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君に幸あれ

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  • 1:

    今日は、なにをがんばろうかな…

    だって、がんばったらがんばったぶん愛してくれるんだよ?

    2008-11-11 16:42:00
  • 101:

    ひとりには慣れてるから…
    ママ、待ってるよ…!

    ━━━━━━━
    「それは何の絵?」

    2009-05-22 02:34:00
  • 102:

    まだ幼く、けれど端正な顔立ちの少女は熱心に何かを描いている。
    ふっと一人、みんなから離れている少女に気づいた紗耶香は声をかけた。

    「えっちゃんの花なの!」
    少女は紗耶香を見上げ、あどけない笑顔で答えた。

    2009-05-22 02:37:00
  • 103:

    それは暗い穴の底にぽつんと咲く花の絵だった。
    真っ黒な背景にグレーの色の花。
    「えっちゃんね、いつもひとりなの」
    その言葉を聞いて、そういえばこの少女を良く思わない子供達が多いことを思い出した。
    「学校でもみんなここと一緒で、えっちゃん嫌われ者みたい」

    2009-05-25 16:36:00
  • 104:

    ──妬み。からくるいじめでもあるのだろう。
    この少女は、大人から見ても綺麗な顔をしている。

    紗耶香はふとこの少女がここに来たときのことを思い出した。
    母親は、妹を抱いたままこの少女の手を離した。

    2009-05-25 16:39:00
  • 105:

    種違いの妹、そして少女に幾多の傷を与えた新しい父親、それらから逃げるように新興宗教にすがった母親。
    この少女がどこまで知るかは分からない。
    だが自分が必要のない人間なのだとは、理解していたはずだった。
    それを証明するように少女は呟いた。
    「慣れてるからいいんだ。えっちゃん、おうちでもひとりだったもの」

    2009-05-25 16:49:00
  • 106:

    それでも少女が、いつか母親が迎えに来てくれると信じ待ち続けていることを紗耶香は知っている。
    そして、母親は面会にこそ来るものの、少女を再び家庭に迎えいれる日はこないだろうことも。

    「えっちゃんは優しい子よ。私は大好きよ」
    紗耶香は微笑んだ。

    2009-05-25 17:09:00
  • 107:

    少女は顔を明るくさせた。
    「ほんとっ?そんなこと言ってくれるの先生だけだよっえっちゃん嬉しい!」

    紗耶香は胸が痛んだ。
    慰め?同情?わからない。憐憫の思いがあったのは確かだった。

    2009-05-25 17:12:00
  • 108:

    その言葉を少女は素直に喜んだ。
    紗耶香を信じている。

    こんなに小さな体で、周りに誰もいない訳ではないのにひとりで生きてきた少女。
    そうそれはまるで、地に開いた穴に落ちたかのように。
    上には笑いながら生きる人間がいる。

    2009-05-25 17:15:00
  • 109:

    この先少女がその穴からはい上がれる日はこないかも知れない。
    いや、これからも落ちたままでひとり花を咲かせていくことを紗耶香は知っている。
    それでも素直な心を忘れずにいれるかは…──

    ━━━━━━━━━君に幸あれ。

    2009-05-25 17:18:00
  • 110:


    最終話「紗耶香」

    ━━━━━━━━

    2009-05-25 17:20:00
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