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◆黄昏の赤◆
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1:
緋恋◆lZf.ArgVp2
この街の月は赤く濁っていて気味が悪い。
赤い光が街を益々汚れたように見せる。
あたし達みたいな人間には美しい檸檬のような月明かりを望む事すら贅沢な事なのかもしれない。2007-05-28 23:54:00 -
101:
緋恋◆lZf.ArgVp2
うっすらとアメが目を開ける。
「…アン?」
昨日の飲みすぎが聞いただけでわかるしゃがれ声。
「どうした?退屈してるの?」
あたしは黙って首をふった。2008-02-12 22:12:00 -
102:
緋恋◆lZf.ArgVp2
アメの目がじっとあたしを見据える。
「寂しかった?」
「………………」
首をまた横にふると黙ってアメに背を向けてそのまま部屋をでた。
外はいつものごとく雨。あたしは酷く自分に落胆した。2008-02-12 22:17:00 -
103:
緋恋◆lZf.ArgVp2
「アン!オレもう起きるから飯くいにいこー」
アメのデッカい声が後ろから追いかけてきてあたしの思考を遮断する。
「わかった」
なんだか涙がでそうになった。
あたしには涙を流す資格なんてないのに。2008-02-12 22:21:00 -
104:
緋恋◆lZf.ArgVp2
サンデイピクニックのサンドウィッチは相変わらず美味しい。一口食べてとても空腹だった事に気付く。
サンデイピクニックはこの街の観光客が行き来する表の場所とあたし達の住む裏の場所の真ん中あたりある。ガイドブックにも紹介されたらしく車を改造した店舗からは客足が途絶えない。
パンを頬張りつつアメと歩く。アメが傘をさしてくれている。あたしのはサラミにピクルス、チーズにトマト。アメのローストビーフのサンドウィッチと一口交換した。2008-02-18 05:27:00 -
105:
緋恋◆lZf.ArgVp2
昔こんなふうに一緒に歩いたひとはもういない。
隣をみるとアメが有り得ないくらい口にサンドウィッチを詰め込んでいて少し笑った。
「腹膨れたら元気になるだろ?」
アメが笑う。綺麗な笑顔で。アメの目は優しくて綺麗。あたしの大好きなあの人に目の色が少し似ている。
「………うん」2008-02-18 05:32:00 -
106:
緋恋◆lZf.ArgVp2
あたしは誓いを破った。いや、破りつつある。
もう誰も愛したりしないと決めていた。誰からも愛されるまいと望んでいた。
あたしにはそんな資格がないから。そうすることが償いだと思ったから。ずっとそうやって何からも目を背けてきた。2008-02-18 05:37:00 -
107:
緋恋◆lZf.ArgVp2
この街にも自分にもドクターにもあの人にも全部。
興味を持たないように自分を見せないように。
そうすることはあたしにとってそう難しい事ではなかった。
あたしの嫌いな雨を好きだというこの男はあたしの封印していたものを突っついて引っ掻く。
2008-02-18 05:43:00 -
108:
緋恋◆lZf.ArgVp2
「アン、濡れるよ」
少しアメから距離を離したあたしの肩を傘が届く範囲まで引き寄せた優しい腕。
「………」
“アリガトウ”と言いかけて辞めた。誓いを破らない為にはこんな一言だって言ってはいけないんだ。
けれどアメの目は何も言わないあたしから言えない言葉を見つけて微笑む。2008-02-18 05:49:00 -
109:
緋恋◆lZf.ArgVp2
「アメ!」
気の抜けた声でにへらにへらとスミトモが近寄ってきた。相変わらず野良猫のように突然出てくる。アメとスミトモはいつの間にかすっかり仲良しで…というかスミトモがアメをとても慕っていた。
今日いつもと違ったのはスミトモが女の子を連れている。赤い傘のその女はフワフワの白っぽい金髪に緑がかったおおきな目。童話の中の女の子のように綺麗な子だった。
目が合う。その子はあたしの事をこれ以上ない程、嫌悪感たっぷりに見やるとスミトモの腕に自分の腕を絡ませた。2008-02-18 06:03:00 -
110:
緋恋◆lZf.ArgVp2
甘えてスミトモを見上げると少しキイキイした声で話す。
「このひとがアメさん?」
スミトモは軽くその子の頭を撫でる。
「こいつ、レイチェル。最近俺がみてる娼館の奴。」
レイチェルと紹介されたその子は軽く会釈をした。その仕草もとても可愛らしかった。2008-02-18 06:10:00