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闇の中の心臓

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  • 1:

    夢魔

    鼓動が脈打つ。 激しい嘔吐。 フラッシュバック。 もうあれから3年。 後遺症はいまだ続く。 真っ白な壁が血で染まる。 血だらけの拳。

    2008-08-01 09:55:00
  • 111:

    夢魔

    この頃啓さんにはすでに何億もの資産があった。 年間に何億ものキャッシュフロー(純利益)があった。 夢魔はまだそこまでの資産は持ち合わせていない。 啓さんは人への思いやりの大切さを話し続けた。 だが夢魔にはキレイ事にしか聞こえない。 所詮金があるからこそ言えることなのだ。

    2009-03-09 06:18:00
  • 112:

    夢魔

    憎しみの力は過少評価される。 だが憎しみの感情はずっと夢魔の原動力だった。 いまさら生き方を変えるつもりはない。 キレイ事なんて吐き気がする。 所詮人間の性は悪。 啓さんとはこの日以来疎遠になっていった。 所詮夢魔とはベクトルが違うのだ。

    2009-03-09 06:24:00
  • 113:

    夢魔

    夢魔が興味があるのは啓さんの金だけだった。 夢魔にとっては啓さんは利用価値があった。 夢魔は啓さんの利用方法に日々頭を巡らせた。 金のためには手段は選ばない。

    2009-03-09 06:28:00
  • 114:

    夢魔

    担保は土地や物件だった。 周りの人間は利息の回収にやっきになっていたが、夢魔にとっては利息を回収できないほうが都合がよかった。 抵当流れ(借金のカタに押さえられた)の物件をかなりの安値で買い付けることができるからだ。

    2009-03-09 06:37:00
  • 115:

    夢魔

    夢魔はまたたく間に多額の資産を築きあげていった。 まるで何かに操れているかのように日々を走り抜けた。 信じられるものは金だけだった。 プルルルル。 プルルルル。 涼から着信が鳴った。

    2009-03-09 06:50:00
  • 116:

    夢魔

    夢魔と涼は久しぶりの再会を果たした。 涼の目は相変わらず澄み渡っていた。 2人はお互いのことを話し合った。 いまでは涼は3件のホストクラブを束ねるオーナーだった。 従業員への感謝の気持ち。 周りの人間の支え。 優しさ。 つらいときもそれがあったから乗り越えてこられた。 涼は優しい目でそう言った。

    2009-03-09 06:55:00
  • 117:

    夢魔

    夢魔は吐き気が止まらなかった。 夢魔の知っている涼はもうそこにはいなかった。 暴力、略奪、恨み、憎しみ。 それが夢魔と涼の共通点だった。 気の合う仲間と幸せを分かち合いたい。 涼は目を輝かせながら夢中に話した。 夢魔は裏切りを感じた。

    2009-03-09 07:01:00
  • 118:

    夢魔

    ちょっとしたことから2人は公論になった。 涼は「夢魔はかわいそうな奴やな」と言った。 夢魔の中に何かが切れた。 空白の脳に亀裂が入る。 血液が逆流していく。 止まらない喉の乾き。 気が付けば夢魔は涼を殴りつけていた。 懐かしい血の匂い。 なぜか笑いが止まらない。

    2009-03-09 07:08:00
  • 119:

    夢魔

    涼には夢魔を障害で訴えることも警察に売ることもできた。 だが涼は何もしなかった。 夢魔は空虚な時間の中で眠れない日々が続いた。 どうして涼を殴ってしまったのだろう? 夢魔は何日も寝ずに食わずに塞ぎこんだ。 やめていた薬に手を伸ばした。 金なら腐るほどあった。 毎日のように夢魔の周りには女が群がってきた。 何不自由ない生活。 夢魔は朦朧とする意識の中で部屋の窓からネオン街の光を見下ろしていた。

    2009-03-09 07:19:00
  • 120:

    夢魔

    気が付けば夢魔はベランダの柵に片足をかけていた。 生きることは苦痛を伴う。 死は苦痛から解放してくれる。

    2009-03-09 07:21:00
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