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1:
ヨミ。
カンカンカン。
遮断機の音が遠くで響く。否、実際は目の前の出来事なのだが憔悴仕切った身体には自分の身に此れから降り掛かるであろう現実を理解するだけの余裕は残されていなかった。
右に左に素早く移動する赤い光を呆然と見つめ、遠くからやって来る[回送]と表示された電車へと視線を移す。田舎なだけあり、夜中になれば人通りは全くと言って良い程に無くなってしまう。冷たく冷えた夜風に髪をなびかせながら、目の前を通り過ぎんとする電車の前へ足を踏み入れる。 と、その時。2010-03-31 04:07:00 -
11:
ヨミ。
『どうして涼夜さん?』 『何が』 水羊羹を口に運びながら、達巳からの急な問い掛けに首を傾げる。 『学校にもさ、いるじゃない。男子。なのに何で涼夜さんなのかなぁ〜って』 尋乃が涼夜に好意を寄せている事は良く知っている。
それが恋心というものに当て嵌まるのかどうかはよく判らないままなのだが、将来は絶対に涼夜さんを旦那に貰うんだと意気込む姿は日常茶飯事。よく見かける。『馬鹿ね。涼夜さんがどれだけ良い男かどうかも判らないわけ?一緒に暮らしてて?私よりも同じ時間を過ごしておいて?』 信じられないと言った様に激しく首を左右に振り、羊羹を口に放り入れながらもごもごと答える。2010-03-31 14:45:00 -
12:
ヨミ。
『モデルみたいだし』 確かにモデルの様なスタイルではある。少し細く見えてしまうが、着物を身に纏う事もあり丁度良い体型であると思う。何より脚が長い。
『顔も良いし』 顔、とくれば確かに学校には比べられる男子がいないかもしれない。整った、睫毛の長いその顔は女性を思わせるものだった。 『あたし声フェチだし』 それはこの際どうだって良いと思う。然し、涼夜の声は達巳も気に入っている。あの落ち着いた声に独特の話し方。彼を育てた環境に感謝したいと何時かの尋乃が語っていた気がする。 『大人だしね』 詳しい歳は知らないものの、随分と若いはずだ。あの歳で和を担いでいる涼夜には関心する程に。然し何よりも考え方が大人である。頼りになる事も確かだ。2010-03-31 14:57:00 -
13:
ヨミ。
『あの怪しげなとこも』 つまりは全てがタイプ。全てが好みだと言う事だ。怪しげな処、と聞いてようやっと玩具の様に頷きまくっていた思考を止めた。 『怪しげだと思うんならさ、余り深く関わらない方が良いと思うけど。涼夜さんはそりゃ申し分無い程に男前かもしれないけど、あの人は俺とか尋乃とかみたいな普通の人間じゃないよ』その言葉ひ尋乃は眉間に皺を刻み、きつく達巳を睨み付けた。
『あんた何も判ってない。涼夜さんがこっちの世界の人間じゃない事だって物心付いた時から知ってるし、兄さんは涼夜さんの下で働いてるから関係無くなんて事出来るわけ無いじゃん』机の上を叩きそうな勢いの尋乃に対して珍しくやけに冷静だな、と自分自身、心の中で小さく呟く。
『好きなら好きで良いし、俺が言う事じゃ無いかもしんないけどね。ただ、あの人は危険だよ』 居候の身でありながら何を、とも思うのだが、間違えた事を言っているとは思う事が出来ない。確かに尋乃の兄である和人は涼夜の部下であるし、関係を持たないという選択肢は無いのかもしれない。けれど、時折鬼の様に嗤って見せる涼夜を知っているからこそ、達巳は近過ぎる関係を望まない。2010-03-31 16:36:00 -
14:
ヨミ。
『あんたってさ、涼夜さんの事嫌ってたっけ』 最後の一口を頬張り、冷静さを取り戻した尋乃はぽつり、と声を洩らした。
『嫌いじゃない。寧ろ兄さんみたいな存在だし好きだよ。だけどやっている事が怖いから。俺はあんまり近寄ろうとは思えない』 空になった皿を二つ重ね、達巳は台所へと向かう。 『弱虫じゃん』 『ん、好きに呼んでよ』 只、自分の素直な気持ちを声に出しただけなのだ。何を言われても惨めだとは思わない。面白く無いとばかりに頬を膨らませる尋乃は勇気があって羨ましいなと思う事も無くは無いが、この話には強がりなど意味を持たないと判っていた。2010-03-31 16:44:00 -
15:
ヨミ。
『てかさ、どうやったら和人さんと喧嘩になんの?』このままではこちらまで喧嘩のままで終わってしまう様な気がして改めて小説へと手を伸ばす尋乃へと話題を振る。 『うっさい』 尋乃の兄、那須和人は涼夜以上に大人びた、それでいて怒る素振りを全く見せる事の無い出来た兄だ。そんな彼と喧嘩をするなど、普通に考えればあり得ない事の様に思えた。 『尋乃が原因でしょ?』 『あたしじゃない!』 声を張り上げ、怒りを表わにする尋乃の剣幕に後退りながら、両手を目の前にかざして指の隙間から尋乃の様子を伺う。 『だって想像つかない』 『和兄が無口過ぎたの!』机の上に置いたままの本(涼夜の物である)を激しく叩きながら、尋乃は叫ぶ。 『は?』 『だ・か・ら!あたしがその日あった出来事を和兄に話してるってのに適当に頷くだけなのよ!?可愛い妹が一生懸命話してるってのに手帳見つめてコクコク馬鹿みたいに頭上下させてるだけなんだもん!幾らおとなしいあたしでもいい加減腹が立って!』 ん?誰がおとなしいって?と聞きなおしてやろうかとも思ったが、面倒事をわざわざ増やす必要も無いかとわざとらしく驚いて見せる。
2010-03-31 17:00:00 -
16:
ヨミ。
『あ、ああ!確かに!和人さんてば無口だもんね!そりゃ尋乃が腹立つのも仕方無いかもしれないなぁ!』『でしょ!?何だ、話し通じるんじゃん』 こんな演技に騙されてしまう尋乃は何て単純で何て子供なのだろうか。と、幼なじみの満足気な表情を見下ろしながら純粋に呆れた。 『ね、達巳。もうそろそろじゃない?涼夜さんが帰ってくる時間。晩ご飯の準備は良いの?』 『あぁ本当だ。下拵えは昼前にやっておいたから後は煮込むだけなんだけど』 居間に壁に掛かる掛け時計へと視線を向け、尋乃の言う通り、涼夜が帰る時間が近い事を確認した。 『あたしも手伝う!』 『良いよ。一人で十分』 立ち上がろうとする尋乃の肩を抑えつけるが無駄な抵抗だとばかりに無理矢理立ち上がり、達巳の腕の間をすり抜けて台所へと駆けて行った。
(和人さんも苦労人だなぁ)尋乃の背中を見つめながら達巳は今日何度目か判らぬ溜め息を吐き出した。2010-03-31 17:12:00 -
17:
ヨミ。
『拾い物だなんて珍しいな。余程良い客なのか?』
茶髪の短髪を適当にセットした長身の男は前を歩く涼夜の背中へと問うた。 『ええ。美味しそうな匂いに釣られて、つい』 柔らかな笑みを見せる男は滅多な事では笑わない後ろの男、那須和人を振り返る。『あんたの期待通りか』 上機嫌な涼夜の表情を見、一つ溜め息を溢すとポケットから携帯を取出し、待ち受け画面に描かれた鷹の絵を見つめる。 『さぁて、どうでしょう』手に握られた白い紙を和人へと差し出す。
『ん?何だ』 『私には必要がありません。貴男"方"が使うと言うのであれば差し上げますよ』軽く皺の付いた白い紙を受け取り、元は二つ折りだったらしいそれを開く。
『住所、か』 そいつは必要だな。 そう呟いて和人は通りを角に曲がろうと歩く。 『頼みましたよ』 こちらに背を向けたまま片手を振る涼夜の姿を見送り、和人は又も携帯の画面を見つめた。
『あいつ帰ってんのか?』動物に例えると涼夜は鷹だと思う。そう言って和人のパソコンで描いた尋乃自作の鷹の絵だ。以降涼夜が上司である限り服従を誓うと言う意味で携帯の画面はこのままね。と、前の待ち受け画面を消され、鷹の絵になってしまったと言う訳だ。『だりぃな』 呟き、先程受け取った紙をポケットへと突っ込む。帰ってなければ探しに行かねばならないでは無いか。そんな事を呟きながら。2010-03-31 17:36:00 -
18:
ヨミ。
『只今帰りました』
玄関の戸を開き、靴脱場に腰を下ろして草履を脱ぐ。ふと玄関の端の見慣れぬ靴に目が行き、誰か客が来ているのだろうかと耳を澄ましてみる。何やら台所で大きな音がしたかと思えば、達巳の大きな声が響いた。『ちょ…中途半端だなぁ』足音を立てぬ様にと進み、居間へと続く障子へと手を掛けた瞬間。
『涼夜さん!お帰り!』 半ば強引に右腕が持っていかれかけたが、障子の隙間に指が詰められてしまう前に手を離す事が出来た。 『いらっしゃってたんですか。来られる前に電話の一つでも下さったなら有名な和菓子屋でお土産も買って来ましたのに』 瞳を輝かせてこちらを見上げる尋乃へと微笑み掛ければ、ぶんぶんと頭を振る。 『そんなの全然!それよりも涼夜さんにお願いがあるんだけど聞いてくれる?』幼い子供の様に下唇を小さく噛んで見せる姿には達巳と同い年であるという事を忘れてしまいそうになる。『内容によりますね』 首を傾げれば尋乃は着用したままのエプロンの両端を摘み上げ、にこりと笑う。 『晩御飯、お世話になっても良いかなぁって』 どうやら晩御飯の支度を手伝ってくれていたらしい。『そんな事でしたら是非』頷き、尋乃の頬に付いたままの小麦粉を指の背で撫で落とす。2010-04-01 23:41:00 -
19:
ヨミ。
『お帰んなさい』 顔を真っ赤に染めた尋乃から視線を外せば割烹着に身を包み、銀のボウルを抱えた達巳が顔を出した。 『ええ』 頷き、尋乃と達巳の間を通り過ぎて居間へと足を踏み入れる。ほんのりと暖められた室内の空気に羽織を脱ぎ部屋の壁に掛けられたままのハンガーを手に取る。『尋乃さん?』 特に皺が目立つ訳では無いものの、壁に掛けた羽織を優しく伸ばしながら背後に立つ尋乃へと声を掛ける。『和人君が捜しているかもしれません。連絡を入れては如何でしょう。何なら和人君も誘うと良い』 涼夜の言葉にそれは良い案ですね、と意地悪く微笑み、台所へと戻ってゆく達巳の背中を睨みつけながら素直に返事を返し、部屋の隅の棚の上に置かれた黒電話の元へと歩み寄る。 『電話借りまーす』 『ええ、どうぞ』 慣れた手付きでダイヤルを回す姿を見ていると、今時の子供は黒電話の掛け方を知らないのだろうなぁという現実に寂しくなる。 (アレはアレで好きなんですけどねぇ) 昔ながらの物を愛して止まない涼夜は心の中で呟き、台所へ歩を進める。
2010-04-02 00:04:00 -
20:
ヨミ。
『今日はお団子のお味噌汁ですよ。涼夜さん、これ好きでしたよねぇ』 ボウルの中身をお玉の上に乗せ、沸騰する味噌汁の中へと落としてゆく。
『大好きです』 お団子というのは小麦粉を水で溶いた物を味噌汁の中で一口大に固めた物の事を言うのだが、もっちりとした食間もそうだが、婆ちゃん子だった涼夜は子供の頃にその味噌汁をおやつ代わりに食べる事もあった程に大好物な物であった。 『仕事は順調ですか』 小皿に乗せた茄子の漬物を涼夜に差出す。 少し悩む仕草を見せたが、口元を緩め指先で漬物を一掴み掴むと、口の中へと放り込んだ。2010-04-02 00:17:00