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彼女までの距離
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1:
主◆LakuAXwmbU
芽衣と出会ったのは、残暑でまだ暑い九月の第一日曜日だった。
出会いの感想を聞かれたなら、最悪だったとしか言いようがない。
ホストを始めて八ヶ月が経ち、売り上げが安定して来た俺は寮生活から独り暮らしに変えたばかりだった。
そ2007-09-22 01:39:00 -
15:
主◆LakuAXwmbU
その一言を俺に投げ掛けて、結局、彼女は笑顔は見せず、俺の笑顔も見ないで部屋へ消えた。
食えない女だ。
悔しい気持ちで一杯だった。
仮にも俺はホストだ。あいつを笑わせる、それがその日からの目標になった。2007-09-22 03:36:00 -
16:
主◆LakuAXwmbU
彼女が毎朝、洗濯機を回すのは分かっていたから、その時間を見計らってテラスで待っていた。
平日の朝の彼女はハーフパンツスーツスタイルで身を固め、ボーイッシュな雰囲気を漂わせていた。
店で良く目にするようなヒラヒラしたワンピースや露出したスタイルとは違ったファッションで目新しく見えた。
彼女自身も洋服の着こなしが上手く似合っている。2007-09-22 04:09:00 -
17:
主◆LakuAXwmbU
「おはよう」
声をかけると、溜め息と共に肩を落とし、彼女は俺の方を見た。
「単なる暇つぶしで話しかけるの?それとも何かの営業?」
彼女は、いぶかしげな目で俺の全身を見て更に言葉を続けた。2007-09-22 04:16:00 -
18:
主◆LakuAXwmbU
「ああ、ホストの営業か。興味ない」
彼女を店の客にしようとは少しも考えていなかったから、腹立たしく感じる言葉だった。
けれど、言い訳をしたとしても、彼女からしたら俺のいかにもホストですという外見は信用に値しないだろう。
「じゃ、暇つぶしって事でいいから話に付き合って」2007-09-22 05:49:00 -
19:
主◆LakuAXwmbU
ならば言い訳をせずに、目的も話さず、ただの話したがりやな人物を演じよう。
もっとも、笑わせたいとは言える相手ではないし、しらふで朝日の下で言うには恥ずかしいから言えなかった。
言ったとしても、彼女は、また嫌味な笑みをこぼして、小憎たらしい一言を吐き出しただろう。
「残念ながら出勤時間です」2007-09-22 05:59:00 -
20:
主◆LakuAXwmbU
彼女はくるりと背を向けて、右手をひらひらさせながら部屋に戻った。
聞き慣れた部屋を右往左往する足音も、ドアを激しく閉める音も、今日は苛立たしく思えない。
笑った方が可愛いよ、多分。
2007-09-22 06:08:00 -
21:
主◆LakuAXwmbU
(略)
空白2007-09-22 06:19:00 -
22:
主◆LakuAXwmbU
泥酔した日は、真っ先にベッドの中に潜り込んでいたから、彼女と会えなかったけれど、それ以外の日は毎日のように彼女に話しかけた。
彼女はいつも反応がないか、嫌味を言うくらいだった。
それでも良くなって来た。
接客じゃない会話、愚痴やくだらない話をしている一時が俺の息抜きになっていたから。2007-09-22 06:37:00 -
23:
主◆LakuAXwmbU
店では女の仕草や表情、そして言葉の裏を読んで、女が何を求めているのか考えながら会話をしている。
張りつめた緊張の糸はすぐに切れてしまいそうで、いつも体中の神経を使っていた。
だから駆け引きのない会話をしているだけで削れていった、神経が戻るような感じがした。2007-09-22 06:46:00 -
24:
主◆LakuAXwmbU
「台風が近いねんて。傘を持って出勤した方がいいで」
風が強く、彼女のんびり髪がばさばさ揺れていた。
「一号くんは頭を押さえて出勤した方がいいよ」
いつものニヤリとした笑みを浮かべ彼女は俺の頭の方を見た。2007-09-22 07:00:00