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(20)
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1:
◆9B1M/nEIPs
パソコンを立ち上げ、ネットを開く。お気に入りから「夜遊び掲示板」を選び、今日も小説を読みふける。
飽きたのか、ネタが尽きたのか、途中で書かなくなってしまう作者が多い中、既に完結されている話を選び読んでいた。
中でも、『朔◆SakU1234』という作者が好きだった。
2008-10-18 17:01:00 -
2:
◆9B1M/nEIPs
朔の書く小説は、非現実的なものだった。つまり、創作小説というもの。
事実だと称して書かれた小説も、多かれ少なかれ大袈裟な部分もあるだろうが、朔の書くものは誰がどう見ても創作だった。
夜遊び掲示板の小説板では、ホストだの風俗だのと、所謂『夜の仕事』に関する話が多い。しかし、朔はその様な話は一切書いていない様だった。しかも、決まってBad Endで終わる。
「朔は病んでるんだろうな、きっと」と思いながらも、部屋に閉じこもってパソコンを見てるだけの私にとっては心地良かった。2008-10-18 17:06:00 -
3:
◆9B1M/nEIPs
他にも、朔のスレッドにはルールがある。
絶対に朔は書き込みに対するレスや、雑談はしないのだ。只々、淡々と小説を書き進める。
締めの言葉である『−−−−完結−−−−』と書くと、そのスレッドに現れることはない。
そういうクールというか、淡白さも気に入っていた。2008-10-18 17:08:00 -
4:
もう一つ。
書き込みに対して全くレスをしない朔への批判は酷いものだった。しかし、スレッドは削除されていない様子だった。
朔が書いた小説は2005年で止まっている。3年も前のものが削除されていないと推測される理由は、朔のスレッドタイトルは決まって数字だったからだ。
数字が続いてるということは削除されなかったんであろうという単純な憶測だった。因みにその数字は小説内容とは全く関係ない。
2008-10-18 17:10:00 -
6:
今日も小説板を読んでいた。
リロードすると(20)というスレッドがあった。
「まさかっ!!」と、すぐさまクリックした。
1 名前:朔◆SakU1234:08/10/18 17:012008-10-18 17:14:00 -
7:
ウ゛ーッ・・・ウ゛ーッ・・・ウ゛ーッ・・・
「はい?」
「今、近くにいるから出て来い」
私は着替えて、近所で待つ玲の車に乗った。家に閉じこもりだしてからも、唯一会う男だ。
実家が美容室で、人の髪を触るのが好きで、誰に会うわけでもない私の髪を切ったり染めたりする。美容師の免許はないらしく、仕事は違うことをしてると聞いた。2008-10-18 17:17:00 -
8:
「家くる?」
別にいやらしい誘いではなく、玲が家に誘ってくる理由は私の髪を切るからだった。
私は切っても切らなくても何でも良いが、断る理由もないので玲の好きな様にしてもらっている。
「今日は巻き髪にして、化粧もしてやる!」と、私の返事も待たずに車を出した。2008-10-18 17:20:00 -
9:
玲が好き勝手に私をいじっている間に朔の話をした。今までも朔については話をしていた。
「お前、本間パソコン好きやな」と笑われたが、朔との一方的な再会が嬉しくて玲にいかに朔が素敵かを力説した。新しいスレッドでは、朔は「書きます」と1レス目に記し、まだ続きがなかったので、気になって仕方ないということも話した。
玲は一定の距離を置いてくれる。
私が話し出さない限り近況とかは聞いてこないし、だからといって自分の話ばかりするわけでもない。それが玲とは会える理由だった。
2008-10-18 17:22:00 -
10:
一通り玲の納得のいく出来になったらしく「これやる」と流行のワンピースとブーツを渡された。私が玲から貰ったものに着替えると、「行くぞ!」と車に促された。
私は、おそらく普段人との会話であるだろう質問をしない。「どこに行くの?」「何してるの?」といった類のものである。
私が玲に投げかけるクエスチョンマークは「それで?」ぐらいだ。2008-10-18 17:23:00