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シンデレラ

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  • 1:

    ちぃ

    2004.5/3。晴天。
    見上げれば青い空。綺麗なブルーの宙に、白やピンクの花がフワフワと舞っている。
    『おめでとー!』
    次々に友人達から向けられる、お祝いの言葉。様々な過去を経て私はここに立っている。赤く紅く…何処までも続きそうなバージンロードの上に。眩しいほどに輝く純白のドレスに包まれて。この光は罪さえも柔らかく包んでくれる…。私な、アンタの魔法にかけられて、綺麗になったよ。

    2005-12-09 13:41:00
  • 61:

    ちぃ

    言葉が少なくなったウチは、感情を絵に書くようになった。
    誰にも伝わったりしないけど、そうすることで自分が楽になれた。そんな、ある日何となくテレビを見ていた時の事。2曲だけ、フルでアーティストのPVが流れる番組を見ていた。その時、あるバンドのPVを見てテレビに釘付けになった…。ケバケバしく化粧をしている男の人達、流れる歌の歌詞にずっと耳を傾けてた。そのバンドはLUNA SEA。【トゥルーブルー】聞いて、一気にビジュアル系といわれる音楽に依存した。理由は分からんけど、なんか癒されたんかな。気持ちが少し重なった気がしたから…。ちなみに、今はビジュアル系にピンっとこなくなったけど、当時癒されてた曲を聴いたら、今でも気持ちが落ち着いたりする。LUNA SEAに出会ってから、お年玉でCDラジカセを買った。【トゥルーブルー】と【ロージア】を買った。毎日毎日、何回も何回も聴いた。眠るときもずっとヘッドホンから流れてた。少し居場所を見付けた気がして嬉しかった。

    2005-12-12 16:24:00
  • 62:

    ちぃ

    お母ちゃんは結局、相変わらずやった。
    スナックの仕事が終る時間が過ぎても朝帰り、けど兄弟で仲が良かったのは幸いだった。誰とも喋らないウチやったけど、弟のカッちゃんとは話せた。カッちゃんも、お母ちゃんが居らんことを寂しがってたけど、何とか受けとめようとしてた。けど、ウチはなんか受け入れられんかった。

    2005-12-12 16:34:00
  • 63:

    ちぃ

    そう否定的になってしまう理由はイッパイあったけど、母親から女に変わっていくお母ちゃんが許せんかった。上手やった料理も、いつしか家では作らへんようになった。テーブルに置かれてるのは【自分等で買って食え】と言わんばかりの2千円札。それか、スーパーで買ってきた惣菜。いつかお母ちゃんの彼氏んちに連れていかれた事がある。そこには真新しいキッチン道具が並んでた、チラッと見えた冷蔵庫には野菜とか肉とか、いかにもここで料理してますと言わんばかりの食材が並んでた。キッチンには洗ったばかりのお茶碗とお皿とお箸が2人分置いてあった。うちは唇をキュッと噛み締めた。

    2005-12-12 16:43:00
  • 64:

    ちぃ

    こんなもん見せて平気なんやろか……。
    ウチらはアンタのお荷物かい……?けど言葉に出さんかった。お母ちゃんは、よう彼氏が変わった。恋多き女。うちは、そんな女になるまいと強く思った。でも、血を引いているから…そう考えると、不安でやった。そんな時、お母ちゃんは、ウチに恥ずかしそうな笑顔で見事なストレート球を投げてきた。『お母ちゃんは母親である以前に女やから、いつでも男の人の傍で寄り添ってたいねん』と。大好きやったお母ちゃんの事を、いつしか大嫌いになった。そしてお母ちゃんをお母ちゃんと思わんようになった。反抗期が混じった中学生になり、あの言葉を聞いて、うちの中で風船みたいに膨らんだ不満がパンっと勢いよく割れたような気がしたよ。

    2005-12-12 16:56:00
  • 65:

    ちぃ

    それからというもの、うちは、今までの自分を封印するように生まれ変わった。もう弱さだけじゃアカンねやと気付いたから。相変わらず人嫌いやけど、反抗期も手伝って殻を脱ぎ捨てるのは難しいことではなかった。中学に上がっても学校には、たまにしか行かんかった。【イジメられるから】なんて理由は完全にウチの中から消えていた。周りはそんなウチに驚きを隠せないでいたけど。お母ちゃんは、家族の事は見てみぬ振りで、気にせんなってたから、ウチがどうなろうが知った事じゃないって感じやった。けど、お母ちゃんがそうなればなるほど、ウチの反抗は増していった。寂しい反抗やな…。

    2005-12-12 17:08:00
  • 66:

    ちぃ

    学校の不良と呼ばれる悪いやつも、新しいもの見たさに、殻から這い出たウチを見に家に来た。ゾロゾロと無駄人数をかき集めて。でもウチには何も感じなかった。集団で絡むのは好きじゃない。弱い人間になりたくなかった。まるで一匹狼みたいな感じ、誰も信じないし、誰にも期待なんてしない。顔色を伺ってばかりきたウチには、相手がなに考えてんのか分かる。みんな後から言うてた、目に孤独や、飢えや、憎しみ悲しみ寂しさを宿らせたウチの目は、向けられただけで寒気がしたって。みんな戸惑って帰っていく。学校に行っても、指をさされなくなった変わりに、誰も近寄らなくなってた。(これでいいんだ…これで。) これが私の望んだ道、だから後悔なんてしない。

    2005-12-12 17:20:00
  • 67:

    ちぃ

    けど、こんなウチにも温かいものに恵まれた。神様からプレゼントかな…。親友とゆうプレゼント。下校していた途中、声をかけてきた、一見パッとしない身なりのその娘は、結子と名乗った。そんな結子の目をみて、(この子も人を信じられない寂しい目をしているな)と感じた。うち等は何かを深く語らずとも、仲良くなった。

    2005-12-12 17:27:00
  • 68:

    ちぃ

    結子とはいつも一緒にいるようになった。何をするにも一緒。そしたら私、自然と笑えるようになっていた。周りが少し温かく見えた。初めて人に気を許した瞬間。結子が笑っていると、ウチも幸せ。そう思わせてくれる大切な親友。うちは家庭内の話を一切しないけど、結子は聞いてほしかったのか良く話すようになった。聞けば、ウチと似たような家庭環境だった。おとなしい結子とは性格も持っているものも全部違ったけど、同じ心と寂しさを持っている。だから惹かれあったのかな?

    2005-12-12 17:34:00
  • 69:

    ちぃ

    結子といる時間は癒された。でも帰れば地獄。お母ちゃんとは毎日毎日声を張り上げ罵りあった。『こんな粗末に扱うんなら、生まんかったら良かったんやろーが!反対された時に素直に堕ろしときゃあ良かったんちゃうんけ!生んでくれとも頼んでないけどな、こんなんなら生んでもらいたくなかったわ!うちの人生返せ!』お母ちゃんを黙らせるトドメの言葉。お母ちゃんはうちを殴るだけ殴って泣く、泣いてヒステリーを起こして、どこかに消えて行く。お母ちゃんも、どうやって生きて行こうか、ホンマはどないしようもないほど不安やったんやろ?

    2005-12-12 17:43:00
  • 70:

    ちぃ

    お母ちゃんとの長い長い戦争は、ずっと続いた。中学卒業してもずっと。アパートを派手に穴だらけにしたりもした。散々殴られたっけ?けどウチはお母ちゃんを殴りかえしたりはしやんかった。お母ちゃんの体があるからウチラは生きて行ける。ほんのささやかな優しさが自分に残ってんのも事実やったから。

    2005-12-12 17:48:00
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