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◆黄昏の赤◆

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  • 1:

    緋恋◆lZf.ArgVp2

    この街の月は赤く濁っていて気味が悪い。
    赤い光が街を益々汚れたように見せる。
    あたし達みたいな人間には美しい檸檬のような月明かりを望む事すら贅沢な事なのかもしれない。

    2007-05-28 23:54:00
  • 334:

    主◆lZf.ArgVp2

    デザートが目の前に運ばれてくるとレイチェルは本日一番の歓声をあげる。
    「おいしーい!!!」
    思わずレイチェルと一緒にのたうった。
    芸術品は味のほうも芸術品で、甘さ控え目のチョコレートケーキは心地よいほろ苦さと深みのあるとてもいい甘い香りがした。ウェイターの説明通り、ナイフを入れると熱々のショコラがとろけだして冷たいヴァニラアイスをケーキにつけてたべると、熱さと冷たさの対比か声がでないくらいに美味しい。
    レイチェルも同じらしくなにやら口をモゴモゴさせながら何かを訴えていた。

    2008-05-14 02:29:00
  • 335:

    主◆lZf.ArgVp2

    「料理番組か!」とスミトモが突っ込み「女の子っていいね」とアメが微笑む。
    結局、ジェントルマン二人はそれぞれにデザートを譲ってくれ、2種類両方手に入れたレディ達はにんまりとした。

    そろそろ12時になるという頃、周りは席を立つ人が目立ち始め、あたし達四人の夢のようなパーティーもお開きとなった。

    2008-05-14 02:36:00
  • 336:

    主◆lZf.ArgVp2

    それぞれ傘をさしながら「よいクリスマスを!」と挨拶した。時計を見るアメが唇の端をあげる。
    「12時まわったよ?」

    「メリークリスマース!!!」
    多少酔っ払いの四人は抱き合ってクリスマスの当日を祝うと、それぞれの車に乗り込んだ。もっと遊びたいような、なんだかうずうずする楽しかった余韻と心地よい疲れの中、アメの肩を枕にしてあたしは眠ってしまった。

    2008-05-14 02:48:00
  • 337:

    主◆lZf.ArgVp2

    夢をみました。
    独りぼっちで花畑を、海を、どこかの神殿をあてもなく歩いて行く。
    それはどこも美しい場所で、あたしは苦しくも寂しくもなく満ち足りた気持ちでいるのです。
    それでもあたしの頭の中に浮かぶのは、
    汚くて醜いあの街のことばかりでした。

    2008-05-16 00:10:00
  • 338:

    主◆lZf.ArgVp2

    「………ん。」

    見慣れた天井。固いベッド。目を覚ますと自分の部屋に寝かされていた。ドレスは残念な事に皺だらけになってしまっていたし、初めて化粧をしたまま眠って迎えた朝は、肌がゴワゴワして気持ち悪い。
    ドレスだけハンガーにかけて下着のままで一服。細く煙を吐きながら、やっぱり良い酒は悪酔いしないな、と思った。

    2008-05-16 00:18:00
  • 339:

    主◆lZf.ArgVp2

    昨夜の事を思い出す。みんなで抱き合った時、人の事を抱きしめるのも抱しめられるのも、アメとお母さん以外には初めてでドキドキした。
    アメに抱かれた時だって緊張なんてしなかったのに。変なの。
    戸惑いがちに触れたレイチェルは思い切りあたしを抱きしめた。次俺ね、と調子に乗ったスミトモの抱擁は痛いくらいだった。
    あたしには、その時伝わってきた体温がすごく不思議な気がした。
    嬉しかった。

    2008-05-16 00:29:00
  • 340:

    主◆lZf.ArgVp2

    ドクターはもうでかけてしまったようで、あたし以外の人の気配はない。
    服を着替えて顔を洗って髪を適当にひっつめる。
    ネックレスがシンプルなデザインでよかった。女らしい格好でなくても合わないという程じゃない。

    窓の外を見る。雨は小雨。勢いよく部屋を飛び出した。

    2008-05-16 00:45:00
  • 341:

    主◆lZf.ArgVp2


    「アメ、七面鳥買って来たの!?鶏肉ならあたしも買ってきたのに!!!」
    買い出しを終えてアメの部屋に行くと、既に料理の中盤にさしかかっている様子。コンロは全てフル稼動。一体何時から用意をしていたのだろうか。
    「クリスマスっちゃ〜コレでしょ。それは唐揚げにすればいいよ」
    七面鳥の丸焼きは絵本なんかでもクリスマスを祝うシーンでは必ず描かれていて、確かに“これ”ではあるけど、まるのままの七面鳥なんて初めて見る。

    2008-05-16 00:53:00
  • 342:

    主◆lZf.ArgVp2

    「よく売ってたね、そんなの。このへんの近所じゃ焼いてあるのくらいしか見た事ない。」
    「遠出したからねぇ」
    七面鳥一匹買うのに一体どこまでいったのか。アメの金銭感覚は理解しがたい。
    聞こえるようについたため息そっちのけに、昨夜の聖歌を口ずさみながら七面鳥に詰め物をしている。

    2008-05-16 01:00:00
  • 343:

    主◆lZf.ArgVp2

    「そんないっぱいつくったら、余るよ。」
    「レイチェルんとこ持っててやればいいよ。どうせスミトモも一緒だろうし。あいつら唐揚げ好きそうな顔してるし、喜ぶよ。」
    「……どんな顔だよ」
    「俺の統計的には絶対そうだね〜あれは。」
    「……何の統計だよ」

    2008-05-16 01:07:00
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