に。」
    『あ… はい。』
    おばちゃんに誘われるまま、あたしは、買い物について行く事にした。  
    スウェットの下には、Tシャツを着ていたから、あたしはその場で簡単に着替えて、用意をした。 
      
    「…。」           

    2006-04-10 23:14:00
  • 20:

    『じゃあ、龍二…ちょっと行ってくるから。』 
    出際、ベッドに寝転がる彼に、声をかける。  
    「おー。あ、オカン…!こいつ病み上がりやから、つかまだ治ってないから、あんま無理させんなよ。」  
    「はい、分かってるわよ。理都ちゃん、じゃあ下行って車出してるからね。」 おばちゃんは、そう言うと先に部屋を、出ていった。

    「ほな、気を付けてな!」『……龍二、アレ、』
    「え?」          
    あたしは、テーブルの上をゆっくりと、指差す。    
    『ありがとう。』     
    「…え?あ、おう。そんなん気にすんな!当たり前やんけ!アホ!」
    顔を赤くして、強い口調で言う、彼。          

    胸 が、痛 い――…     
    あたしは、そのまま部屋を出ると、急いでおばちゃんの元へ、向かった。
    「…じゃあ、行こっか。」車に乗り込むと、激しいエンジン音と共に、それは、進みだす。           
    サイドミラーには、さっきまで、自分がいた部屋が、龍二がいる部屋が、ゆっくりと、ゆっくりと、遠ざかって見えた――…

    2006-04-10 23:15:00
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