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◆黄昏の赤◆

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  • 1:

    緋恋◆lZf.ArgVp2

    この街の月は赤く濁っていて気味が悪い。
    赤い光が街を益々汚れたように見せる。
    あたし達みたいな人間には美しい檸檬のような月明かりを望む事すら贅沢な事なのかもしれない。

    2007-05-28 23:54:00
  • 494:

    ◆lZf.ArgVp2

    渾身の力を振り絞ってその手を降り払う。イモムシのように床を這いつくばりながら逃れようした。
    それはステファンからなのか、あの日の記憶からなのか。手にガラスが刺さろうが、止まりかけた血がまた吹き出そうがどうだっていい。
    「やだやだや…だ……ゃ…だ………やだやだやだやだ」

    こ な い で

    2008-07-24 01:14:00
  • 495:

    ◆lZf.ArgVp2


    「アンジュ お前の苦しみももう終わる…………俺がお前を殺せばお前は天使になれる。すぐ会えるよ、べスにも」
    実際には数メートル進んだだけで、あたしの前に立つステファンに見下ろされていた。
    「もう泣かなくていい。」
    少しの間その場を離れたステファンはハンカチを濡らして持ってくるとあたしを優しく起こして壁にもたれさせかける。涙と血でぐちゃぐちゃであろう顔を拭ってくれた。

    2008-07-24 01:22:00
  • 496:

    ◆lZf.ArgVp2

    まるで我が子にするように優しく………

    「………あたし……死ぬの?」

    「大丈夫。………一人じゃないから」

    2008-07-24 01:27:00
  • 497:

    ◆lZf.ArgVp2

    あたしをそのままにしてステファンはソファの所まで戻った。ぼんやりとその動作を見ていた。
    アメ……ドクター…スミトモ……レイチェル…………………愛してる。
    みんながあたしを救ってくれたんだ。ステファンをあんなふうにした闇はあたしの心にも確かにいるのだから。
    「生きよ…………生……きて 償おう」
    「…聞いて……生きよう……ステファン」

    2008-07-24 01:41:00
  • 498:

    ◆lZf.ArgVp2

    ステファンの心は取り返しのつかないところまで堕ちてしまったんだろうか

    ちがう

    だって貴方だって泣いたじゃないか

    2008-07-24 01:46:00
  • 499:

    ◆lZf.ArgVp2

    「こんなこ…と、誰も望まない……お母さんだっ……て」

    陳腐な事を言っているのはわかっている。お母さんがどう思うかなんてあたしにはわからない。それでも
    「あた…しは ステファンに………生きて…ほし……」
    ステファンはこっちを見ようともせず、彼の手元はカチャカチャ音を立てている。例え、ステファンに届かなくても。それでもあたしは言わなくちゃいけない。

    2008-07-24 01:54:00
  • 500:

    ◆lZf.ArgVp2

    悲しみはここで終わり。母の死から始まった悲しみはもう繋げてはいけない。
    あたしが運良く生き残り、幸福にも愛された意味はそこにあるんだと、今はそう思うから。
    届かなくても届けなくちゃ。
    「これ以上……殺さ…ないで………あた…しを殺さないで」
    そして、なにより

    2008-07-24 02:01:00
  • 501:

    ◆lZf.ArgVp2



    「ステファ……貴方を殺さない………で」

    2008-07-24 02:03:00
  • 502:

    ◆lZf.ArgVp2

    「…アンジュ、ほら」
    黙々と何かをしていたステファンが向こうからあたしの視界に入る様に下げた手には小さな金属の容器。中にはあの薬。容器の底からライターの火に炙られると液体になった。
    慣れた手つきで注射器へとそれを移す。
    捲られた袖の下から露になった白い腕。
    すぐに視界は涙でぼやけた。

    2008-07-24 02:10:00
  • 503:

    ◆lZf.ArgVp2

    「もう………やめて!!……………………………お願い………」
    無残なほどの注射針の跡。赤や紫でうめ尽くされるステファンの腕。
    直視できる様なものではなかった。その異様な細さの腕も。
    死に際の母と同じ姿、それ以上だった。

    2008-07-24 02:17:00
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