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おかみさん

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  • 1:

    真由子◆ifAqoPM8ck

    ある相撲部屋のおかみさん真由子の話

    2009-02-11 14:10:00
  • 11:

    真由子◆ifAqoPM8ck

    「あっ、はい。あっ、でも稽古見学って、稽古を見学できるんですか?」
    わたしは少し同様していた。

    「はい!稽古見学は通常みなさん見学できるんですが、後援会の方はあとのちゃんこも召し上がっていただいたり…、もし良かったらちゃんこもいかがかと。相撲観戦の前に見学されたらルールわからなくても楽しいと思います」

    と言われた。
    瀬戸桜関は相撲界でか期待の力士で甘いマスクに鍛えられた体格、そして繰り出される技の宝庫、かなりの人気力士、いやアイドル的存在だと父に聞かされた。

    その瀬戸桜関から直々に部屋に呼んでいただけるとは、ありがたい話である。

    2009-02-12 03:09:00
  • 12:

    真由子◆ifAqoPM8ck

    「わたしのような素人が見学させていただいていいんでしょうか…?」
    「ええ!是非お待ちしています!」
    「わかりました」

    電話を切った。
    父は勝手に番号を教えていたのだ。父の魂胆はきっと、相撲をスポーツと認めていない娘に相撲を好きになってもらって

    自分と一緒に応援したい。多分そうだろう…と思った。

    でも人気力士を使ってまでやるなんて…

    2009-02-12 03:15:00
  • 13:

    真由子◆ifAqoPM8ck

    約束の日

    朝早くわたしは両国にある部屋に向かった。

    7時前なのにすでにたくさんの一般人が見学をしていた。

    意外に若い女性も多かった。おそらく瀬戸桜関のファンだろうと思った。
    わたしは一緒に行ってくれる人がいなかったので一人で来ていた。

    はじめは若手力士が稽古をしていた。
    シコを踏んだり鉄砲をしたり…

    このシコも鉄砲もその時はわけもわからず見ていた。

    しばらくすると関取たちが現れた。廻しの色が違うのですぐにわかった。
    その中でもオーラを放っていたのは

    瀬戸桜関だった。

    2009-02-12 03:25:00
  • 14:

    真由子◆ifAqoPM8ck

    わたしの周りの若い女の子たちからどよめきが起こった。

    やっぱりみんな瀬戸桜関のファンだった。

    居酒屋で逢った瀬戸桜関とはまた違って、眉間にシワを寄せぶつかり稽古を関取としていた。あんなに穏やかで優しかった瀬戸桜関が勇ましく見えた。

    髷はだんだんボサボサになってきて、ぶつかる時の音は凄まじく、骨が折れているのではないかと思うくらいだった。

    2009-02-12 04:00:00
  • 15:

    真由子◆ifAqoPM8ck

    居酒屋で逢ったときもそうだったが
    相撲はダサいと思っていた自分が恥ずかしくなった。こんなにかっこいいとは夢にも思わなかった。

    これは紛れもなくスポーツだ、格闘技だと思った。

    一人一人の真剣な表情はきっとテレビでは伝わらない。

    数時間稽古は続き、ようやく終わった。

    見学していた人たちはパラパラと帰る。若い女の子たちは部屋の外で出待ち?をするようだった。

    わたしはどうすればいいのかわからずにいたら、普通の服を来た青年がそばまでやってきて

    「ちゃんこの用意をしておりますのであちらから奧のお部屋へどうぞ」と言われた。

    きっと瀬戸桜関が呼んでくれたのだろうと思い

    「ありがとうございます」と言い、若い女の子たちを尻目に奧の部屋へ入った。

    2009-02-12 04:08:00
  • 16:

    真由子◆ifAqoPM8ck

    「短大を卒業したと聞いたが、立派なお嬢さんじゃないか〜ハッハッハッ!」
    「わたしが稽古見学に来ることを父から聞いていたんですか?」

    「お父様と瀬戸桜関の両方から聞いていたよ。初稽古見学はどうだったかな?」

    「感動しました!テレビでしか見たことがなかったので直に見れて鳥肌が立ちました!」

    「そうだろう。中でも瀬戸桜関は今期待の力士だからな。今は関脇だが、次の場所で成績が良ければ大関昇進も夢じゃないんだ」


    それは知らなかった。

    2009-02-12 04:21:00
  • 17:

    真由子◆ifAqoPM8ck

    「瀬戸桜は早くに両親を亡くして、中学を卒業しすぐに入門した。東京では真由子君のお父様がいつも可愛がっていたよ。瀬戸桜もまるでお父さんのように…そこまで言うと大袈裟だが慕っているよ」

    それも知らなかった。

    そんなに父と瀬戸桜関が親子のように仲がいいなんて…
    父にしたらずっと応援してきた力士が大関になったら天にも昇る気持ちなんだろうな、いや、きっと娘のわたしなんかどうでもよくなるかもしれない

    わたしは一人で想像しながら笑っていた。

    ちゃんこまでしばらく時間があったので、永田会長から部屋のことや父のことや瀬戸桜関のことなどを聞いていた。

    会長は嬉しそうにひたすら喋ってくれた。

    2009-02-12 04:28:00
  • 18:

    真由子◆ifAqoPM8ck

    ちゃんこ番をしていた力士がちゃんこの用意をしていた。
    ちゃんこ番でない力士は風呂に入って各々上がってきた。

    しかし、若手力士は座ろうとしない。

    やがて関取衆と親方が席についた。若手力士たちは関取衆と親方の後ろに立ってご飯をついだりしている。

    ちゃんこを食べる順番にも上下関係があるようだ。

    わたしは、瀬戸桜関と親方の近くに座らされた。

    2009-02-13 03:18:00
  • 19:

    真由子◆ifAqoPM8ck

    親方は三人いたが、部屋の一番偉い親方は物静かな人だった。
    名大関と呼ばれ横綱まであと少しというところで怪我が悪化し引退したのだという。

    他の親方たちは厳しそうだった。

    いずれも名力士だったらしい。

    「ちゃんこのお味はどうですか?」と瀬戸桜関が聞いてきた。

    わたしはまわりをキョロキョロしていてまだちゃんこをちゃんと味わってないことに気付き、あわててほうばる。

    「とっても美味しいです。意外にあっさりしていてヘルシーだし何杯でも食べれそうです」とニコニコしながら言った。

    2009-02-13 03:23:00
  • 20:

    真由子◆ifAqoPM8ck

    ちゃんこは終始和やかだった。

    食べ終わると、後援会会長と一緒に外へ出た。

    「今度は国技館で逢いましょう」と会長に言われ別れた。

    すると、すぐわたしの携帯に電話がかかってきた。瀬戸桜関だった。

    「真由子さん、瀬戸桜です。真由子さん、今日急いでますか?お時間ありますか?」と聞かれた。

    「いえ、特に用事はありませんよ」と答えると

    「すぐ近くに喫茶店があるんでそこで待っててもらえませんか?すぐ行きます」と言われた。

    …はい…と答えて電話を切った。

    びっくりした。何か話でもあるんだろうかと思い、わたしは喫茶店で待つことにした。

    5分もしないうちに瀬戸桜関が来た。

    瀬戸桜関はわたしの目の前に座り
    アイスコーヒーをたのんだ。

    2009-02-13 03:31:00
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