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☆スタービーチ☆

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  • 1:

    きらきらアフロ

    「ねぇ知ってる?星の降る夜は1つだけ願い事が叶うんだよ?」
    「誰も信じてないと思うけどさ。私は信じてるんだよね☆」

    2005-07-20 01:28:00
  • 2:

    きらきらアフロ

    そう言いながら彼女はそっと微笑んだ。
    静かな波音をBGMにした満点の星空はホントにキレイだった。

    2005-07-20 01:30:00
  • 3:

    きらきらアフロ

    目を覚ますと涙が少しこぼれた。隣では小さな時計が時間を進めていた。
    もう5時だ。顔も洗わずにYシャツを羽織り部屋を飛び出した。

    2005-07-20 01:33:00
  • 4:

    きらきらアフロ

    夕焼けは少し眩しくて、車までのいつもの道がやけに遠く感じた。
    白く輝いたシーマに乗り込むとすかさずキーを差し込んだ。
    いつも通り。何も変わらない毎日はとてもタイクツだ。

    2005-07-20 01:36:00
  • 5:

    きらきらアフロ

    梅雨が明けて夏らしくなってきたからだろうか。大通りは大きなワゴン車で
    あふれ返っていた。海に向かうんだろうか?そんな事を考えながら車を走ら
    せた。
    今日は気分がいい。昨日見た夢のせいだろう。

    2005-07-20 01:41:00
  • 6:

    きらきらアフロ

    薄汚れたヴィトンのカバンの中から一枚の写真を取り出した。
    少しニヤけたボクと苦笑いの彼女。
    こんなキレイな夕焼けの日だった。「彼女」・・・リナに出会ったのは。

    2005-07-20 01:48:00
  • 7:

    きらきらアフロ

    「ツカサ!」「ねぇ起きてっ!」
    小さな声で目が覚めた。目の前はまだ少しぼやけていた。
    小さな顔に吸い込まれるような大きな瞳。目の前に居るのはリナだった。

    2005-07-20 01:57:00
  • 8:

    きらきらアフロ

    「学校終わったよっ」リナはそういって微笑んだ。
    昼過ぎからの授業は保健室のベットの上。ボクの日課だった。
    窓の外を見ると桜の木には若葉が生い茂っていた。

    2005-07-20 02:00:00
  • 9:

    きらきらアフロ

    「早く帰ろっ」リナはボクの手を引きながら言った。
    保健室からロッカーまでは約20mぐらい。リナは今日あった出来事をボクに
    話続けた。まるでせき止められた水が一気に流れ出したかのような勢いで。

    2005-07-20 02:05:00
  • 10:

    きらきらアフロ

    校門までは桜の木が並木道のように並んでいて、春にはキレイなサクラの花を
    咲かす。ボクはそれをいつものベットの上から眺めるのが好きだった。
    ボーっとそんな事を考えていると、リナが突然声を荒げた。

    2005-07-20 02:13:00
  • 11:

    きらきらアフロ

    「ねぇ聞いてる?」「いつも話し聞いてくれないね。」「もういい!」
    リナは一人で校門まで歩いて行ってしまった。またやってしまった。
    ボクはいつも人の話を聞かない。
    リナが怒るのも無理はないがもう慣れっこだった。

    2005-07-20 02:17:00
  • 12:

    きらきらアフロ

    「ごめんな」リナの機嫌を伺うようにボクは謝った。
    リナはボクのほうを振り返り、大きな声で「いいよっ」
    とても無邪気な笑顔だった。やられた!
    ボクはいつもリナの笑顔に救われていたんだ。

    2005-07-20 02:23:00
  • 13:

    きらきらアフロ

    あの頃のボクらは若かった
    あの頃のボクらはずっと二人でいれると思ってた
    あの頃のボクは君がすべてだった
    あの頃のボクは・・・・

    2005-07-20 02:30:00
  • 14:

    きらきらアフロ

    リナとの帰り道はいつも同じ道だった。
    海沿いの堤防をただひたすら灯台に向かって歩くだけだった。
    時には浜辺も歩いたっけ。
    ふとボクは思った。ボクらはどこで出会ったんだろう?
    なぜか思い出せなかった。

    2005-07-20 04:03:00
  • 15:

    きらきらアフロ

    「ねぇリナ?」「ボクらはどこで出会ったんだっけ?」
    リナは少しムッとした表情で答えた。
    「覚えてないの?」
    ボクは少し考えるフリをしたあと首を横に振った。

    2005-07-21 00:30:00
  • 16:

    きらきらアフロ

    「教えてあげない。」
    苦笑いを浮かべるリナは少し寂しげだった。
    ボクには女心がわからなかった。若かったから仕方ないのだけれど。
    空は澄み切った青で静かな波音だけが僕らを包んでいた。
    うだるような暑い夏は瞬く間に過ぎていった。

    2005-07-21 00:35:00
  • 17:

    きらきらアフロ

    「ピリリッ・ピリリリッ」
    けたたましい携帯の着信音で目が覚めた。
    画面には「☆リナ☆」と表示されていた。
    「もしもし?」ボクはまだ意識もはっきりしていなかった。

    2005-07-21 00:38:00
  • 18:

    きらきらアフロ

    「ツカサ君?」「ツカサ君よね?」
    返事をする間もなくそこで電話はとぎれた。
    切羽詰まった女の人の声だった。
    ボクが家を飛び出したと同時だった。

    2005-07-21 00:43:00
  • 19:

    きらきらアフロ

    「ピリリッ・ピリリリッ」
    ボクは考えるよりも先に通話ボタンを押していた。
    「ツカサ君?」「ツカサくん落ち着いて聞いてね?」
    「リナが病院に運ばれたの。」
    聞き覚えのあるその声はリナのお母さんだった。

    2005-07-21 00:46:00
  • 20:

    きらきらアフロ

    「エッ?」「リナが・・・・?」
    ボクはその場に立ち尽くしてしまった。
    「とにかく病院まできてくれる?」
    そう早口に言い残すと電話はきれてしまった。
    「リナが病院?うそだろ?」

    2005-07-21 00:51:00
  • 21:

    きらきらアフロ

    「リナ・リナ・リナ・リナ−ーッ」
    ボクは走った。声にならない声をあげながら灯台までの
    いつもの帰り道を。
    心臓ははちきれそうなぐらいドクドクと音をたてていたけれど。

    2005-07-21 00:54:00
  • 22:

    名無しさん

    2005-07-21 01:05:00
  • 23:

    きらきらアフロ

    まさかリナが・・・。
    頭の中はリナでいっぱいになっていた。
    「イタッ!」
    いつの間にか左足のサンダルがなくなっていた。
    小指の先から血がトクトクと流れている。
    心臓が叩くリズムより少し遅れて。

    2005-07-21 01:47:00
  • 24:

    きらきらアフロ

    病院はリナの家まで向かう坂の途中にあった。
    少しさびれたレンガ作りの大きな建物だった。
    「リナは?」「川崎リナの病室はどこですか?」
    ボクは受付に駆け込むと同時に声をあげた。

    2005-07-21 01:57:00
  • 25:

    きらきらアフロ

    小奇麗なオバサンは少し驚いた様子だったが
    「302号室です。」
    そう言うと奥の部屋に入っていってしまった。
    「302・302」
    ボクは呪文のように繰り返し唱えながらエレベーターを待った。

    2005-07-21 02:13:00
  • 26:

    きらきらアフロ

    何十分たったんだろうか?そう思うほど僕は焦っていた。
    どうしても落ち着けずにあたりを見渡した。静かだった。
    後ろで「チン」という音と共にドアが開いた。

    2005-07-21 02:18:00
  • 27:

    きらきらアフロ

    「ブゥ−−−ン」エレベーターの音と共に3階についた。
    飛び出るように降りると目の前にリナのお母さんが立ち尽くしていた。
    「おばさん!」「リナは?」「リナはどこですか?」
    もうボクは正気ではいられなかった。
    「ツカサ君!ツカサ君ちょっと落ち着いて。」
    おばさんはボクをなだめるように言った。

    2005-07-21 03:11:00
  • 28:

    きらきらアフロ

    「リナなら大丈夫。ちょっと疲れが溜まってただけだから。」
    「こっちよ。」ボクはおばさんに手を引かれ不気味なくらい静かな
    廊下を歩いた。

    2005-07-21 03:18:00
  • 29:

    きらきらアフロ

    「302号室」
    ボクは正直ドアを開けるのが怖かった。
    もしかしたら二度と目を覚まさなかいかもしれない。
    錯乱状態だったボクにはおばさんが大丈夫だと言っていた事さえ
    耳に届いていなかった。

    2005-07-21 03:25:00
  • 30:

    きらきらアフロ

    少し。また少しドアを開けていった。
    「リナ」思わず声が出ていた。
    ベットに駆け寄ったボクの目に映ったリナは本当に
    子供のような寝顔だった。

    2005-07-21 03:45:00
  • 31:

    きらきらアフロ

    「ポタッ・ポタッ」「ホントに無事でよかった。」
    涙があふれて仕方なかった。大粒の涙が頬を伝って床の上に
    零れ落ちた。
    「ホントに泣き虫だね」「昔と同じじゃない。」
    物音で目を覚ましたリナは微笑みながらつぶやいた。

    2005-07-21 04:03:00
  • 32:

    きらきらアフロ

    その笑顔を見て僕はまた泣いた。
    もう涙でリナの顔はぼやけて見えなかった。
    空を覆っていた長い夜は明け始めていた。
    「ねぇツカサ?」「朝焼けだよ☆」
    「でも私は夕焼けのほうが好きだな。」
    そう言うとリナはまた笑った。

    2005-07-21 04:11:00
  • 33:

    きらきらアフロ

    ホッとすると今度は痛みが襲ってきた。
    左足の小指の傷はもうかさぶたになっていた。
    「少し寝るね。」
    リナはそう言うとゆっくり目を閉じた。
    ボクの右手をギュッと握り締めたままで。

    2005-07-21 04:17:00
  • 34:

    きらきらアフロ

    リナが眠りに着くとボクは病室を出た。
    ふとおばさんと目が合った。ボクは軽く会釈をした。
    「あの子ね、昔からちょっと心臓が弱かったの。」
    おばさんは突然話を切り出した。
    そうだ。リナは昔から心臓が弱かった。
    でもなぜボクはその事をしってるんだろう?

    2005-07-21 04:22:00
  • 35:

    きらきらアフロ

    リナの子供の頃の話を聞きながらボクはホッと一息ついた。
    「ひどい顔よ?」「顔を洗ってきなさい。」
    おばさんにゆわれるがままボクはトイレに向かった。
    鏡に映ったボクの目はパンパンに腫れていた。
    本当にヒドイ顔だった。

    2005-07-21 04:28:00
  • 36:

    きらきらアフロ

    ボサボサになった頭をかきながらボクは病室に戻った。
    「心配かけてごめんね。」
    リナはうっすら涙を浮かべていた。
    「クリスマスもお正月もどこにも行けなくなっちゃった。」
    そう言うと黙り込んでしまった。

    2005-07-21 18:47:00
  • 37:

    きらきらアフロ

    ボクにはリナの言葉が何を意味するのか分からなかった。
    「どうゆうこと?」
    少しの沈黙のあとボクは切り出した。
    「リナね、半年くらい入院るの。」
    後ろからおばさんの声がした。

    2005-07-21 18:52:00
  • 38:

    きらきらアフロ

    その声を聞くとリナは頭から布団をかぶってしまった。
    ボクはリナにかける言葉を見つけることができなかった。
    「そうなんですか・・・。」「また来ます。」
    そう言い残しボクは病室を出た。
    長く続く廊下をペタペタ音をたてながら歩いた。


    2005-07-21 19:08:00
  • 39:

    きらきらアフロ

    春が近づき暖かくなるにつれてボクらは少し大人になった。
    「ねぇツカサ?」リナはベットから体を起こした。
    「海に行きたいね。いつも帰り道に歩いた海に行きたいな。」
    少し遠慮がちな言葉だった。

    2005-07-21 19:56:00
  • 40:

    きらきらアフロ

    「春になってサクラが咲く頃になったらね。」
    ボクはなだめるように言った。リナは病院の庭までなら
    外出できたのだが、病院の外までは許されていなかった。
    「どうしても行きたいんだもん。」

    2005-07-21 20:03:00
  • 41:

    きらきらアフロ

    ボクは少し驚いた。あまりワガママをゆわないリナが・・・
    「抜け出そうか?」
    とっさに言葉が出てしまっていた。
    「うんっ!」
    リナは本当に嬉しそうだった。

    2005-07-21 20:16:00
  • 42:

    きらきらアフロ

    消灯時間が過ぎ静まり返った病院はなんだか不気味だった。
    足音を立てずに長い廊下を急ぎ足で歩いた。
    「なんだか恐いね。」リナがボソッとつぶやいた。
    ボクの心臓は今にもはちきれそうだった。
    何を隠そうボクはホラーが苦手だった。

    2005-07-21 20:26:00
  • 43:

    きらきらアフロ

    エレベーターを使わずに非常階段を転がるように駆け下りた。
    非常階段は直接外につながっていた。
    「脱出成功したね☆」
    リナは子供のようにはしゃいでいた。
    ボクはまだ心臓のドキドキがおさまらなかった。

    2005-07-21 20:41:00
  • 44:

    きらきらアフロ

    薄暗い空は雲ひとつなかった。
    堤防までの下り坂は小さな電球のついた電柱が
    20mおきにあるだけでとても心細かった。
    「なんか久しぶりだね。ツカサとこうやって手をつないで歩くのも。」
    リナは少しうつむきながら言った。

    2005-07-21 20:51:00
  • 45:

    きらきらアフロ

    確かに久しぶりだった。病院の中では恥ずかしくて
    手をつないで歩くことなんてできなかった。
    「ほら見えてきたよ。」
    坂を下り曲がり角を曲がったときだった。

    2005-07-21 20:56:00
  • 46:

    きらきらアフロ

    目の前にはかなり深い青色の海が広がっていた。
    堤防の階段を下り、サラサラした砂浜の上にボクらは座った。
    「ずっと来たかったんだ。」「病院の窓からは見えてたんだけどね。」
    リナはずっと遠くを見るような目をしていた。

    2005-07-21 21:01:00
  • 47:

    きらきらアフロ

    「まだちょっと寒いね。」
    そう言うとリナはつないだままの手をボクのコートの
    中にそっと入れた。
    「うん。寒いね。」ボクは幸せだった。
    本当にキレイな星空の下だった。

    2005-07-21 21:19:00
  • 48:

    きらきらアフロ

    「ねぇ知ってる?星の降る夜は1つだけ願い事が叶うんだよ?」
    「誰も信じてないと思うけどさ。私は信じてるんだよね☆」
    リナはふいにそうつぶやいた。
    「ねぇツカサ!一緒に願い事しよっか?」
    ボクは少し笑いながらうなずいた。

    2005-07-21 21:25:00
  • 49:

    きらきらアフロ

    「何を願おうか・・・」
    ボクの願い事はもう決まっていたけれど恥ずかしくて
    言葉に出せなかった。
    「ツカサとずっとふたりでいれますように。」
    小さな小さな声だったけれどボクにはしっかり聞こえていた。

    2005-07-21 22:42:00
  • 50:

    きらきらアフロ

    どれくらいの時間がたったのだろう?
    ボクらはずっと満点の星空を見上げていた。
    「そろそろ帰ろっか?」
    ボクはリナの手を引いて立ち上がろうとした。
    リナは首を2回横に振った。

    2005-07-21 22:50:00
  • 51:

    きらきらアフロ

    「もうちょっと。もうちょっとだけ。」
    本当に静かな夜だった。波音がとても心地よかった。

    2005-07-22 00:30:00
  • 52:

    きらきらアフロ

    リナを病院まで送り届けたあとボクは家路を急いだ。
    相変わらず海風は少し強かったけどポケットの中はとても
    暖かかった。
    18歳の冬ももうすぐ終わりを迎えていた。

    2005-07-22 00:38:00
  • 53:

    きらきらアフロ

    サクラが咲き始める頃ボクは卒業をむかえた。
    そこにリナの姿はなかった。
    卒業式が終わり校門を潜ろうとしたときだった。
    「ツカサくん?」
    後ろからボクを呼ぶ声がした。

    2005-07-22 00:58:00
  • 54:

    きらきらアフロ

    「卒業おめでとう。」
    保健室の先生だった。
    「あなたぐらいよ。あんなに授業サボって卒業できたのは。」
    ボクは苦笑いするしかなかった。

    2005-07-22 01:02:00
  • 55:

    名無しさん

    ぃつも見てますぅ(^3^)/続きがめっちゃ気になって仕方なぃ(>_

    2005-07-22 01:07:00
  • 56:

    きらきらアフロ

    ありがとうございます☆めっちゃ頑張ります。

    2005-07-22 01:12:00
  • 57:

    きらきらアフロ

    「でも・・・。リナちゃんはほんとに残念だったね。」
    先生はボクの機嫌を伺うように言った。
    「仕方ないです。どうしようもなかったですし。」
    「そっか。これからもがんばってね。」
    そう言うと先生は人ごみの中に消えていった。

    2005-07-22 01:16:00
  • 58:

    まぁこ

    今読ませてもらぃました?書き方がめちゃ好きです?これからも完結まで頑張ってくださぃ??応援してます?

    2005-07-22 01:45:00
  • 59:

    きらきらアフロ

    むっちゃ嬉しいです☆仕事の合間見てカキカキします。

    2005-07-22 02:04:00
  • 60:

    きらきらアフロ

    一人で歩く帰り道は本当に寂しかった。
    いつもは心地よく感じた海風も今日はなんだか湿っている
    ように思えた。
    ボクは堤防にゆっくりと腰掛けた。
    夕焼けがボクと海をオレンジ色に染めた。

    2005-07-22 02:51:00
  • 61:

    きらきらアフロ

    「ツカサ!」
    後ろから聞きなれた澄んだ声がした。
    「卒業おめでとう。」
    リナは苦笑いを浮かべながらボクの隣に座った。
    「ありがとう。」ボクには精一杯の言葉だった。

    2005-07-22 02:54:00
  • 62:

    きらきらアフロ

    「残念だったね。」
    ボクは声を振り絞るように言った。
    「仕方ないよ。あんなに休んでたんだもん。」
    「でもツカサと一緒に卒業したかったな。」
    オレンジ色に染まったリナはあきらめにも似た表情を浮かべていた。

    2005-07-22 02:59:00
  • 63:

    きらきらアフロ

    「そうだね。」
    何て声をかければいいかボクにはわからなかった。
    「帰ろっか?」
    リナは少し涙を溜めて小さな澄んだ声でつぶやいた。

    2005-07-22 03:03:00
  • 64:

    きらきらアフロ

    ボクは2回首を横に振った。
    「もうちょっと。もうちょっとだけ。」
    夕日はもう半分ぐらいオレンジ色の海の中に沈んでいた。
    夕焼けが眩しくてボクはうつむいて目を閉じた。
    本当は涙をリナに見られたくなかったからなのだけど。

    2005-07-22 03:10:00
  • 65:

    きらきらアフロ

    学校から二人で歩く帰り道もこれが最後だった。
    「もう1年かぁ。長いねぇ。」
    リナはボソッと本当に小さな声でつぶやいた。
    「ねぇツカサ?私が卒業したら一緒に暮らさない?」
    「うん。」そう答えたぼくの顔は真っ赤になっていた。


    2005-07-22 18:56:00
  • 66:

    きらきらアフロ

    「真っ赤になってるよ。顔が。」
    僕の顔を覗き込むようにしてリナは言った。
    「そんなことないよ。夕焼けのせいだよ。」
    まっすぐないつもの帰り道を歩いた。ボクは少し寂しかった。
    並んだ二つの影は長く長く伸びていた。

    2005-07-22 19:16:00
  • 67:

    きらきらアフロ

    ボクは町を出て都会でバーテンを続けたかった。
    始めてからもう2年経とうとしていた。
    正直迷っていた。そんなに多くの理由があったわけではなかった。
    ボクはこのキレイな海と満天の星空が大好きだった。
    何よりリナと離れ離れになってしまうことが・・・。

    2005-07-22 19:50:00
  • 68:

    きらきらアフロ

    アンティーク調の木目のドアがゆっくりと開いた。
    「いらっしゃいませ。」
    カウンターに腰掛けたリナにボクは少し頭をさげた。
    「オーナーこんばんわ。」オーナーはしわくちゃの顔を少し
    ニコッとさせた後、黙々とトールグラスを拭きつづけていた。

    2005-07-22 22:57:00
  • 69:

    きらきらアフロ

    「今日は何にしよっか?」
    ボクは機嫌を伺うように黙り込むリナに問い掛けた。
    「・・・甘くて色のキレイなカクテル。」
    そう一言だけつぶやくとまたうつむいて黙り込んだ。

    2005-07-23 00:04:00
  • 70:

    きらきらアフロ

    ボクは棚の奥にしまってあった焼酎をとりだした。
    それを見たリナは少し驚いたようだった。
    オレンジキュラソー、グレナデンシロップ、マラスキーノ、
    ライムジュース、そして焼酎をメジャーカップで量り、
    シェイカーの中に入れていった。

    2005-07-23 00:36:00
  • 71:

    きらきらアフロ

    シェイカーを振り終えたボクはカクテルグラスに少しずつ
    注いでいった。最後にオレンジスライスを添えて。
    「キレイなオレンジ色だねぇ。」
    グラスを手に取ったリナは少し気分を良くしたようだった。

    2005-07-23 00:47:00
  • 72:

    きらきらアフロ

    「なんていう名前のカクテルなの?」
    リナはボクを見上げながら聞いた。
    「それは『夕焼け』ってカクテルだよ。」
    小さなかすれた声でオーナーはつぶやくように答えた。

    2005-07-23 01:04:00
  • 73:

    きらきらアフロ

    「夕焼け・・・。」
    そうつぶやくとリナはまたうつむいた。
    「カタッ・カタッ」
    店の中はシーンと静まり返っていた。
    時計の秒針が動く音だけが店内に響いていた。

    2005-07-23 01:31:00
  • 74:

    きらきらアフロ

    「ポタッ・ポタッ」
    「もう気持ちは変わらないの?」
    リナは涙を流しながら口を開いた。
    「うん・・・。もう決めたんだ。」

    2005-07-23 01:54:00
  • 75:

    きらきらアフロ

    ボクは言葉に詰まった。ほかに伝えたいことはたくさん
    あったのだけれど。
    「何で全部一人で決めちゃうの?」「私は。私は・・・。」
    リナは泣き崩れてしまった。
    オーナーは何事もなかったようにグラスを拭き続けていた。

    2005-07-23 02:00:00
  • 76:

    きらきらアフロ

    ボクだって辛かった。
    思い出の詰まったこの町を離れることが。
    何よりもリナと離れてしまうことが・・・。

    2005-07-23 02:09:00
  • 77:

    きらきらアフロ

    リナが店を出たあと、独り言のようにオーナーはつぶやいた。
    「本当にいいんだな。後悔するかもしれないよ?」
    わかってる。ボクにだってわかってた。
    「もう決めたことですから。」精一杯の強がりだった。
    春が過ぎ夏の匂いが辺りを覆い始めた頃だった。

    2005-07-23 18:57:00
  • 78:

    きらきらアフロ

    荷造りは着々と進んでいった。
    ボクの心のモヤモヤは晴れないままだったけど。
    「ピリリッ・ピリリリッ」リナからだった。
    ボクは電話に出るのを少しためらった。
    そういえばリナと話すのもあの日以来だった。

    2005-07-23 19:31:00
  • 79:

    きらきらアフロ

    「もしもし・・・。」
    「ツカサ?今からちょっと話せないかな?」
    いつもと変わらない澄んだ声だった。
    「大丈夫だよ。今から迎えに行くから。」ボクはそう答えた。
    「いいよ。もうツカサの家の前だから。」

    2005-07-23 19:41:00
  • 80:

    きらきらアフロ

    ボクは大急ぎで階段を駆け下りた。
    ドアを開けると目の前にリナが立っていた。
    「ちょっと歩こっか?」
    リナは振り返りそういった。
    「うん・・・。」ボクはサンダルをはきながら答えた。

    2005-07-23 19:47:00
  • 81:

    名無しさん

    しぉりぃ♪

    2005-07-25 02:58:00
  • 82:

    きらきらアフロ

    生温い海風が夏の匂いを運んできていた。
    ボクはサンダルのかかとを擦るようにして歩いた。
    「本当に・・・本当に行っちゃうの?」
    リナはボクにすがるような目をして言った。
    「ごめんね・・・。」

    2005-07-25 03:24:00
  • 83:

    きらきらアフロ

    「私は・・・私を置いて行っちゃうの?」
    立ち止まりリナはその場にしゃがみこんでしまった。
    どんな言葉をかければいい?どうして欲しい?
    ボクは・・・ボクは。
    ボクにはどうしようも・・・なかった。

    2005-07-25 03:47:00
  • 84:

    きらきらアフロ

    「連れてって。私を連れ出して。」
    覚悟を決めたような真っ直ぐな目だった。
    「一緒にいたい。ツカサと離れたくない・・・。」
    言葉が出てこなかった。ボクは天を仰いだ。

    2005-07-25 03:56:00
  • 85:

    きらきらアフロ

    「ごめん。必ず迎えに帰ってくるから。」
    ボクはリナをなだめるように言った。
    「イヤっ!一緒に連れてって。」
    「ツカサがいなくなって私はどうすればいいの?」

    2005-07-25 04:06:00
  • 86:

    きらきらアフロ

    ボクだって昔見たドラマのようにリナを連れ出したかった。
    ただボク達は若かった。ただ若すぎたんだ。
    目の前にある現実はいつも思い通りに進むはずがなかった。
    なぜか今日の夕焼けは悲しい色をしているように思えた。

    2005-07-25 04:16:00
  • 87:

    名無しさん

    ぁげです。

    2005-07-25 19:09:00
  • 88:

    きらきらアフロ

    「決めた。私もツカサに付いていく。」「もう決めたんだから。」
    凛とした表情でリナはそう言った。
    「無理だよ。学校はどうする気なの?」
    「辞める。辞めて一緒に行く。」
    その真っ直ぐな目からボクは目をそらしてしまった。

    2005-07-25 23:59:00
  • 89:

    きらきらアフロ

    「すぐには無理だけど・・・。」「待っててくれる?」
    ボクは小さくうなずいた。
    ここまでボクの事を想ってくれてるなんて・・・。
    さっきまでの悲しい色をした夕焼けは、遠く海に沈んでいた。
    入れ替わるように真っ暗な空には星がまたたいていた。


    2005-07-26 00:22:00
  • 90:

    名無しさん

    しおり

    2005-07-26 00:53:00
  • 91:

    きらきらアフロ

    いつもいつもありがとうございます。

    2005-07-26 01:27:00
  • 92:

    きらきらアフロ

    「オーナー今までお世話になりました。」
    ボクはグラスを磨くオーナーに頭を下げた。
    「ツカサか・・・。ちょっと座りな。」
    少しくすんだカウンターにボクは腰掛けた。
    いつもと変わらないゆっくりした時が流れていた。

    2005-07-26 01:33:00
  • 93:

    きらきらアフロ

    「なぁツカサ?」「バーテンダーはどうあるべきだと思う?」
    ボクは少し黙り込んだあと答えた。
    「お客様にお酒を楽しんでもらうように努力するべきだと思います。
    「そうか・・・」
    オーナーは黙り込むとカクテルを作る準備をした。

    2005-07-26 01:41:00
  • 94:

    きらきらアフロ

    シェイカーを振る音がとても心地よかった。
    「これが答えだとワシは思っている。」
    そう言うとボクの前に夕焼け色のカクテルを差し出した。
    「『夕焼け』ですか?」
    ボクはオーナーの顔を見上げた。

    2005-07-26 01:47:00
  • 95:

    きらきらアフロ

    オーナーは首を2回横に振ったあと答えた。
    「これは『夢一夜(ゆめひとよ)』だよ。」
    ボクは透き通ったオレンジ色を眺めていた。
    「夢一夜・・・。」

    2005-07-26 01:54:00
  • 96:

    きらきらアフロ

    「なぁツカサ。お客様に楽しんでもらうのはもちろんだ。」
    「でもな、それで満足しちゃいけないんだよ。」
    「夢のような一夜を過ごしてもらえたら・・・。ワシはそう思ってる」
    思わず胸がカッと熱くなった。
    小さく震える手でカクテルを口に運んだ。

    2005-07-26 02:05:00
  • 97:

    きらきらアフロ

    「ありがとうございます・・・。」
    涙が頬を伝った。それ以外の言葉がなかった。
    オーナーは何も言わずに外の看板をしまった。
    「ツカサ・・・。」「今日は貸切りだ。」
    そう言ってしわくちゃの顔をニコッとさせた。

    2005-07-26 02:14:00
  • 98:

    きらきらアフロ

    どれくらい時間がたったのだろう・・・。
    ボクは今までに経験した事がないくらい話をした。
    オーナーはそれを黙って聞いていてくれた。
    とても居心地がよかった。
    ボクにとって本当に夢のような一夜だった。

    2005-07-26 02:32:00
  • 99:

    きらきらアフロ

    「じゃあそろそろ行きます。」
    ふらつく足でボクはカウンターを離れた。
    「今までお世話になりました。」
    そして深々と頭をさげた。
    するとオーナーは小さな箱を取り出した。

    2005-07-26 02:45:00
  • 100:

    きらきらアフロ

    箱を開けると年季の入ったシェイカーをその中に詰めた。
    「持ってきな。旅立ちのお祝いだ。」
    それを受け取るとまた涙が溢れてきた。
    「ありがとうございます。ありがと・・・・。」
    もう言葉にならなかった。

    2005-07-26 02:50:00
  • 101:

    名無しさん

    あんた出会い系なん?てか名前ちもちわるい

    2005-07-26 02:51:00
  • 102:

    きらきらアフロ

    「疲れたらいつでも帰ってくればいい。」
    「ワシはいつでもここにいるから・・・。」
    オーナーの目から一滴の涙がこぼれた。
    ボクに初めて見せた涙だった。
    「行って来ます。」

    2005-07-26 02:54:00
  • 103:

    きらきらアフロ

    ドアを開けるともう夜は明けきっていた。
    朝日が水平線から半分顔を出していた。
    爽やかな風がボクを吹きぬけた。
    町を出る前日のことだったっけ。

    2005-07-28 03:51:00
  • 104:

    きらきらアフロ

    酒でふらつく足でまとめた荷物を持って家を出た。
    家族には気づかれないようにそっと。
    永遠の別れではなかったけど何か照れくさかったし、寂しかったから。
    ボクは別れというものが苦手だった。

    2005-07-28 04:17:00
  • 105:

    きらきらアフロ

    結局リナとはあれから話す機会がなかった。
    機会がなかったというより作らなかったのだけど。
    一度話してしまうとボクはまた泣いてしまうから。
    泣き虫なボクをリナには見せたくなかったから。

    2005-07-28 04:21:00
  • 106:

    きらきらアフロ

    「プルルルルルッ・・・。」
    ホームに少しくすんだブルーの電車が滑り込んできた。
    朝早くだったせいか、乗客は数えるしかいなかった。
    ボクは窓側の席に座りそっと目を閉じた。
    ドアが大きな音を立てて閉まった。

    2005-07-28 04:29:00
  • 107:

    きらきらアフロ

    「ガタン」という音と共に電車は動き出した。
    窓から見える海は朝日が水面を照らしキラキラ光っていた。
    本当は「帰ってくるな」って言って欲しかった。
    ボクは本当はすごく弱い人間だったから・・・。
    むせ返るような夏の匂いがぼくを包んでいた。

    2005-07-28 21:47:00
  • 108:

    きらきらアフロ

    ボクは泣いた。声を押し殺して泣いた。
    町を離れるのがこんなにも辛かったなんて思わなかった。
    電車はトンネルをくぐり抜けスピードを上げていった。
    せみの声が遠くに聞こえた。19歳の夏のことだった。

    2005-07-28 22:06:00
  • 109:

    きらきらアフロ

    町を出て一ヶ月が過ぎた。
    見るものすべてが新鮮だったけど寂しさは増すばかりだった。
    「そろそろ慣れてきた?」
    店を閉め終わったあと店長のトオルさんが声をかけてきた。

    2005-07-28 23:41:00
  • 110:

    名無しさん

    2005-07-28 23:46:00
  • 111:

    きらきらアフロ

    「ボチボチ慣れてきましたけど・・・。」
    ボクはグラスを磨きながら言った。
    「けど・・・?」「こっちはすべてが早いからね。」
    トオルさんはバーボンを口に少し含むと語り始めた。

    2005-07-28 23:56:00
  • 112:

    きらきらアフロ

    113さんありがとうございます。読んでもらえてる方に感謝感謝です。

    2005-07-28 23:58:00
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