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1:
◆5EJ71eKlNQ
許せない人がいる。
幼かった私の平穏な日々な日々を壊したあいつが…
15年経った今でも憎い。2006-06-10 13:45:00 -
2:
◆5EJ71eKlNQ
「ゆうなちゃんの夢は何?」
優しく微笑みながら問いかける母。
「ゆう、ずっとママとパパとおるのが夢やねん☆」2006-06-10 17:55:00 -
3:
◆5EJ71eKlNQ
なぁ…おかん。あれからもう15年やな。。ゆう、ハタチなってんで?
2006-06-10 18:51:00 -
4:
◆5EJ71eKlNQ
ゆうの夢はもう二度と叶う事がない――。
母が死んだあの日を思うと今でも胸がはりさけそうになる。
憎しみだけがゆうを生かせてる。…もう終わらせていいかな。おかん。2006-06-10 18:53:00 -
5:
◆5EJ71eKlNQ
15年前の春だった。
私と母はリビングで昼寝をしていた。
『ピンポーン』インターホンが鳴った。2006-06-10 19:32:00 -
6:
◆5EJ71eKlNQ
母と女性が言い争っている声がリビングまで響いてきた。幼いながら嫌な気分になったのを覚えている…。
10分くらい経った。
目に涙を溜めた母が戻ってきた。2006-06-10 19:34:00 -
7:
◆5EJ71eKlNQ
その日から毎日女性は家を訪れた。母は女性をリビングにあげると、私に外で遊んでくるように言った。
そんな日が続いたある晩。父と母の言い争いが私の寝室まで響いてきた。
2006-06-10 19:37:00 -
8:
◆5EJ71eKlNQ
父は家に帰らなくなった。
「ママ−?パパ…今日も帰らへんの?」
「ゆうなチャン。パパ好き?」2006-06-10 19:39:00 -
9:
◆5EJ71eKlNQ
「うんっ」
「…そっか」
母はまた泣いた。2006-06-10 19:39:00 -
10:
◆5EJ71eKlNQ
父が帰らなくなって1週間が経った。
「ゆうなチャン。ママとお出かけしよっか」
2006-06-10 19:41:00 -
11:
◆5EJ71eKlNQ
略→なしです。
2006-06-10 19:41:00 -
12:
◆5EJ71eKlNQ
母に連れられて行ったのは祖父の家、母の実家。
「ゆうなちゃんよぉ来たねぇ。たかこ(母)もはよ入り」
おばあちゃんが出迎えてくれた。2006-06-10 19:53:00 -
13:
◆5EJ71eKlNQ
夜――。
「ゆうなちゃん、今日はおばあちゃんと寝ておいで」
母に言われるがまま、おばあちゃんの部屋で夜を過ごした。
2006-06-10 20:33:00 -
14:
◆5EJ71eKlNQ
目覚めると母は死んでいた。
睡眠薬を大量に飲んだ自殺だった。
祖父母は泣いていたが私は泣かなかった。母の死は受け止められるものではなかったから。2006-06-10 20:35:00 -
15:
◆5EJ71eKlNQ
遺書を発見したのは母の死から1週間が経った頃。
父と暮らす事になった私は幼稚園にも行かず、毎日母の部屋にいた―――。
2006-06-11 03:01:00 -
16:
◆5EJ71eKlNQ
私は『遺書』と書かれた封筒を、何故か誰にも言えず自分の部屋に隠していた。
1ヶ月後、父は自宅で首をつって死んだ。
『母の自殺』の責任から逃れるためだった。2006-06-11 03:04:00 -
17:
◆5EJ71eKlNQ
私も若干5歳で
「パパのせいでママは死んだ」と思っていた。
だから不思議と辛くなかった。2006-06-11 03:06:00 -
18:
◆5EJ71eKlNQ
中学1年生。
「お前の親ふたりとも自殺やろ?薬と首つりやったらお前は飛び降りやな」
こんな事を言われ、両親の死後はじめて泣いた。
何かが切れたように泣きじゃくった。2006-06-11 03:12:00 -
19:
◆5EJ71eKlNQ
その日はじめて『遺書』を読んだ。
封を開ける手がひどく震えていた。
2006-06-11 03:13:00 -
20:
◆5EJ71eKlNQ
【死を選んだ馬鹿な私をどうぞお許しください。このまま生きていても私は永井春美を憎み続けるでしょう。私はそんな自分に耐えきれなかった。ゆうなちゃん。ごめんね…ママが死を選ぶ事によって1番辛いのはあなたですね。
2006-06-11 03:20:00 -
21:
◆5EJ71eKlNQ
あなたの夢を叶えてあげる事はもう出来ないね。
あなたには幸せになってほしいな、ママの分まで。
お母さん、お父さん。今まで私をかわいがってくださって有難う。親不孝な娘を恥じてください。貴子】2006-06-11 03:23:00 -
22:
名無しさん
読んでます
2006-06-11 09:47:00 -
25:
◆5EJ71eKlNQ
遺書を読み終えた私は、よく言い表せない気持ちで胸がいっぱいになった。
【永井春美】
この名前は私の一生涯の苦となる。今でも憎い女…。2006-06-11 12:11:00 -
26:
◆5EJ71eKlNQ
無事に中学を卒業し、施設を出た。私は寮つきのキャバクラで働く事にした。
仕事に慣れてきた頃、香織おばさんの家を訪ねてみる事にした。
香織おばさんは、母の学生時代からの親友。何か知っているかもしれない…。2006-06-11 12:37:00 -
27:
◆5EJ71eKlNQ
香織おばさんと会うのは母の葬式以来、10年ぶりだった。
おばさんの家の前で、インターホンを鳴らせずに躊躇していた。
「あのぉ…何か御用でしょうか?」2006-06-11 12:40:00 -
28:
◆5EJ71eKlNQ
「…ぇえ!?もしかしてカナチャンじゃない??」
「はい…え〜っと。。どちら様でしょうか」
「キャー!久しぶり!ゆうなやで!」2006-06-11 12:44:00 -
29:
◆5EJ71eKlNQ
カナチャンはおばさんの娘さんで18歳。昔からよく遊んでいた友達だ。
10年ぶりに会うカナチャンに感激しながらおばさんに会いにきたと言った。
「おかぁさんに用事で来たんやぁ。どぉぞあがって」2006-06-11 12:49:00 -
30:
◆5EJ71eKlNQ
家にあがらせてもらうと、なんだか懐かしい気分になった。
「ゆうなちゃん…こんなに大きなって。今いくつ?」
そっと私の後ろから声をかけてきたおばさん。2006-06-11 12:57:00 -
31:
◆5EJ71eKlNQ
振り返るとおばさんは泣いていた。
「おばさん。お久しぶりです。ゆうなは16歳になりました。…今日。ご存知ですか?」
「もう16歳…早いね。今日は貴子の命日でしょ。朝からカナとお墓に行かせてもらったよ」2006-06-11 13:00:00 -
32:
◆5EJ71eKlNQ
そういえば昼、墓まいりに行ったら綺麗な花が供えられていた…。
リビングに通され、3人並んで話をした。過去の私。今の私。。全て話した。
私の過去は決して明るいモノではない。親戚中をたらい回しにされ、施設へ。2006-06-11 13:03:00 -
33:
◆5EJ71eKlNQ
「…そっか。ゆうなちゃん色々と苦労したんね…。」
「はい…。今日はおばさんに見てほしいモノがあって来たんです。」
私はおばさんの前に母の『遺書』を差し出した。
おばさんは静かにそれを読みだした。2006-06-11 16:04:00 -
34:
◆5EJ71eKlNQ
読み終えたおばさんの目から涙がこぼれ落ちた。
「貴子…」
「おばさん!永井春美って誰なん!?ママから何か聞いてないの!?」2006-06-11 16:48:00 -
35:
◆5EJ71eKlNQ
おばさんは教えてくれた。
永井春美は、母と香織おばさんと学生時代からいつも一緒にいた友達だということを。
学生の頃、父と母は春美の紹介で出会った。2006-06-11 16:51:00 -
36:
◆5EJ71eKlNQ
そして父と母は結婚し、私とゆう子供が出来た。幸せな家庭に見えたが…父と母が出会う前から、春美と父は……関係を持っていた。
私が5歳になるまでふたりの関係は続いていたそうだ。
そしてあの日。2006-06-11 16:54:00 -
37:
◆5EJ71eKlNQ
春美が初めて我が家に来た日。
「和也さんの子供ができた。貴子、和也さんと別れてちょうだい」
と母に言ったらしい。2006-06-11 16:56:00 -
38:
◆5EJ71eKlNQ
その時まで母は、
春美と父が良い仲だった…なんて知らなかった。
ずっと二人に騙されていた事を知った母は、嫉妬と憎しみで気が狂いそうだった。2006-06-11 16:58:00 -
39:
◆5EJ71eKlNQ
毎日、香織おばさんの家を訪れては
「どうしたらいいの」
と嘆き悲しんだ。2006-06-11 16:59:00 -
40:
◆5EJ71eKlNQ
そして母は…死を選んだ。
2006-06-11 17:02:00 -
41:
◆5EJ71eKlNQ
父を憎み、春美を憎み…私を残し――――死んだ。
「なあ…おばさん?永井春美の子供は…」
「そんなんいてへんかったんよ」2006-06-11 17:41:00 -
42:
◆5EJ71eKlNQ
「……………は?」
「嘘やってん。だいたいな、春美にはもう二十歳くらいになる息子さんいてるんよ。もちろん父親は和也さんじゃないよ」2006-06-11 21:47:00 -
43:
名無しさん
春美ひどい女やわ
完結まで頑張って書いて下さい2006-06-11 22:18:00 -
44:
◆5EJ71eKlNQ
44さんありがとうございます。
2006-06-12 13:47:00 -
45:
◆5EJ71eKlNQ
香織おばさんは、春美に会いに行ったそうだ。
「春美!あんたのせいで貴子は死んだんよ!お腹の子は絶対産むな」
「…貴子は自殺でしょ?何で私のせいになるの?意思が弱かったんよ。」2006-06-12 13:51:00 -
46:
◆5EJ71eKlNQ
そして春美は語った。
父に別れをつげられ、その腹いせに嫌がらせをした事を。
…もう涙は出なかった。人を殺したいと初めて思った。全ては春美の狂言から始まった両親の『死』という現実だけが冷たく私の脳裏に残った。2006-06-12 13:56:00 -
47:
◆5EJ71eKlNQ
私はおばさんに春美の居場所をたずねた。
「ゆうなちゃん、それは言えんよ。憎いんはわかるけどね…おばさんゆうなちゃんに犯罪おかさせたないんよ」
おばさんに謝り、私はまた来ますと言って帰った。2006-06-12 16:01:00 -
48:
◆5EJ71eKlNQ
寮に帰った私は、とにかく今日聞いた話の事で頭がいっぱいだった。
とても働けそうになくて、休みを頂いた。
そしてある人に電話をした。2006-06-12 16:02:00 -
49:
◆5EJ71eKlNQ
この人は私の指名客のひとり。つい最近店に来て悩み相談をされた。その相談とは
『妻が浮気している。探偵を使って調べさせた。これからどうしよう』
との事だ。2006-06-12 16:07:00 -
50:
◆5EJ71eKlNQ
「ある人について全てを調べて頂きたいんです。名前くらいしか分からないんですけど…」
「人探しか。出来ない事はないけど…一体なんでゆうなちゃんみたいに若い子が?」
「それは聞かないでください…。『永井春美』という女性を探して欲しいんです。」2006-06-12 16:34:00