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◆黄昏の赤◆
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1:
緋恋◆lZf.ArgVp2
この街の月は赤く濁っていて気味が悪い。
赤い光が街を益々汚れたように見せる。
あたし達みたいな人間には美しい檸檬のような月明かりを望む事すら贅沢な事なのかもしれない。2007-05-28 23:54:00 -
84:
緋恋◆lZf.ArgVp2
>>83 続き
「アン、噂のべっぴんさんが最近お前が連れてる男だったんだな―」
スミトモは親しみ安い声で表情も態度も温和なものの、アメを警戒しているのは明らかだった。
場が緊迫して冷たい温度が込み上げてそこに留まる。
あたしは女の子らしい笑顔で皆を和ます事も気の利いた話題を切り出して流れを変えることも出来ずに、ただ無表情にその場を見ていた。2007-06-30 02:22:00 -
85:
緋恋◆lZf.ArgVp2
「オジサン、そのトランプ貸してくれる?」
一番に口を開いたのはアメだった。声をかけられたバーテンダーは、汚すなよ、いいものなんだから。と言ってアメに飾ってあったトランプを手渡す。
ディスプレイされていただけあって極彩色のキングにクイーンは表情まで見事。裏面の模様まで美しい。それなりの価値はあるだろうアンティークだ。
「プラスチック製じゃないからやりづらいな…………」
そう渋りながらもトランプを操るアメの手つきはマジシャンの様だ。生き物のようにトランプはアメの指に吸い付くように広がり、まとめられ、時に宙を舞う。2007-06-30 02:31:00 -
86:
緋恋◆lZf.ArgVp2
「いい手つきだな、兄チャン」
アメに笑顔で話しかけるスミトモは先程までの“縄張りを守ろうとする男の顔”ではなく、すっかり少年の顔に戻っている。
「アメだよ」
簡単にアメを紹介すると少年はなんともいえない微妙な笑顔をみせた。俺はスミトモ…と彼が言ったのに対してアメはヨロシク〜とゆる〜〜い調子で答える。
「トランプの赤と黒は1日の昼と夜を示している。トランプの数字は一年を表しているんだよ」2007-06-30 02:39:00 -
87:
緋恋◆lZf.ArgVp2
「元々はインドあたりで占いに使われていたカードが起源と言われているけどね」
鮮やかに踊るトランプの動きとそれ以上にしなやかなアメの技巧と……おとぎ話のように語られる豆知識にあたし達は夢中になっていた。
「絵がついていてまとまりある数字がついているカード…これをゲームに使えるって誰かが気付くのに時間はかからなかったと思う」
ゆったりと流れるアメの言葉とパラパラと歌うトランプは確かに占いに使われていたというのを納得させる神秘的な空間を作っていく。2007-06-30 02:48:00 -
88:
緋恋◆lZf.ArgVp2
「そして誰かが賭け事にそれを使う事を思い付く。ギャンブルの歴史の始まり」
いつの間にかその場にいる全員がアメの言葉に飲み込まれていた。
「そして、金が絡むとズルする奴が必ずでてくる。イカサマの始まり」
バラバラバラッとトランプが宙で踊る。いつものように唇の端を釣り上げていたずらっ子の様にアメが笑う。2007-06-30 02:55:00 -
89:
緋恋◆lZf.ArgVp2
「アンジュ、この中から一枚ひいてみて。周りには見せないでね」
カウンターに扇状に広がるトランプから一枚選ぶ。誰にも見えないようにコッソリと裏返すとダイアのクイーンが微笑んでいた。
「俺は後ろ向いとくから戻して好きな様に混ぜていいよ」
とにかく自分でもカードがどこにいったかわからなくなるくらいにきった。
「アン、貸せ」
更にスミトモはトランプがぐちゃぐちゃになるかと思う程がむしゃらにトランプをきる。バーテンがジロリとスミトモを見る。スミトモはきまり悪そうにトランプをカウンターにそっと置いた。2007-07-04 01:01:00 -
90:
緋恋◆lZf.ArgVp2
もういい?と振り返ったアメはカードを一枚選んで皆に見せる。
「これ?」
「違うよ。」
なんだ…とだれる空気の中、真剣な眼差しでもう一枚選んでまた裏返す。
「これ?」2007-07-04 01:07:00 -
91:
緋恋◆lZf.ArgVp2
ダイアのクイーンが笑う。
「なんでっ!!!!」
スミトモを睨む。
「俺グルじゃないって!!!」
簡単な手品なんだろうけど面白いくらいその場は盛り上がった。トランプは借りたものだしカードをよく見たけどどこにも印らしいものはなかった。2007-07-04 01:22:00 -
92:
緋恋◆lZf.ArgVp2
「なんで俺がこのカードひくってわかったんだ??」
スミトモはすっかりアメに打ち解けてタネをずっと知りたがったけど最後までアメは[勘」2007-07-04 01:24:00 -
93:
緋恋◆lZf.ArgVp2
で通した。
「知ったら面白くないでしょ。なんだそんな簡単な事かっていうような事だから」
スミトモは何回もせがみ手元をかじりつくようにみていたが結局何も発見できずに諦めた。
「見えるからこそわからないって事もあるからね。」
アメはなんだか知ったふうな事を言いスミトモは悔しがって酒を一気に煽った。スミトモの頭をポンポン撫でる。2007-07-04 01:32:00