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◆黄昏の赤◆
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1:
緋恋◆lZf.ArgVp2
この街の月は赤く濁っていて気味が悪い。
赤い光が街を益々汚れたように見せる。
あたし達みたいな人間には美しい檸檬のような月明かりを望む事すら贅沢な事なのかもしれない。2007-05-28 23:54:00 -
41:
緋恋◆lZf.ArgVp2
朝が来るまで、静かな時間が過ぎる瞬間を見届けるまで起きていたい。
そう思いながら
眠りに飲まれていった。
アア マタ アサガ クル……………2007-05-31 01:45:00 -
42:
緋恋◆lZf.ArgVp2
「アン!いつまで寝てるんだ!!!」
ドアを勢いよく開けたと同時に不快指数100パーセントの怒鳴り声。ご丁寧にスツールまで蹴り飛ばしてくれた。今日のドクターは機嫌が悪い。
「飯、食え」
不機嫌の理由はわかっているけど。
やっと薄目を開けるとドクターが呆れた顔をして部屋から出ていく姿が見えた。2007-05-31 01:52:00 -
43:
緋恋◆lZf.ArgVp2
蹴り飛ばされたスツールから落ちた灰皿が床に転がっている。舞い上がった灰が顔面に降り懸かっていた。
外はまた雨がジトジトとコンクリートを腐らせていっている。またこの街のいつもの朝。
男はやっぱり綺麗な寝顔で眠っている。
少し気分が和んだ。ドクター作の不味い朝食をとる為に階段を下りる。2007-05-31 01:59:00 -
44:
緋恋◆lZf.ArgVp2
これ見よがしに流しで顔を洗って着ていたシャツで拭く。ドクターはたまに朝食を作るがまともなものではない。冷蔵庫に有るものを出しただけ。
それでも食べられる事自体有り難い事だ。
「ステファンはどうだった?」
「相変わらず服の趣味が最低。どこで買ったかわからないような柄シャツ着てた」
ドクターは少し笑ってまた顔をしかめた。この街の人間は笑っていてもふとこういう目をよくする。2007-05-31 02:06:00 -
45:
緋恋◆lZf.ArgVp2
「行き倒れなんか拾ってきてどういうつもりだ?」
「………さあ?」
ドクターはじっとあたしの目を見ると悲しそうな目をして部屋に戻っていった。
わかっているよ、ドクター2007-05-31 02:10:00 -
46:
緋恋◆lZf.ArgVp2
行き倒れなんてこの街には掃いて捨てるほどいる。老人、大量の血をまき散らしてる奴、紙に「なんでもします」と書いて土下座してる奴、まだ小さな子供。
でも誰も助けない。
きりが無いからだ。もし可哀想と思って誰か助けたとして、次の日にはまた同じ場所に誰かがうずくまっている。
関わり合いたくないからだ。飯を食わした奴に金を盗まれる、追いかけてきた奴に殴られる。
情けなんてかけてはいけない。現にあたしは猫の子一匹拾ったことがない。2007-05-31 02:16:00 -
47:
緋恋◆lZf.ArgVp2
ドクター、そんな顔しないであたしはあなたを裏切らない。
2007-05-31 02:21:00 -
48:
緋恋◆lZf.ArgVp2
「起きて!」
よく眠っている男を揺さぶって起こす。起きないので軽く頬をペチペチ叩いた。眉間にしわを寄せて軽く身動きしたものの起きる気配を見せない。
熱はもう下がっている。寝息も正常だ。疲れているんだろう。
少し伸び気味の瞳と同じ色をした細い髪。白い乾いた肌。長い睫。中性的というんだろうか、女でもない男でもない美しさは浮き世離れしている。しなやかな筋肉の乗った肩でああ男なんだな、とわかる。
思わず連れてきてしまったけど、この街に不釣り合いに綺麗すぎる。きっとよそから来たのだろう。2007-06-01 01:39:00 -
49:
緋恋◆lZf.ArgVp2
扉のしまる馬鹿デカい音がした。ドクターが仕事に出掛けたのだろう。ドアの振動で下の階で何かが落ちて割れる。
「誰が掃除すると思ってんだよ」
舌打ちして視線を戻すと男がこちらを不思議そうに見ている。
置いておいた水差しから水をなみなみコップに注いで男に渡した。
男は黙って受け取ると一気に飲み干した。また水を注ぐ。2007-06-01 01:53:00 -
50:
緋恋◆lZf.ArgVp2
「倒れてたからここに運んだ。ずっと寝てたよ。服は同居人に着替えさしてもらった。その服もその人のだよ。あなたの荷物はそこに…」
「…死んだかと思った」
男はそう言って笑った。
2007-06-01 01:58:00