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たった一つの宝物

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  • 1:

    亜矢

    小林晴斗
      優花

    私達は2000年5月21日に夫婦になった。
    いわゆるできちゃった婚。でも私達にとっては優斗を授かったことはとても幸せなことだった。

    2005-12-11 03:29:00
  • 2:

    亜矢→優花

    生理がこない…そう思って検査薬を試した。
    まっすぐ浮き出た陽性ライン。私は嬉しくてすぐに晴斗に話した。
    「優花、結婚しよう」
    そう言われた時、私達にとって優斗がこの世でたった一つの二人の宝物になった。

    2005-12-11 03:34:00
  • 3:

    優花

    辛いつわりも体のだるさもへっちゃら。生まれてくる前から毎日毎日おなかに向けて話したりして親バカになりつつあった。
    晴斗は結婚することをきっかけに仕事を変えた。前職ホストだった晴斗。そこそこ売れっ子で人気もあったけど、私とおなかの子のためにあっさりと水商売から足をあらってくれた。

    2005-12-11 03:38:00
  • 4:

    名無しさん

    めでたしめでたし

    2005-12-11 03:42:00
  • 5:

    優花

    変わった仕事はありきたりだけど運送業や引越し業を主な仕事にしている不動産会社の下請の仕事。
    多少リッチだった生活から質素な生活に変わったけど晴斗が少しずつ父親としての自覚をもってくれてると感じることができて、安心した。

    2005-12-11 03:42:00
  • 6:

    優花

    2000年12月3日。
    優斗が無事産まれた。痛みはありえないくらいの痛さで、途中もういや!って叫んだくらいだったけど、産まれてきた第一声の泣き声を聞いた時、そんな痛みも忘れるくらい幸せを感じた。

    2005-12-11 03:46:00
  • 7:

    名無しさん

    中出し婚 つまり ズッコンバッ婚 (〃▽〃)キャー♪

    2005-12-11 03:48:00
  • 8:

    優花

    この子は私と晴斗の宝物。晴斗と一緒に優斗を幸せにしてあげよう、そう心に誓った。
    名前はお互いの名前を一文字ずつ取って優斗と名付けた。男の子のくせに女の子と間違えられるほど可愛い顔をした赤ちゃんだった。

    2005-12-11 03:49:00
  • 9:

    優花

    子育てに追われる毎日だったけど、幸せだった。
    日々成長していく優斗のいろんな顔を見るのが楽しみで。
    晴斗も仕事を頑張ってくれてたし、私達三人は確かな幸せの渦中にいた。

    それなのに・・・

    2005-12-11 03:52:00
  • 10:

    優花

    子育ては初めてのことだらけで分からないことがいっぱいあった。
    だからそんな時は私や晴斗のお母さんに聞いたりしてた。知らないことは恥ずかしいことじゃないんだから何でも聞いてきなさい。
    いつもそう言ってくれた私達のお母さん。

    2005-12-11 03:55:00
  • 11:

    優花

    慣れないことで大変だったけど、よく聞いていた育児ノイローゼなんてものは私には全くなかった。
    子供は泣くのが仕事なんだから、子供は何もできないのが当たり前なんだから、って思ってたから。

    優斗が笑うと私も笑顔になれた。優斗が何かを話すと私は料理の途中でも料理ほったらかしで優斗の話すことを聞いたりしてた。

    2005-12-11 03:59:00
  • 12:

    優花

    初めて話した言葉は
    「ばーば」。私のお母さんが来ていた時に初めて聞いた言葉だった。
    お母さんは喜んで「ばーばでちゅよー」って赤ちゃん言葉になりながら抱き上げてた。
    優斗はみんなを幸せにしてくれた。みんなを・・・笑顔にしてくれた。

    2005-12-11 04:02:00
  • 13:

    優花

    初めての誕生日や初めてのハイハイ。思い出しただけでもたくさんの出来事が脳裏によみがえる。
    天使のように可愛い顔をした優斗。私の大切な世界でたった一つの宝物。

    確かな幸せがあった。壊れるはずのない揺るぎない幸せが。

    2005-12-11 04:06:00
  • 14:

    優花

    二歳、三歳の誕生日も過ぎ、初めての七五三もあった。初めて着る着物にぎこちない動きをしながら不思議そうにしてた。
    お参りに行った時は嬉しかったのかはしゃいでこけてしまい結局大泣きしてた。せっかくの一張羅が涙と鼻水と土でヒドイことになってた。

    2005-12-11 04:11:00
  • 15:

    優花

    晴斗は優斗に甘いから、そんな優斗を優しく抱き抱えていつも肩車してた。
    そうすると優斗は何故か泣き止むからだった。小さな優斗にとって、晴斗の肩車はとても大きくなれたように感じてたのかな・・

    優斗を肩車してる晴斗の背中を見ながらいつも思ってた。『ずっと幸せでいようね』って。

    2005-12-11 04:15:00
  • 16:

    優花

    優斗の三歳の七五三の日は三人で写真屋に行って記念撮影をしたりとにかく家族なんだなぁと改めて実感した一日になった。

    でもこれから先に、あんなことが起こるなんてその時の私達には想像もしていなかった。
    今でも思う。夢であってほしい。悪夢なら早く覚めてほしいと。

    2005-12-11 04:20:00
  • 17:

    優花

    2004年4月5日、優斗は幼稚園に入園した。
    入園式の日、晴斗は有休を使ってまでわざわざ仕事を休み、一緒に入園式に来た。
    親バカな私達はビデオをまわしながら写真を撮ったりとにかく優斗から目が離せなくて・・・
    周りのお父さんやお母さん達も同じような感じだったし、やっぱりみんな親バカなんだなぁと思った。

    2005-12-11 04:25:00
  • 18:

    優花

    「やっぱり俺と優花の子供だよなぁ。優斗が1番かっこいい。優花もそう思うだろ?」「当たり前でしょ」

    こんな会話は毎日のようにしてた。優斗を遊びに連れて行くと当然のように声をかけられる。「可愛いお子さんですね」と。
    自慢の息子だった。人懐っこい愛想のよさに優しい性格。

    2005-12-11 04:30:00
  • 19:

    優花

    私と晴斗の子供なのか疑ってしまうこともあった。
    こんなに可愛い子が私の子供なんだろうかって。いつもの親バカな悩みだっただけだけど。

    優斗が入園してから初めての母の日には優斗からプレゼントをもらった。私の似顔絵と晴斗に買ってもらったカーネーション。

    2005-12-11 04:33:00
  • 20:

    優花

    父の日も優斗は幼稚園で似顔絵を書いて晴斗にプレゼントしていた。
    父の日の前日は私と買い物に行った時、「これパパの好きなビール」って指さしながら言ってた。銘柄を覚えていただけでもびっくりしたけど、その日は晴斗の好きなビールも一緒に買って帰った。

    2005-12-11 04:43:00
  • 21:

    優花

    「パパいれてあげる」
    優斗はそれから晴斗が仕事が終わって帰ってくると晩酌するようになった。

    晴斗も嬉しそうだった。疲れも吹っ飛ぶねって幸せそうに笑ってた。優斗は私達をいつも幸せな気持ちにしてくれた。

    2005-12-11 04:46:00
  • 22:

    優花

    結婚して四年ちょっとたち、優斗も元気に育ってくれてたし家族みんなが幸せでいられることにいつも感謝してた。
    もしもあの頃に戻ることができるのなら、私は優斗に何をしてあげるんだろう。好きなおもちゃを買ってあげるべきだったのか。

    2005-12-11 04:50:00
  • 23:

    優花

    大好きだったマジレンジャーの洋服をたくさん買ってきて着せてあげようか。
    いつも二つも食べてたシュークリームを三つ食べさせてあげようか。
    でもそんなことを考えても戻れない現実が私を闇へと突き落とす。

    2005-12-11 04:53:00
  • 24:

    優花

    2004年12月3日。
    優斗の四歳の誕生日だった。大きなケーキに四本のロウソクを立て、三人でハッピーバースデーを歌った。一生懸命火を消そうとする優斗を私はカメラのレンズ越しに見ていた。

    大きくなったね。ケガや病気もしないでこんなに元気に育ってくれた。優斗・・大好きだよ。

    2005-12-11 04:57:00
  • 25:

    優花

    年末年始は晴斗の実家や私の実家で過ごした。優斗のおじいちゃんとおばあちゃん、私達の両親は優斗が初孫だったしすごく可愛がってくれてた。
    四人の祖父と祖母は優斗にとっても優しくて大好きな存在だった。遊びに行くたびに絵を書いて持っていったりしてた。

    2005-12-11 05:01:00
  • 26:

    優花

    絵に書いたような幸せ。ほんとにその通りだった。
    大きくなるにつれ、やんちゃになっていったけど、かけっこも早いし字を覚えるのも早い優斗は、天才だと思った。
    いつもの親バカ。晴斗といつも言い合ってた。
    「優斗は俺に似たね」
    「私似だよ」どっちでもいいのにムキになって最後は笑ってた。

    2005-12-11 05:05:00
  • 27:

    優花

    季節は春を迎え、優斗の服や靴のサイズがまた一つ大きくなっていた。
    子供って大きくなるの早いなぁ・・・いつもそう感じた。
    晴斗は仕事が順調で、出世もした。給料も四万円上がり生活にも少し余裕ができたりした。
    晴斗の元気の源も優斗だったから。いつしか働くお父さんのたくましい男に変わってた。

    2005-12-11 05:13:00
  • 28:

    優花

    でも、そんな私達の幸せな日々を突然悪魔が暗い闇へと突き落とした。

    2005年4月24日。
    日曜日の昼下がり、優斗は幼稚園の友達と遊びに行くと言って近くの公園に遊びに行った。
    いつもは私も一緒について行ってた。だけどこの日は洗濯中だったこともあって「後から行くから気をつけて遊んでてね」と言って優斗を一人で行かせてしまった。

    2005-12-11 05:20:00
  • 29:

    優花

    何度後悔しただろうか。あの時ちょっとでも優斗を待たせて一緒に出掛けていれば、あんなことにはならなかったのに。
    最後に聞いた「いってきます」の言葉が今も耳に残る。
    いつもと変わらない声で楽しそうに出掛けて行った。でも「ただいま」の声は、もう聞くことができないんだね。

    2005-12-11 05:24:00
  • 30:

    名無しさん

    2005-12-11 05:24:00
  • 31:

    優花

    洗濯が終わり、優斗が出掛けた一時間後に私は優斗がいる公園に向かった。
    何して遊んでるのかな、なんて考えてるだけで幸せな気持ちになれる。
    歩いて約5分。家から近い場所にあるわりと小さな公園。着いた私は周りを見渡した。どこにいるんだろ?

    2005-12-11 05:27:00
  • 32:

    優花

    あれ?どこだ?
    見渡す限り優斗の姿が見えない。近所のお母さん達のところに行き聞いてみることにした。
    「優斗見ませんでした?」「今日は見てないですよ」返事を聞いて首をひねった。おかしいな・・・
    子供達のところに行って聞いてみた。「優君今日は来てないよー」「僕も見てない」返事はみんなそうだった。

    2005-12-11 05:31:00
  • 33:

    優花

    探していくうちに嫌な予感がする。何でいないんだろう・・・一時間以上も前に出掛けていったはずなのに。
    公園にいた近所の人に頼んで一緒に探してもらった。優斗の知ってる道は少ないはずだし、私と通る道しか歩いたりしないはずだったから、とにかく近くを探しまくった。

    2005-12-11 05:41:00
  • 34:

    優花

    いない・・・焦りがでてきた。家に帰ったかもしれない、そう思って二回も家に戻った。
    でも優斗はいなかった。どうしよう・・・動揺した私は晴斗に電話をかけた。
    「どうしたー?」
    「優斗がいないんだけど」「は?どうゆうこと!?」「あのね・・・」

    2005-12-11 05:45:00
  • 35:

    優花

    「落ち着け、大丈夫だから。とりあえず仕事終わらせてすぐ帰るから。探せるなら探しててくれよ」
    電話を切った私は携帯を握りしめていた。晴斗・・・お願い、早く帰ってきて。私一人じゃどうしていいか分かんないよ。

    2005-12-11 05:48:00
  • 36:

    優花

    時間がたつにつれ日が落ちていく。夕方になりカラスの泣き声が空に響いた。
    私は何度も同じ道を探して優斗の名前を呼んだ。
    あの子のことだから大丈夫。私と晴斗の子なんだから。何度も心の中でそうつぶやいた。
    やっと晴斗からも電話があり家で待つように言われた。

    2005-12-11 05:51:00
  • 37:

    優花

    しばらくして晴斗が帰ってくると、私は少しほっとした。一人じゃどうにもならなかったから。
    「出掛けた時間とか優斗の服とか特徴全部細かく覚えてる?とにかくこれに書いて」渡された紙とボールペン。
    時間は・・・1時半頃なはず。上は白いTシャツに赤いパーカー。下は確かジーンズ地のズボン。

    2005-12-11 05:57:00
  • 38:

    優花

    「よし、とりあえず行こ」「どこに?」「警察」
    えっ・・・。警察?
    「優花や近所の人達が探してくれたけど見つからないってことは思いたくないけど誘拐とかの可能性もあるだろ。とにかく行くぞ」

    誘拐・・ってそんな・・。私は怖かった。

    2005-12-11 06:01:00
  • 39:

    優花

    「お子さんのお名前と年齢は?」
    「小林優斗、四歳です。これ一応今日の服装の特徴なんですけど」

    時間は6時過ぎになっていた。
    「写真とかありますか?できれば何枚かあれば拝借したいんですが」

    2005-12-11 06:04:00
  • 40:

    優花

    慌ただしく動く警察官。話しを真剣にこと細かに聞いてくる聴取員。
    まるで自分がテレビの中にいるようだった。
    「何か事件や事故に巻き込まれた可能性もありますので今から捜査員を集めますので」
    私と晴斗はお互いの手を握ってた。お願いします・・

    2005-12-11 06:08:00
  • 41:

    優花

    お互いの実家にも連絡をいれておいた。心配そうにしていた両親も気が気じゃない様子だった。
    私達は警察暑で三時間近くいた後、一度自宅に帰宅して下さいと言われ、帰ることになった。
    帰りの車の中は何も話せなかった。晴斗にとっても大切な宝物の優斗。何かあったら・・そう思うと何度も目の前がにじんだ。

    2005-12-11 06:13:00
  • 42:

    優花

    家に着くと10時前だった。いつもなら優斗が寝るのをぐずっている時間。
    晴斗にビールをついでニコニコしていた。でも今日はやけに静かだった。
    優斗がいないだけでこんなにも静かだなんて・・・。あの子の存在の大きさを感じた瞬間だった。

    2005-12-11 06:16:00
  • 43:

    優花

    私達はテレビも付けずに静かな部屋で黙って座ってた。
    家の電話が鳴るたびにドキッとして急いで電話にでる。でも相手はお母さんや警察署員。近所の人も心配して何人か訪ねてきてくれた。
    「晴斗ごめん。私がちゃんと見てなかったから」
    「優花のせいじゃないよ」

    2005-12-11 06:20:00
  • 44:

    優花

    「でも・・・」
    「うるさいよ!・・ごめん少し黙っててくれないか。俺も正直言って頭ん中めちゃくちゃなんだ」
    晴斗の気持ちが痛いほど分かった。怒鳴りたくなる気持ちも仕方なかった。
    優斗・・・今どこにいるの?お願いだから帰ってきて。

    2005-12-11 06:23:00
  • 45:

    優花

    結局朝になっても優斗は見つからなかった。
    朝からまた警察に行った。「ちゃんと探してくれてるんですか!?」わけもわからず警官に八つ当たりしてしまう。
    どうにもできない気持ちが行くあてもなくさ迷っていた。

    2005-12-11 06:26:00
  • 46:

    優花

    「誘拐の可能性は低いと思われます。事故も今のところ該当するものがないです。事件に巻き込まれた可能性があるかもしれないです。会議を開きましたが行方不明とゆうことで捜査を続行していきます」

    そしてその日の昼過ぎ、ニュース速報で優斗のことが初めて流れた。

    2005-12-11 06:30:00
  • 47:

    優花

    写真を公開して小さな目撃情報でも入手したかったからだ。
    その時すでに優斗がいなくなってから24時間がたっていた。食事ものどを通らない。体に力も入らない。
    頭に浮かぶのは優斗の笑顔だった。私達の両親も家に来てくれそばにいてくれた。

    2005-12-11 06:33:00
  • 48:

    優花

    「優花がしっかりしないでどうするんだ」「晴斗君もしっかりしなさい」
    お父さんが珍しくたくさん喋っていた。
    時計の針の音が部屋に響いていた。きっとみんなが同じことを願いながら優斗の顔を思い出していたと思う。

    2005-12-11 06:37:00
  • 49:

    名無しさん

    2005-12-11 06:37:00
  • 50:

    名無しさん

     

    2005-12-11 06:37:00
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