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月夜はここで

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  • 1:

    無い物ねだりを繰り返して、最後に私が欲したもの…。

    月が綺麗な夜、決まって思い出すのは、私が捨てたがったもの。

    2010-11-29 02:27:00
  • 11:

    ―――ねぇユエ、そんなユエに隠し事なんて出来るわけがなかったのにね―――そんな何てことない毎日が音を立てて崩れ出した事を一番に感じたのは、やっぱりそんなユエだった。

    2010-11-29 09:27:00
  • 12:

    その日も湯舟で一日の話をした。すると、珍しくユエが感想を述べた。
    『舞さ〜アユちゃんと何かあったの?』
    私は一瞬、返す言葉が見付からなかった。アユの悪口なんて言ってないし、愚痴ったつもりもなかった。何で分かったんだろう。

    2010-11-29 09:29:00
  • 13:

    『なんで?』
    私は必死に普通を装った。『なんとなく…何かあったのかな〜て』
    いつもの様に笑うユエの勘は当たっていた。

    2010-11-29 09:31:00
  • 14:

    そのアユが密かに思いを寄せる客がいた。その男は店口座で特定の女の子を贔屓したりせず、いわば紳士的に遊ぶ良い客だった。
    その客があろうことか私を口座にしたいと言いだした事に全ては始まった。

    2010-11-29 09:39:00
  • 15:

    吉原という、その男は市内に幾つか飲食店をしていた。店には常連客に連れて来られて以来、頻繁に顔を出してくれていて、定期的に来ては綺麗に飲み、事あるごとに金を落とす吉原は、店側にすると大事な客に違いなかった。
    その吉原が口座を作った。

    2010-11-29 09:44:00
  • 16:

    ママはわかりやすい程、私を吉原の席に着けた。着けたら最後、ちょっとやそっとでは抜かない。
    『ママ〜山本さんの席に挨拶行きたいんですけど』
    『あ〜大丈夫!大丈夫!山本さんは私に任せて』
    吉原の口座になって以来ここ数週間、ろくに自分の客の席に着けないでいた。

    2010-11-29 09:47:00
  • 17:

    『舞、ここ最近アユちゃんの話してないよ?いつもはバイトに行けば必ずアユちゃんの話題が一つはあったのに…喧嘩した?』
    『してないよ』
    ユエはアユを知っている。ユエが夜のアルバイトを許してくれたのは、アユがいたから。

    2010-11-29 09:50:00
  • 18:

    ユエとは付き合って二年になる。付き合い出して一年が経とうとした頃、突然歌を辞めると言い出した。
    『いつまでも夢追ってたって舞を幸せに出来ないから歌は趣味でするよ。今のレストランで就職しようと思う』
    本来なら喜ぶのかもしれない。でも、私は違った。

    2010-11-29 09:53:00
  • 19:

    自分の描いたイラストが初めて雑誌を飾った日。私は心が折れそうだった。私は仕事欲しさに出版社の社長と寝た。
    なかなか採用されないことにうんざりしながら、エレベーター内で自分の絵を眺めていた時に、たまたま社長が乗り合わせた。
    『君、見ない顔やな?うちの社員か?』

    2010-11-29 10:01:00
  • 20:

    もともと大手の広告代理店でイラストを書いていた私が独立をしたのは23歳の時だった。
    出る杭は打たれた。
    会社の説得を半ば強引に辞めた元社員はことごとく、手を回され仕事がなかった。

    2010-11-29 10:05:00
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