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ある男の…
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1:
無名◆LW9tDKlR0c
私がその男と出会ったのは数年前。
2010-02-28 00:33:00 -
10:
無名◆LW9tDKlR0c
何故か憎めないその人柄に私はひかれていった。
雇用してから3日目、周りから孤立している彼をまた呼びつけて、飯に誘った。
「続きそうか?」2010-02-28 01:18:00 -
11:
無名◆LW9tDKlR0c
彼は苦笑いして頭をかいた。
「女の子に声かけるの難しいです。」
「そうか…。ならボーイしてみるか?」2010-02-28 01:21:00 -
12:
無名◆LW9tDKlR0c
「ボーイですか?」
「そ。酒運んだり、グラス洗ったり、オーダー聞いたり。時給はお前の働き見てから決める。」
「やります!」
彼は目を輝かせていた。2010-02-28 01:25:00 -
13:
無名◆LW9tDKlR0c
私は次の日からすぐ彼にボーイの仕事を教え始めた。伝票の書き方、カクテルの作り方、グラスの置き場所。彼は物覚えがよく、1週間もすると、完璧に仕事をこなすようになった。
当初ボーイはいらないと言っていた店長も週末の忙しい時、ボーイの重要さに気付いたようだった。2010-02-28 01:30:00 -
14:
無名◆LW9tDKlR0c
1年の時が流れ、彼はこの店になくてはならない存在となった。
担当が席を離れた時、しばらく接客をしたり、閉店後の売り上げ計算をも彼に任せた。
2010-02-28 01:33:00 -
15:
無名◆LW9tDKlR0c
彼と知り合った2年目の冬、私は代表取締役と言っても雇われだったので、その店舗を店長にまかせ、系列店に移動する事になった。
「頑張れよ。」そう言う私に彼は深々と頭を下げた。
その後私は夜の世界を引退し、日々を過ごしていた。2010-02-28 01:37:00 -
16:
無名◆LW9tDKlR0c
今朝、私は知らない番号からの着信で目を覚ます。
「…もしもし。」
それは彼の母からの電話だった。2010-02-28 01:49:00 -
17:
無名◆LW9tDKlR0c
―彼は自殺した。
2010-02-28 01:56:00 -
18:
無名◆LW9tDKlR0c
親御さんは私の名を毎日のように彼から聞いていたので、彼の携帯から番号を調べてかけたらしい。
彼は遺書に私への感謝の言葉を延々と書き綴っていたそうだ。2010-02-28 01:59:00 -
19:
無名◆LW9tDKlR0c
お通夜に参加させてもらいたいと告げると親御さんは電話口でわんわん泣いた。
電話を切ると私は彼と働いてたその土地へ急行した。
新幹線の中で彼を思い出す。2010-02-28 02:05:00