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◆黄昏の赤◆

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  • 1:

    緋恋◆lZf.ArgVp2

    この街の月は赤く濁っていて気味が悪い。
    赤い光が街を益々汚れたように見せる。
    あたし達みたいな人間には美しい檸檬のような月明かりを望む事すら贅沢な事なのかもしれない。

    2007-05-28 23:54:00
  • 231:

    緋恋◆lZf.ArgVp2

    どうしてみんなしてこんなに苦しまなくてはならなかったのだろう。                       
    大きな背を丸めてドクターは泣いている。ずっと苦しんでいたんだ。
                                       
    「泣かないで、ドクター…」                       
    ドクターの頭を抱いた。お母さんがあたしにしたように。あたしがアメにしたように。あたしの涙でドクターのシャツの襟口が濡れて色が変わった。

    2008-03-05 05:42:00
  • 232:

    緋恋◆lZf.ArgVp2

    更新分>>229-238

    2008-03-05 05:44:00
  • 233:

    緋恋◆lZf.ArgVp2

    >>238
    「ふーん…じゃあアンジュとドクターは共犯だ」                               
    アメは話しを聞いてもさしてなんの感慨も抱くことなく世間話のような調子で言う。                     
    「………やめてよ」          
    ドクターはあたしを悪くないと言った。けれどあたしがした事がなければ母は死ななかった。どのみち重度の薬物中毒だったらしくあの時死んでいなくても今生きていたかはわからないけど。    

    2008-03-12 01:56:00
  • 234:

    緋恋◆lZf.ArgVp2

    「ドクターのした事は間接的にお母さんを殺した。けどあたしが刺さなきゃ死ななかった………」         
    「アンジュは子供だったじゃん。殺されかけて抵抗してソイツが死んで何が悪いの?俺は倫理的にいうとドクターがわるいんじゃないかと思うけど…大人なんだし」             
    「………どっちが悪いとかじゃないよ」               
    アメはベッドに雑に腰掛けると暫く何か考え込んでるふりをした後、意地悪な笑顔をした。誰に向けるわけでもないその笑顔は冷たい。

    2008-03-12 02:09:00
  • 235:

    緋恋◆lZf.ArgVp2

    「悪いとか悪くないとかそんなに重要?」
    「ちょっ…」                                      
    あたしの手を乱暴に引っ張るとベッドに投げつけるように押し倒した。                        
    「グダグダうるせえな、おまえら。罪を犯せば罰でも下るのか?現にくだってねえだろーが。忘れてヘラヘラ生きりゃあいい!!!」                              
    きつく握られた手首が痛い。アメの目はあたしの目の数十センチ先にあるだけなのに何も映していないように見える。

    2008-03-12 02:23:00
  • 236:

    緋恋◆lZf.ArgVp2

    「おまえといると余計な事ばっか思い出すんだよ」                                     
    アメの指が頬をゆっくり伝う。ひとくくりに片手で掴まれた手首はビクともしない。                                  
    「俺はおまえさえいればいいんだ」                             
    そう言って唇の片端をあげて笑う。

    2008-03-12 02:29:00
  • 237:

    緋恋◆lZf.ArgVp2

    「…………忘れられない」                                 
    頬に触れるアメの指があたしの涙に触って止まった。                             
    「忘れたふりはできても…………忘れられない」                               
    アメは「そうだね」と呟いてあたしの手をそっと離した。

    2008-03-12 02:33:00
  • 238:

    緋恋◆lZf.ArgVp2

    あたしはなんだかアメが怖かったのとアメの目がもとのアメに戻ったのに安心したのと単にびっくりしたのとで、べそべそと子供のような汚い泣き方をしてしまった。                      
    「痛かったな、ごめん………」                             
    アメはあたしに触れるのを少しの間ためらって「触ってもいい?」と聞いていた。黙って頷くとあたしに後ろをむけて膝枕してきた。
    鼻をすすりながらアメの頭をなでると、子供の頃人懐っこかった近所の猫が死んでしまっているのをみて泣きながらソイツの頭を撫でたのを思い出して、また涙がでた。

    2008-03-12 02:42:00
  • 239:

    緋恋◆lZf.ArgVp2

    夜が白んできていて雨も小雨だから明るくなってきていた。薄青い部屋の中はすべてをぼんやりと青っぽく見せていて、祈りたくでもなるような神聖な雰囲気がする。                        
    「罪を犯しても罰は下らないって言ったけど………てか俺はくだってないけど。いつかくだるのかな?」                        
    アメの後頭部はまるまるっとした綺麗な形なのが撫でているとよくわかる。髪はつるつると滑らかで手触りがいい。そんな後ろ頭が言った難しい質問はあたしなんかにうまく答えられるはずもないけど答えたくなった。薄青くぼんやり光る部屋はそういう難しい答えを生み出してくれるような気もしたし、そうしなければアメが日が昇ると共にいなくなりそうな不安にかられたから。                            
    「わかんないけど、たくさん苦しむ。苦しむのはつらいからそれは罰かも。」

    2008-03-12 02:54:00
  • 240:

    緋恋◆lZf.ArgVp2

                               
    「じゃあきっと俺は今罰の真っ最中」                                              
    「…後悔してるの?」            
    「わかんない。……………後悔はしてない、多分。けど苦しい」

    2008-03-12 02:58:00
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