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◆黄昏の赤◆
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1:
緋恋◆lZf.ArgVp2
この街の月は赤く濁っていて気味が悪い。
赤い光が街を益々汚れたように見せる。
あたし達みたいな人間には美しい檸檬のような月明かりを望む事すら贅沢な事なのかもしれない。2007-05-28 23:54:00 -
304:
主◆lZf.ArgVp2
「ほんとは誰にも見せたくないんだけど」
あたしが鏡からアメに視線を向けた時、そう呟いた。後ろをむいているアメの背中の刺青からその声が聞こえた気がしてまじまじとそれを見た。
「ほら、いっといで」
振り向いたアメはいつもの笑顔で、あたしはゆっくり頷いた。2008-04-23 22:36:00 -
305:
主◆lZf.ArgVp2
ドクターはあたしを見ると押し黙ってしまった。しばらくの沈黙の後、「綺麗にしてきたな」と笑った。
「ごめんね、あたし達だけご馳走食べてくるけど………」
あたしは照れてしまってバツが悪い子どものように目をそらして早口で話す。まさかドクターが「綺麗」なんて嬉しそうな顔して言うと思わなかったから。
「ちょっと待っとけ」と部屋に引っ込んでしまったドクターをそわそわしながら待つ。
アメが来てからというものあたしの生活はすっかり変わってしまった。アメはいつの間にかドクターとも打ち解け、ドクターとアメと三人で夕ご飯を食べたりすることも今では普通。晴れ姿と言えば大袈裟かもしれないけどこうやって着飾った姿を見せにきたり………2008-04-23 22:49:00 -
306:
主◆lZf.ArgVp2
………なんだか親子のようじゃないか。耳が熱くなるのを感じた。
今日はイブだからクリスマスはドクターとアメと三人で過ごそう。明日くらいは丸一日かけてそんなに好きでもない料理をしてもいい。
そんな事を考えているまにドクターが戻ってきた。2008-04-23 22:55:00 -
307:
主◆lZf.ArgVp2
「メリークリスマス、アン。」
手渡された小さな箱にはネックレスが二つ。見覚えのあるそれは少しもくすむことなくキラキラ光っていた。
「………ベスの形見だ。もう一つは俺がベスにプレゼントしたものだ…………」
一つはおかあさんがずっとつけていたもの。もう一つも二つあわせてつけていたのを覚えている。2008-04-23 23:02:00 -
308:
主◆lZf.ArgVp2
七年前と同じ輝きを放つネックレスはいかに丁寧に手入れされていたかを物語っていた。
「あたしが貰ってもいいの………?」
ドクターは黙って頷いた。
ありがとうはただ涙になってポツンと箱の中に落ちる。
2008-04-23 23:09:00 -
309:
主◆lZf.ArgVp2
「お前を残してもらってよかった」
何も言えなくて。泣きたくないのに涙はでた。泣きながら笑ったら変な顔になって、ドクターは「化粧が落ちるぞ」と笑った。
2008-04-23 23:16:00 -
311:
名無しさん
>>321
一つは古びた銀のネックレスで中に写真が入る。母に父がプレゼントしたものらしく物心ついた時から母の胸に柔らかく光っていた。
おかあさんは中に父の写真を入れていて見せられた気もするが、とりわけ特別な記憶もない。
今中身が空なのは、母が捨てたのか、ドクターの小さな抵抗か。2008-04-25 01:29:00 -
312:
主◆lZf.ArgVp2
ドクターがおかあさんにプレゼントしたという青い宝石がついたネックレスだけを首にかける。
あたしにとっては待ち続ける母に一度も会いにこなかった父のプレゼントより大切に思えたし、そうしてあげたかった。
「ドクターが選んだにしてはセンスがいい」と崩れた化粧を直してくれながらアメが笑った。
確かに熊みたいなドクターが真剣な顔をしてアクセサリーを選んでいる姿を想像するとニヤリとなる。
そして少し悲しくなった。2008-04-25 01:40:00 -
313:
主◆lZf.ArgVp2
「いこうか」
アメに手を引かれて部屋をでる。今日のアメは完璧なまでに紳士だった。手を取る時の美しい身体の動作。自分が映画の中に入ってしまったかのような錯覚。ドアをさっと開けてくれる。いつもの部屋のドアは知らない世界に続くドアのように感じた。
「………買ったの?」
「まさか。チャーター」2008-04-25 10:36:00