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おかみさん

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  • 1:

    真由子◆ifAqoPM8ck

    ある相撲部屋のおかみさん真由子の話

    2009-02-11 14:10:00
  • 8:

    真由子◆ifAqoPM8ck

    「真由子は相撲観に行ったことないよな!今度国技館に行ってみないか?」

    そう言えばない…野球は好きでマリンスタジアムはよく行くが
    国技館はテレビでしか見たことがない。

    「でもルールもわからないし観に行って大丈夫なもんなんですか?」とわたしは瀬戸桜関に訊ねてみた。

    「いや意外と初めて観に来られる方も多いですよ。大丈夫です」
    と瀬戸桜関は微笑んだ。

    微笑んだ顔も素敵だった。

    2009-02-11 21:58:00
  • 9:

    真由子◆ifAqoPM8ck

    「じゃあ今度是非観にいきます」とわたしも微笑み返しをした。

    「わしが連れて行ってやるよ。娘と相撲観戦したかったんだよな!楽しみだな〜」と言いながら父はビールをグイっと飲み干した。

    宴は数時間に及んだ。瀬戸桜関の付き人も父に気を遣いながら食べたり飲んだり…しかし食べる料も飲む料も半端ない。

    居酒屋とは言えこの店は安くはない、そしてこの人数しかも力士三名…注文も半端なかった。

    宴は終わり、父が会計を済ます。

    表に出ると力士三名が「ごっちゃんです」と勢いよく言った。

    2009-02-11 22:10:00
  • 10:

    真由子◆ifAqoPM8ck

    その日は深々と挨拶をして別れたのだが

    数日後、わたしの携帯に知らない番号から電話がかかってきた

    「はい?もしもし?」
    「こないだはどうも、瀬戸桜です。ご無沙汰しています」
    ……
    なんと、瀬戸桜関だった!
    だけどなぜわたしの番号を知っているのか?

    「お父様に真由子さんを稽古見学に呼んでやってほしいと頼まれまして…」

    2009-02-12 03:02:00
  • 11:

    真由子◆ifAqoPM8ck

    「あっ、はい。あっ、でも稽古見学って、稽古を見学できるんですか?」
    わたしは少し同様していた。

    「はい!稽古見学は通常みなさん見学できるんですが、後援会の方はあとのちゃんこも召し上がっていただいたり…、もし良かったらちゃんこもいかがかと。相撲観戦の前に見学されたらルールわからなくても楽しいと思います」

    と言われた。
    瀬戸桜関は相撲界でか期待の力士で甘いマスクに鍛えられた体格、そして繰り出される技の宝庫、かなりの人気力士、いやアイドル的存在だと父に聞かされた。

    その瀬戸桜関から直々に部屋に呼んでいただけるとは、ありがたい話である。

    2009-02-12 03:09:00
  • 12:

    真由子◆ifAqoPM8ck

    「わたしのような素人が見学させていただいていいんでしょうか…?」
    「ええ!是非お待ちしています!」
    「わかりました」

    電話を切った。
    父は勝手に番号を教えていたのだ。父の魂胆はきっと、相撲をスポーツと認めていない娘に相撲を好きになってもらって

    自分と一緒に応援したい。多分そうだろう…と思った。

    でも人気力士を使ってまでやるなんて…

    2009-02-12 03:15:00
  • 13:

    真由子◆ifAqoPM8ck

    約束の日

    朝早くわたしは両国にある部屋に向かった。

    7時前なのにすでにたくさんの一般人が見学をしていた。

    意外に若い女性も多かった。おそらく瀬戸桜関のファンだろうと思った。
    わたしは一緒に行ってくれる人がいなかったので一人で来ていた。

    はじめは若手力士が稽古をしていた。
    シコを踏んだり鉄砲をしたり…

    このシコも鉄砲もその時はわけもわからず見ていた。

    しばらくすると関取たちが現れた。廻しの色が違うのですぐにわかった。
    その中でもオーラを放っていたのは

    瀬戸桜関だった。

    2009-02-12 03:25:00
  • 14:

    真由子◆ifAqoPM8ck

    わたしの周りの若い女の子たちからどよめきが起こった。

    やっぱりみんな瀬戸桜関のファンだった。

    居酒屋で逢った瀬戸桜関とはまた違って、眉間にシワを寄せぶつかり稽古を関取としていた。あんなに穏やかで優しかった瀬戸桜関が勇ましく見えた。

    髷はだんだんボサボサになってきて、ぶつかる時の音は凄まじく、骨が折れているのではないかと思うくらいだった。

    2009-02-12 04:00:00
  • 15:

    真由子◆ifAqoPM8ck

    居酒屋で逢ったときもそうだったが
    相撲はダサいと思っていた自分が恥ずかしくなった。こんなにかっこいいとは夢にも思わなかった。

    これは紛れもなくスポーツだ、格闘技だと思った。

    一人一人の真剣な表情はきっとテレビでは伝わらない。

    数時間稽古は続き、ようやく終わった。

    見学していた人たちはパラパラと帰る。若い女の子たちは部屋の外で出待ち?をするようだった。

    わたしはどうすればいいのかわからずにいたら、普通の服を来た青年がそばまでやってきて

    「ちゃんこの用意をしておりますのであちらから奧のお部屋へどうぞ」と言われた。

    きっと瀬戸桜関が呼んでくれたのだろうと思い

    「ありがとうございます」と言い、若い女の子たちを尻目に奧の部屋へ入った。

    2009-02-12 04:08:00
  • 16:

    真由子◆ifAqoPM8ck

    「短大を卒業したと聞いたが、立派なお嬢さんじゃないか〜ハッハッハッ!」
    「わたしが稽古見学に来ることを父から聞いていたんですか?」

    「お父様と瀬戸桜関の両方から聞いていたよ。初稽古見学はどうだったかな?」

    「感動しました!テレビでしか見たことがなかったので直に見れて鳥肌が立ちました!」

    「そうだろう。中でも瀬戸桜関は今期待の力士だからな。今は関脇だが、次の場所で成績が良ければ大関昇進も夢じゃないんだ」


    それは知らなかった。

    2009-02-12 04:21:00
  • 17:

    真由子◆ifAqoPM8ck

    「瀬戸桜は早くに両親を亡くして、中学を卒業しすぐに入門した。東京では真由子君のお父様がいつも可愛がっていたよ。瀬戸桜もまるでお父さんのように…そこまで言うと大袈裟だが慕っているよ」

    それも知らなかった。

    そんなに父と瀬戸桜関が親子のように仲がいいなんて…
    父にしたらずっと応援してきた力士が大関になったら天にも昇る気持ちなんだろうな、いや、きっと娘のわたしなんかどうでもよくなるかもしれない

    わたしは一人で想像しながら笑っていた。

    ちゃんこまでしばらく時間があったので、永田会長から部屋のことや父のことや瀬戸桜関のことなどを聞いていた。

    会長は嬉しそうにひたすら喋ってくれた。

    2009-02-12 04:28:00
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