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◆黄昏の赤◆
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1:
緋恋◆lZf.ArgVp2
この街の月は赤く濁っていて気味が悪い。
赤い光が街を益々汚れたように見せる。
あたし達みたいな人間には美しい檸檬のような月明かりを望む事すら贅沢な事なのかもしれない。2007-05-28 23:54:00 -
396:
主◆lZf.ArgVp2
街外れの火葬場はなんの色気もない灰色の建物。ただ焼いて灰にする。それがこの街の葬儀。
黒は似合わないから着ない、と言っていたアメも黒のスーツに黒のネクタイをしていた。
どうみても堅気でない人間がまばらに集まる中、あたし達は浮いている。
今日はスミトモの葬儀だ。2008-07-02 02:00:00 -
397:
主◆lZf.ArgVp2
柩の中に横たわるスミトモは黒のスーツを今までに見た事もないくらいきちんと着せられている。綺麗に死化粧されていて無残だった死の面影はない。
「こうやってみると男前だったんだね、コイツ」
寂しそうにアメが笑う。レイチェルは見当たらない。来れる状態じゃないのかもしれない。あたしはというとまだ半分夢の中のような気分、花に囲まれるスミトモはただ眠っているようにも見えるのだから。2008-07-02 02:10:00 -
398:
主◆lZf.ArgVp2
いよいよスミトモと最期の別れだという時、走りよってきたレイチェルの姿に周りは唖然とする。
彼女はクリスマスに着ていた真っ白のドレスを着ていた。
「買い物してたら遅くなっちゃった。こんな時なのに列ができてんだもん」
屈託なく笑いかけてくるレイチェルに気でも狂ったのかと思った。茶色い紙袋の中から取り出されたのはサンデイピクニックのサンドイッチ。2008-07-02 02:17:00 -
399:
主◆lZf.ArgVp2
「スミトモの好きなもの色々買ってきたの」
柩の隙間にサンドイッチを入れるのを手伝う。
「わあー綺麗にしてもらったね……眠ってるみたい。おきなさーい!!!!!……………………なんてね」
レイチェルの少しおかしな行動に周りは静まり返っていた。でも誰もいさめたりしない。いや、できないのだろう。2008-07-02 02:23:00 -
400:
主◆lZf.ArgVp2
レイチェルの手がスミトモの頬にそっと触れる。
「愛してるわ………スミトモ」
2008-07-02 02:25:00 -
401:
主◆lZf.ArgVp2
どんなにレイチェルがスミトモを愛してるか、その声でその場にいた人間全てが理解したと思う。そういう声だった。
気丈なレイチェルの態度は周りの涙を誘った。
「ふふふ、お別れだって言うのにスミトモのほんとの名前も知らないや」
レイチェルがあたしの手を強く握る。痛い程。
柩の蓋が閉められる。スミトモの姿が見えなくなった。2008-07-02 02:33:00 -
402:
主◆lZf.ArgVp2
さようなら、スミトモ。多分あたしの初めての友達。
レイチェルとアメと三人で白い煙と姿をかえて空に消えて行くスミトモを見守る。レイチェルは初めてすすり泣いた。
「晴れてよかった。きっとスミトモは天国にいけるって事だよね?優しいひとだから」
返事のかわりにレイチェルの頭を撫でる。あたしもそう思った、そう思いたかった。2008-07-02 02:41:00 -
403:
主◆lZf.ArgVp2
「あたし、ここを出ようと思う。前からモデルのプロダクションを持ってる客に誘われてたの。スミトモには黙ってたけど」
レイチェルの目に涙が盛り上がって大粒の涙が顎へと伝う。
「スミトモは……行けっていうだろうし……………スミトモのそばにいたかったから……………でも…もういないから………スミトモがいないなら……セレブになって…映画にでるとか位しなきゃ、人生の帳尻あわないでしょ?」
レイチェルを力いっぱい抱き締めた。レイチェル、あたしの二人目の友達。2008-07-02 02:53:00