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-華物語-

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  • 1:

    五つの朱い糸で綴じられた物語

    2008-11-20 00:31:00
  • 33:

    祖母の葬儀は祖父の時と同じように身内だけの葬儀となった。気付けばその日は祖父の葬儀から丁度一ヶ月が経った日だった。私の耳について離れない、祖母の言葉。はっきりとは聞こえなかったけれど、確かに祖母は"きょうだいがいる"と言っていた。そして"私のためと思って言わなかった"とも。

    2008-12-18 18:31:00
  • 34:

    祖父母が住んでいた家はかなり老朽化が進んでいた為、家具を引き払って取り壊すことになった。土地の権利は長男である叔父に渡り、私は一緒に暮らした年月が長かったことから家財道具等の整理を頼まれた。狭い家だったが歴史が長い分、色々な物が残っていた。畑仕事に使うものから、正月の餅つき道具、桐の箪笥や古い文箱まで…。

    2008-12-18 18:40:00
  • 35:

    私は勿体ないと思いながらも、二人が大事にしていた六段の引き出し以外は全て処分した。祖父母は大事なものや大切にしなければいけないものを全てこの引き出しに仕舞っていた。引き出しを開けると、印鑑や通帳、土地の書類や電化製品の保証書などあらゆるものが出てきた。何でも大事にとっておく二人だったから、ここに入れておけば忘れないと思ったのだろうー…。私はそんなことを考えながらその引き出しを自分のマンションの部屋に持って帰った。

    2008-12-18 18:53:00
  • 36:

    身の回りの事が全て片付き、心の整理もついたので私は約二ヶ月ぶりにバイト先の本屋へと出向いた。店主は「急な事で大変だっただろう」と労を労ってくれた。そしてふと、こんな事を言い出した。
    「毎週JOKERを買いに来てた子がいてただろ?あの子、桜ちゃんのこと気にしてたよ。いつもレジに立ってた子辞めたんですか?って。」

    2008-12-18 19:03:00
  • 37:

    私は不思議に思った。単なる本屋の一店員を何故彼が気にかけるんだろう?単なる好奇心?心配?それとも…同じ指輪をしているから?私は忘れかけていた彼の事を思い出し、右手薬指に嵌めた指輪に目をやった。煙草の棚を見ると、JOKERは順調に減っているらしく、きちんと補充されている。それは彼が毎週金曜日に欠かさず煙草を買いに来ている何よりの証拠だった。

    2008-12-18 19:18:00
  • 38:

    次の日から私はこれまで通り仕事に出た。店の掃除、商品の陳列、レジ打ち…。また忙しい日々に戻ったが、そうすることで両親が死んだ時と同じように祖父母の死も時間をかけて受け入れられると思った。唯一気がかりだったのは祖母が残した言葉だったが、私はその言葉をいまいち信用できないでいた。私は生まれた時からずっと一人っ子として育ったし、"きょうだい"がいた記憶は少しもないのだ。

    2008-12-19 00:53:00
  • 39:

    その週の金曜日、彼は煙草を買いに現れなかった。店主の話によると、彼が私が店を辞めたかどうか聞いたのは先週の事で、詳しい事情は言っていないが都合で休んでいると伝えたところ、彼はそうですかと一言だけ言ってJOKERを買い、店を出たらしい。それまでは今までと同じ、金曜日の夕方に煙草を買いに来ていたそうだ。

    2008-12-19 01:07:00
  • 40:

    「いつも店を出て駅の方に歩いていたから、この辺に住んでる人じゃないと思うよ。いつも小綺麗な恰好してるし、雰囲気からしてこの辺の人じゃないね。」
    店主もJOKERを買うお客さんが珍しいらしく、ひそかに観察していたようだ。ますます彼に対する不思議な感覚が私の中で募っていた。

    2008-12-19 01:08:00
  • 41:

    ある日のこと。私はいつも通り本屋の二階にある休憩室で昼食を取っていた。休憩は一人ずつなので暇つぶしにいつも本を持ってくるのだが、今朝は珍しく慌てて家を出たのでどうやら忘れてしまったらしい。早く持ち場に戻っても支障はないが、時間は平日の昼間。お客さんが一番少ない時間帯なのだ。店に出るのも手持ち無沙汰なので暇を潰せそうなものを探していると、部屋の隅に積まれている雑誌が目に入った。

    2008-12-19 01:28:00
  • 42:

    ここに積まれている雑誌は時期過ぎの雑誌で店頭に出せない為、自由に読むことが許されていた。普段から雑誌は読まないので何となく気が進まなかったが、今回は仕方ないと思い、一番上にあったファッション誌を手に取った。

    2008-12-19 01:33:00
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