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君に幸あれ

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  • 1:

    今日は、なにをがんばろうかな…

    だって、がんばったらがんばったぶん愛してくれるんだよ?

    2008-11-11 16:42:00
  • 21:


    3話「大きな人形」

    ━━━━━━━━━━━

    2008-11-11 21:29:00
  • 22:

    「昨日もね、お父さん、お布団の中入ってきたんだ。」
    震える少女の肩は、細く白い。
    「お母さんは、きっと……知らないと思う」
    それ以上語らせぬよう、紗弥加は明るく微笑んだ。
    「今日は、ここでお姉さんと一緒に寝ようか?」

    2008-11-11 21:35:00
  • 23:

    「…いいの?」
    そう呟く少女はまだまだあどけなく、しかし影は濃かった。
    「手つないで寝てもいい?」
    幼すぎた少女の躰は、もう純粋と呼べないのだろうか。
    心にのしかかる影が汚した訳ではない。

    2008-11-11 21:39:00
  • 24:

    なぜ、この少女の心に影が残らなくてはいけなかった?
    なぜ、この世にこの少女が残らなくてはいけなかったのか。

    お母さんは、本当に知らなかったと思っている訳ではないことを紗弥加は知っている。
    この世を去らなくてはならなかったのは、父親ではなかったか。

    2008-11-11 21:43:00
  • 25:

    ━━━━━━━━━
    痛い。痛いよ。痛い痛い痛いよ。
    お父さんのおもちゃなの?人形なんかじゃないよ…痛い。
    …お母さんはどこ?
    お母さん……?

    2008-11-11 21:48:00
  • 26:

    お母さん、お母さん…お母さん行かないで……!!

    ━━━━━━━━━━

    「おかぁさぁああん!!」

    2008-11-11 21:52:00
  • 27:

    見上げた少女を上から睨めつけるように、母親はぶら下がっていた。
    まるで大きな人形かのようだった。
    愛すべきものを捨てた、というより愛すべきものに裏切られたんだと、その空虚な眼は語っていた。

    少女は、ただいつまでも見上げていた。

    2008-11-11 22:00:00
  • 28:


    「…やっぱりお母さんはね、」
    真夜中、少女は目覚めたのかいきなり口を開いた。

    「知らなかったと思う。」

    2008-11-11 22:05:00
  • 29:

    紗弥加は、ただ頭を撫でてやるしかできなかった。
    それは母に対する愛情なのか、人形と化した姿でさえも母であるのなら、なぜぬくもりを持つ父親は曲がった愛情しかなかったのか。
    それとも、父親のそれは曲がってなどいなかったのか。

    「お父さんもね、優しいんだよ」

    2008-11-11 22:09:00
  • 30:

    この先、父親以上に誰かを愛することがこの少女にできるのだろうか。
    母親を、父親を憎まず誰を憎むのか。
    ただ自分の心に影を背負わし続ける少女が、紗弥加には見える。

    ━━━━━━━━君に幸あれ。

    2008-11-11 22:14:00
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