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◆黄昏の赤◆

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  • 1:

    緋恋◆lZf.ArgVp2

    この街の月は赤く濁っていて気味が悪い。
    赤い光が街を益々汚れたように見せる。
    あたし達みたいな人間には美しい檸檬のような月明かりを望む事すら贅沢な事なのかもしれない。

    2007-05-28 23:54:00
  • 441:

    ◆lZf.ArgVp2

    >>456
    「まあ偶然できたケミカルの一種なんだけど、原料は従来の二分の一以下。依存性は…2倍、3倍……もっとかな。すごいのはその効果。むちゃくちゃに幸せな夢が見れる。心の中の願望が現実のように現われる。むしろ現実の方が悪い夢なんじゃないかと思う位に。感触や嗅覚も伴う一瞬の夢の前には抗える人間なんていない。試しに少し流してみたら、すごい勢いで広まったよ。俺はさ、コイツを手土産に今いる組織に入った。大量生産が始まって………儲ったねー。街は人の出入りが急に増えて一気に今の状況まで堕ちた。
    面白かったよ、色んなものが、金や欲や情で崩れ堕ちて行く様子がそこここで見られて。」

    2008-07-14 14:09:00
  • 442:

    ◆lZf.ArgVp2

    「そんな感じだったんだけど作った奴が自殺して。あいつ、俺や周りを警戒して誰にも製造法を教えなかった。
    奴の頭の中にある製造法は闇の中。在庫はあったけど、それを元に試行錯誤しても同じものにはならなかった。
    ムカついたねー元々とち狂って“子供達にせめて幸福な死を”とか言って作り始めて、そのうち正気に戻って死んじまったんだから。
    糞みたいな奴だったけど頭はよかったからね、使いようはいくらでもあったのに。」

    2008-07-14 14:17:00
  • 443:

    ◆lZf.ArgVp2

    小さな透明の粒をビニール越しに触りながら、ステファンは愛しそうに目を細めてそれを見つめる。
    「……こんな物の為に大勢死んだ。あっけなかったな、みんなコイツの前には。どんなに純粋そうに見えた奴だってこれを手に入れる為ならなんだってやるようになったり。なんせ脆いよ、人間は。
    笑えるだろ?これは通称“happiness(幸福)”ていうんだ。作った奴がつけたんだけどね。」

    2008-07-14 14:26:00
  • 444:

    ◆lZf.ArgVp2

    ステファンの言う通り人間は脆い。そこに異存はない。
    …幸福。甘い甘い幸せな都合のいい夢を誰だって夢見る。それを差し出されたら、その中で遊べたら誰が依存しないでいられるだろう。

    例え、ニセモノの“Happiness”でも。

    2008-07-14 14:32:00
  • 445:

    ◆lZf.ArgVp2

    人間は強くない。だけど弱いんじゃない、強くないだけ。それは悪い事でもなければ滑稽でも愚かでもない。
    「………笑えないよ、ステファン。」

    「そうだな。……どうでもいいな。そんな事は」
    ステファンはあたしを見つめる。懐かしむような、憎んでいるようなそんな底の知れない感情が渦巻く眼差しで。あたしは奇妙な感覚に囚われる。ステファンの感情に引き込まれるような感覚。それは深い深い、右も左も上も下もわからないような暗い暗いブルー。そして心がどうしようもない位痛くなった。ステファンの目を見ていると。

    2008-07-14 14:45:00
  • 446:

    ◆lZf.ArgVp2


    「………どうしてそんなに苦しそうなの?」

    「………俺が? まさか」

    2008-07-15 02:18:00
  • 447:

    ◆lZf.ArgVp2

    ステファンは人を貶めてまでお金を欲しているようには見えなかった。この部屋や身に着けている物なんかはさりげなくお金がかかっていそうだけど、物欲が強いようにも見えない。堕ちて行く人間を滑稽だと笑うけど、本当はそんな事に何の興味もなさそうで。
    「同じ事を聞くんだな…アハッ…アハハハ」
    けたたましい笑い声が部屋に響く。クラシックな雰囲気のおしゃれな部屋で、中年の痩せすぎた男が身悶えしながら笑い転げる様子は奇妙としか表現できない。
    「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ………」

    2008-07-15 02:29:00
  • 448:

    ◆lZf.ArgVp2

    涙を流しながらひとしきり笑った後、馬鹿みたいにむせて咳き込んで「おい!!!水ぅ!!」と怒鳴り出した。
    すぐにさっきの男が水を持ってくる。ステファンは男の髪を掴むと壁にむかって顔面から叩き付けた。
    「アギャ!」という悲鳴となんともいえない音がして、咄嗟に目を閉じる。おそるおそる目をあけると白い壁には血の跡がついている。なんとなく人の顔の形だとわかる。下には顔を押さえる男がうずくまっていて、声にならない音を発していた。
    「大事な話なんだから、席外せよ。ちょっとは空気読めって。」

    2008-07-15 02:40:00
  • 449:

    ◆lZf.ArgVp2

    「ステファン!!!やめて!!!!」

    なおかつ蹴りをいれようとしているステファンを後ろから押さえた。その隙に男は転げるように走って行った。
    「どうして、こんな事ばっかりするの!!」
    ステファンはまるで今まで眠っていた様なぼんやりした目をしていてさっきまでの凶暴さが嘘のようで。

    2008-07-15 02:46:00
  • 450:

    ◆lZf.ArgVp2

    煙草に火をつけてゆっくり一口吐き出す。煙はもろにあたしの顔にむかって吐かれて咳き込んだ。
    「あいつがさっきから奥でガチャガチャしてんのが気になってさ。ちょっとイライラしてきてたんだ」
    「…言えば済む事じゃないか」
    「そう言われるとそうなんだけどねえ。だんだんガタがきてるな。………ちっ、壁が…汚れた。あ〜あ。」
    一人ごとのような返答を返してきて「壁……塗り治さないとなあ」と続けた。

    2008-07-15 02:53:00
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