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◆黄昏の赤◆
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1:
緋恋◆lZf.ArgVp2
この街の月は赤く濁っていて気味が悪い。
赤い光が街を益々汚れたように見せる。
あたし達みたいな人間には美しい檸檬のような月明かりを望む事すら贅沢な事なのかもしれない。2007-05-28 23:54:00 -
411:
主◆lZf.ArgVp2
>>421
アメの部屋に行く気にはなれず自分の部屋に戻る。窓を開けて月の光で部屋を満たす。雨の香りのしない空気は新鮮な味がした。
「わりぃな」そう呟くスミトモの声が聞こえた気がして。慌てて振り返ってもその姿はあるはずがないのに。
スミトモの死はマフィア同士の喧嘩という事であっけなく片付いた。この街では人間が一人いなくなるのに十分な理由。2008-07-10 01:20:00 -
412:
主◆lZf.ArgVp2
煙草に火をつける。吸い込むと湿気がないせいかいつもより旨く感じる。白い光に向って昇り掻き消えていく煙はスミトモを連想させた 。
簡単な挑発なんかに乗るような奴ではなかった。喧嘩なんてしてるところ一度も見た事なかった。
頭を抱える体が酷く重い。二口だけすった煙草を乱暴に消した。
「………嫌だ」
2008-07-10 01:26:00 -
413:
主◆lZf.ArgVp2
もう二度と会えないなんて嘘だ。胸に込み上げるなにかが痛い。
苦しい 苦しい 苦しい
レイチェルは強い。
スミトモの死を受け入れられないのはむしろあたしの方だ。冷たく横たわるスミトモを前にして何もできなかった。涙を流す事すら。ただ呆然と眺めていただけだ。2008-07-10 03:20:00 -
414:
主◆lZf.ArgVp2
理由が欲しいと思った。スミトモが死ななければならなかった理由。一人のマフィアの人間が死んだ理由はあたしが友をうしなった理由にはならない。
アメに自らが言った言葉を、誓いを思い出す。“全てに目を背けない”
知らなければ。友として友が何を考え、思い、死に至ったか。2008-07-10 03:27:00 -
415:
主◆lZf.ArgVp2
スミトモはあたしに友情をくれた。貰ったものからあたしは得がたい物を得た。それはあたしが人でいる為に必要なもの。とても大切なこと。
あたしは昔のあたしじゃない。だから今までみたいに仕方ないとか関係ないとかそんなふうに目を逸らす事なんてもうできない。2008-07-10 03:31:00 -
416:
主◆lZf.ArgVp2
何ができるかなんてわからない。なんになるのかなんてしらない。
「でも…行かなきゃ」
このまま何もしないなら死んだ方がましだ。大丈夫行く道はスミトモが照らしてくれる。2008-07-10 03:35:00 -
417:
主◆lZf.ArgVp2
ドクターに気付かれないように部屋をでる。足音を鳴らさないように階段をおりて、そのまま走った。以前スミトモと歩いた道。丁度アメと出会った日だった。夜中なのにも関わらず月明りで街は明るい。
スミトモがあの日、鞄をもってくれるって言った時「ありがとう」と言えば良かった。
2008-07-11 04:08:00 -
418:
主◆lZf.ArgVp2
スミトモが握っていた布キレ。あの日あたしは確かに見た。
『相変わらず服の趣味が最低。どこで買ったかわからないような柄シャツ着てた』
ドクターとかわした会話。2008-07-11 04:16:00 -
419:
主◆lZf.ArgVp2
あれは、ステファンが着ていたものに違いなかった。
2008-07-11 04:18:00 -
420:
主◆lZf.ArgVp2
走ってきて乱れた息の音が響く。軽く深呼吸をして沸き立つ血潮の感覚を沈める。
「ステファン、いるんでしょ?入るよ」
少し間を置いてから「どうぞ?」と小馬鹿にしたような調子の声が聞こえて、あたしは扉をあけた。2008-07-11 04:39:00