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ある男の…

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  • 1:

    無名◆LW9tDKlR0c

    私がその男と出会ったのは数年前。

    2010-02-28 00:33:00
  • 2:

    無名◆LW9tDKlR0c

    待ち合わせ場所に到着。辺りを見渡すと1人の男。
    「面接の方ですか?」
    私の問いかけに彼は小さく頷き、会釈した。
    「どうもはじめまして。では店まで案内します。」

    2010-02-28 00:37:00
  • 3:

    無名◆LW9tDKlR0c

    互いに無言のまま少し歩いて、店に到着。
    早めに出勤した私の姿を見て寝そべっていた従業員が立ち上がり慌てて挨拶する。
    そんな従業員に軽く舌打ちし、顎で合図をすると素早く私の名刺とお茶が出てきた。
    私はニッコリと微笑んで、「はじめまして。私、この店の代表取締役をさせてもらっています無名です。」と彼に名刺を渡した。

    2010-02-28 00:43:00
  • 4:

    無名◆LW9tDKlR0c

    「月次な質問で申し訳ないのですが、何故ここで働こうと?」
    彼は緊張でガタガタ震えながら一生懸命言葉を探していた。
    数分後…
    ようやく開いた彼の口から出た言葉に驚いた。

    2010-02-28 00:52:00
  • 5:

    無名◆LW9tDKlR0c

    「…働かせてくれないんです。」
    消え入りそうな小さな声で彼は言った。
    「何?」と私は聞き返す。「働く気はあるのに…何処も働かせてくれない…。」彼は涙を流しこう言った。

    2010-02-28 00:56:00
  • 6:

    無名◆LW9tDKlR0c

    「採用。」
    私の声に彼はキョトンとしていた。
    従業員を呼び寄せ、彼に掃除のやり方を教えるよう伝えた。
    彼は何回も何回も「ありがとうございます。」と言っていた。

    2010-02-28 01:05:00
  • 7:

    無名◆LW9tDKlR0c

    すぐさま私に店長が駆け寄り「大丈夫ですか?」と聞いてきた。
    「全責任は俺がとる。」その言葉を聞いて店長は引き下がった。
    私はしばらく彼を観察し、ミーティングが終わってから彼を連れ出した。

    2010-02-28 01:08:00
  • 8:

    無名◆LW9tDKlR0c

    「飯食ったか?」私の問いに彼は首を左右に振る。しばらく歩いていつもの喫茶店。
    「好きなもん頼め。」彼はお金がないと苦笑いした。「馬鹿。奢りだ。」
    彼は申し訳なさそうに、定食を頼んだ。

    2010-02-28 01:11:00
  • 9:

    無名◆LW9tDKlR0c

    食事の間、彼はバイトの面接を何件も受けた事、前に働いてたのは何年も前になる事、工場のバイトで指を切断し無くした事、色々話した。

    2010-02-28 01:15:00
  • 10:

    無名◆LW9tDKlR0c

    何故か憎めないその人柄に私はひかれていった。
     
    雇用してから3日目、周りから孤立している彼をまた呼びつけて、飯に誘った。 
    「続きそうか?」

    2010-02-28 01:18:00
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