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僕はただ君に恋をした

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  • 1:

    大阪花子

    アユ…元気にやってますか?新しい一歩を踏み出すと決めたから、振り返らずに頑張って進みます。ただ時々恋しくなります。勝手気ままで嘘つき…僕の嫌いなモノを寄せ集めたような君の、無邪気な笑顔に癒されていたのだと今更になって実感しました。今日も笑顔で過ごしているなら…それで僕は救われます。

    2010-10-29 17:08:00
  • 9:

    大阪花子

    プルプル…午後4時。アユの携帯がなった。―――この時から僕はさよならを予感していたんだ。だって君は今、仕事をしているはずだろ?客にそう話していたもんね…いつもは。―――携帯の音にアユが布団から顔を出した。『アキちゃん、シーしててね?担当からだから』そう言ってアユは電話を持ち裸のままでトイレに入って行った。二分程して戻って来たアユは『今日ミーティングになったんだって』そう言って再び脱衣所に消えて行った。『晩飯は?』『要らなーい』シャワーの音がした。

    2010-10-30 13:26:00
  • 10:

    大阪花子

    小一時間もすると幼い顔のアユは綺麗な女に変わった。『髪型変じゃない?』僕の前をアユがくるくると回る。『セット行かないの?』『うん…そのまま店入るから、開店すぐの客予定あるし、セット行く時間ないや』『そうなんだ。気をつけてね。送ろうか?』『ありがとう。でも、平気』

    2010-10-30 13:30:00
  • 11:

    大阪花子

    『自転車じゃ、もう寒いか』苦笑いする僕にミワはニコリと笑い頬にキスをした。『行ってくるね』『はい』扉が閉まると大きなエンジンの音がした。アユは嘘が下手だった。頭がいいのか悪いのか。肝心なところで必ずボロを出す。―――嘘も方便だと教えたのは僕だったね。君は僕の為に嘘つきになっていったの?―――アユの出て行った後の部屋はより一層寒くて、僕は決まって眠ることにしていた。一人だと飯もまずくて、情けないけど時間を感じるのが、この頃とても怖かった。

    2010-10-30 13:37:00
  • 12:

    大阪花子

    『神崎頼む!どうにかしてくれ!』依頼を受けて病院の立て直しを手がけて四年目の事だった。病院の売上も右肩上がりに伸び、借金返済もある程度の目処が立っていた。そろそろ、僕の手も要らなくなる。そう思っていた。実質オーナーから決済権の全てを担い、病院の一切を指揮していた。そんなある日、リーマンショックが突然全ての計画を狂わせた。

    2010-10-30 13:48:00
  • 13:

    大阪花子

    医療報酬は国に請求をかけてから二ヶ月ほどして病院に支払われる為、赤字病院の多くは間に金融業者を挟む。毎月の売上を金融業者から支払ってもらい、国に請求した医療報酬はその金融業者に支払われると言った仕組みだった。その金融業者がリーマンショックの影響で倒産。僕がみていた病院は向こう二ヶ月の収入を失った。

    2010-10-30 13:55:00
  • 14:

    大阪花子

    国からの支払いがやれるまでの間の支払いや手形が落ちない。僕は急いでオーナーに連絡を取った。『預金でとりあえずは賄いましょう』経理とも連絡を取り合い準備に入った。そんな僕の元に連絡があったのは、その直後だった。『神崎くん…もう閉めよう』決済権を貰えても病院はあくまでオーナーの持ち物だった。僕は翌日から倒産の準備に入った。管財人が入る前に少しでも手元に金を残すために。少しでも多くの業者に払いこぼしが出ない様に。そして耳を疑う連絡が入った。

    2010-10-30 18:28:00
  • 15:

    名無しさん

    新しいの楽しみにしてました??

    2010-10-31 22:06:00
  • 16:

    大阪花子

    ありがとうございます?ゆっくり書いていくので、暇つぶしに読んでくれたら嬉しいです。

    2010-11-01 00:47:00
  • 17:

    大阪花子

    『すまん。弁護士に入ってもらったんやけど…やっぱり神崎君にどないかしてほしいねん!頼む!助けてくれ!もう一回やり直せんか?』愕然とした。倒産が翌日に迫った日の夜中だった。『今更…もう皆、次の就職先に手配してます。今日言って、また明日からいつも通りになんて行くわけないです。せめて後、二億あれば…』『二億なら持ってる』『はぁ?!』耳を疑った。二億あれば病院は倒産せずにすんだ。弁護士にいいように使われたオーナーは病院倒産と共に破産した。

    2010-11-01 10:59:00
  • 18:

    大阪花子

    そんなやり取りをアユは黙って聞いていた。僕はどこかで気づいていた。確かにあの時嫌な予感を感じながら、見過ごしていた。幸せボケでもしていたのかもしれない。僕の危機感の薄れが病院を終わらせた。その一件で、僕の病院の他に三軒、同じ様な状況で病院が潰れた。『アキちゃん…はい!』アユは手を広げ僕を招く。僕はアユの胸に甘える事で心をリセットしていた。

    2010-11-01 11:03:00
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