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◆黄昏の赤◆

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  • 1:

    緋恋◆lZf.ArgVp2

    この街の月は赤く濁っていて気味が悪い。
    赤い光が街を益々汚れたように見せる。
    あたし達みたいな人間には美しい檸檬のような月明かりを望む事すら贅沢な事なのかもしれない。

    2007-05-28 23:54:00
  • 534:

    ◆lZf.ArgVp2

    「………お前とベスの事は薄々知っていた。…………なぜだ?なぜベスに薬を……なぜ…」

    答えはなかった。
    ステファンは歌を口ずさみだした。それはクリスマスの時聞いた讃美歌の一説。
    「………………………………なぜ?」

    2008-07-31 08:33:00
  • 535:

    ◆lZf.ArgVp2

    ドクターの問いはただ無意味に空気を震わせるだけだった。

    ステファンはただ歌い続けた。調子のたまにずれる讃美歌は途切れ途切れになりながら同じところをいったりきたりする。
    その頃にはあたしの意識も朦朧としていた。
    アメの体温と握力の強さがあたしの意識をつなぎとめていた。

    2008-07-31 08:40:00
  • 536:

    ◆lZf.ArgVp2



    「…………俺はお前が好きだったよ」

    2008-07-31 08:41:00
  • 537:

    ◆lZf.ArgVp2

    その瞬間はやけにゆっくりと見えた。
    ドクターの腕がステファンの方に向けられる。引き金を引く音すらゆっくりと耳に響いた。そして鮮血。

    「…………ぃや゛あああああ!!!!!」

    2008-07-31 08:46:00
  • 538:

    ◆lZf.ArgVp2



    叫んだ時には既に終わっていた。

    2008-07-31 08:47:00
  • 539:

    ◆lZf.ArgVp2

    「友達だと………そう思っていたんだ」

    数発の弾丸を打ち込んだ後、ドクターは腕を下ろした。ゴトリと重い音がして銃が床に転がる。
    あたしの耳にはステファンの口ずさんでいた歌詞がまだ残っていて、まだステファンが歌い続けているかのように錯覚したが当のステファンは口を閉ざしている。
    永遠に。

    2008-07-31 20:21:00
  • 540:

    ◆lZf.ArgVp2

    「アメ、アンジュを連れて行け。血が出過ぎている。」

    だめ、ドクターと一緒じゃないと……だめ。アメに伝えようと手を握った…筈だった。
    もう指は少しも動かない。声をだそうとしても微かに唇が開いて息がもれるだけだった。
    「はやくしろ!……手遅れになる」
    足が床から離れる。動かないあたしの腕を首に回させた。

    2008-07-31 20:28:00
  • 541:

    ◆lZf.ArgVp2

    酷く目が乾いてよく見えない。ドクターはあたしを見て笑った。
    アメはあたしを背負ううとドアに向って歩きだす。体温と振動で眠たくなっていく。まるで赤ん坊になったようにうつらうつらと意識は遠のいていった。

    だめ………アメだめだ。待って 。 ドクターを連れて来て。
    ドクター……………………………………………………………………………

    2008-07-31 20:34:00
  • 542:

    ◆lZf.ArgVp2

    意識が落ちるそのほんの少し前、あたしは聞いた。
    一発の銃声。


    命が消える音がした。

    2008-07-31 20:37:00
  • 543:

    ◆lZf.ArgVp2

    31日更新>>544から

    2008-07-31 20:40:00
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