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━欲望━果てぬもの

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  • 1:

    麗 ◆ySQsCb6HNw



    桐矢 麗 18歳     現実の彼方を識る――  

    2005-09-08 21:07:00
  • 524:

    麗◆v3WdJC9zxM

    暁の言葉に慌てて、ちょぅど目の前にあったコンビニを見て言い訳する。
    「俺も。」
    タクシーを降りる私の手を引っ張る、はにかんだ翔。
    その笑顔が可愛すぎて───。
    翔と一緒にコンビニに入ると、雑誌を立ち読みする同年代の女の子二人の会話が耳に入ってきた。

    2006-10-26 05:38:00
  • 525:

    麗◆C2IP6NrF2Q

    「ハル〜?何してんの、行くよ?」「これ…めっちゃ大事な友達に似てるな思て…」
    「あ〜姉弟のやつじゃん?今流行ってるよね-!!」

    そこまでで、二人の会話を聞き入る私の肩を誰かがが叩く。
    「タク待たしてんねんからはよ行くで。」

    2006-10-26 05:45:00
  • 526:

    麗◆C2IP6NrF2Q

    『ちょぉ待ってやっ翔!!』
    翔を追いかけて走ると、彼は立ち止まった。
    「…さっきの会話聞いたやろ?お前はもう一般人やないねん。自覚持てよ。」
    私は何も言えず、立ちすくんでしまった。
    「俺が守ったるやんけ。」

    2006-10-26 05:50:00
  • 527:

    麗◆C2IP6NrF2Q

    その言葉に、タクシーに乗りこむ翔の背中に抱きついた。
    「おいおい、おまえらあんまいちゃつくなよ-笑。」
    暁の意地悪そうな言葉と笑顔なんて無視して、私は翔にくっついたまんまでいた。
    「かまへんやんけ!見てんのはお前と運転しとぉおっちゃんだけや笑!!」
    翔が笑うと、私たちが何者か気づいているのか、運転手さんは「安心しぃ、おっちゃん誰にも言わんさかいな!」と笑ってみせた。

    2006-10-26 05:59:00
  • 528:

    麗◆C2IP6NrF2Q

    「なんや!おっちゃんも関西の人なんや!関西人なら絶対安心やわ笑!」
    また笑う翔につられて、車内は笑い声に包まれる。


    穏やかな時間。すごく心地いい。そう言えば、初めて翔に会った日もタクシーに乗ったことを思い出し、なんだか遠い昔の事かの様に懐かしむ自分に、また笑った。

    2006-10-26 06:05:00
  • 529:

    麗◆C2IP6NrF2Q



    翔おすすめの、六本木にあるオムライス専門店に入り、鮭とほうれん草のクリームソース掛けオムライスを注文し、うきうきの私に翔が真剣な表情を見せる。
    「さっき言うたけど、俺ら明日から地方回りやねん。麗と真は留守番やから、ちゃんとおとなししとけよ。」
    『…わかってる。』

    2006-10-26 06:13:00
  • 530:

    麗◆C2IP6NrF2Q

    「死んでも、服買いに行きた〜い!とかあほなこと言ぅなよ?」
    翔の言葉と同時に運ばれた料理を無言で受け取り、俯いた。
    『…どんぐらい行くん?』
    美味しそうな香りが漂う。
    「二週間くらいちゃぅか。」

    2006-10-26 06:18:00
  • 531:

    麗◆C2IP6NrF2Q

    『そんな長いん?!』
    私と翔の重い話なんてお構いなしに食べ始める暁を横目に、声を荒げる。
    「寂しいんか?その分今晩いっぱい可愛い可愛いしたるやんけ。」
    ───ちがう、ちがうよ翔。その間あの小さなホテルと言う空間に、真と二人っきりなのが怖い。それだけ。
    「あ〜!もう暗い顔すんな!早よ食え!おまえは笑ってろ!!それだけで俺ええから。」

    2006-10-26 06:26:00
  • 532:

    麗◆C2IP6NrF2Q

    一瞬で私の顔が明るくなったのだろう、暁が笑う。
    「めっちゃうまいでー!麗、はよ食べな冷めんで?」
    『ぅんっ★いっただっきまーす!ん!おいしー♪♪』
    頬張る私を優しい笑顔で見やる翔。
    「やっぱおまえはそれが似合っとぉわ。」

    2006-10-26 06:33:00
  • 533:

    麗◆C2IP6NrF2Q

    ずるいよ、翔。そんな笑顔でそんなこと言うなんて。
    どんどんあなたに落ちていく私がわかる。

    そして、落ちていった分だけ真に侵されるであろう私も見える。
    ────────────────────────────────……愛情と恐怖、どちらが人間を壊すかなんて、知りたくなかった。

    2006-10-26 06:42:00
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