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絆-Kizuna-

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  • 1:

    頑張って書くので宜しくお願いしますm(__)m

    2005-06-26 01:28:00
  • 200:

    「そうなんだー。でも矢口ってクールだよねー。かっこいいけどさ。何考えてるか分かんないタイプじゃん」
    「そ、そうかな?」
    晃太を否定されてるようで少し腹が立った。
    「でも田村が言ってたんだけど矢口の元カノ超キレーなんだって。モデルらしいんだけどさー。何かの雑誌に専属決まったんだって。何の雑誌なんだろうね」
    ズキン
    何かが刺さったように胸の奥が痛くなった。
    「ふーんそうなんだ」

    2005-07-18 05:01:00
  • 201:

    聞きたくないことばかりが耳に入ってくる。
    「あっ!でも由里いい感じだったじゃん。矢口狙っちゃえば?今フリーなんだし」
    「んーそだね。考えとくよ」
    気分転換にネイルしに来たのに意味がなかった。来るんじゃなかったなぁ。美香はケアが終わると先に帰って行った。
    「由里ちゃん矢口ってあの矢口晃太?」
    担当の夏美さんが私にそっと聞いた。
    「あ・・・えっと」
    「ごめんね言いたくなかったらいいよ。変なこと聞いてごめん!」
    夏美さんは慌てて謝ってきた。

    2005-07-18 05:08:00
  • 202:

    「そう。あの矢口晃太なんですけど・・・」
    夏美さんには隠すこともないや。そう思い私は話した。夏美さんはもうすぐ30歳を迎えるいわばアネゴ的な人。
    夏美さんと話をしにここに通う女の子も多い。私もそうだった。英二のことや仕事のグチとか、いろんなことを今まで聞いてもらってきた。
    「で、どうなの?本当のところは」
    鋭い質問だった。
    「自分でもよく分からないってゆうか。信じられないんだけど。付き合ってる・・・みたいな」

    2005-07-18 05:13:00
  • 203:

    ?鈴夏?

    はぢめて読ませてもらったぁ??こんな話しぁったらィィのにッてめちゃ考えたッ?ワラ
    続き楽しみにしてまぁ?ッス?

    2005-07-18 05:28:00
  • 204:

    「そりゃあなりますよ。でもいいんです。信じて遊ばれてたとしても自分で決めたことだし。いい女が現れて由里から離れて行くことになっても」
    私がそう言うと夏美さんはニコッと笑った。
    「そう。私はそれが聞きたかったんだ。強い気持ちがあるっていいことだよ。いい恋すると綺麗になるしね。でも羨ましいなぁ」
    夏美さんはそう言うとフーッと溜め息をついた。
    「私さ、結婚・・・なくなったんだー。」

    2005-07-18 05:37:00
  • 205:

    えっ・・・?
    夏美さんには8年間付き合っていた彼がいた。私も何度かお店で見たことがあった。そして、今年の秋には結婚するかもという話も聞いていた。
    「どうして?何かあったんですか!?」
    「うーん。やっぱり八年って長すぎたのかな。由里ちゃんぐらいの若い女に乗り換えられちゃったよ。私も怒る気にもなれなくてね。30歳を目前にして弱気になったみたいな」

    2005-07-18 05:42:00
  • 206:

    名無しさん

    ?

    2005-07-18 05:49:00
  • 207:

    うそ・・・でしょ?
    私もショックで言葉が出なかった。あんな風になりたいなって、ずっと憧れてきた二人だったのに。夏美さんは二十代のほとんどをあの人と過ごしてきたのに。
    「ごめんね。つまんない話しちゃって。もう完成するよー。」
    夏美さんは無理して笑っていた。本当は苦しいのに。泣きたいのに。でも私みたいな若造の前でなんて泣けないんだろうな。
    なんでだろう。年をとるごとに人前で涙を流すことは減っていく。大人だから?我慢しなきゃいけないの?

    2005-07-18 05:50:00
  • 208:

    「はい!終わりぃー」
    夏美さんはいつもの夏美さんに戻った。
    「あの、今度また一緒にご飯でも行きましょうよ!いいお店見つけたんです」
    私は夏美さんに元気を取り戻してほしかった。私なんかで埋めれる傷なわけないけど、おいしいもの食べて馬鹿な話したりして。
    「オッケー。じゃあまた電話ちょうだい。楽しみにしてるよ。今日はありがとね」
    お店を出た私はすれ違うたくさんのカップルを見て、一瞬立ち止まった。
    この人達はずっと幸せでいられるのかな。そして私も晃太と幸せでいられるのだろうか。

    2005-07-18 06:02:00
  • 209:

    不安になった。
    怖くなった。晃太に会いたくなった。
    同伴の約束がある。仕事だ仕事。しかたない。美容院に向かい、着いた私はカーラーを巻いている間に化粧を始めた。
    セットをしてもらうにつれ変わっていく私。“由里”から“ゆかり”に変わっていく。セットも終わり、急ぎ足で待ち合わせ場所に向かった。ちょうど6時半だ。
    晃太はもう試合が始まってるころ。勝ってるかな?どうなんだろう?そんなことばかりが頭によぎる。
    お客さんと食事をしていても上の空。こんなこと今までなかったのに。

    2005-07-18 06:13:00
  • 210:

    その時だった。
    「今日勝ったみたいだぞー。連勝だな」
    そんな会話が聞こえてきた。連勝?もしかして・・・聞き耳を立てて聞いているとやっぱり晃太のチームだった。
    良かった。私は嬉しくてお酒が美味しく感じた。ちょっとしたことで喜んだり、馬鹿みたいだけど素直に嬉しかった。
    「ゆかりさんバックお願いします」
    テーブルボーイが呼びにきた。また別の指名客の席だ。盛り上がってても会話がいつも途切れ途切れになるんだよなぁ。
    「ちょっと待ってね。すぐ戻ってくるから」
    そう言って私は席を立った。

    2005-07-18 18:27:00
  • 211:

    そしてその時三人組の客が店内に入ってきた。マネージャーが近付いてきて私の耳元で小さく囁いた。
    「矢口さんビップ入れるから」
    や、矢口さんって?
    少し酔いが回っていた私は意味が分からない。でも三人組の一番後ろには間違いない、晃太がいる。
    晃太達に気付いた他のお客さんや女の子がザワザワし始めた。もちろん私もビックリしていた。

    2005-07-18 18:32:00
  • 212:

    「うまく回すからとりあえず指名あるから矢口さんのテーブル付いてて」
    マネージャーにそう言われ、晃太の席についた。他の二人もチームメイトの人だった。女の子二人が付きみんなが話し始める。
    「どうしたの?急に」
    私は晃太が急に来てビックリしていた。
    「え?来ちゃだめだった?」
    全然・・・いいけど
    「そんなことない。ただちょっとビックリして。試合勝ったんでしょ?」
    「おかげさまでね。てゆうか由里今指名いくつかかってんの?」

    2005-07-18 18:39:00
  • 213:

    「ここ入れたら四席?かな?」
    晃太は周りを見渡していた。
    「さっきから俺らめちゃくちゃ見られてない?すげー視線感じるんだけど」
    それもそのはずだ。見られているのは間違いない。

    2005-07-18 18:49:00
  • 214:

    「だって晃太達がいるんだもん見ちゃうよ」
    私と晃太がそんなことを話していると、一緒に来ていた二人が珍しくジーっと見てきた。
    「由里ちゃんって君のこと?今日晃太がどうしても来たいっつーからさー。俺らはオマケでついてきたってわけ」
    「ちょっ、言わないで下さいよ」
    晃太が慌ててる。
    「一人で行くの恥ずかしいからって俺らに頼んできたじゃん晃太」
    「ほんまや。照れんでええやん」
    二人にいじられてる晃太。焦ってたりして可愛かった。

    2005-07-19 03:06:00
  • 215:

    「今日終わったらそのまま来れない?俺ここ最後までいるか近くで待っててもいいんだけど」
    き、今日そのまま?
    「あ・・・急にだからなぁ。どうしよう?取りに帰りたい物もあるし」
    「分かった!じゃあついでに由里んとこ寄って、一緒に帰ろう」
    「うん、そーだね」
    晃太は強引すぎるぐらいいつも豪快だ。考えるすきを与えてくれない。でもそのくらいの方が私には丁度良かった。

    2005-07-19 03:13:00
  • 216:

    「由里さんバックお願いします」
    マネージャーに呼ばれた。あぁもう交代か・・・嫌だなぁ。ヘルプにも心配があった。
    前に名刺置いてた子もいたし。ま、晃太は持って帰んなかったけど。指名客の客席に戻った私は、いつも通りの接客に戻った。
    でも晃太が・・・見てるのが分かる。そう思うと何をすればいいのか分からなくなった。
    晃太は嫌がってるんだよね・・・。

    2005-07-19 03:20:00
  • 217:

    それからまたテーブルを二カ所回り、晃太の席に戻れた。
    「由里ちゃんってナンバー1なん?」
    関西弁の須藤さんが急に聞いてきた。須藤さんは晃太と同じ歳だ。チーム内でも一番仲が良いと言っていた。
    「えっと、あ、一応ですけど」
    「やっぱりなー。さっきから君ばっかりあっち行ったりこっち行ったりしてるもんな。晃太心配しとったで」
    晃太を見るとそんなことないよって顔をする。須藤さんにも何言ってんだよってアイコンタクトしてた。

    2005-07-19 03:28:00
  • 218:

    「ごめんね何か。」
    晃太が謝ってきた。
    「えっ!?何が?」
    晃太の顔が少し悲しそうに見えた。
    「俺が来たら邪魔しに来てるようなもんだよね。俺も会いたいから来てるのにつまんねー嫉妬してイライラしたりさ。マジかっこわりーよ」
    そんなことない。来たくない慣れない場所にまで私に会いにきてくれた。私だって会いたかった。晃太のことばっかり考えてた。
    仕事が手につかなくて頭の中いっぱいで、それで勝手に不安になって・・・。

    2005-07-19 03:36:00
  • 219:

    「晃太待ってて!もうお客さんに体調悪いから上がるって言って帰らせてくる。じゃあもうお店上がれるから」
    「いーよ本当に気にすんなって。」
    晃太は止めたけど私は席を立ち、順番にお客さんを帰らせた。マネージャーに晃太達のアフターだと言うとオッケーをもらえた。
    ロッカールームで着替え終わり晃太の席に戻った。
    「俺やっぱりこっちの由里のほうがいい」
    そう言って晃太は私の頭を撫でてきた。
    「別人やなぁ」
    須藤さんはジロジロ見てくる。

    2005-07-19 03:43:00
  • 220:

    ドレスを来てキラキラしたアクセサリーを着けているだけで変われるものなんだ。
    着替えて戻った私は黒のタンクにジーンズ。晃太に貰った帽子をかぶれば普通の女に戻る。
    でもそんな普通の私の方がいいって言ってくれる晃太で良かった。いつも綺麗に着飾ってるのって疲れちゃうから。

    2005-07-19 03:48:00
  • 221:

    私達はとりあえずお店を出た。しばらく歩いて立ち止まり、まだ飲むと言っていた須藤さん達二人とそこで別れた。
    そして晃太が止めたタクシーに二人で乗り込んだ時、私のカバンからはあの着信音が鳴った。
    ―aikoの花火―
    英二からの着信だった。私は音を切り携帯をしまった。
    「出ないでいいの?」
    私は静かにうんうんと頷いた。
    でもタクシーが走りだしたその時だった。英二がいた。すぐ近くに立っていた。私に気付いていた。

    2005-07-19 04:01:00
  • 222:

    ドキドキ・・
    ドキドキ・・
    何故か心臓の鼓動か早くなった気がした。
    英二に見られたから焦ってるのか晃太が気付いたらどうしようって焦ってるのか私は自分でもよく分からなかった。
    それより何で英二があんなとこ・・・仕事中なはずなのに。まさか来るつもりだったのかな?
    すぐに私のマンションに着き、晃太も来ると言ってきたので一緒に家に戻った。そして充電器や化粧品を用意していると晃太が静かになった。
    なんでだろうと気になってキッチンにいた晃太を見てみると英二と揃えた食器類をジッと見ていた。

    2005-07-19 04:11:00
  • 223:

    ほとんどが二つずつ揃ってあった。晃太何を思ったんだろう。
    「晃太ぁ?もう用意できるから座っててごめんね」
    「あ、うん」
    リビングに晃太を座らせた私は部屋に戻った。私の部屋には晃太に見られたら嫌な思いをさせる物が他にもあった。
    英二の服もそうだし男物のベルト、とにかく見られたくない。晃太に嫌な思いさせたくない。
    早く用意を済ませ、リビングに戻った。
    「できたよ行こっか」
    「おー行くか」
    玄関に向かった私は靴をはいていた。振り返ると晃太がいない。

    2005-07-19 04:18:00
  • 224:

    ちょっ、どういうこと?
    「晃太!?」
    私が慌てた声で呼ぶと晃太が洗面所から出てきた。そして手には髭そりとハブラシが握られていた。
    「捨てていいよね?」
    晃太が静かに言った。
    「うん。いいよ」
    私がそう答えると晃太は私にそれを渡してきた。えっ?何?
    「由里が自分で捨ててほしい。俺は自分で捨てたから。まぁケジメみたいなもんかな?いちいちうるさくてごめんね」
    「あ・・・大丈夫。捨ててくるから。」
    部屋に戻ってごみ箱に捨てた私はゴミ袋をそのまま捨てようと持って出た。

    2005-07-19 04:24:00
  • 225:

    これでいいんだ。そう、これでいい。
    そして私はゴミ捨て場にゴミを捨てた。英二のハブラシも・・・英二への残った気持ちも。でも私達がマンションを出た時、そこには英二がいた。
    二度目だ。あの日と同じ。晃太と初めて会ったあの日と。
    晃太は知ってる。英二が元カレだってことを。でも英二は知らない、晃太と付き合っていることを。
    私がどうにも出来ずに立ち止まっていると英二がこっちに歩いてきた。

    2005-07-19 04:30:00
  • 226:

    「由里どういうことだよ。何でお前んちから矢口と出てくるんだよ。なぁ!お前遊ばれてるって目ぇ冷ませよ」
    英二が大声で怒鳴った。そして晃太にも。
    「俺ら今は別れてますけど絶対こいつ俺のとこ戻ってきますから。もう由里に手出すのやめてほしいってゆうか。遊びなら他にも女いるじゃないですか。だいたいあんた野球選手じゃん?ほらアナウンサーとかさ、もっと上っつーかこいつより上ってゆうか」
    それを聞いていた晃太が英二よりも大声になった。

    2005-07-19 04:37:00
  • 227:

    「お前さぁ、さっきから聞いてるけど何が言いたいわけ?」
    「えっ、あ、だから手出すなら他にもいい女がいるってあんたならさ・・・」
    晃太は見たことのない顔で英二に言った。
    「お前さ、いい女とかこいつより上のとか言ってるけど俺は由里がいいから。由里より上がいるならお前がいけよって話だろ?」
    英二は黙りこんだ。
    「言いたいことはそうじゃねーだろ?回りくどい言い方しても何も伝わんねーぞ。好きなら好きだって俺に宣戦布告してこいよ」

    2005-07-19 04:45:00
  • 228:

    「す・・きだけど。好きだよ!悪いか?」
    英二はからかわれて怒った子供みたいだった。
    「よし、それでいいんだよ。でもな選ぶのは由里なんだ。由里の気持ち、ちゃんと聞こう。な?」
    「由里、俺今日お前に会いに行ってたんだ。で、お前達見てどうしようもなくて気付いたらここまで来てた」
    英二・・・やっぱりそうだったんだ。
    「店抜けてから今までずっと客からもオーナーからの電話もシカトしてて。でも俺、そんなこと今はどうでもいい。ナンバー1は手放せてもお前のことは手放せないって分かったんだ」

    2005-07-19 04:53:00
  • 229:

    ちひろ

    由里ちゃん応援してます?私色々と悩みあるんやけどこの小説見るの楽しみにしてて、読んでるといつのまに悩みも吹っ飛ぶし、何が言いたいかよくわからんけど。。。??頑張ってね?完結まであたたかく見守ってゅきます??〃

    2005-07-19 04:54:00
  • 230:

    英二の言葉は私の中で大きく響いた。英二がこんな風に一生懸命なこと言うのって、三年前のあの頃だけだったのに。
    私は何故か涙が出た。
    嬉しいから?英二が元に戻ってくれたから?ううん、違う。そうじゃなかった。私は分かっていた。
    いつの間にかもう英二とは終わってたことが。私の中に英二より大きな晃太という存在ができていたことが。
    「ご、ごめん英二」
    私が話し始めると晃太は距離を空けるようにマンションの入口から離れた場所に座った。

    2005-07-19 05:02:00
  • 231:

    「ありがとね。本当に嬉しかった。英二が昔に戻った気がして。ずっと一緒にいたもんね由里と英二」
    「そうだな。だから分からなくなってたんだよ。近くにいすぎてそれが当たり前でさ。お前はいつでも許してくれてたから、だから懲りずに女遊びしたりして。馬鹿だよな俺」
    「うん、馬鹿だね。由里言ったじゃん?もう若くないんだしこれからのこと考えてるって。でもね、英二とのこれからをいくら考えても何も答えが出なかったんだ・・・」

    2005-07-19 05:07:00
  • 232:

    「何も?」
    「うん。きっとね、戻ったとしても英二はホスト辞めずに続けて由里はホステスして結局今までと同じで時間だけが流れてくだろうなって。だって今から就職したり落ち着く気なんてないでしょ?社会人になろうって。だからね、先が全然見えなかった。それに英二バカだからまた浮気したりして不安にさせられるだろうって思った。我慢させられるって。言わなかったけど英二の客が店に来たこともあったんだから」

    2005-07-19 05:13:00
  • 233:

    ちひろちゃんありがとう?読んでもらえて嬉しいです?頑張っていきます?

    2005-07-19 05:15:00
  • 234:

    「え・・・?それマジかよ?」
    「それだけじゃないよ。酔って帰ってきた日にシャツにグロスがベッタベタについてたりラブホのレシート見つけたり。でもずっと言わなかった。やってないって自分に言い聞かせてた。英二はそんなことしないって。でもね、普通の女の子ってそんなことしないよ?当たり前に喧嘩して怒ったりさ。由里ね、あゆみとか見てて羨ましかったんだ・・・普通の恋愛して普通に幸せそうなのが。英二といると楽しかったよ本当に。だから嫌なことも我慢できたと思う。でも気付いたんだよね」

    2005-07-19 05:28:00
  • 235:

    「好きって思う気持ちは我慢に繋がるはずじゃないって。壊れそうだったよずっと。割り切らなきゃって。ずっとホステスしてきたけど同伴とかアフター以外で客と会うことなんてなかった。英二と付き合ってた間、男と二人で会ったことなんてなかった。何でだか分かる?由里は英二の由里だったから。いくら裏切られて泣かされても、英二のこと好きだったから」

    2005-07-19 05:35:00
  • 236:

    自分でも何を言っているか分からなかった。拭いても拭いても流れ出る涙。言いたいこともまとまらないまま出てくる言葉を必死で並べた。
    「俺、もう手遅れなの?なぁ由里、俺お前にもう何もしてやれないの?最低な男のまま終わるのかよ」
    英二はそう言うと壁に自分の手をドンとぶつけた。
    「最低な男のままじゃないよ。だって英二さっき超かっこよかった。いい男になったじゃん。由里にできなかったこと、次に大事に思う子ができた時にしてあげてよ。もう泣かしたり我慢させたりしないでね。」

    2005-07-19 05:45:00
  • 237:

    「あいつ、あ、矢口は何なの?あいつお前と付き合ってんの?」
    「うん三日前から。英二さっき言ったじゃん?遊ばれてるって。あれさ、他の人にも言われたんだよね」
    私も分かってる。夏美さんみたいに永遠の相手と思っていても別れることがあったり、相手が別の誰かを好きになることがあるって。
    「だったら何で?遊ばれてもいいってことか?あいつ野球選手だぜ?俺よりひどいよ絶対」
    英二は何時も同じようなことを言った。
    「でも由里は信じようと思ってる。あの人そんなに悪い人じゃないよ。遊ばれたならそれまでだし」

    2005-07-19 05:50:00
  • 238:

    「俺にはもう勝ち目はないの?」
    英二が悲しい目で私を見た。
    「勝ち目とかそんなんじゃないじゃん」
    そんな言葉しか見つからなかった。
    「俺やっぱムリだわ」
    えっ?何が・・・?
    「今はとりあえず何言っても無理だし待ってるよ。お前が選んであいつのとこ行っても。いつでも戻ってこいな。お前に恥ずかしくないように俺も頑張って変わるから」
    そう言うと英二は晃太の所に歩いて行った。
    「ちょっと待ってよ」
    私は追い掛けた。

    2005-07-19 05:57:00
  • 239:

    「あの、俺、由里のこと諦めませんから。とりあえずは振られたけど絶対諦めませんから。あと、泣かせたりしたらマジでぶっ殺すから」
    英二の言葉を聞いて晃太が言った。
    「俺は大事にするよ。多分君のとこには戻らない。」

    2005-07-19 06:01:00
  • 240:

    名無しさん

    ???

    2005-07-19 08:25:00
  • 241:

    「戻るとすればそれは俺より君のことが大事だったってこと、でも俺は由里を傷付けたり泣かせたりしない。幸せにする自信あるから」
    晃太・・・。
    そして私の手を掴み、引っ張りながら晃太は歩いた。英二の方を振り返るとただ呆然と私達を見ていた。
    ごめんね英二。もう気持ち動きだしちゃったんだよ・・・。

    2005-07-20 01:31:00
  • 242:

    男と女。こればっかりは本当に分からない。
    答えなんていつまでも見つからない。色んな恋愛があっていくつものストーリーがある。
    今日は幸せで笑っていても明日には壊れてしまうこともあったり。永遠を誓い合って結婚しても結局別れてしまったり。
    本当に変わらない想いなんてこの世に存在するんだろうか。好きで大好きで相手も同じように思ってくれてずっとずっと幸せでいれることなんてあるのかな。

    2005-07-20 01:48:00
  • 243:

    私は止まらない涙をただ流し続けた。
    タクシーを拾い、晃太の隣にいても何故か泣きやめなかった。
    でも晃太のマンションに着いてやっと涙も止まった。新しい自分、新しい恋、新しい・・・
    幸せにならなきゃ。英二にあんな顔させておいて私まで暗い顔してられない。晃太にもこんなんじゃ嫌われちゃう。
    「明日さ、由里試合見に来る?気晴らしって言ったら変だけど」
    試合?晃太の?
    「え?」
    「いい席取ってあげるからさ。おいでよ」
    「うん行く!」
    ちょっと嬉しかった。きっと晃太は元気づけてくれてるんだろうな。

    2005-07-20 02:09:00
  • 244:

    もう外は明るくなってきてる。いつの間にか朝になってた。
    そして今日も晃太と私はキスして手を繋ぎ何もしないまま寝た。でも繋いだ手はいつもより強く感じた。
    晃太といる時間が心地いい。あんなに泣いてたのに今はもうこんなに落ち着いてる。私も単純だなぁ。
    ピピーピピー
    気付けば時計のアラーム音で目が覚めた。泣き疲れて寝てしまってたみたいだ。顔を洗って起きた後、ご飯を炊いておいた。
    晃太リクエストのオニギリを作るため。そして晃太を起こすため寝室に戻ると急に晃太に手を引っ張られ、そのままベッドで抱きしめられた。

    2005-07-20 02:17:00
  • 245:

    「そろそろ起きてもうお昼になっちゃうよ」
    私は抱きしめられたままで少し苦しかった。
    「いーの!由里ぃ、俺のこと好き?」
    甘えた声で聞く晃太。
    いつもは大人でクールな感じなのにこの時は可愛く思えた。
    「好きだよ」
    私が答えると晃太はそのまままた私をギュッと抱きしめた。
    その時気付いた。晃太は勃ってた。どうしよう・・・何故か恥ずかしくて気付かないふりをした。
    「俺の由里だよね?」
    私はウンと頷いた。
    「俺だけの由里にしたいんだ・・・いい?」
    それってHするってこと!?

    2005-07-20 02:27:00
  • 246:

    いい・・・ってゆうより恥ずかしくて答えられなかった。ただ晃太の背中をギュッと抱きしめた。
    すると晃太は私の顔を見てキスをする。おでこにも頬にも唇にも。首筋にキスされた時、体中がゾクっとした。
    晃太の優しいキスで私の体は痺れる。
    「由里かわいい」
    晃太がそう言うと私は晃太が欲しくなった。早く抱かれたいって。

    2005-07-20 02:35:00
  • 247:

    着ていたキャミと短いスエットパンツをぬがされ、下着だけになった。晃太は私の体中にキスしながら舐めてくる。
    押さえようとしても漏れる私の声を聞くと晃太は息を荒げた。
    晃太の唇は今まで感じたことがないくらい柔らかくて優しい。全身が感じてしまう。
    そしてそのまま下着も取られ晃太の唇は私の胸元、それからあそこにも動いていった。
    恥ずかしさと気持ちよさでおかしくなりそうだった。

    2005-07-20 02:48:00
  • 248:

    全てを書くと思い出して恥ずかしくなるからこんなところで終わります。晃太との初めてのHはこんな感じで初Hながらも凄く感じた。
    それから晃太がシャワーを浴びている間に、オニギリを作り晃太の仕事の準備をしてソファーでテレビを見ていた。
    シャワーから出てきた晃太は私の隣に座りまた私を抱きしめた。
    「可愛いなーマジで」
    晃太にそう言われると何故か照れ臭かった。
    出かける用意ができ晃太を玄関まで送る時
    「はい、これ」
    そう言ってカギを手渡された。
    あ・・・これって作ってくれた合鍵?

    2005-07-20 02:58:00
  • 249:

    「本当に持ってていいの?」
    晃太は笑顔でウンウンと頷いた。
    「何時頃来る?今日」
    あ、そうだ。今日見に行くんだった。
    「うーん何時頃から行けばいいの?」
    私は今まで数えるぐらいしか観戦に行ったことがなく、何時に入れるのかなどよく分からなかった。
    「そうだなぁ、試合は六時からだから六時頃でもいいし早く来るなら練習やってるし四時とかでもいいよ」
    そんな早くから入れるんだぁ。
    「じゃー早く行くよ」
    「チケット出しておくから窓口で・・・」
    そう言って受け渡しのやり方を説明してくれた。

    2005-07-20 03:05:00
  • 250:

    「ほんじゃー行くね。いってきます」
    そう言って晃太は出て行った。
    私はウキウキだった。何だか特別な気がして嬉しかった。渡された合鍵を見ていると自然と顔がにやけてくる。馬鹿みたいな顔だ。
    早く用意しなきゃ。そしてシャワーを浴び、私も用意を始めた。
    何着てこっかなぁ。暑いだろうし・・・結局白のタンクとジーンズで行くことにした。まだ時間もあったので髪を軽く巻いて、鏡の前で晃太に貰った帽子をかぶってみた。
    よし!オッケー。こんな感じでいいや。
    少しテレビを見た後、私もマンションを出た。

    2005-07-20 03:23:00
  • 251:

    タクシーを拾い
    「***までお願いします」
    と言うと、それから私はボーっと外を眺めていた。暑いなぁ今日も。
    タクシーで球場に近付くにつれユニホームを着た人達が何人か見えてきた。そしてタクシーをおり私は言われていた窓口を探した。
    あ、ここだ。
    「矢口さんから相川でチケットが〜」
    晃太に言われとおりに窓口の人に言うと、そのままチケットを渡された。すごいなぁこんな簡単に出せるもんなんだぁ。
    入口ゲートを探し、球場に入った私はチケットに記範されていた席を探した。
    探していくうちにどんどん下のほうに行った。

    2005-07-20 03:33:00
  • 252:

    やっと見つけた!と思ったら、もうそこはビックリするぐらいよく見える席だった。
    ベンチのちょうど上あたり。私は席を確認した後、飲み物を買いに行った。戻ると練習風景が見える。
    晃太どこなんだろ?いるのかな?まだ練習中な球場内はファンの人達が前に群がって練習を見ている。
    その時誰かに呼ばれた気がした。あれ?気のせい?
    「由里ーこっち」
    あれ?また聞こえた。
    キョロキョロ周りを見ているとそこには晃太がいた。中から手を振ってる。それに気付いた周りのお客さん達も私を見た。
    ちょ、ちょっと・・・何なのこの空気。

    2005-07-20 03:41:00
  • 253:

    晃太は呼ぶだけ呼んでおいてすぐ練習に戻った。
    ジロジロ見られてる。どうしよう・・・私は目線をそらし下を向いた。その中でも特にYAGUCHIと書かれたユニホームを着た女の子はずっと私を見続けていた。
    それからしばらくして女の子達は私の横を通って行く。すれ違いざまに笑っていた。
    「ハハッ全然可愛くないじゃん。似合ってないし。調子乗って見に来てんじゃねーっつーの。ハハハッ」
    笑い声が耳ざわりだった。可愛くない・・・か。別にどうでもよかった。誰に何言われても晃太に言われた言葉で全部忘れられるから。

    2005-07-20 03:49:00
  • 254:

    あの娘達もきっと晃太のこと好きなんだしね・・・晃太のファンなんだもん。
    しばらく練習を見ていると、須藤さんと晃太が楽しそうに笑っていた。やっぱりかっこいいなぁこうして見てると。
    私は晃太の全てに引かれていく気がした。
    観客もどんどん増え、試合が始まり熱気に包まれていく場内。テレビとは全然違う。
    晃太は今日もヒットを打ち、須藤さんも他の人も打ちまくり試合も盛り上がっていく。結局試合はそのまま勝った。

    2005-07-20 03:56:00
  • 255:

    晃太達はベンチに入っていった。鳴りやまない歓声の中、しばらく座っていると携帯が鳴った。
    「もしもし」
    「由里?近くで待っててほしいんだけど。一緒に帰ろう」
    球場近くの場所を説明され、そこのお店で待つように言われた。電話を切り球場を出ると人の多さで目が回りそうになる。
    ただてさえ暑いのによけいに暑くなる。言われたとおりにしばらく歩くとカフェがあった。
    多分ここのことなんだろうなぁ。そう思い中に入って待つことにした。
    まだかなぁ?すぐ出てくると思ってたのに・・・長いよ。

    2005-07-20 04:03:00
  • 256:

    その時晃太から電話が鳴り、前に着いたみたいだから会計を済まし外に出た。
    晃太のベンツが止まっていたので急いで乗り込んだ。
    「遅いよぉー」
    ちょっとふくれた私をみて平謝りする晃太。
    「ごめんごめん!なんか旨いもんでも食いに行こ。機嫌なおしてよ」
    「分かったぁ」
    そうは言ったけど機嫌なんて悪くないよ。怒ったふりしただけ。今日は本当に楽しかったもん。
    「しゃぶしゃぶでも行こっか」
    晃太が行きたいとこならどこでもいい。一緒にいれるなら。

    2005-07-20 04:10:00
  • 257:

    お店に着きメニューを見ていた晃太は、とりあえずお酒を飲みたそうだった。
    「いーよ飲んでも。帰り由里運転するから」
    「マジで?いいの?」
    嬉しそうな晃太。喜んで注文していた。
    その時、晃太の携帯が鳴った。笑っていた顔つきが変わっていく。困ったような顔に。
    誰?・・・聞かなくても分かる。だから聞かない。聞きたくない。

    2005-07-20 04:14:00
  • 258:

    「由里ちょっとごめん。アミだわ。やましくもないし由里に心配させたくないからここで出ていい?」
    出ていい?って聞かれても・・・。私はとりあえず頷いた。
    「もしもし」
    「なんだよだから」
    「今彼女と飯食ってんだって。いい加減にしろよ。もうかけてくんな」
    そんな言葉がずっと繰り返される。アミって人、晃太に未練あるんだろうな・・・てゆうかモデルなんだよね。超キレーだったし。
    「しつこいんだよ」
    最後に晃太は怒った声で電話を切った。
    シーンとする空気。

    2005-07-20 04:21:00
  • 259:

    「ごめんな何か」
    晃太が謝ってきた。
    「うん大丈夫。でも元カノ晃太のことまだ好きなんだね」
    「知らねー。意味わかんねーし。彼女できたって言ってんのに私は雑誌の専属決まったからとかワケわかんねーこと言ってきてさ」
    「へ、へぇー」
    雑誌の専属か・・・そういや美香にも聞いてたなぁ。すごい人なのかも。いや、すごい人になってくのかも。
    もしトップモデルにでもなってめちゃくちゃ有名になったら晃太どう思うんだろ?

    2005-07-20 04:27:00
  • 260:

    晃太が選んでくれたのが私でも私はまだ自分の一部しか見せてない。隠してるわけじゃないけど言えない自分がいる。
    でもいつかはばれるんだよね。言わなきゃいけないんだよね。そう思うと不安になる。
    だけど・・・晃太なら、晃太なら大丈夫だよね?
    「由里?」
    考えこんでいた私を見て晃太が言った。
    「ごめんね嫌な思いさせちゃって」
    「え!?あ、大丈夫だって。気にしてないから。でも専属モデルかぁ。すごいね」

    2005-07-20 04:38:00
  • 261:

    「すごいのかな?由里だってすげーじゃん。ずっとナンバー1なんでしょ?昨日お店の子が言ってたよ」
    「すごくなんかないよ・・・そんなの」
    私の声は小さくなった。
    比べられるものじゃない。ホステスとモデルなんて比べるものじゃないよ。
    あんなにプライドを懸けて守り続けていたナンバー1だったけど、さすがにモデルと比べられると・・・胸張って勝つ自信なんてない。誰もがモデルを選ぶはずだから。

    2005-07-20 04:44:00
  • 262:

    色々考えてるうちに食事が済み、もう帰ることになった私達は、会計をしてお店を出ようとした。
    その時晃太は店員さんにサインを頼まれ色紙にあっという間にサインをした。やっぱり晃太は有名人。そして私はただのパンピー。そう思うと寂しくなった。
    今日球場で笑ってた女の子達も、相手が前の彼女だったらあんなこと言わなかったのかもしれないな・・・。
    晃太と家に二人でいる時はあんなに幸せなのに。何も不安になんてならないのに。

    2005-07-20 04:51:00
  • 263:

    ベンツに乗った私は初めて運転する晃太の車に改めてビックリさせられた。
    すごい設備だなぁ本当に。それに晃太を乗せて走るなんて・・・何故か少し緊張した。
    家まで帰っている間、晃太の携帯がまた鳴っていた。でも晃太はもう出なかった。きっとまた元カノだ。
    「いいよー出ても」
    晃太に言った。でも
    「いいよもう。本当あいつしつこいし」
    そう言って携帯の電源ごど切ってしまった。
    それから私達はマンションに着き地下の駐車場に入ろうとした。

    2005-07-20 04:58:00
  • 264:

    その時誰かが車の前に飛び出し立っていた。
    「あいつ・・・マジだりーな」
    そう言って晃太は車をおりていく。あいつって?もしかして前の彼女?
    何か言い合いになった後、その人が私の方に向かって歩いてきた。
    コンコンッ
    とその人は窓を叩く。
    えっ!?私?慌てながらも私は窓を開けた。
    「あんたが彼女?」
    その人は少し怒った声で私に聞いてきた。
    「あ、ハイ・・・」
    小さな声で答えた。
    「聞いていい?何やってる子?学生?タレント?モデル?」
    次々に言葉がでてくる。

    2005-07-20 05:04:00
  • 265:

    「俺だって普段は普通の男なんだよ。普通の女が彼女で何が悪いんだよ?お前は俺を、いちスポーツ選手だと思ってるからそんなにがっついてんだろ?違うか?」
    晃太がそう言うとその人は泣き出してしまった。晃太はそれでも関係なしに車に乗り、私に駐車場に入るように言った。
    行っていいものなのかどうなのか分からず進めないでいると晃太は怒って車をおり、マンションに一人で入って行ってしまった。

    2005-07-20 05:16:00
  • 266:

    するとその女の人は、泣きながら私を怖い顔でにらみつけた。
    「自分が晃太に釣り合ってると思ってるわけ?晃太が誰なのか分かってんの?矢口晃太なんだよ?」
    痛い言葉だった。
    そんなの私が一番よく分かってる。いちいち言われたくなかった。
    返事もせず車を進ませ駐車場に入った。
    昨日は英二で今日は元カノ。本当に波乱ばっかり。晃太と付き合ったばかりなのにこんなんじゃ先が思いやられるよ・・・。

    2005-07-20 05:23:00
  • 267:

    名無しさん

    ?

    2005-07-20 10:36:00
  • 268:

    ?めめ?

    しぉり☆

    2005-07-20 16:07:00
  • 269:

    めっちゃぉもしろぃ(◎^□^◎)続き気になるぅ(>∩<)ヽ

    2005-07-20 17:34:00
  • 270:

    まぁ

    すっごくおもしろくて毎日読んでいるんですが、略が多くてちょっと読みずらいです?できたら略をなくしてもらえますか?

    2005-07-20 21:39:00
  • 271:

    名無しさん

    2005-07-21 07:07:00
  • 272:

    読んでもらってありがとうです?略がない方が私としても読みやすいと思っているのですが、何文字以下なら大丈夫なんですかね?
    いつも長くなってしまうので書き込みの文字数減らしてみます??

    2005-07-21 23:49:00
  • 273:

    車をとめた私は、エレベーターに乗り晃太の部屋に入った。
    晃太はイライラした顔で私を見る。何なの?
    怒りたいのは私の方だよ・・・。
    「何怒ってるの?」
    私が聞いても晃太は黙ったまま答えない。
    「ねー?聞いてる?」
    そう言うと晃太は突然大きな声で怒った。

    2005-07-21 23:58:00
  • 274:

    「さっき何で何も言い返さなかった?悔しくなんなかったの?自分が彼女だから!って迷惑なんだって何で言わないんだよ!あんな風に言われて腹立たなかったの?」
    私は何故か泣いてしまった。悔しいって晃太に言われなくても自分が一番思ってるんだから。晃太が思ってるよりもずっと私は傷付いた。
    「ご、ごめん」

    2005-07-22 00:12:00
  • 275:

    晃太は困った顔で謝ってきた。
    「俺、好きだから由里のこと。だからあいつが由里のこと何も知らないのに普通だとか見下したこと言ってきてむかついたんだ。イライラして・・・由里に当たるとこじゃないのに。ごめんな」
    晃太は大切に思ってくれてる。私もそれを信じてるはずなのに。

    2005-07-22 00:17:00
  • 276:

    目の前に障害物ばっかり現れて、それを乗り越えてもまた新しい障害物が出てきて。
    こんなんで大丈夫なのかな?安心してもすぐまた不安になって・・・何の心配もなく笑ってたいよ。
    晃太のそばにいることが初めは信じられなかったのに、今は一緒にいればいるだけどんどん欲張りになってく。
    晃太と一緒にいることだけで幸せだって思ってたのに。

    2005-07-22 00:29:00
  • 277:

    人って欲張りでないものねだり。
    英二といた時は、たまには家じゃなくて外でデートしたいって思ってたな。
    でも今は晃太と家にいる時が落ち着くし、外で周りを気にするのも疲れるから嫌で。

    2005-07-22 00:47:00
  • 278:

    結局は目の前にある幸せに慣れちゃって、こーじゃないあーじゃないって思って。
    離れたり失うまで当たり前の幸せを気付かない人だっている。でも気付いた時にはもう遅いんだよね。どれだけ相手を思っていて後から気付いたとしても。
    だからそばにある幸せを大事にしたい。見失わないように。

    2005-07-22 02:06:00
  • 279:

    晃太は私の隣に座り肩を抱き寄せて頭を静かに撫でてくれた。
    「よく頑張ったな」
    そう言ってずっと頭を撫でてくれた。
    「嫌にならないの?」
    私が聞くと晃太は優しく笑ってうなずいた。
    「中卒でもホステスでも?晃太に釣り合ってないよ?」
    もう一度聞いてみた。
    「由里はそういうの気になる?学歴とか職業とか。そういうので人好きにならないでしょ?俺は由里が好きなんだよ。そのままの由里が」

    2005-07-22 02:23:00
  • 280:

    そう・・・だよね。私も晃太だからきっと今こうしてるんだもん。
    胸の中にあったモヤモヤがなくなっていく。楽になっていく。言ってよかったな、そう思った。
    「由里は兄弟何人?」
    「え?下に弟と妹が二人。四人だよ」
    「そうなんだー。俺は三人兄弟の一番下。一番上は美容師で真ん中は消防士」
    す、すごいなぁ。で、一番下の晃太はプロ野球選手でしょ。すごい三兄弟だ。
    「弟いくつ?」

    2005-07-22 02:34:00
  • 281:

    「21だよ」
    私は答えながら由輝ももうそんな歳になったのかと少し寂しく思った。由輝は渋谷に住んでるからたまに食事したりよく会うけど、私からすればいつまでも弟だから可愛い。
    21になっても変わらないんだよね。でも最近は一緒にいるとカップルに間違えられたりすることもある。由輝も大人になったってことかな?
    「今度会わせてよ。俺末っ子だから弟ってほしかったんだよね。また一緒に野球も見においでよ」
    晃太はそう言ってニコッと笑った。だめだ・・・この顔。こんな可愛い顔されたら目が離せなくなる。

    2005-07-22 02:47:00
  • 282:

    「今度俺も浦安遊びに行ってもいい?」
    突然の言葉に驚いた。
    「えっ!?どこに?」
    「由里の実家。軽く挨拶しておこうかと思って」
    私はビックリして言葉が出なかった。
    「駄目?かな・・・」
    晃太の声が少し小さくなった。
    「ううん駄目じゃない!大丈夫。ちょっとビックリしただけ」

    2005-07-22 03:10:00
  • 283:

    「よかったぁ。俺さ、ちゃんとけじめっつーかいい付き合いしたいなって思って。会ってすぐに由里は俺の最後の女な気がしたのね。だから結婚を前提にって言ったら重いだろうけど真剣に付き合いたいなって思ったんだ」
    結婚・・・真剣・・・か。って!?えぇぇぇー!?本当なの!?
    真っすぐ私を見る晃太の目は初めて見る真面目な目だった。

    2005-07-22 03:16:00
  • 284:

    「う、うん」
    そう戸惑いながら答えた私だったけど本当は飛び上がりたくなるくらい嬉しかった。
    付き合って間もないのにそんな風に晃太が思ってくれてたって分かって。でもきっとビックリするよねみんな・・・。
    お母さんも由輝達も。
    英二とも仲よかったし、特に由輝は。お母さんなんて晃太のチームのファンだし。付き合ってるなんて言って紹介したらビックリして倒れたりしないだろうか。
    私はそんなことをずっと考えていた。

    2005-07-22 03:24:00
  • 285:

    そして気付けば夜中になっていたので、明日からの遠征の用意をしてから寝ることにした。
    そうだ、もう金曜日だ。ってことは月曜日まで会えないんだよね・・・。少し寂しい気もした。
    それから私達はベッドに入り気付けば二人して疲れていたせいか深く眠った。
    そして私は朝、妙なくすぐったさで目が覚めた。くすぐったさの犯人は晃太だった。晃太は背中にずっとキスをする。
    「三日我慢できるかなぁ由里と会えなくて」
    そう言われ、私は晃太にそのまま抱かれた。

    2005-07-22 03:35:00
  • 286:

    起きた私はそれから移動中に食べれるようにと軽いお弁当を作っていた。
    用意が済み、リビングに現れた晃太を見るとスーツに身を包み超カッコイイ。
    「遠征移動はスーツだからダルイよ」
    晃太はそう言ったけどこんなにカッコイイならずっと見ていたくなる。新たな一面を発見した私は朝からゴキゲンだった。
    「じゃ行ってくるね」
    晃太は急ぎながら玄関に行き靴をはいた。寂しいなぁやっぱり。
    と、その時晃太が目を閉じた。

    2005-07-22 03:45:00
  • 287:

    なに!?
    「どうしたの晃太」
    私が聞くと黙って口をとがらせる。あ、いってきますのチューってこと?晃太がこんなことするなんて想像もしてなかったから意外だった。
    それから私はキスしようと頑張って背伸びをしたけど全然届かない。それに気付いた晃太が少しかがんでくれてキスをした。

    2005-07-22 03:52:00
  • 288:

    「今日タクシーでそのまま東京駅行くけど来れたら帰りは俺の車で迎えに来て。月曜の朝には向こう出るつもりだし。デートしよ」
    「うん分かった♪」
    そして晃太は出かけて行った。
    さて、私も用意して帰ろっかな。今日と明日は仕事もあるし。それにしても晃太のいない部屋は静かだなぁ。
    帰る用意をしながらこの六日間を振り返った。晃太と出会ったのは日曜日だったなぁ。
    まだ一週間もたたないうちに色んなことがあったしありすぎた。こんなことになるなんて一週間前は想像もつかなかったし。

    2005-07-22 05:20:00
  • 289:

    それから帰る用意ができた私はマンションを出てエレベーターに乗ると13階で人が乗ってきた。
    ペコッと私に軽い会釈をするその人は、あの歌手さんだった。
    「どーも。矢口君は一緒じゃないの?」
    突然聞かれた。
    「あ、ハイ。移動があるのでもう出ました」
    「君はどこ行くの?」
    「あ、帰ります家に」
    「なら送ってくよ」
    一階に着くまでそんな会話が続いた。
    「本当大丈夫です」
    私は何度も断った。

    2005-07-22 05:29:00
  • 290:

    「俺あやしい?大丈夫だよ矢口君とも知り合いだし。前に俺が仕事の時に偶然地下の駐車場で会ってね、彼女送ってくれるよう頼んだことがあったから。そのお礼みたいな」
    「あ・・・ハイ」
    困るなぁ・・・何話していいかも分かんないし。そう思っているとその歌手さんも困り顔になる。
    「心配なら矢口君に電話する?」
    「えっ?そんな心配とかじゃないんですけど。わざわざ悪いなっていうか緊張しちゃうっていうか」

    2005-07-22 05:37:00
  • 291:

    すると歌手の人は
    「大丈夫だって。ね、じゃあ送りますから」
    そう言うと地下に向かって歩いて行く。後を追うように私もついて行くと、BMWのオープンカーに颯爽と乗り込んだ。
    絵になるなぁ、プロモーションビデオとかも超よかったし。そんなことを思い出しているとその歌手さんは中からドアを開けてくれた。
    車は勢いよく走りだし、天気のいい空の下で六本木までのつかの間のドライブを楽しんだ。
    「彼女は何してるの?こっちの業界だよね?」
    悪気はないのだろうが私は素性を聞かれる質問が嫌だった。

    2005-07-22 05:46:00
  • 292:

    「あ、いえ違います」
    「そうなんだー。あっそうだ、今度ライブやるんだけどよかったら矢口君と見に来ない?」
    ラ、ライブー!?
    「あ、ハイ。是非」
    「また矢口君にも言っておくよ」
    そんな会話が続く。
    でも信号待ちになるたびに隣の車や歩いている人達がビックリしている。それもそのはずこの歌手さんは某グループバンドの人気ボーカルなのだ。
    それなのに案外普通っぽくて気さくで。

    2005-07-22 05:54:00
  • 293:

    私は思った。この人や晃太なんかもそうだけど、やっぱり勝手にイメージが作りあげられてるだけなんだなって。
    クールっぽいとかカッコつけとかイキがってるとか。勝手にイメージしてたんだなって。
    実際は全然普通だし優しいし。私はテレビの中に映る“見た目”に捕われて勘違いをしていたのだ。
    人は関わらないと分からないことがたくさんあるな、この時そう感じた。

    2005-07-22 05:59:00
  • 294:

    帰り道を説明しながら車は進み、私のマンションに着いた。
    「ここです。ありがとうございました」
    私はお礼を言っておりると、その歌手さんはププッと車のクラクションを鳴らし軽く片手をあげ手を振った後走りだして行った。
    カッコイイ・・・私はいちファンとしてますます好きになった。彼女を大事にしている話もしていたし、イメージが良くなった。
    マンションに着いた私は、おとといこの場所で英二と話したことを思い出した。

    2005-07-22 06:05:00
  • 295:

    悪いことをしたとは思ってない。でも長く付き合っていたせいかいわゆる『情』というものが心のどこかに消えずにあった。
    マンションに入り部屋へ帰った私はとりあえず洗濯をしたりお風呂に入って半身浴をした。
    いつもの日課の営業メール、淡々とメールを打ち続ける。来店予約は三組ゲットしたが同伴はない。
    私の仕事に対する気持ちもだんだん変わっていってる気がした。同伴数も動員数も指名も売り上げも、全てのジャンルで1番でありたかったのに。

    2005-07-22 06:12:00
  • 296:

    今週は晃太が店に二回も来たこともあったし休んだりもしたし・・・晃手が来た日は早上がりしてたし一緒にいる時は営業メールも手抜いてた。
    私が私じゃなくなっていく。仕事命・・・だった私が。
    しばらくぼーっとしていると、時間がたつのは早くもう6時半になっていた。タクシーで美容院に向かいセットをしていると私と同じお店の女の子『レイ』が隣に座った。
    「ゆかりオハヨー♪」
    レイはいつもハイテンションだ。お酒が入っていても入ってなくても変わらずいつも元気な子。

    2005-07-22 06:19:00
  • 297:

    レイは私と同じ23歳。見た目も可愛くナンバー2だ。
    「最近よく休んでるじゃん体調悪いの?」
    レイが心配そうに聞く。これは私の偏見かもしれないがナンバー1と2は大概が仲が悪い、というよりお互いライバル意識が強く張り合っている。
    今まで働いてきた歌舞伎町やここ六本木の何件かのお店でもずっとそうだった。レイの前のナンバー2は潰しを入れてきたり客を取ろうとあらゆる手を使ってきた。

    2005-07-22 06:30:00
  • 298:

    ありもしない噂をたて、大ゲンカしたこともあった。でもこのレイは今まで見てきたナンバー2とは違っていた。
    愛されるキャラに筋の通った熱い性格、みんなに好かれるいい女だ。お店の女の子が私に気を使ったりする中、レイは私によく話してくる。
    仕事以外では冷めてる風に見える私にくっついてくるなんて変わった子だなぁと始めは面白く見ていた。
    ロッカールームでもそうだった。

    2005-07-22 06:35:00
  • 299:

    「今日どうするー?」
    「ご飯いこー」
    「飲みに行こうよ♪」
    仕事が終わるとそんな会話がロッカールームでたくさん交わされている。
    そんな中私はお店が終わればアフターか直帰か。少し前まで英二と付き合っていたこともあったし人付き合いなんてどうでもよかった。
    ナンバー1だから天狗になってるとか、話す機会がないとか、仕事以外では笑わないとか性格きついだとか。みんな好き勝手言ってくれたものだ。
    あんた達に何が分かるのって言う気にもならなかった。人にどう思われようがどうでもよかった。

    2005-07-22 06:42:00
  • 300:

    洋子が死んだあの時から、そう、あの時からなのかな?上辺だけの付き合いやその場限りの友達ごっこ。
    そうゆうのって馬鹿馬鹿しくて。洋子の葬儀に出席したのは前のお店にいた私達四人だけだった。そこは在籍が100人近くいた大箱のお店でみんなも洋子と仲良かったのに。
    友達って何なんだろうってあの時すごく思い知らされた。幸い私にはあゆみという親友って呼べる友達がいる。お店は違うけど洋子の頃にずっと一緒にいたホステス仲間も三人。人生相談できる夏美さんも。
    だからそれで充分だ。

    2005-07-22 06:51:00
  • 301:

    新しい子が入れば出ていく子もいて、入れ代わりの激しい夜の世界で“友達”を作る方が難しいことなんじゃないのか。
    友達ごっこなら誰でもできる。でも目ざとい付き合いなら初めっからしないほうがマシ。
    レイはそんな私の考えをことごとく打ち砕く。仕事が終わると食事や飲みに誘ってくるし断っても懲りずにまた次の日もその次の日も誘ってきた。

    2005-07-22 06:55:00
  • 302:

    痺れをきらした私は仕方なく食事に行ったことがある。それが一ヶ月ほど前のことだった。
    「ゆかりって何で仕事以外では誰とも話さないの?嫌いなの?人間」
    変な質問してくるやつだなぁってその時は不思議に思った。
    「人間が嫌いなんじゃなくて中身のない人間が嫌いなの」
    私がそう言うとレイはフーンと頷いた。
    「アタシのことも嫌いなの?」
    ストレートに聞くレイに私は思わず笑ってしまった。

    2005-07-22 07:01:00
  • 303:

    「ハハッ。あんた変わってるねやっぱり。ずっと思ってたんだけど不思議な子だよホント。別に嫌いじゃないよ」
    笑った私を見てレイも笑った。
    「アタシずっとゆかりって何考えてるか分かんなくて逆に友達になりたいってゆうかさ、ナンバー1の仕事以外の姿っていうの見てみたかったんだ」
    レイはそう言ってビールをぐいっと飲んだ。
    「お酒好きなの?」
    私はレイに聞いた。
    「うーん普通かな?でも飲む相手によって味違わない?楽しい時ってお酒も美味しいじゃん」

    2005-07-22 07:06:00
  • 304:

    「それはそうだね。店とかで飲んでる時も思うもん。同じお酒なのに飲む相手が違うだけでまずくだるく感じたりさ」
    「そうそう!」
    私とレイは初めて二人で話したのにやけに話が合った気がした。あゆみとは仕事の話はあまりしない。家族のことや彼氏のことはよく話すけど。化粧品販売の美容部員をしているあゆみとは、時間帯も真逆で日曜日ぐらいしかゆっくり会う機会がないし。
    それでも連絡はよく取ってるし会おうと思えばいつでも会える。そんな子がいるだけでいい。

    2005-07-22 07:13:00
  • 305:

    レイと初めてご飯を食べた日は気付けば朝の8時まで話していた。
    あゆみ以外の女の子とこんなに長く話したのって久しぶりだなぁって思った。
    「あのさアタシって多分悪いやつではないだろうし(笑)仲良くしてね」
    帰り際にレイは私にそう言った。
    「仕方ないなぁ」
    そう答えた私だったけど結構嬉しかったりもした。

    2005-07-22 07:17:00
  • 306:

    それから週に二〜三回、レイとご飯に行ったりしている。英二と別れてすぐだったこともあり時間もたくさんあった。
    「ゆかり?本当大丈夫?体調不良?」
    レイが聞く。
    「全然!ちょっとさぼり気味なだけだよ」
    「なんだサボリかー」
    そんな会話が続いた。
    「矢口は?ゆかり指名で来てたじゃん。何のルートで知り合ったの?」
    やっぱりその質問がきたかぁ・・・。
    「うーん、早い話がコンパかな。友達がセッティングしてくれたら相手が野球選手だったみたいな」
    「えースゴイじゃん。しかも同伴まで」
    「う、うん・・・」

    2005-07-22 07:25:00
  • 307:

    「口説かれた?」
    レイが聞いてきた。口説かれたってゆうか・・・何て言おうか迷っているとレイはイタズラっぽく聞いてくる。
    「やっちゃった?」
    「えっ?もう何なのー。いいじゃんもうそんな話」
    私は慌ててしまった。
    それからセットが終わった私達は美容院を出てお店に向かった。
    「ねぇもしかしてゆかり矢口と付き合ってる?」
    えっ!?
    「うーん分かんない。そんな感じなのかな」

    2005-07-22 07:31:00
  • 308:

    「ウッソー?マジ?」
    驚くレイ。
    「内緒にしててね。お店にも」
    「オッケー」
    そうこうしているうちにお店についた。着替えが終わるとすぐに指名客が来た。
    「ゆかりさんお願いします」
    マネージャーに呼ばれてフロアに行こうとした時
    「早速ご指名じゃん♪やっぱナンバー1だねー。てゆーか今日終わったら飲みに行こうよ。ねっ!」
    レイがそう言った。
    「いいよーじゃあそういうことで」
    私はそう答えると客席に向かった。

    2005-07-22 07:36:00
  • 309:

    何時間も続く接客。途切れることのない指名。それが楽しかったのに。今日は何本とったとか売り上げいくらだったとか、そういうの聞いて喜んだりしてたなぁ。
    私は心のバランスが取りにくくなっていた。晃太のこと考えると仕事に気持ちが入らなくて。
    実際七月はまだ二週目なのに成績によく表れている。レイとの本指名の差はたった12本。すぐに追い付かれてしまう数字だ。
    でも私は半分どうでも良かった。それにレイにならナンバー1取られてもいいかなって。抜かれても仕方ないかなって。

    2005-07-22 07:43:00
  • 310:

    きっと来週月曜日に晃太が帰ってきたらその日も休んでしまうことになる。他の曜日も未定なまま。
    休みがちになればそれは成績の急降下が目に見えて分かることになる。
    でもそれでも今の私には晃太との時間のほうが大切だと思った。
    人を好きになると周りが見えなくなったり、何かを犠牲にすることだってあるんだよね。お金もいらない、私はナンバー1のプライドもなくなってしまうくらいになっていた。

    2005-07-22 07:49:00
  • 311:

    営業時間も終わり、ロッカーで待っていたレイと着替えながら化粧を軽く直した。
    「どこ行くー?」
    そんな会話が始まる。
    いつもレイとはこんな感じ。お互い行く場所が決められないたちで、結局ブラブラ歩き疲れたところで目に入ったお店に入る。
    だからいつもバラバラだ。時間はまだ2時。
    「そうだ!超いいお店あるよ!ムーンってゆうんだけど」
    私は健にいのお店の話をした。
    「じゃーそこ行こ♪」
    行き先も決まり表通りに出た私達はタクシーを拾いムーンに向かった。

    2005-07-22 08:07:00
  • 312:

    携帯を見てみると着信が六件もあった。
    五件は晃太で一件は英二だった。メールを確認すると晃太から【仕事が終わったら?してくること?】と入っていた。
    「レイちょっと電話ごめんね」私はそう言って晃太に電話をかけた。
    「ハイハーイ。由里?終わったの?」
    電話の向こうは騒がしい雰囲気だった。
    「うん、終わって今から友達とムーン行くところ」
    と私が言うと
    「そっか。ムーンなら安心だしな。あってゆうか由里○○さんに送ってもらったでしょ」

    2005-07-22 08:12:00
  • 313:

    「あっごめん言い忘れてたぁ・・・」
    「電話あったからさ。彼女礼儀正しいしいい子だって言ってたよ。なんか俺も嬉しかった」
    「本当にぃ?由里超キンチョーして噛み噛みだったのにぃ。それより晃太今どこ?何してるの?」
    騒がしい雑音に私は思わず聞いてしまった。
    「あ、今先輩に連れられて・・・ごめんキャバなんだ」

    2005-07-22 08:17:00
  • 314:

    「そ、そっか。じゃー切るね」
    私は平然と電話を切った。でもすぐに晃太はかけ直してきた。
    「ごめんってば」
    「えっ?全然大丈夫だよ由里は。気にしないでゆっくり飲んでね」
    晃太は謝りながら電話を切った。怒ってるわけじゃなかった。ただ少し心配になっただけ。でも晃太の負担にはなりたくない。
    先輩との付き合いも仕事のうちだもん。そういう交流が、チームワークを深めることにもなるかもしれないし。
    理解ある女でいよう、子供みたいにすねてちゃだめだ。そう誓った。

    2005-07-22 08:22:00
  • 315:

    「ゆかりどしたー?元気なくなったじゃん」
    レイが私の顔をのぞきこんだ。
    「べっつにー。全然元気!超ゲンキー!」
    「何かあるんなら話してね。アタシじゃ役不足かもしんないけど。聞くことならできるし。ストレス溜めると肌に悪いしね」
    レイは本当に思いやりのある子だ。久しぶりにこんな女の子と出会った。友達・・・になれるかもしれないなぁ。
    携帯を見るとまだ?マークが消えてない。確認した私は一瞬頭の中がめちゃくちゃになった。

    2005-07-22 08:28:00
  • 316:

    それは英二からのメールだった。

    電話してごめん。俺、今日でホスト上がるんだ。俺には先が見えないって由里言ったじゃん?ずっとそのままだって。だから考えたんだよね色んなこと。で、辞めることにした。将来性のある男になろうって思ってる。矢口みたいに有名人にはかなわないと思ってるけどさ。お前がいつか俺の所戻ってきてくれた時、恥ずかしくない男でいたいから。日曜日から大阪行くし由里と会えなくなるのはキツイけど頑張ってくるよ。お前が全てだって分かったから。

    2005-07-22 08:37:00
  • 317:

    英・・・二?
    大阪って何?ホスト上がるってどういうこと?歌舞伎町の・・・歌舞伎町のナンバー1ホストなのに。
    大阪行くからって何なの?急すぎない?
    私は頭の中で一生懸命整理した。でもムーンに着いても上の空だった。
    レイを健にいに紹介すると二人は共通の趣味のサーフィンの話で盛り上がっている。私はというと自分でも分からないくらい動揺している気持ちを整理できないでいた。

    2005-07-22 08:41:00
  • 318:

    「ちょっと・・電話してくるね。ごめん」
    二人を残し席を離れた私はお店の外に出て英二に電話をかけた。
    2コールですぐに電話に出た英二は酔ってる様子もなく普通だった。
    「なにあのメール」
    私が静かに聞いた。
    「なにってあのままだよ。」
    「大阪ってどういうこと?っていうか由里が辞めさせたみたいじゃん。すごかったのに英二。ずっとナンバー1だったじゃん」
    「いとこが大阪で不動産関係の会社やっててさ。頼んだら営業なら雇ってくれるって言ってくれて。それが結構大きい会社なんだよね」

    2005-07-22 08:51:00
  • 319:

    「え営業?英二が?」
    「なんだよ俺だってリーマンくらい余裕だって。トークセンスもあるしな。でさ、もう俺やり直してくれとは言わないから。」
    英二の声がちいさくなった。
    「でもお前が俺を必要とした時っつーか戻ってきたいと思った時はいつでも帰ってこいな・・・俺三年ぐらいなら待ってるから」
    そう言って英二は無理して笑った。

    2005-07-22 08:56:00
  • 320:

    「大丈夫なの?本当」
    私は英二が心配だった。本当に大阪なんか行ってちゃんと就職なんてできるのかって。
    「最後に会いたかったんだけどさ。日曜日少しだけ時間ない?」
    日曜・・・日?
    「俺の門出なんだしさ、飯でも付き合ってよ。夜9時の新幹線だし」
    門出か。英二の新しい出発。新しい人生だ。
    「分かった」
    じゃーあさって。ということで電話は切れた。日曜は晃太がいない。私は自分が嫌な女だなと思った。

    2005-07-22 09:02:00
  • 321:

    ムーンに戻ると健にいとレイが話し込んでいた。
    「ごめんねーほんと」
    私はレイに謝った。
    「レイちゃんってマジで可愛いんだけど」
    健にいがニコニコ顔で私に言ってくる。少し照れ笑いしたレイも可愛く見えた。レイってこんな顔するんだぁ。もしかしてこの二人いい感じかな?
    私は黙って二人を見ていた。こういうのっていいなぁって。ドキドキドキドキするんだよね。

    2005-07-22 09:05:00
  • 322:

    レイの言葉に私達は一瞬ふと考えこんだ。
    運命・・・か。
    出会いや繋がり?本当にそうだ。晃太と出会ったあの日もそう。美香が誘ってくれなかったら会うことなんてなかったし。
    英二と別れてなかったらコンパなんて行くこともなかった。それにあの日座った位置やちょっとした会話、公園での出来事、あんなことがなかったら晃太という人に引かれることもなかっただろう。

    2005-07-22 10:21:00
  • 323:

    偶然か必然か。そんなのどっちだっていい。運命かなんてことも神様にしか分からないんだから。
    ただ、晃太と出会ったのも英二との三年間も、あゆみとの長い付き合いも大切な家族もみんな神様が与えてくれた贈り物なんだ。
    幸せになれるように、大事にするようにって。レイとの出会いも健にいとの出会いも夏美さんもみんなみんな。
    洋子との別れは忘れられないものだしきっと忘れてはいけないことだからいつも心のどこかにある。
    お父さんのことも、あの日から会ってないけど忘れることなんてない。元気にしてるかな?そう思える私になれて良かった

    2005-07-22 10:28:00
  • 324:

    優しい気持ちを持つだけで、人ってきっと幸せになれる。少しの思いやりが暖かい気持ちにさせてくれるから。
    信じる強さと信じられない弱さ。恋愛にはつきものだけど傷付いてもいいんじゃないか。自分の精一杯の気持ちを信じればいい、後悔する人は同じ失敗を繰り返すだけだと何かで読んだことがある。
    昔からよく聞いた。失敗は成功のもとだと。くっさい言葉だって馬鹿にしてた。でも今は結構好きな言葉だったりする。

    2005-07-22 10:36:00
  • 325:

    失敗を糧にすれば、何かがきっとプラスになるんだし。よくするも悪くするも自分次第。
    失敗したらまた頑張ればいい。立ち止まって振り返ってもいい。前だけ見て歩いていけるわけないんだから。
    でも振り返った時に笑えるように、あの時はあーだったなって。そうなれた時にまた一つ大人の階段を登れるんじゃないかな。
    後悔するのって寂しいじゃん。自分の生き方否定してるみたいで。

    2005-07-22 10:41:00
  • 326:

    その時晃太から電話がなった。
    「もしもし?」
    「あー俺オレ!今ホテル戻ってるとこー♪浮気してないかー?」
    珍しく酔っ払い口調の晃太。
    「ん?まだムーンだよ。酔っ払い?」
    「飲まされちゃってさ。もうダメー」
    その時晃太の電話から女の子の声がした。
    「矢口さん帰るん?」
    そんな風に聞こえた。関西弁?そっか遠征中だし・・・
    「晃太今どこ?」
    「んーと今はねぇタクシーん中だよー」
    タクシーの中?ってことは女の子も一緒に乗ってるの?

    2005-07-22 10:49:00
  • 327:

    「今キャバの子送ってるとこ。田村さんも一緒だから大丈夫だよー。ホテル帰ったらまた電話するからね!じゃーねチュッ」
    意味分かんない。
    酔っ払っちゃって馬鹿みたい。明日も試合だっていうのにこんなに朝まで飲んで。
    でも何してるか分からないよね。実際スポーツ選手は遊んでるってよく聞くし、野球なんて半分は遠征で地方に行ってるし。
    考えると不安になる。近くにいないと嫌だなぁ。
    「晃太何だって?」
    健にいが膨れっ面の私を見て聞いてくる。

    2005-07-22 10:55:00
  • 328:

    ?めめ?

    しぉり?
    略ゎ改行5回でなるんゃと思ぅょ?

    2005-07-22 10:58:00
  • 329:

    「知らない。女の子の声聞こえたし酔っ払ってるし。何してるか分かんない」
    そうは言ったものの日曜日の英二との約束のことを思いだし、自分も晃太のことを責められる立場じゃないなぁと思った。
    やっぱり会わない方がいいかもしれないな。でも・・・不思議な重圧感にかられていた。

    2005-07-22 10:59:00
  • 330:

    「帰ろっかそろそろ」
    レイに言うと眠そうにあくびをした。それを見ていた私と健にいは顔を見合わせて笑ってしまった。
    会計を済ましお店を出るといつものようにタクシーを止めてくれた。私達はゴチソウサマーと手を振りながら家路についた。
    帰り道の途中、レイは楽しそうに話していた。私の電話中に健にいと番号交換をしていた話や、趣味が同じこと、レイは延々と話し続ける。

    2005-07-22 11:05:00
  • 331:

    「ねーあんたホンットよく喋るよね(笑)疲れないの?めちゃくちゃタフじゃん。」
    私は笑いがこぼれた。レイは楽しい子だなって。でも謎も多い。お店にいる時のレイしか知らない。あまり昔の話も聞いたりしない。不思議なところがあるけどレイはレイだし今のレイが私は好きだった。
    「うち泊まってく?」
    ずっと話し続けるレイに私は聞いた。
    「えっ!?いいの?」
    目を丸くしてビックリするレイ。

    2005-07-22 11:11:00
  • 332:

    「いいよー。どうせ暇だしさ」
    私がそう言うとレイは喜んでいた。
    マンションに着いた私は、パジャマをレイに貸した。着替えてからもずっとレイは話し続ける。よほど今日が楽しかったんだろう。
    私は気になっていたことを聞いてみた。レイって地元がどこかとか昔からそんなにチャキチャキキャラだったの?って。
    そうしたら一気にレイの顔が落ちたんだよね。なんでそんなこと聞くの?ってゆう目をしてた。

    2005-07-22 11:16:00
  • 333:

    「ご、ごめん変なこと聞いて」
    私は焦った。人には聞かれたくないことだってあるんだ、私もあったし。
    「アタシね・・・」
    焦った私を見てレイが静かに話し始めた。
    「アタシ地元ってゆうか生まれは水戸で育ちは浦和。ちなみに親いないの。施設育ちなんだーアタシ。しかも両親の顔も知らないんだよね。ダサダサでしょ」
    いつものおちゃらけたレイからは想像できないくらい寂しい目をしていた。
    聞かれたくない、言いたくないこと聞いちゃったんだ私・・・

    2005-07-22 11:23:00
  • 334:

    名無しさん

    略なくして

    2005-07-22 11:35:00
  • 335:

    なちゅ?

    いろんな小説読んでるけど、カキコお初です?女の気持ちがすごいうまく表現されてて、めちゃ入りこんでしまいます?これからも楽しみにしてまぁす?

    2005-07-22 21:19:00
  • 336:

    私がそう言うとレイは首をかしげて溜め息をついた。私は自分が苦労してきた、大変だったって思ってたけど・・・私にはお母さんや兄弟、あゆみがいつも周りにいた。辛いことあっても誰かがそばにいてくれた。でもレイはそうじゃない、ずっと一人で頑張ってきたんだなぁ。
    レイは私と初めてご飯を食べた日、人間嫌いなの?って変なことを聞いてきてた。今はその言葉の裏にあったレイの心の声が聞こえた気がする。
    近くにいる人みんながレイにとっては大切に思えるんだって。人と距離を置いていた私を見て、レイは不思議に思ったんだろう。

    2005-07-22 22:42:00
  • 337:

    「由里もね、色々あったんだぁ。レイに比べたら小さいもんなんだけどね」
    私は初めてあゆみ以外の女の子に自分の過去を話した。たくさんあった出来事を。レイも昔、イジメにあったことがある話や、グレてヤンキーになったこと、施設での辛かった日々、そんなことを話してくれた。
    「アタシね、ゆかりって何でもできて何でも持ってる子だって思ってたの。だから最初は嫉妬してたんだー。でも中心にいていいはずのゆかりがいつも輪から離れてたじゃん。でも今日話聞いて分かった気がする。アタシも本当の友達ほしくなったなぁ」

    2005-07-22 22:51:00
  • 338:

    「もう友達じゃん。由里久しぶりだよこんなの。洋子って子が死んでから人って信じれなくなってたけど・・・あんたのこと信じるよ」
    するとレイは目に大粒の涙を浮かべうつむいた。ただ黙って泣いてた。私もそんなレイを見て少し目の前の景色がにじんだ。
    その時携帯のバイブが鳴り、見て見ると晃太からだった。でも私はそっとサイレントに切り替え、電話には出なかった。今はレイのこと考えてあげたかった。
    「さっ寝るよー。明日も仕事だし。起きたら軽く遊びに行こっか」
    泣いているレイに気付かないフリをして私はベッドに入った。

    2005-07-22 22:59:00
  • 339:

    「ねー由里ぃ」
    レイは初めて私を由里と呼んだ。でも私はそれをごく自然に受け入れられた。今までは“ゆかり”っていう仮面でしか夜の世界の人とは接してこなかったし由里って呼んだ人もいなかったけど。
    レイと間にあった壁はもうない。「大崎玲子」彼女との出会いがまた私を一つ大きくさせた。

    2005-07-22 23:17:00
  • 340:

    「プール行こっか。水着買いに行ってさー。超暑いじゃん」
    レイがプールに行こうと言ってきた。正直二日酔いにはキツかったけど、たまには昼間っから体動かすのもいいかななんて思った。
    私達は軽く用意して新宿に水着を買いに向かった。たくさんある水着、色とりどりの柄、見ているだけで楽しかった。
    「コレ可愛くない?」
    私達はそんな会話をしながら次々に合わせて見る。私は結局黒一色の大人っぽい水着を選んだ。
    レイは白一色の可愛い水着。色白の私と小麦色のレイ。肌の色も水着の色もオセロみたいだった。

    2005-07-22 23:38:00
  • 341:

    試着を済まし、レジも終わった私達はオープンしたばかりの新しいプールに向かった。
    寝起きはあんなに疲れてたのに今は何だか気分が良すぎるくらいだ。プールに着くと私達はすぐに飛び込み、買ったばかりの浮輪につかまり流れるプールに身をまかせた。
    気持ちいいな・・・っていうか楽しい!久しぶりに気分が晴れ晴れした。

    2005-07-22 23:42:00
  • 342:

    時間がたつのも忘れるぐらい、楽しくて大笑いした。気付いたら夕方の六時前。仕事の時間が刻々と迫っていた。プールから上がった私達はシャワーを浴びて更衣室で化粧を直す。
    「おなか空かない?仕事前に軽く食べようよ。時間もギリギリだし」
    レイが言った。
    「美容院どうするの?ご飯食べてる時間なくない?」
    「あーそっかぁ。ってもういいじゃん♪たまにはストレートで出勤もありじゃない?」

    2005-07-22 23:48:00
  • 343:

    多分私もレイもセットせず出勤するのは初めてだった。少し考えたけどたまにはいいかなって思い、レイとそのまま六本木に向かいイタリアンレストランに入った。
    私もレイもこうしているとどこにでもいる普通の女の子だ。髪とドレスを着るだけで変貌を遂げる夜の街にはこんな私達みたいな女の子がたくさんいる。
    大人びたフリをして男を操る。そんな私達を操る夜の街。本当は誰が一番の操縦者なんだろう。

    2005-07-22 23:53:00
  • 344:

    食事も済みお店に出勤すると周りのみんなが私とレイに気付かない。
    しばらくするとロッカールームにいた女の子が挨拶してきた。それにつられて周りの子達も次々に挨拶をした。
    「誰だか気付かなかったです。二人ともイメージ全然違ったから」
    私とレイは顔を見合わせて笑った。見た目だけでそんなに違うものなんだろうか。タイムカードを押し、指名客が来店していたのですぐに客席につかされた。
    今日もまた同じ時間が始まっていく。でもレイがいたから楽しかった。同じ席に着くと大笑いできた。

    2005-07-22 23:59:00
  • 345:

    送りだしをした後、携帯を確認するとメールが二件届いていた。晃太からだった。
    【昨日ホテル着いてから?したのに何で起きたらかけ直して来ないんだよ】あ・・・やばいなぁ。二件目は【?返ってきてないね。何やってんの?仕事中だよね?何時でもいいから連絡してきて。もうホテルだし今日はずっとホテルにいるから】

    2005-07-23 00:07:00
  • 346:

    晃太のこと忘れてたわけじゃなかったんだけど。久しぶりの楽しい時間に私はいつの間にか連絡することも忘れてたいた。
    とりあえず晃太にメールを返しておこう。
    【ごめんね?昼から友達とプール行ってたの?仕事だから終わったら?する】
    そんな感じで私は客席に戻った。戻ってすぐに、また指名がかかったので行ってみるとそこには黒木さんが座っていた。

    2005-07-23 03:39:00
  • 347:

    どうしよう。この前晃太と手繋いでるとこ見られたし・・・怒るかな?不安な気持ちのまま黒木さんの席に着いた。
    「どうだ最近は」
    黒木さんは普通に私に聞いてきた。
    「普通に、まぁまぁかな?今日はどうしたの?急に来るからビックリした」
    「昨日な、英二が急にラストで上がったんだ。由里、お前本当に英二と別れたのか?」

    2005-07-23 03:43:00
  • 348:

    私が初めて夜の世界に入ってから、黒木さんはずっとよくしてくれていた。英二のことも可愛がってくれてたし、この世界のどんなトラブルでも解決してもらってきた。
    「うん。別れた」
    私がそう答えると黒木さんはジッと私を見た。
    「英二のやつ大阪行くとか言ってたぞ?この間の、あの矢口か?あいつともしかして付き合ったのか?」
    私は言うべきなのか迷った。でもきっと黒木さんは気付いてる。隠したってムダなんだ。それにここまでやってこれたのは父親のような存在の黒木さんがいたからだ。ちゃんと言わなきゃ。

    2005-07-23 03:50:00
  • 349:

    「矢口さんのことがあって英二と別れたんじゃないよ。英二とは一ヶ月ちょっと前?に別れてた。矢口さんともまだ付き合ったって言ってもついこの間だし」
    「そうか。まぁお前達二人はずっと見てきてたからな、少し残念な気はするけど。そればっかりは俺にも何もできないからなぁ」
    黒木さんは遠い目をしていた。この人に守られてきたなぁ私も英二も。六年前に会ったあの頃より老けてしまった黒木さんを見て、改めて心の中でそう思った。

    2005-07-23 03:57:00
  • 350:

    悠?

    由里たんがんばって??

    2005-07-23 04:07:00
  • 351:

    それから私が、かぶっていた別の客席に戻っていた間に黒木さんはヘルプの女の子に由里に時間できたらまた電話してこいと伝えてくれと言って帰っていた。
    それから何席も着いた後、やっとお店も終わり疲れた私はしばらくフロアのソファーに横たわったままだった。
    昼間調子に乗って動きすぎたかな?そう思いながら目をつむると晃太の顔が浮かんだ。あっ電話しなきゃ。そして私は晃太に電話をかけた。
    「ハイ」
    少し眠そうな声で晃太が出た。
    「ごめんね。今終わったの。寝てたよね?」

    2005-07-23 04:14:00
  • 352:

    「大丈夫!心配してたんだずっと。何かあったのかなって。健に聞いたら昨日遅くまで飲んでたって言ってたし。でもプール行ってたとは(笑)元気じゃん」
    晃太の笑い声が電話の向こうから聞こえる。目を閉じればそばにいるようなそんな気持ちになる。
    「明日休みだろ?何してるの?」
    ドキッとした。英二と会うことを思い出したからだ。そんなこと晃太に言えるはずがない。やましい気持ちなんて全くないけど、きっと知ったら晃太はいい気分はしないだろうから。
    「お店の、あの、店の女の子と買い物」

    2005-07-23 04:20:00
  • 353:

    嘘をついた。小さな嘘?大きな嘘?そんなことは関係ない。私は自分が一番嫌いな嘘を晃太についてしまった。自己嫌悪・・・
    「そっか、じゃあ明日も忙しそうだなぁ。ま、夜には試合終わったら連絡するよ。疲れた声してるしちゃんと今日は真っすぐ帰って寝ろよ!」
    「うん。おやすみ」
    電話は切れた。疲れた声かぁ。何だか晃太に悪いことしてるよね私。お酒のせいで思考もおかしくなりそうだった。
    「ゆーりっ♪途中まで一緒に帰ろー」

    2005-07-23 04:27:00
  • 354:

    可愛いやつだなぁ。真っすぐで素直で嘘や偽りのない綺麗な目。レイを捨てた両親は馬鹿だな。うん馬鹿だ。
    私は疲れていたせいか色々考えてるうちにそのまま眠ってしまった。
    (♪〜♪〜♪)
    携帯の着信音で目が覚めた。aikoの花火。英二専用に設定していた電話の音だった。
    「おい起きたかー?ていうかめちゃくちゃ雨なんだけどマジおちるよー。せっかくディズニーランドでも行こうと思ってたのに」

    2005-07-23 04:41:00
  • 355:

    朝から英二の声はハツラツとしていた。時計を見るとまだ10時半だ。
    「っていうか早くない?今起きたんだけど。それよりディズニーランドって何なの」
    私は寝ぼけたまま英二に言った。
    「ん?思い出作りっつーか。初めてデートしたのディズニーランドだったじゃん。一年目も二年目も記念で行ってただろ?」
    記念?あ、そうだった。ドキドキしながら初めてデートした。記念日には行ってたよね。三年目・・・は記念日さえ一緒にいなかったっけ。その後すぐに別れちゃったし。

    2005-07-23 04:49:00
  • 356:

    二年目は由輝やお母さんも一緒に行ったりして。懐かしいなぁほんと。
    「じゃーとりあえず一時に待ち合わせしよっか。どこがいい?」
    待ち合わせ?か。何年ぶりだろ。待ち合わせなんてすることなくなってたよね。一年たった頃からは家でまったりしてばっかりだったし。
    「んーっとじゃあ2時に渋谷は?ベタにハチ公前とか」
    「オッケー!って2時かよ。分かったじゃ後で。遅刻すんなよ!」

    2005-07-23 04:57:00
  • 357:

    変な感覚。英二と待ち合わせとかするなんて。私は晃太への罪悪感にかられながらも英二との最後の一日を迎えた。
    晃太には頑張ってねってメールを入れておいた。ごめんね、そう思っていても私は英二と会うことを選んだのだから。
    用意して家を出ると本当にすごい雨だった。梅雨なんだからしかたないんだけど。これじゃ外には出れそうもないね。
    最後の日を雨にしたのは神様のいたずらなのだろうか。私達の今を表しているのかもしれない。この雨がやむ頃には・・・英二はもう大阪にいるのかな?

    2005-07-23 05:06:00
  • 358:

    渋谷に着いたのはちょうど2時ピッタリだった。雨の日の東京は色とりどりの傘をさした人でいっぱいで、きっと上から見れば綺麗な花のように見える。
    ぼーっとそんな光景を想像していると後ろから英二が現れた。
    「時間ピッタリじゃん。行こっか」
    そう言うと英二は歩きだした。
    日曜日の渋谷の街は若い子達で溢れ返っている。私も昔はこんな感じだった。自分の将来に何の不安も感じず、ただ一日一日が楽しければそれで良かった。そんな風に思えていたあの頃はもう過去になってしまった。

    2005-07-23 05:14:00
  • 359:

    英二がタクシーを止め、私達は乗り込んだ。
    「お台場まで」
    英二は運転手さんにそう告げた。私は何も聞かず黙って窓の外を見ていた。何でお台場なの?一瞬私は考えた。でも答えはすぐに見つかった。英二が小さな声でつぶやいたから。
    「観覧車・・・」
    「えっ?」
    「いや、お前さ前にお台場の観覧車乗りたいってずっと言ってたじゃん。でも俺また今度今度って行けないままだったから」
    観覧車か。そういや私行きたいって言ってたなぁ。でもずっと英二は仕事ばかりだったし。もういい!って喧嘩したりもしたっけ。

    2005-07-23 05:23:00
  • 360:

    私達二人はお台場に着くまでタクシーの中で静かに座ったままだった。雨の音がただ静かに響いていた。
    そしてお台場に着くと雨はさっきより少しマシになっていた。タクシーをおりて歩いていると私はつまづきそうになり、隣にいた英二が慌ててつかんでくれた。大笑いする英二。
    「ハハッお前さー昔っからよくこけそうになるよな。危なっかしいからヒール履くなっつーの」
    「うるさいなーもう」
    こうやってよくからかわれたなぁ。何度も転びそうになってそのたびに二人で大笑いして。あんな時もあったのに、何で私達こうなっちゃったんだろうね・・・

    2005-07-23 05:32:00
  • 361:

    私も英二も分かってる。今日が最後になること、もうこれから先、会うことがないかもしれないこと、あの頃にはもう戻れないこと。でも黒木さんは言ってた。笑って送ってやれって。
    そうだ、私が暗いと英二が辛くなるよね。
    私には帰る場所がある。晃太っていう新しく見つけた私の居場所が。
    見失っちゃいけない。そばにある幸せを。
    私達はすぐに観覧車に乗った。雨の日に乗るのは初めてで、景色もいいとは言えなかった。でもこのことはきっと私の人生の大切な1ページになる。多分、最初で最後の雨の観覧車。

    2005-07-23 05:41:00
  • 362:

    「由里。今幸せ?」
    向かい側に座った英二が頂上に着いた時、私に聞いた。真っすぐ私を見て精一杯の笑顔で。
    「幸せだよ」
    私もちゃんと答えた。
    「なんだよつまんねーな。やっぱり英二がいい!とか言うかと思ってたのに」
    そう言って英二は無理して笑ってみせた。
    「今日9時ぐらいまで時間ある?っていうか付き合えよ!最後なんだし」
    最後最後って言わないでよ・・・。

    2005-07-23 05:48:00
  • 363:

     

    2005-07-23 08:32:00
  • 364:

    名無しさん

    あげ?

    2005-07-25 06:13:00
  • 365:

    名無しさん

    略なくして?ここの主サンゎ読者のカキコゎシカトなん?

    2005-07-25 07:26:00
  • 366:

    スイマセン?ならないように書いてるつもりなんですが?改行五つでなるんだよね?
    略なし慣れれるように頑張ってみます

    2005-07-26 02:52:00
  • 367:

    あとわずかに残った英二との時間。少しの寂しさが心のどこかで胸を締め付ける。
    私達が出会った意味は?私は自分に問い掛けた。笑い合って何の迷いもなくお互いを必要としていたあの頃は私達に何を残してくれたのか。
    私も英二も観覧車が下に着くまでの間、言葉が見つからないのかただ外の雨をじっと見ているしかなかった。

    2005-07-26 02:59:00
  • 368:

    降り口に着き、係員が扉を開けると英二が私の手をとって降ろしてくれた。何気ない優しさだった。
    初めて英二と会った頃はこんな何気ない優しさや不器用な愛情表現に私は惹かれたんだっけ。
    「超腹へったー飯行こう何食う?」
    前を歩いていた英二が振り返って言った。
    「何でもいいよー。英二が食べたいもの食べよ」

    2005-07-26 03:05:00
  • 369:

    「まだ夕方だしなぁ。せっかくお台場来たのに雨じゃ景色も悪いし。うーん何にしよっか?」
    結局私達は歩きながら見つけたわりとお洒落な鉄板焼きのお店に入った。中は全て個室になっていて、私達は案内されるまま奥の個室へと入った。
    ガラス張りになった窓の向こうには海が見える。英二とこんな店で食事するなんて多分三度目ぐらいだ。付き合っていた間は近くの居酒屋がもっぱらだったし。

    2005-07-26 03:13:00
  • 370:

    ビールで軽く乾杯した私達は、運ばれてきた焼き物を食べながら昔話をした。英二も私も大笑いした。
    でも時間がない、そう思っていたせいか過ぎていく時間がいつもよりすごく早く感じた。
    「ほんとに行くの?」
    私はやっぱり信じられなかった。あんなに歌舞伎町で有名ナンバー1ホストになって全てを懸けて頑張ってたのにって。
    「うん、行く。もう決めたから。あ、でもお前が俺とやり直すとかそういうことだったら行くのやめるけど。こっちでも働き口探せるわけじゃん」

    2005-07-26 03:23:00
  • 371:

    「って嘘!もうやり直してとか言わないって約束したもんなぁ俺。ごめんな、っつーか女々しいよな。ダッセー」
    そう言った英二の横顔が夕焼けで照らされた。日が暮れて行く景色。オレンジ色の空。いつの間にか雨は上がってた。
    「英二見てよ。外、雨やんだみたいだよ」
    英二は私が指差した先を見ると目尻が下がり白い歯がこぼれた。嬉しそうに笑って馬鹿みたいに子供な顔して喜んだ。

    2005-07-26 03:32:00
  • 372:

    気付けば7時前になっていた。時間がたつのが早過ぎる。今日話したいことはたくさんあったはずなのに、それをうまく言葉にできない。大事なことは何も言えないまま・・・
    「なぁ由里、時間もそんなにないけど海。少しう、海とか見て話さない?」
    噛み噛みな英二。きっとガラにもないこと言うのが恥ずかしかったんだろうな。私も思わず何言ってんの?って意外な言葉に笑っちゃったから。
    「いいよ。じゃあこれ飲んだら行こ!」
    私がそう言うと英二は残っていたお酒をゴクゴクと飲み干した。

    2005-07-26 03:52:00
  • 373:

    かな

    最近かいてくれてなかったからもぉかかへんのかと勝手に思ってたぁ!めっちゃ楽しみにみさせてもらってます!長々とすいません。頑張って完結してくださぁい★

    2005-07-26 06:40:00
  • 374:

    はい?最近忙しかったので少しずつになってますが完結まで気長に見てもらえたら嬉しいです?頑張ります?

    2005-07-26 09:06:00
  • 375:

    私達がお店を出る時には外はもうさっきの綺麗なオレンジの夕焼け空から少し薄暗くなっていた。使わなくなった傘を持ち、ブラブラさせながら前を歩く英二の後を私は黙ってついて行った。
    日曜の夜のお台場はたくさんの男と女でいっぱいだ。寄り添う二人、手を繋ぐ二人、肩を抱き合う二人、幸せそうな恋人達がどこを見ても目に入る。
    その端ではスケボーを楽しむ男の子達、ダンスを踊る男女の笑い声が響いてくる。
    少し歩いた後、段差のある階段に英二がふと腰掛けた。そして私も英二の横に座った。

    2005-07-26 09:16:00
  • 376:

    「雨やんで良かったね。なんか少し蒸し暑い気はするけど。今は風もあるから気持ちいいし」
    「おーそうだなぁ。こんなに雰囲気あったり夜綺麗なんだったらもっと前に来てれば良かったよ」
    そう言って英二は海をぼーっと見ていた。キラキラ光るビルの光が遠くに見える。
    「俺さ、大阪行くの不安がないって言ったら嘘になるけど頑張って将来性ってやつ?磨いてくるよ。歌舞伎町であんだけ頑張れたんだから俺はどこでだって何でもやれるってそんな気しない?」

    2005-07-26 09:29:00
  • 377:

    「なにそれ超自信満々じゃん。でも・・・英二なら大丈夫だよきっと」
    こんなことぐらいしか言えなかった。もう時間がないって分かってるのに。何を言いたかったのか、考えれば考えるほど分からなくて。でもうまく伝えなくてもいい、言いたいことをそのまま言えばいいよね?
    「由里ね、好きとか嫌いとかそんなことじゃなくてね、一人の人間として英二を大切に思うよ。会えて良かったなって。一緒にいれて良かったって。三年半前だっけ?あの時から今日まで、これからだって英二は由里にとってずっと大事な人だから」

    2005-07-26 09:40:00
  • 378:

    「俺だってずっと大事に思ってるよ。まぁ俺の場合気付くのが遅かったけどな。幸せになれよって言いたいところだけど俺まだそんなにいい男な言葉言えねーや。あいつに泣かされたらすぐ言ってこいよ!取り返しに行くから。お前のこと」
    空を見上げた英二はそう言いながら目を閉じていた。何かを思い出しているかのように・・・
    「よし、そろそろ行こっかな俺。お前家まで送ってくよ」
    「えっ?いいよ由里東京駅まで見送りしてあげるから」

    2005-07-26 09:49:00
  • 379:

    「いいって!お前に見送りなんかされたら行けなくなりそうだし。寂しいじゃんそういうのって。お別れーみたいでさ」
    そうだけど・・・。
    英二は静かに歩き、タクシー乗り場を見つけると黙って乗り込んだ。送ってもらえば、私が家に着けばもう会えなくなる。
    だけど無情にもタクシーの中では野球のラジオ中継が流れていた。晃太のチームの実況が。
    晃太のことが頭によぎった。でもできることなら何も聞こえないタクシーに乗れたら良かったと思う。最後くらいはって。

    2005-07-26 09:59:00
  • 380:

    「由里これ」
    そう言って英二に手渡された小さな紙袋。
    「な、に?」
    「何ってなんだよ。んー何ていうか今までありがとうって意味の感謝みたいなもん」
    感・・・謝?

    2005-07-26 10:04:00
  • 381:

    ずっとバッグの中にしまってたのか少し型崩れしてゆがんだ紙袋が英二らしいなって思った。私は何が入っているのか開けてみようとした。
    「だめだって!後で開けろよ」
    英二が慌てて言った。
    「何で?いいじゃん」
    「だめって言ったらだめなの!もうすぐ着くんだしもう少しだから待てよ」

    2005-07-26 10:08:00
  • 382:

    「はいはい分かった」
    私はそう言ったものの早く見たくてしょうがなかった。家へと近付いてく道、寂しさが募っていく。
    そして気付けば私のマンションに着いてしまった。
    「やっぱり見送りする」
    私は思わずそう口走っていた。

    2005-07-26 10:13:00
  • 383:

    「だめだって早く降りろよ。辛い感じになっちゃうだろ?ほら」
    開いたままになったドア。降りてしまえばもう・・・タクシーの運転手さんも何かを察したのか何も言わずにいてくれた。
    「由里?俺もう大丈夫だから。お前は自分のことだけ考えろ、な?」
    英二の言葉に後押しされるように私はタクシーを降りた。
    泣かない、そう決めてた。黒木さんにも笑って送ってやれってそう言われてたし悲しい別れになると全てが壊れてしまう気がした。
    今にも出てきそうな涙を必死で我慢した。

    2005-07-26 10:22:00
  • 384:

    「じゃ、頑張れよ。またな!運転手さん閉めて下さい」
    そしてドアはバタンと閉まった。走り出すタクシー、振り返って手を降る英二。我慢していた涙が一気に溢れ出た。その場から動くことが出来ず、タクシーが見えなくなっても私はずっと立ち止まったままだった。
    さよならが言えなかった。さよならを言いたくなかった。終わったはずの恋だったのに。

    2005-07-26 10:28:00
  • 385:

    私の手に残った小さな紙袋。雑誌で見たことのあるブランドの袋だった。中に入った箱を開けてみると変わった形のネックレスが入っていた。ピンク色のストーンのようなものが周りのピンクゴールドのトップに包まれていた。
    そして箱とは別に紙袋に入っていたカードを見つけた。
    何だろ?手をのばして取った私はその場でカードを開いた。

    2005-07-26 10:39:00
  • 386:

    少し大きめなカードにはこう綴られていた。

    由里へ
    今日は無理言って付き合わせてごめんな。まだ終わったことを実感できずにいてお前を苦しめることになってるのは分かってたんだけど。どうしても最後に会いたかったから。
    このネックレス、天使の涙なんだって。天使の涙は嫌なこと洗い流して心を浄化する力と、身につけた人の幸せを願ってくれる力があるって。よくわかんねーけど由里が幸せでいれるといいなと思ってさ。今までありがとう。 英二

    2005-07-26 10:48:00
  • 387:

    今までこんなカード、手紙さえもらったことなんてなかった。不器用な英二が初めて書いた最初で最後のメッセージ。
    《ありがとう》
    私も心の中でそう思った。いい男と付き合えて良かった。英二で良かった。
    そう思えば思うほどもう戻らない時間を悔やんだ。私は英二に何をしてあげれたのか。自分のことばかり考えてたなぁ私。私ばっかり我慢してるとかこんなはずじゃないのにとか。英二を思いやる気持ちがあればきっと何かが変わっていたんだろう。でも悔やんだってしかたない。泣いたって何も変わらない。そして私と英二の恋は終わった。

    2005-07-26 11:02:00
  • 388:

    名無しさん

    主さんスゲー!!ここの小説読んで初めて泣いたよ。これからもがんばってね。楽しみにしてるから!

    2005-07-26 13:26:00
  • 389:

    ありがとうございます?まだまだ?下手っぴですが頑張ります?

    2005-07-26 14:22:00
  • 390:

    家に帰って自分の顔を見ると目が真っ赤に腫れてた。一人で部屋にいるとまた涙が出そうになる。だから私はあゆみに電話をかけた。
    「もしもしー♪」
    元気なあゆみの声で少し安心した。私は英二とのことや晃太のこと、元カノの話、最近たくさんありすぎた出来事を話した。
    あゆみはうんうんって何も言わずに聞いてくれた。昔からそうだった。何かあればいつも愚痴聞いてくれたり一緒に考えて悩んでくれたり。でもその時電話の向こうで男の人の声がした。彼氏と一緒にいたのだ。
    「ごめんあゆみ。分かんなかった・・・せっかくの休みなのにごめんね」

    2005-07-26 14:30:00
  • 391:

    「いいって!大丈夫だから」
    そうは言われたものの私は気になるしまた電話すると言って電話を切った。電話を切ってすぐにメールが届いてあゆみはホントごめんねと入れてきていた。
    邪魔しちゃったのは私の方なのに・・・静かな部屋でゴロンと横になると私はテレビをつけた。ちょうどテレビでは野球中継がやっていて私はテレビに映る晃太を見つけた。
    晃太だ・・・。いつもならテレビに入り込んで見てしまうのに。私は晃太をちゃんと見れなかった。本当に私大丈夫なんだろうか。
    距離ばかり感じてしまう。

    2005-07-26 14:39:00
  • 392:

    「ムーン?あ、分かったぁ。レイ健にいでしょ?いい感じだったもんね」
    「ちがうもん!暇だったからのぞいただけ」
    ムキになるレイが可愛かった。やめておくって断ったもののいつものレイの押しに負けて私はムーンに行くことになった。
    多分朝まで飲むだろうなぁ・・・ついでに明日迎えに行かなきゃなんないし今日は晃太んとこ帰ろう。色々用意してから私はムーンに向かった。

    2005-07-26 14:50:00
  • 393:

    ムーンに着くといつもより人が多くてカウンターもいっぱいだった。レイはホロ酔いで私も飲みたい気分だっからキツメのカクテルを出してもらい、二人で語り出した。
    健にいも忙しそうだったし、私はレイに今日あった出来事と英二とのこれまでの話を小さな声で話した。レイは酔いながらも私の話をマジメな顔して聞いてくれた。
    その時晃太から電話がかかってきた。
    「今日は負けちゃったよ。マジ疲れた」
    「そうなんだ。お疲れ様だね」

    2005-07-26 14:59:00
  • 394:

    名無しさん

    2005-07-26 15:09:00
  • 395:

    「明日大丈夫?時間はねぇ・・・・」
    晃太は明日の予定時間や場所を説明してくれた。
    「そーだ!由里明日デートしよって言ったじゃん?ディズニーランドとかどう?」
    無邪気に聞く晃太。ディズニーランド・・・か。晃太は知らない。私には昔からたくさんの思い出があること。小さい頃によく家族みんなで行ったことや英二と付き合う前に初めて行った場所。でも新しい思い出を晃太と作ればいい。
    後ろを振り返ってばかりじゃ前には進めないから。

    2005-07-26 15:15:00
  • 396:

    「いいよー。じゃあ決まりね。明日とりあえず迎えに行くから」
    そう言って電話を切った。レイは私の背中をトントンっと叩き、私の気持ちを察してくれたようだった。
    ムーンも時間がたつにつれいつものマッタリした感じに戻り、健にいとレイとゆっくりお酒を飲んで話していた。
    その時新しいお客さんが入ってきたので入口に目を向けると私は一瞬目が合ってドキッとした。入ってきたのは晃太の前の彼女だった。
    ここを知っていても不思議じゃない。一緒に来たこともあったのだろう。私の顔色にレイが気付き、小声で「誰?」と聞いてきた。

    2005-07-26 15:24:00
  • 397:

    「健ちゃん私ね、専属決まったんだ♪」
    その人は健にいに向かって話し始めた。レイは少し黙って嫌な顔をしていた。
    「ねーねー健ちゃんお隣りの彼女さん達は何してる人なの?」
    突然元カノ『アミ』は健にいに聞いた。健にいもあたふたして困ったように見える。その時酔っ払ったレイが少し怒った声で言った。

    2005-07-26 15:38:00
  • 398:

    悠?

    割り込んでごめんなさぃ?応援してます???ゆりちゃんファンです?頑張ってね?〃

    2005-07-26 15:42:00
  • 399:

    ありがとう?頑張ります?

    2005-07-26 16:09:00
  • 400:

    名無しさん

    2005-07-26 16:10:00
  • 401:

    名無しさん

    2005-07-26 16:43:00
  • 402:

    名無しさん

    2005-07-27 22:13:00
  • 403:

    名無しさん

    書いてぇ???

    2005-07-28 03:50:00
  • 404:

    また頑張って書いていきます?

    2005-07-29 14:41:00
  • 405:

    「関係ないと思いますけど」
    一瞬私は健にいと目が合い、凍り付く空気が流れた。
    「何熱くなってんの?普通に聞いただけなのに。若いっていいよねー何にでも熱くなれて」
    元カノ《アミ》はクスッと鼻で笑った。
    「モデルかなんだか知らないけど性格悪いから捨てられて当然だよねー。アタシが男だったら頭下げて付き合ってって言われても断るってかんじ」

    2005-07-29 14:48:00
  • 406:

    レイは酔った勢いもあって、そう言い返した。晃太のいない場所でこんなことになるなんて・・・。
    「ほらほら、もう!みんな楽しく飲もうって。せっかくのうまい酒がだいなしだろー」
    健にいが間に入ってくれたおかげで、とりあえずその場は落ち着いた。でも楽しくも飲めないし早く帰ろうと思い、帰る前にトイレに行った。
    私がトイレから戻るとまたレイと元カノが何か言い合っている。

    2005-07-29 15:19:00
  • 407:

    「ちょ、ちょっとレイ!酔いすぎだって」
    私が慌てて止めに入ると元カノは私を見てこう言った。
    「あんたオミズなんだってね。どーりで馬鹿っぽいと思った。晃ちゃん知ってるの?知らないよねー?相手にされるわけないもんねー」
    レイが言い合ってる最中にぽろっと口が滑り、煽られた勢いで言ってしまっていた。
    誇らしげに勝ち誇った顔をして私達を見ている。でもどうでも良かった。だって晃太は私を選んでくれたんだから。何の取り柄もないこんな私を好きだって言ってくれた。

    2005-07-29 18:14:00
  • 408:

    「何か言いなさいよ」
    私が何も言わずにいると元カノは挑発的に言葉を発する。馬鹿馬鹿しくて答える気にもならない。と同時に私の中の嫌な部分が出てしまった。
    「ハハッ超ウケルんだけど。熱くなってんのそっちじゃん。それに晃太は知ってるし心配してもらわなくても大丈夫だから」
    元カノは悔しそうな顔をした。私はレイの手をとり健にいにお金を払うとすぐにムーンを出た。スッキリした・・・とまではいかなかったけど一言言えただけで気持ち良かった。

    2005-07-29 18:22:00
  • 409:

    「由里飲み直すー?アタシまだまだ大丈夫なんだけど」
    酔っ払い口調のレイが私に向かってニコニコ笑っている。
    「飲み直すってもう飲めないじゃんこんなに飲んじゃって。大丈夫?家まで送ってくから」
    タクシーを止め、レイを乗せると車は走り出し、レイは私に寄りかかったまま寝てしまったようだった。私も窓の向こうの夜のネオンで光る街をジッと見つめていた。
    青、赤、白、黄色、緑やオレンジ。たくさんの色がキラキラしている。街を彩る宝石みたいに。

    2005-07-30 04:34:00
  • 410:

    ボーッとしていたのか気付けばタクシーはレイのマンションに着いた。
    「ほら起きて、レイー。着いたよ」
    私に起こされて眠そうに目をこするレイの顔は子供みたいに可愛かった。少しぐずった後、やはり眠いのか私に手を振りながらマンションにゆっくり入って行った。
    「成城の**まで」
    晃太のマンションの場所を説明した私も少し眠くなってしまっていた。やれやれ・・・疲れたなぁ。せっかく楽しく飲んでたのに。

    2005-07-30 04:41:00
  • 411:

    一週間前の今頃は晃太のせいでタクシーの中で泣いて帰ったんだっけ。帰ると英二が待っていて。
    でももういないんだよね。首元にぶら下がった英二が幸せになれって渡してくれた天使の涙のネックレスを私は強く握りしめた。
    幸せになるんだ。何があっても幸せになれる。英二から貰ったネックレスだったけど、晃太に悪い気にはならなかった。英二は晃太に私の幸せを託してくれたんだから。
    そうこうしているうちにマンションに着くと、私は誰もいない晃太の部屋に帰った。

    2005-07-30 04:48:00
  • 412:

    広い部屋・・・静かな空気。一人じゃ寂しく感じるなぁ。大きなベッドに横たわると、私は化粧も落とさないままいつの間にか寝てしまっていた。
    (PPPPPP)
    あったま痛ーい・・・目覚ましの音が二日酔いの頭に響く。まだ眠いよもう少し寝たい。そうは思ったものの迎えに行く用意もしなきゃいけないし私は眠いのを我慢して起きることにした。
    シャワーを浴び、眠気覚ましにコーヒーを飲むと目もやっとパチッと開いた。今日が晃太との初めてのデート。そう思うと二日酔いだってすっかり直ってしまう。女の子って単純だよね。

    2005-07-30 04:59:00
  • 413:

    名無しさん

    読んでます?

    2005-07-30 05:27:00
  • 414:

    大丈夫なのかな?そんなことを考えていると車を見つけた晃太が足早に歩いてきた。
    後部座席に荷物を入れ、助手席のドアが開いた。久しぶりってわけじゃない。たった三日だったのに晃太の顔を見ると嬉しくてしょうがなかった。
    照れ笑いする晃太を見ているだけで昨日あった嫌なことも全部忘れることができた。
    「ちゃんと待ってておりこうさんじゃん。エライエライ」
    そう言って晃太は私の頭を撫でてくれた。

    2005-07-30 09:06:00
  • 415:

    「飯食った?俺ちょっとだけ小腹減ってんだけど」
    「食べてないよーだって起きて急いで来たんだもん。由里も少しすいてるかなー」
    何気ない会話が心地いい。と、そんな気分でいると晃太が突然びっくりすることを口にした。
    「今日ディズニーランド行くじゃん。その前に飯食って、それから浦安着いたらとりあえず由里の家行こうよ。挨拶もしておきたいし」
    う、浦安!?家!?挨拶!?ってマジ急すぎじゃん!私はびっくりして頭が混乱してしまった。真剣に付き合おうと言ってくれてたけど展開が早過ぎて。それよりお母さん達みんな腰抜かすよ・・・

    2005-07-30 09:16:00
  • 416:

    「由里?駄目かな?」
    晃太が慌てた私を見て困った顔をした。
    「うん分かった。いいよ。でもお母さん達びっくりしちゃうよホントに。後で電話しなきゃね」
    オッケー・・・しちゃったよ。どうしよう。うちなんて普通のマンションだし広くもないしホントに普通なんだけど・・・。
    しばらく走った後、私達はとりあえず道路沿いにあったカフェに入った。注文も済み、座っているとやっぱり周りの視線が痛いほど分かった。晃太とどこかに行くといつもこうなるんだよね・・・隣にいる女誰なんだって。

    2005-07-30 09:23:00
  • 417:

    晃太が忘れた携帯を取りに車に戻った時、私は慌てて実家に電話をかけた。お母さんがすぐに出て私も焦りながら話した。
    「もしもし由里だけど。あのね、今日連れて行きたいっていうか会ってほしい人がいるの。っていうか英二と別れたから新しい人なんだけど」
    「え!?英二君と別れた?何でまた」
    「うーんそれはまたゆっくり話すから。でね、その新しい人が挨拶したいって言ってて。後で行くからびっくりしないでね」
    「急に言われても・・・うんまぁ分かった分かった。じゃあ気をつけて帰ってきなさいよ」

    2005-07-30 09:33:00
  • 418:

    電話を切るとちょうど晃太が戻ってきた。運ばれてきたランチを食べながら楽しそうに笑う晃太を見てるとこれから先、この人とずっと一緒にいられたらいいなってそう思った。
    昨日の試合で全然打てなかった話や、後輩とご飯を食べながら野球について話したこと、晃太はたくさん話してくれた。
    「由里ちゃんと聞いてる?聞いてないだろ」
    晃太の話してる姿をジッと見ているとすねた顔して晃太がふくれた。
    「聞いてるよー。今は晃太の顔見てたの。可愛かったから」

    2005-07-30 09:39:00
  • 419:

    「なんだよそれー可愛いキャラじゃねーっつーの」
    照れる晃太がもっと可愛く見えた。食事も終わりレジに向かう途中、晃太に財布を渡された。えっ?
    「車出して待ってるから払ってて」
    そう言って晃太は先にお店を出た。何気ないことなんだろうけど嬉しく思ったのは何でだろう。私はレジを済ましている間もずっとゴキゲンだった。そしてお店を出て車に乗り、晃太に財布を渡そうとした。
    「あー持ってて由里が。」

    2005-07-30 09:46:00
  • 420:

    持っててって私が?持ってていいんだ・・・。こんなこと思うのは私だけなのかもしれないけど、この人の彼女なんだなってそう思った。
    「住所入れて。ナビ」
    晃太に言われ、私は実家の住所を入力した。時代もホントに便利になったもんだなぁ。って年寄りじみてるなぁ私。その時私の携帯が鳴った。由輝だ。
    「はいはーい何ー?」
    私が出ると由輝が慌てて話しだした。

    2005-07-30 09:52:00
  • 421:

    「ねーちゃん英二君と別れたってどうゆうことだよ。っつーかもう新しい彼氏連れてくるとかマジありえねー」
    ???????
    「って何であんたが知ってんの?」
    「俺久しぶりに昨日からこっち帰ってきてたんだよね。さっき起こされ聞いてチョーびびった」
    やばい・・・由輝がいるなんて。由輝は英二とすごく仲が良かったし。それに晃太なんかに会ったらミーハー丸だしで大変なことになりそう。

    2005-07-30 09:58:00
  • 422:

     

    2005-07-30 09:58:00
  • 423:

    「まぁとりあえずどんなやつか楽しみにしてるよ。英二君のほうが良かったら俺は仲良くしねーからな」
    そう言って勝手に電話は切れた。あー気がめいる。どうなるんだろ。
    「あのね、弟、由輝っていうんだけど昨日から帰ってるみたいなんだー。だから家にいるんだけど」
    「マジ!?良かったー。会ってみたかったんだよね。21だっけ?」
    無邪気に話す晃太。心配してるのは私だけみたいだ。

    2005-07-30 10:05:00
  • 424:

    でも家に近付くにつれ、少し晃太の口数も減ってきた。緊張?してるのかな。それでもナビ通りに進んで行けば少しずつゴールが見えてきた。
    昔と比べて変わった風景。こんなに建物あったかな?そんな景色が目にうつる。もう家もすぐそこだったので近くにあったコインパーキングに車を止め、私達は車を降りた。
    遠征帰りだから晃太はスーツのまま。なんだかかしこまってるみたい。二人で並んで歩いていると昔から知っている近所のおばさんに会った。
    「由里ちゃーん。久しぶりね。元気なの?」

    2005-07-30 10:14:00
  • 425:

    私に話し掛けたおばさんだったが隣にいた晃太を見て驚いた顔をした。やばっ。
    「元気ですよー。おばさんも元気そうだね♪急いでるからごめんねまた今度」
    私はそう言って晃太のそでを引っ張って歩いた。
    「なんだよ由里、ゆっくり話せばいいのに久しぶりなんだろ?」
    「いいってば。晃太にびっくりしてたし。ねっ!早く行こう」

    2005-07-30 10:19:00
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