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守りびと。

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  • 1:


    3年前…

    2008-12-20 20:06:00
  • 2:

    『アホ言うなや』    裕里は呆れた顔で椅子から立ち上がり自分の部屋に向かっていった。     『本気やもん…』    本気でそう思っているのに1歳足りないだけで働く事も出来ない。      家もきっともうすぐ立ち退きになってしまうはず。 これ以上両親に苦労をさせたくなかった。                 『明日言うてみよ…』  ある1つの事を前から考えてた。         怒られる事はわかってた。でもそうでもしな…。

    2008-12-20 20:28:00
  • 3:

    『それだけはあかん!!』部屋の中に怒鳴り声が響く            『仕方ないやん!』   『絶対あかん!』    父さんは近くにあったティッシュの箱を払いのけた。  『私は女やし結婚すれば働く事も無くなるやろし学歴無くてもいけるって!』 『そんなんさせるか!!』普段怒る事の無い父さんが顔を赤くして目に涙を浮かべながら私を睨んだ。

    2008-12-20 20:33:00
  • 4:

    『俺のせいでお前が学校に行かれへんなんて絶対にあったらあかん事やねん…。俺が一日中働いて梓も裕里も学校に行かせる!   母さんも働かんでええように俺が全部背負うから! 絶対にこれ以上の苦労はさせへんて誓うから…』              最後は机に涙を落として身体中を震わせて力なく頭を下に向けた。

    2008-12-20 20:38:00
  • 5:

    『何を根拠に言えるん!?もしかしたら裕里が受験する頃にはもっと家がひどくなってるかもしらんやん!今より幸せな未来もあるかもやけどそれでも今はお金ないねやろ!?     私が学校に行くお金を家庭に出した方が絶対に良いに決まってるやんか!!! 父さんと裕里はこのままお金無くなって母さんにも苦労させて家庭が崩れるんを平気で見れるわけ!?  私には絶対無理ゃねん! 絶対学校には行かへんから!絶対やから!』                私は涙を止める方法もわからず声を枯らし泣いた。 外には人がいるにも関わらず家からとびだして近くの公園へと走っていた。

    2008-12-20 20:52:00
  • 6:

    『大丈夫っすか?』   公園のベンチに座っていると頭の上から声が聞えた。『これ…』       私が何も言わずに下を向いたままなのをみて私の肩にコートをかけてくれた。 『風邪ひきますよ?』  とても心地いい柔らかい声だった。        『帰れます?』     力なくうなずいた私のみて何を思ったのか私の腕を掴んで無理やり立ち上がらせた。

    2008-12-20 20:56:00
  • 7:

    『うちへどーぞ!!!』 力一杯私の腕を引っ張って公園から出て行こうとする            『いらないですっ!』  身の危険を感じて腕を振りほどいた。       『これも返します!』  コートを脱ごうとすると襟を捕まれて服を脱げない様にされた。

    2008-12-20 20:59:00
  • 8:

    『叫びます?』     私がやっと顔をあげて彼の顔を見ると私が思っている様な怪しい人じゃ無かった            茶髪で私よりも小さい人。顔もかなり幼かった。  『なら泣くな』     今までの優しい声じゃなくて少し低い声だった。  『助けて欲しいから泣くんじゃないんすか?    しんどくてたまらないから1人で泣いてんじゃないんですか?助けがいらないのならどれだけ辛くても泣いちゃいけない。     それとも自分は不幸な人間なんだと周りの人に知らせたいんですか?』                冷たい目で私の目を直視する。          私が首を振ると腕の力が抜けてもう一度優しくコートを肩にかけてくれた。              『……………』     彼は何も言わずにその場を去って行った。     長袖のTシャツに緑のマフラーを巻いて歩く後ろ姿を彼が見えなくなるまで見送った。

    2008-12-20 21:09:00
  • 9:

    気持ちが落ち着いたのは
    8時を過ぎた頃だった。 公園の時計が音楽を奏でる音ではっと我に返った。             ポケットの中の携帯には父さんからの着信が10件以上入っていた。     心配性な父さんが私と裕里に持たせた1台の携帯。 (心配してんのかな…)
    ベンチから立ち上がりふらふらとした足取りで公園を後にした。

    2008-12-20 22:59:00
  • 10:

    『どこおってんぼけ!』 家に入るなり裕里のどなり声が響いた。      裕里の後ろからしかめっ面をした母さんが歩いてきた            『どこおったん』    母さんが静かな口を開く。『ごめん…』      『心配性したんやで』  うつむく私を抱き締めてくれるのはいつだって母さんやった。        『はよ入れや』     裕里は私に目をあわせる事無く自分の部屋へと帰っていった。

    2008-12-20 23:04:00
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