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◆黄昏の赤◆
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1:
緋恋◆lZf.ArgVp2
この街の月は赤く濁っていて気味が悪い。
赤い光が街を益々汚れたように見せる。
あたし達みたいな人間には美しい檸檬のような月明かりを望む事すら贅沢な事なのかもしれない。2007-05-28 23:54:00 -
444:
◆lZf.ArgVp2
ステファンの言う通り人間は脆い。そこに異存はない。
…幸福。甘い甘い幸せな都合のいい夢を誰だって夢見る。それを差し出されたら、その中で遊べたら誰が依存しないでいられるだろう。
例え、ニセモノの“Happiness”でも。
2008-07-14 14:32:00 -
445:
◆lZf.ArgVp2
人間は強くない。だけど弱いんじゃない、強くないだけ。それは悪い事でもなければ滑稽でも愚かでもない。
「………笑えないよ、ステファン。」
「そうだな。……どうでもいいな。そんな事は」
ステファンはあたしを見つめる。懐かしむような、憎んでいるようなそんな底の知れない感情が渦巻く眼差しで。あたしは奇妙な感覚に囚われる。ステファンの感情に引き込まれるような感覚。それは深い深い、右も左も上も下もわからないような暗い暗いブルー。そして心がどうしようもない位痛くなった。ステファンの目を見ていると。2008-07-14 14:45:00 -
446:
◆lZf.ArgVp2
「………どうしてそんなに苦しそうなの?」
「………俺が? まさか」
2008-07-15 02:18:00 -
447:
◆lZf.ArgVp2
ステファンは人を貶めてまでお金を欲しているようには見えなかった。この部屋や身に着けている物なんかはさりげなくお金がかかっていそうだけど、物欲が強いようにも見えない。堕ちて行く人間を滑稽だと笑うけど、本当はそんな事に何の興味もなさそうで。
「同じ事を聞くんだな…アハッ…アハハハ」
けたたましい笑い声が部屋に響く。クラシックな雰囲気のおしゃれな部屋で、中年の痩せすぎた男が身悶えしながら笑い転げる様子は奇妙としか表現できない。
「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ………」
2008-07-15 02:29:00 -
448:
◆lZf.ArgVp2
涙を流しながらひとしきり笑った後、馬鹿みたいにむせて咳き込んで「おい!!!水ぅ!!」と怒鳴り出した。
すぐにさっきの男が水を持ってくる。ステファンは男の髪を掴むと壁にむかって顔面から叩き付けた。
「アギャ!」という悲鳴となんともいえない音がして、咄嗟に目を閉じる。おそるおそる目をあけると白い壁には血の跡がついている。なんとなく人の顔の形だとわかる。下には顔を押さえる男がうずくまっていて、声にならない音を発していた。
「大事な話なんだから、席外せよ。ちょっとは空気読めって。」2008-07-15 02:40:00 -
449:
◆lZf.ArgVp2
「ステファン!!!やめて!!!!」
なおかつ蹴りをいれようとしているステファンを後ろから押さえた。その隙に男は転げるように走って行った。
「どうして、こんな事ばっかりするの!!」
ステファンはまるで今まで眠っていた様なぼんやりした目をしていてさっきまでの凶暴さが嘘のようで。2008-07-15 02:46:00 -
450:
◆lZf.ArgVp2
煙草に火をつけてゆっくり一口吐き出す。煙はもろにあたしの顔にむかって吐かれて咳き込んだ。
「あいつがさっきから奥でガチャガチャしてんのが気になってさ。ちょっとイライラしてきてたんだ」
「…言えば済む事じゃないか」
「そう言われるとそうなんだけどねえ。だんだんガタがきてるな。………ちっ、壁が…汚れた。あ〜あ。」
一人ごとのような返答を返してきて「壁……塗り治さないとなあ」と続けた。2008-07-15 02:53:00 -
451:
◆lZf.ArgVp2
「………アンジュ、お前は似ているな。姿形じゃなくてもっと深い所が。深い悲しみを抱いている目が。
お前の目は黒いけど、内在する哀れみは同じ色だ。
悲しみをそのまま具現化させた青い瞳。その目を人生で唯一、美しいと思った。」
「…………ステファン?」2008-07-16 03:14:00 -
452:
◆lZf.ArgVp2
動けなかった。瞬きすらできないでいる間にステファンの腕に囚われる。抵抗すらできないでいるのに、その力は強い。それでもどこか震える指は恐れている様にあたしの肩を抱く。
「……ベス。お前の母親だ。」
2008-07-16 03:20:00 -
453:
◆lZf.ArgVp2
「産まれてから今まで彼女だけを尊いと思った。美しかった。
ぐちゃぐちゃにしてやりたいと思う程に。だけど彼女は汚れなかった。汚す事ができなかった。
だから憎かった。
だから壊した。」
2008-07-16 03:24:00