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3Ldkの城・?
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1:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
?は、↓です。
http://bbs.yoasobiweb.com/test/mread.cgi/yomimono/1132987687/-52005-12-19 14:05:00 -
2:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
「俺、寄るとこあるから‥先帰っといて」
2人の握手を穏やかに眺め、陽平は笑顔で手を振った。
「え、夕飯食べるやろ?」
花は、彼にあわてて声をかける。2005-12-19 14:12:00 -
3:
名無しさん
は?なんでなん
2005-12-19 14:15:00 -
4:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
「おう!豪勢に作っといてや。すぐ帰るから!」
陽平は2人に明るく答え、駅の方向へと走っていった。
残された花と千草は、たわいない会話を繰り返しながら‥帰宅する。
陽平が帰ってきたのは、夕飯を作り終えた頃。2005-12-19 14:15:00 -
5:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
?
2005-12-19 14:16:00 -
6:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
テーブルに並べた料理を前に、陽平は千草に小さな紙袋を手渡した。
千草は、頭にはてなを浮かべ‥中を確かめる。
そして、中を出さずに彼を見上げた。
陽平は、ニコリとほほえむ。2005-12-19 14:19:00 -
7:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
袋から出てきたのは、水色のリボンを通した‥家の鍵。
花は、それを見て‥笑みをこぼした。自分のことのように喜ぶ彼女に、千草は熱い視線を送る。
そのときの陽平は、彼の花に対する気持ちを薄々‥感じていた。
だが、2人を心から受け入れることで‥不安をもみ消していた。2005-12-19 14:24:00 -
8:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
【つづく】
2005-12-19 14:26:00 -
11:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
狭い玄関の靴箱の上に飾られた‥鍵かけの板。
そこには、黄色と赤色と‥水色のリボンが信号のように並べられている。
同じ鍵が‥3つ。
3LDKの部屋、ここは‥たった1つの居場所。2005-12-20 00:18:00 -
12:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
「おい!何してんなよ?主役が来な、始まらんやんか」
リビングから、呼びかけてくる陽平。
「電気消す方がいい?」
ジュースのペットボトルをリビングに運びながら、陽平に問いかけている千草。2005-12-20 00:25:00 -
13:
杏子
これからどうなってくんかめちゃ楽しみ??主さん頑張ってねっ?
2005-12-20 00:29:00 -
14:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
ジャージ姿にお団子頭の花は、鍵かけから彼らに視線を移し‥微笑んだ。
そして、リビングの電気がパッと消される。同時に、テーブル上でローソクの火が灯り出す。
‥そう、今日は花の誕生日。2005-12-20 00:33:00 -
15:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
杏子さんありがとう。頑張りますo(_ _*)o
2005-12-20 00:34:00 -
16:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
「誕生日おめでとう!!」
暗い部屋に‥ほのかな灯り。テーブルいっぱいに飾った料理を前に、2人は花を祝う。
花は、照れくさそうに口元を緩ませ‥ローソクに向けて息を吹く。
真っ暗になった部屋を確認し、拍手と共に‥電気がつけられる。花は、2人の笑顔の中で‥22歳を迎えた。2005-12-20 00:43:00 -
17:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
「やっと、花も22かぁ。俺は夏生まれやからなぁ」
ケーキに刺さったままのローソクを抜き取り、千草は花に微笑んだ。
「もう、段々‥歳とってくわぁ」
彼女は、不満げな言葉を並べながら‥情けなく笑った。2005-12-20 00:49:00 -
18:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
「陽平はいつ?もう終わったん?」
「‥俺は、来月。3月31日」
「うっわ、めっちゃキワやん!」
料理を食しながら‥流れていく2人の会話に、花は嬉しそうにケーキを切っていた。2005-12-20 00:52:00 -
19:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
なぜなら、今日は‥母親の命日やから。
病気持ちの母親は、あたしを産むと同時に‥命を落とした。
そんな日を、父親は祝ってくれるはずがない。
毎年‥誕生日には、たくさんの親戚が家に訪れ、仏壇に手を合わす。2005-12-20 01:00:00 -
20:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
‥誰も祝ってくれない。
誰も、あたしを見ない。
みんな‥真剣な顔で、用を済ませば帰っていく。
だから、あたしには“誕生日”なんて‥なかった。2005-12-20 01:03:00 -
21:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
「はい、主役っ」
皿に移したケーキの上に、板チョコを乗せる陽平の手。
“はなちゃん お誕生日おめでとう”
花は、陽平に満面の笑みを見せた。2005-12-20 01:06:00 -
22:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
板チョコに書かれたメッセージが、自分の存在を認めてくれている。
この暖かい空気が、生まれてきたことを‥受け入れてくれている。
花は、嬉しかった。
初めて、自分の出生を喜ぶことが出来た。2005-12-20 01:10:00 -
23:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
微笑み合う2人を静かに見上げる千草は、気をそらすかのように‥夢中で料理を頬張っていく。
‥イライラする光景。
「板チョコ食べるん‥勿体無いなぁ」
「いらんやったら、食ったろか?」2005-12-20 01:16:00 -
24:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
「あかん!最後にゆっくり食べるんやから!」
気まずさも無くなり、2人は再びジャレ合うようになった。
千草は、黙々と口に料理を放り込んでいく。
2人は、そんな彼の空気さえも気づかない。2005-12-20 01:22:00 -
25:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
すると、千草の側にある包み紙に‥陽平の手が伸びてくる。
「これ、俺と千草から」
陽平は、2人で選んだプレゼントを花に手渡した。
千草の表情が、次第に曇り出す。2005-12-20 01:24:00 -
26:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
「わぁ!ネックレス!?」
花は、これ以上ないというかのような笑顔で‥チェーンを手に取った。
「俺ら2人共、一応トップを争う営業マンやしな」
得意げな口調で囁く陽平。2005-12-20 01:29:00 -
27:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
「ありがとうな!2人共っ」
花は、ネックレスを首に飾りながら‥笑いかけてくる。
千草は、イライラした顔を瞬時に消し‥彼女に合わせる。
しかし、不満は募るばかり‥。2005-12-20 01:33:00 -
28:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
「はぁー!食った食った!」
あんなにも沢山あった料理は、すべて綺麗に無くなった。
花は、空いた皿を集め‥その場を立ち上がろうとする。
千草は、彼女の代わりを勤めようと思い‥口を開きかける。2005-12-20 01:36:00 -
29:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
「あ、俺洗うで」
その言葉は、先に陽平が声に出す。
千草は、開きかけた唇をキュッと閉じた。
「あ、洗うよ」
2005-12-20 01:39:00 -
30:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
「えぇって!お前は主役なんやから」
遠慮する彼女の手から、皿を奪い‥立ち上がる彼。
千草の眉は、みるみると歪んでいく。2005-12-20 01:42:00 -
31:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
シンクの前に立ち‥蛇口をひねる彼を、そわそわしながら‥眺める彼女。
千草は、そんな2人の姿に耐えられず‥口を開いた。
‥誕生日やから、困らせたくなかったけど。2005-12-20 01:45:00 -
32:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
「俺、花のこと‥冗談抜きで好きになった」
‥それは、最近‥気づいた気持ち。
千草は、2人の背中に向けて‥声を張り上げる。2005-12-20 01:48:00 -
33:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
汚いことばかりしてきた俺を、花は‥受け入れてくれた。
こんな俺と、ちゃんと向き合ってくれる女。
最初は、どうでも良かった。
どっちかって言うたら、うざい存在。2005-12-20 01:52:00 -
34:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
“挫折も知らんくせに、へらへらと笑いやがって”って。
陽平と“幼なじみごっこ”を楽しんでる‥バカな女。
そう思っていた。
でも、実際は‥孤独を知ってて。俺よりも、つらい経験してて。2005-12-20 01:56:00 -
35:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
強い女だった。
守りたいと思った。
いつの間にか‥愛してほしいと思ってた。2005-12-20 01:58:00 -
36:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
突然の告白に、2人は体を凍らせた。
時間が止まったかのように、2人共‥振り返らない。
千草は、真っ直ぐ彼女の背中を見つめる。
‥耳にはいるのは、蛇口から流れていく水の音だけ。2005-12-20 02:02:00 -
37:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
【つづく】
2005-12-20 02:03:00 -
38:
名無しさん
2005-12-20 02:51:00 -
39:
名無しさん
>12-40
2005-12-20 02:52:00 -
42:
名無しさん
頑張ってください。
2005-12-20 20:14:00 -
45:
名無しさん
長い 完結まだ ?
2005-12-21 05:07:00 -
46:
>>46
そんな事言いなや!!ウチらが読むために書いてくれてはるんやから!!
芽衣さんへ
初めて書き込みします。?突入ですね(^o^)
書き込み控えた方が良いのは、私も小説書いてたんでわかりますが、応援したくてつい書いちゃいました(笑)
完結目指して頑張って下さい☆★2005-12-21 07:27:00 -
47:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
読んでくださったり、応援の言葉ありがとうございます。
ほんま励まされますo(_ _*)o2005-12-21 12:00:00 -
48:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
“花のこと‥冗談抜きで好きになった”
それは、勢いよく流れる水の音に絡まった台詞‥。2005-12-21 12:03:00 -
49:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
突然の告白に、花と陽平は黙ったまま‥動けない。
花は、頭が真っ白になっていた。
‥これって、あたし‥告られてる?
脳内は混乱し‥開いた口が塞がらない。2005-12-21 12:05:00 -
50:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
千草があたしを‥?
水を流しっぱなしにした陽平の背中を眺めながら、ツバをゴクリと飲み込む。
「陽平、俺‥本気や。お前は、どうなんよ?」
後ろにいる千草が、前に立つ彼に問いただす。2005-12-21 12:10:00 -
51:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
その言葉で、陽平の体はやっと動き出す。
「‥どうなんよって、」2005-12-21 12:11:00 -
52:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
その言葉で、陽平の体はやっと動き出す。
「‥どうなんよって、何が?」
スポンジで皿を洗いながら、平然と答える彼。
千草はまっすぐ彼を見つめ、もう一度声を出す。2005-12-21 12:13:00 -
53:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
※52は間違えて打ちました。
2005-12-21 12:13:00 -
54:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
「花のこと‥好きなんやろ?でも、俺‥引く気ないから」
やっと見つけた‥女を、簡単にあきらめたくない。例え、2人が両思いやったとしても‥。
千草は、強い思いを堂々と口にする。
陽平は、まだ背中を向けたまま。2005-12-21 12:17:00 -
55:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
何も答えない彼に、千草はしつこく聞き続けようとした。
すると、その時‥陽平は振り返る。
2人の目に映る‥陽平は、毅然とした態度で微笑んでいた。
「好きやよ」2005-12-21 12:20:00 -
56:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
ニッコリと笑いながら囁く。
その4文字の台詞に、花の胸は大きく波を打つ。
千草は、険しい表情で彼を眺めた。
だが、陽平は続けて言った。2005-12-21 12:23:00 -
57:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
「幼なじみとして」
平然と言いきる彼に、花は静かに視線をおとしていく。
「‥じゃあ、俺は好きにさしてもらうで」
彼の姿から目を放さず、千草は強い口調で言葉を吐いた。2005-12-21 12:30:00 -
58:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
「好きにしたら」
再度‥シンクに向かい、陽平は皿を洗い出す。
花の眉間は、深く歪みを見せていく。
数秒間の‥沈黙。
千草は、視界を彼から花へ移した。2005-12-21 12:35:00 -
59:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
「‥花っ」
真剣な声で、彼女の名を呼ぶ。
花は、肩に力を入れて‥ゆっくりと振り返った。
陽平は、黙々と皿を洗い流している。2005-12-21 12:38:00 -
60:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
「誕生日やのに、困らせて‥ごめんな。でも、軽い気持ちじゃなく‥マジで好きやから」
瞳を逸らすことなく、千草は彼女を熱く見つめる。
花は、緩んだ唇をきつく噛んだ。
「返事はまだいらん。これからの俺みて‥考えて」2005-12-21 12:44:00 -
61:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
そう言って、千草は自分の部屋へと入っていった。
残された花は、陽平を横目にその場を離れようとした。
「花、何かあったら‥言えよ」2005-12-21 12:46:00 -
62:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
陽平は、ドアノブに手を伸ばす彼女に声をかける。
花は、何も答えず‥部屋へと入った。
蛇口をキュッと閉め、陽平はため息をついた。
こらえる思いを表すかのように、濡れた手は強くシンクを掴んでいた。2005-12-21 12:51:00 -
63:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
千草は、部屋の電気もつけずに‥布団に寝転がった。
そして、目元に置いた腕を‥ゆっくりと剥がしていく。
暗い視界に、ぼんやりと広がる天井。
千草は、まぶたを閉じた。2005-12-21 12:55:00 -
64:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
‥陽平は、気持ちを誤魔化してる。でも、俺はわざと‥それを鵜呑みにした。
‥遠慮なんか、絶対したくない。素直に引き下がるほど、適当な気持ちじゃないし。
やっと見つけた女や。遠慮なんかして、手放したくない。
絶対、花がほしい。2005-12-21 13:00:00 -
65:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
千草は、どうしても花を手に入れたかった。
陽平が本音を言っていないことも、花が困っていることも、全て気づいている。
でも、遠慮なんかしたくない。
枕元に置いていた煙草に手を伸ばし、千草は気持ちを落ち着つかせようとしていた。2005-12-21 13:05:00 -
66:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
一方、花は部屋のテーブルに頬をつけ‥瞳を閉じていた。
冷たい感覚が、混乱を溶かしていく。
深いため息が漏れていく。
花は、捨てきれない思いに胸を苦しめていた。2005-12-21 13:09:00 -
67:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
“幼なじみとして”
陽平の言葉が‥つらかった。
やっぱり、あたしたちは‥それ以上へは進めない。
期待なんか‥してなかった。2005-12-21 13:12:00 -
68:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
‥解ってた。
でも、なんでやろ。
「なんで‥泣いてんやろ」
テーブルへと流れていく‥一筋の涙が、本音を知らせていた。2005-12-21 13:15:00 -
69:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
‥消したつもりやった。陽平への想いは、捨てたつもりやった。
でも、消えてない。‥捨ててなかった。
あたしは、陽平の優しさや笑顔に期待をしてた。
こんな気持ちに気づいても、何か変わるわけでもない。2005-12-21 13:20:00 -
70:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
花は、首にかけたネックレスを手のひらで包み‥息を漏らした。
こらえても‥こらえても、溢れ出す気持ちは粒へと化して‥頬に水たまりを作る。
花は、声を小さく震わせながら‥泣いた。
【つづく】2005-12-21 13:25:00 -
72:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
10代の時は、22歳って‥もっと大人やと思ってた。
2005-12-21 17:44:00 -
73:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
「あああーっ!めっちゃ可愛いっ!」
翌朝‥ロッカーの前でネックレスを外していると、リンリンがパタパタと駆け寄ってくる。
「誰かにもらったんですかぁ?」
チェーンに飾られた“ダイヤの花”を手に取り‥うらやましそうに問いかけてくる。2005-12-21 17:48:00 -
74:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
「‥あぁ。同居人の2人から」
花は、ネックレスを眺め‥ポツリと呟いた。
ダイヤで作られた花ビラは、きっと‥あたしの名を意識して買ってくれたもの。
でも、今のあたしが‥これをつけても、きっと綺麗な花ビラには見えない。2005-12-21 17:53:00 -
75:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
「なぁんや、彼氏からかと思いましたよぉ!あたしも、彼氏から‥なんか欲しいなぁ」
リンリンは、ネックレスから手を放し‥ブツブツと独り言を言っている。
花は、ロッカーの中にネックレスを直しながら‥ため息をついた。
‥誕生日が来ても、まったく成長しない自分。いつまで経っても、あたしは陽平に期待を持ち続けている。
そして、現実を見て‥勝手に傷ついてるアホな女。‥陽平は、昔からずっと‥あたしを女として見てないのに。2005-12-21 17:59:00 -
76:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
花は、ロッカーを閉めて‥駅へと向かった。
「あ、同居人の人ら来ましたよ!」
トイレでバケツに水を入れていると、リンリンが声をかけてくる。
花は、バケツを手にトイレを出た。2005-12-21 18:03:00 -
77:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
眠たそうな顔をして歩いてくる2人。
花は、深呼吸をして‥彼らに挨拶をした。
「おはよ」
いつも通りに挨拶を返す陽平。2005-12-21 18:05:00 -
78:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
花は、苦しくなる胸を抑え‥笑顔で見送る。
「花、今日‥デートしよう」
明るく振る舞う彼女に、千草は誘いを持ちかけた。
その言葉に、陽平は振り返る。花は、驚き‥ポカンと口を開いた。2005-12-21 18:11:00 -
79:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
「‥いいやろ?」
千草は、立ち止まる彼に問いかけた。花も、彼の反応を伺う。
2人の視線に、陽平は目を背けた。
「勝手にしたら?」2005-12-21 18:13:00 -
80:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
そう言って、彼はトントンと階段を降りりていく。
去っていく陽平の背中を眺め、花は唇を噛んだ。
「いや?」
うつむく彼女の顔をのぞき込み、問いかける千草。2005-12-21 18:16:00 -
81:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
恐る恐る返事を待つ‥千草の顔。
花は、彼を見て‥小さく微笑んだ。
「‥うん。しよっか」
いい加減、陽平のことを想うのは‥やめにしよう。
花は、前に進みたい一心で‥彼を受け入れた。2005-12-21 18:20:00 -
82:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
みるみると嬉しさを顔に表し、「やった!」と言って‥拳を作る彼。
花は、喜ぶ彼を眺め‥小さく笑った。
‥陽平、あたし‥ちゃんと諦めるから。2005-12-21 18:23:00 -
83:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
約束を交わし、花は彼を見送った。
「常盤千草と松浦さんって、付き合ってるんですかぁ?」
千草に手を振る彼女の隣に並び、リンリンがひそひそと問いかけてくる。
花は、彼女に優しく微笑んだ。2005-12-21 18:27:00 -
84:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
「‥どうやろな」
曖昧に答える彼女。
リンリンは、その返事に興奮し‥冷やかしてくる。
バケツの中にモップを入れて、花は彼女の言葉にケラケラと笑っていた。2005-12-21 18:31:00 -
85:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
あたし、いつから‥嘘の笑顔を覚えたんやろ。
嬉しくないのに、笑顔が作れる。
本音を隠した顔。
花は、頭の中にいる陽平の顔をもみ消すかのように‥笑みを振りまいていた。2005-12-21 18:35:00 -
86:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
【つづく】
2005-12-21 18:36:00 -
87:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
「飯食う前に、行きたいとこあるねん」
夕方‥駅で待っていると、千草は嬉しいそうに片手を上げて現れた。隣にいる陽平と離れて、花の元へ駆けつける。
花は後ろめたさを感じ、陽平の目を見ることが出来なかった。
2人で街に繰り出すと、千草は照れた様子で声をかけてくる。2005-12-22 11:22:00 -
88:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
何かを秘めているかのような彼の言葉に、花は頭の上にハテナを浮かべる。
そして、彼に連れて行かれたのは‥華やかな光を放つ宝石店。
千草は、マフラーをまき直し‥店内へと入っていく。
「2人で買ったネックな‥陽平が渡したから、俺の手で何か渡したいねん」2005-12-22 11:27:00 -
89:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
ケースの中を覗きながら、千草は口を尖らせて‥呟いた。
花は、慌てて遠慮をする。だが、彼は口を“への字”に曲げて‥身を引かない。
周りを見渡せば、白い店内には‥肩を並べて寄り添うカップルがチラホラといる。
そして、ケースの中を見る。そこには、“0”が沢山書かれた数字ばかり。2005-12-22 11:31:00 -
90:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
「ちょっ‥、ちゃんと貰ったから‥もういいって!」
花は、困った顔で彼の腕を引く。
すると、千草の目は一点に集中した。
「これ、いいやん」2005-12-22 11:34:00 -
91:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
そう言って、彼はケースに人差し指を当てた。
花は、冷や汗をかいたまま‥指が差す先に目を向ける。
目に映ったのは、ネックレスと同じ“ダイヤの花”の指輪とピアス。
その隣には、今‥首にかけているものがあったかのように、スペースが空いていた。2005-12-22 11:38:00 -
92:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
「金なら、気にせんでいいから。‥俺、自分の手でプレゼント渡したいねん」
彼女の頭に軽く手を置いて、彼は満面の笑顔を見せてくる。
店員がケースから出したのは、指輪とピアス。
千草は、そこから指輪を手に取り‥花の右手に手を伸ばす。2005-12-22 11:48:00 -
93:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
「左手は嫌やろ?だから、右手」
そう言いながら、千草は指輪を指に通していく。
‥ひんやりと冷たい感覚が、指先から伝わってくる。
「マ‥マジでいいから!指輪とかっ」
唇をきつく噛み、花は声を張り上げた。2005-12-22 11:53:00 -
94:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
静かな店内に、彼女の声が響きわたる。
同時に、指輪を持つ‥千草の手がピタリと動きを止めた。
花は、困った表情でうつむいている。2005-12-22 11:56:00 -
95:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
‥きつく言い過ぎた?
花は、すまなさそうな顔で彼を見上げた。
「じゃあ‥ピアス」
千草は、苦笑いで指輪を元の場所へ戻した。2005-12-22 11:58:00 -
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芽衣 ◆rd1jJ3btsE
「ピアスやったら安いし、いいやろ?」
耳に飾るピアスを眺め、千草は口元をクイッと動かした。
鏡に映る‥小さな耳。耳たぶには、ネックレスと同じ‥ダイヤの花ビラ。
チラッと隣を見れば、千草は寂しそうな笑顔で見つめてくる。
花は、コクリと頷き‥礼を言った。2005-12-22 12:06:00 -
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芽衣 ◆rd1jJ3btsE
きっと‥さっきの言葉に傷ついてる。
宝石店を出て‥街を歩く彼を横目に、花はため息をついた。
‥気持ちは嬉しいけど、指輪って‥なんか特別な気がするから。
だから、指の根元まで‥通されたくはなかった。2005-12-22 12:11:00 -
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芽衣 ◆rd1jJ3btsE
「何食いたい?」
“何も気にしていない”と言うかのように、彼は明るく笑いかけてくる。
我に返り、花は慌てて考える。
千草は、そんな彼女を見下ろし‥クスクスと笑った。2005-12-22 12:14:00 -
99:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
「えっ、なんで笑っ‥」
自分を見て笑い出す彼に、花はポカンとした顔で問いかけようとした。
すると、目の前に黒い色が広がる。
彼は、ふわりと首にマフラーを巻きつけた。2005-12-22 12:19:00 -
100:
芽衣 ◆rd1jJ3btsE
「強引なことして‥ごめんな。俺、なんか‥張り切りすぎたっ」
自分のマフラーを彼女の首に通して、彼は恥ずかしそうに目を伏せた。
毛糸に残っている‥わずかな体温。
花は、髪の毛をかきあげ‥彼にピアスを見せた。2005-12-22 12:28:00