小説掲示板3Ldkの城・?のスレッド詳細|夜遊びweb関西版

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3Ldkの城・?

スレッド内検索:
  • 1:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    ?は、↓です。
    http://bbs.yoasobiweb.com/test/mread.cgi/yomimono/1132987687/-5

    2005-12-19 14:05:00
  • 301:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「俺‥残ってる仕事あるから、先‥行くわ」
    「あ、ほんま?気ぃつけてなぁ」
    調子が狂った陽平は、パンを片手に玄関へと向かう。花は、そんな彼を明るく見送った。
    ‥パタ‥ン。
    彼がドアを閉めると、同時に花は呆然となる。

    2006-01-07 11:24:00
  • 302:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「どうしたん?ボーッと突っ立って」
    コーヒーカップを口の前にし、千草は彼女の様子を伺った。
    「‥あ、何もないよ」
    彼の声で我に返った花は‥平然を装い、テキパキと用意を済ませていく。
    花は、ゆうべ‥眠れずにいた。そして、朝方‥数時間だけ眠り、起きたときに決意した。陽平に、明るく接していくことを。

    2006-01-07 11:30:00
  • 303:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    千草は、2人の間に何かあったことを察知していた。
    だが、見て‥見ぬフリをする。
    これに関われば、きっと自分は‥つらい思いをする。
    彼は、無理やり明るく振る舞う彼女から‥目を逸らした。

    2006-01-07 11:35:00
  • 304:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    【つづく】

    2006-01-07 11:44:00
  • 305:

    みぃ?

    名無しなんか気にせんと頑張ってなぁ??
    めっちゃ応援してるし?

    2006-01-07 17:04:00
  • 306:

    削除

    削除されますた

    あぼ~ん
  • 307:

    削除

    削除されますた

    あぼ~ん
  • 308:

    名無しさん

    昨日、見つけて全部読みました?展開が面白いー?続き楽しみにしてまぁす?

    2006-01-07 17:51:00
  • 309:

    削除

    削除されますた

    あぼ~ん
  • 310:

    削除

    削除されますた

    あぼ~ん
  • 311:

    名無しさん

    あの〜荒らしなんか無視したらいーんぢゃないですか? 反論するから荒らされるんすよ?

    2006-01-07 18:58:00
  • 312:

    名無しさん

    やかましい

    2006-01-07 19:32:00
  • 313:

    名無しさん

    2006-01-07 20:11:00
  • 314:

    名無しさん

    2006-01-07 23:20:00
  • 315:

    アユコ ◆vlwsLLt5WQ

    お久しぶり??ずっと覗きにきてたでぇ?続きが予想できひんくてドキドキやわぁ???頑張ってねぇ?

    2006-01-07 23:42:00
  • 316:

    名無しさん

    2006-01-08 13:25:00
  • 317:

    夏菜

    はじめまして。
    めっちゃハマりました★
    携帯の充電切れる位一気に読んだょ(◎`・ω-)ノ
    完結楽しみにしてます♪

    2006-01-08 16:07:00
  • 318:

    アユコ ◆vlwsLLt5WQ

    頑張れ☆☆☆☆みんな芽衣ちゃんの小説楽しみにしてますよ♪負けないでください☆

    2006-01-08 23:51:00
  • 319:

    きさ

    更新されてる???バリバリ嬉しい?主さん荒らしとかおるけど無視やで?相手にせんときなぁ?完結まで頑張ってネン??応援してるよ?

    2006-01-09 02:12:00
  • 320:

    名無しさん

    前は大好きだったのにちょっと前から読んでてもイライラしかしない‥。すごく残念。でも応援はしてるよ!最後までがんばれ!感じ悪かったけど、最後の感想なので許してください。

    2006-01-09 04:19:00
  • 321:

    削除

    削除されますた

    あぼ~ん
  • 322:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    お久しぶりの方も、はじめましての方も、いつも書いてくださる方も、最後の方も、本当にありがとうございます。様々な感想を肥やしにして頑張りますo(_ _*)o

    2006-01-09 07:36:00
  • 323:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「桜井、流石やなぁ」
    職場の同僚たちが、成績のグラフを眺め‥陽平を誉めている。
    昼食を終えた千草は、デスクから彼に目を向けた。
    最近、陽平は残業をしたり‥基盤先を妙に増やしまくっている。
    がむしゃらに働く彼は、昼食も食べずにパソコンに向かっていた。

    2006-01-09 07:46:00
  • 324:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「常盤さんっ」
    陽平に目を奪われていると、手元にマグカップが置かれる。
    千草は、声の主に振り返った。
    「‥今晩、空いてます?」
    誘いを持ちかけてくるのは、事務員の女の子。

    2006-01-09 07:51:00
  • 325:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    彼は、ニッコリと微笑んだ。
    「空いてるよ」
    最近、千草はこうやって‥日々の予定を女で埋めている。理由は、花のことを忘れるため。
    この事務員の女の子とは、前に1度ご飯を食べただけ。
    いちいち上目遣いで見てくるから‥、花にふられた次の日に誘ってみた。

    2006-01-09 07:59:00
  • 326:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「やったぁ」
    事務員の彼女は、満面の笑みを見せて喜んでいる。
    千草は、彼女に待ち合わせ場所を知らせて、再度パソコンへと目を向けた。
    ‥女って簡単。1度飯食っただけで、その気になって‥身なりが派手になる。

    2006-01-09 08:04:00
  • 327:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    ‥花以外は、簡単に落とせるのに。

    キーボードを触る手は、ピタリと動きを止めた。
    千草は、花の笑顔を思い出す。そして、ため息をついた。

    2006-01-09 08:07:00
  • 328:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「花も‥一緒か‥」
    そう呟いて、指を無理やり動かせた。
    ‥花かって、他の女と同じように浮かれたりしていた。
    ただ‥それは、俺の前ではなく‥陽平に対して。
    千草は、手に入らない彼女に‥虚しさを募らせていた。

    2006-01-09 08:13:00
  • 329:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「基盤先に行ってきます」
    「お。直帰か?」
    「いえ、帰ってきますよ。残業するつもりなんで」
    陽平は、上司に一言を告げて‥会社を出た。

    2006-01-09 08:15:00
  • 330:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    夕焼けが落ちる空の下、彼はポケットから携帯を取り出した。
    そして、アドレス帳から‥滅多に出すことのないメモリを引き出す。
    画面に映されたのは‥元嫁の名前。
    陽平は、深呼吸をして‥発信ボタンを押した。

    2006-01-09 08:20:00
  • 331:

    名無しさん

    2006-01-09 08:24:00
  • 332:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    今の生活に行き詰まりを感じている。
    そろそろ‥動き出した方がいいのかもしれない。
    はっきりさせて、花からも‥離れるべき。

    耳元で鳴り響く呼び出し音に、陽平の胸はざわめき始める。

    2006-01-09 08:25:00
  • 333:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    そして、呼び出し音が切れる。同時に‥懐かしい声が聞こえてきた。
    陽平は、表情を引き締めて‥口を開けた。
    「‥俺やけど、元気か?」

    空には1本の飛行機雲。彼は今‥意を決し、動き出そうとしていた。

    2006-01-09 08:33:00
  • 334:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    【つづく】

    2006-01-09 08:36:00
  • 335:

    名無しさん

    ?

    2006-01-09 09:04:00
  • 336:

    名無しさん

    2006-01-09 13:59:00
  • 337:

    名無しさん

    2006-01-09 14:03:00
  • 338:

    名無しさん

    ギャー??気になる?全部読んできました?主サンいつもかいてくれて本当にありがとう?

    2006-01-09 15:06:00
  • 339:

    名無しさん

    2006-01-10 04:29:00
  • 340:

    あや

    あげ?

    2006-01-10 15:22:00
  • 341:

    名無しさん

    更新まだですか?

    2006-01-10 23:14:00
  • 342:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    更新遅れてスミマセン(>д

    2006-01-11 16:02:00
  • 343:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    もう少し後で書き始めます。

    2006-01-11 16:02:00
  • 344:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「近々、マジで‥出ていってもらいたい」
    数日後、朝食時にその台詞を告げられた。
    静まり返ったリビング、テレビのCMだけが途切れず流れている。
    花と千草は声を忘れ、まばたきだけ繰り返していた。

    2006-01-11 16:58:00
  • 345:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    ここ何日か、3人の生活は派手にずれていた。
    毎日残業の陽平は、日が変わる前後に帰宅する。
    千草は、帰ったり帰らなかったり。帰っても、酔っ払ってて‥すぐ寝てしまう。
    花は、通常通りに‥仕事と家の往復だけ。「夕飯は外で食べてくる」という2人の言葉で、夕食は簡単なものを調理してきた。
    “寝るだけの場所”と化した家で、3人は久しぶりに顔を合わせた。そして、「話がある」と陽平に呼びかけられる。

    2006-01-11 17:07:00
  • 346:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「‥実は、子供を引き取ろうと思ってんや。ずっと前から‥決めてたことやねん。だから、この家から出ていかんと‥生活してた」
    返事を返さない2人に、陽平は理由を説明する。
    花は、引っ越し当時に見た‥あの写真を思い出す。
    「‥すまんな」

    2006-01-11 17:13:00
  • 347:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    うつむき‥謝る彼。
    「‥わかった。部屋探すわ」
    千草は、指で挟んでいた煙草を灰皿にすり付けた。
    以前から、部屋を出ることを考えていた彼は‥すんなりOKの返事を出した。
    そして、チラリと花を見る。

    2006-01-11 17:16:00
  • 348:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    彼女は、一点を見つめ‥沈黙を続けている。
    その姿を、陽平は見て見ぬ振りをしていた。
    そして、彼女の返事を聞かずに話を進めていく。
    「まだ、話は決まったわけじゃないねんけどな。絶対‥引き取るつもり。血ぃもつながってない父親とおるよりは、環境えぇやろ」

    2006-01-11 17:22:00
  • 349:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「まぁ、そうやな。向こうは、手放す気ないん?」
    千草は、彼の決意に頷いている。
    2人の会話の中で、花は胸を痛めていた。
    ‥陽平は、絶対に‥振り向かない。
    彼の思いを耳にし、改めて‥自分の気持ちが無謀なものだったと‥気づかされる。

    2006-01-11 17:30:00
  • 350:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「あぁ。“あんたには渡さへん!”って、キチガイみたいに怒鳴ってた」
    陽平は、冷静に答える。
    「厄介やなぁ」と苦笑いをする千草の横で、花はクイッと顔を上げた。
    「出来るだけ‥早く部屋探すなっ」
    彼女は、明るい笑顔を陽平に向ける。

    2006-01-11 17:35:00
  • 351:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    “明らかに‥無理をしている顔”
    2人の瞳には、そう映っていた。
    だが、陽平は微笑んで‥気がついていないフリをする。
    千草もまた‥彼女の本音から目を背けていた。
    小刻みな震える口元が、この笑顔を嘘だと証明している。

    2006-01-11 17:44:00
  • 352:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    だが‥花は必死で笑顔を崩さぬようにした。
    叶わぬ‥想い。
    でも“理由が子供なら”とホッとしている自分もいる。
    複雑な想いを秘め、納得した態度を彼に示していく。

    2006-01-11 17:51:00
  • 353:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    千草は、自分の目に嫌気がさしていた。
    彼女を好きにならなければ、平然を装っている姿なんか気づかなかったはず。
    きっと‥気づかなかった。
    目を背けても、はっきりと聞こえてくる‥彼女の気持ち。
    千草は、その場から逃げるかのように‥他の女へと誘いのメールを打つ。

    2006-01-11 17:59:00
  • 354:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「じゃあ、あたしも不動産屋いってみよかな」
    先に家を出る千草を見送り、花は外出の支度をする。
    彼女の閉めた鍵の音を耳に、陽平は真顔になった。
    もう2度と‥突き放さないと誓ったはず。なのに、また‥傷つけてしまった。
    中途半端で身勝手な自分に、深いため息しか出てこない。

    2006-01-11 18:07:00
  • 355:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    悔しさが隠る下唇を噛み、前髪を掴む。
    でも‥こうするしかなかった。
    ずっと、決めていたことやから。
    孤独を抱えてきた花を見てきただけに、子供の生活を守りたかった。

    2006-01-11 18:11:00
  • 356:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    花のように、孤独を感じさせたくはない。
    だから、引き取りたい。
    それを目標に、仕事を頑張ってきた。
    この家を離れずに‥生活してきたんや。

    2006-01-11 18:13:00
  • 357:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    陽平は、閉じたまぶたを強く見開いた。
    そして、タンスの中から写真立てを取り出し、以前と同じ場所へと置いていく。
    1度は見失いかけた目標を‥忘れてしまわぬように。

    2006-01-11 18:17:00
  • 358:

    名無しさん

    2006-01-11 18:20:00
  • 359:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「あっ‥あっ」
    指先の動きと共に‥漏れる甘い声。
    電気を消した‥薄暗い部屋で、千草は事務員の女の子と関係を作っていた。
    余計な感情をもみ消すかのように、汗を流していく。

    2006-01-11 18:22:00
  • 360:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    先を待ちわびる‥汗ばんだ手に、千草は無表情に動いていた。
    そして、彼女の中に入ろうとする瞬間、花の横顔が脳内をすり抜ける。
    同時に、凍り付く体。
    彼は、花を振り切るかのように‥行為を進めていく。

    2006-01-11 18:28:00
  • 361:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    だが、振り払っても‥振り払っても、無理をした花の横顔は‥離れてくれない。
    千草は‥自分の思考に苛立ちを覚え、シーツを乱す女から離れた。
    そして、険しい表情で煙草をくわえる。
    息を荒くした女は、不思議そうに彼の背中を眺めた。

    2006-01-11 18:39:00
  • 362:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    千草は、肩を落とし‥煙を吐いている。
    ‥花の悲しみが、痛いほど‥伝わってくる。
    きっと、行き場のない想いに‥今苦しんでいるはず。
    振り向かない女。
    そんな彼女から逃げようとしても、瞳は‥心はまだ、そこにある。

    2006-01-11 18:44:00
  • 363:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    すると、背に柔らかい感覚がのしかかる。
    「‥常盤さん」
    事務員の女は、千草の名を愛おしく口ずさむ。
    違和感に覆われ、彼はその腕の中からすり抜けた。

    2006-01-11 18:47:00
  • 364:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「出よっか」
    千草は、ベッドの上に座る彼女を‥冷たく見下ろした。
    女は、その顔を前に‥何も言えなくなる。
    ホテルを出た後、千草は女をタクシーの中へと放り込んだ。
    そして、曇り空の下を足早に歩いていく。

    2006-01-11 18:52:00
  • 365:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    【つづく】

    2006-01-11 18:56:00
  • 366:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「うーん‥ないなぁ」
    窓ガラスに貼り付けられている物件を眺め‥呟く。
    今日も、花は部屋を探している。
    バイト生活の彼女にとって、たった一部屋の買い物さえ苦難のもの。

    2006-01-12 04:57:00
  • 367:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    隅々まで見渡すが、これといったものは‥この2週間見つかっていない。
    それに、1番ネックに感じているものは‥。
    花は、ため息をついた。
    「‥誰かおらんかな」
    そう、部屋を借りるには‥保証人がいる。

    2006-01-12 05:00:00
  • 368:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    以前は、家を追い出された形だったから‥父親が保証人になってくれた。
    でも、この前‥一緒に住むことを拒んだだけに、頼みづらい。
    花は、口をへの字に曲げて‥立ち尽くしていた。

    2006-01-12 05:02:00
  • 369:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「千草、もう見つけたんやろか‥」
    最近、彼とも‥ろくに話していない。
    陽平は、ずっと元嫁さんと‥話し合っている様子。
    うまく進んでいないみたいで、機嫌が‥よくない。
    流されていく日々に、花は‥自分の気持ちさえ考える暇がなかった。

    2006-01-12 05:05:00
  • 370:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「子供に選ばす?」
    その夜、風呂から上がると‥千草の声が聞こえてきた。
    花は、バスタオルで髪を拭きながら‥リビングを覗きこむ。
    「あぁ。向こうの旦那が‥そう言うてきた。これで完全に引き取れるわ」
    陽平は、スッキリとした表情で笑っていた。

    2006-01-12 05:10:00
  • 371:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    花の視線は足元へと落ちていく。
    ‥陽平は、子供と生きていく。そうなれば、未だ残っている‥この気持ちも‥捨てらなあかん。
    確実なものへと近づいていく‥失恋という結果。
    花は、胸が苦しかった。

    2006-01-12 05:13:00
  • 372:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「嫁はんは納得してんけ?」
    千草は、テーブルにひじをついた。
    「納得?‥まぁ、してんちゃう?何も言うてなかったし」
    陽平は、知恵の輪を解いたかのように‥軽快な笑みで答える。
    そして、ドア際に潜む人影に目を向けた。

    2006-01-12 05:20:00
  • 373:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「‥花」
    微かに見えた彼女の体。陽平は、立ち尽くす花に呼びかけた。
    彼につられて、千草も目を向ける。
    花は、ひょこっと顔を出した。

    2006-01-12 05:25:00
  • 374:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    弱々しく姿を見せる彼女を、陽平は数秒‥見つめる。
    そして、柔らかな表情で口を開いた。
    「‥ここに来てから、気ぃ使ってばっかやったやろ。ごめんな」
    その言葉に、花は顔を上げる。

    2006-01-12 05:38:00
  • 375:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「‥お前らしさ‥出されへんようにしてたかもな。でも‥楽しかった。ありがとうな」
    子供を引き取れば、この共同生活も終わりを告げる。
    陽平は、心に余裕を取り戻し‥彼女に謝罪する。
    花の唇は、言葉を塞いでいく。

    2006-01-12 05:41:00
  • 376:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    千草は、顔をしかめたまま‥その光景から目を逸らす。
    彼女の寂しさが、痛いほど‥胸にしみていたから。
    見上げてくる‥優しい眼差しに、花は喉を詰まらせる。
    まるで“永遠の別れ”を告げられているかのような感覚が、彼女の体を震わせていた。

    2006-01-12 05:47:00
  • 377:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    ‥2日後。
    「じゃあ、行ってくるわ」
    朝早くから支度を済ませていた陽平は、時計を眺め‥立ち上がる。
    緊張を抱えた顔つきで、玄関へと向かう彼。
    花と千草は、静かに彼を見送った。

    2006-01-12 05:54:00
  • 378:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    ガタンと閉じられたドア。
    暗くなった玄関で、2人は呆然とたっていた。
    花は、苦しくなる胸をなだめるかのように‥深く息を吐く。
    そんな彼女を、千草は哀れんだ瞳で見つめていた。

    2006-01-12 05:57:00
  • 379:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「早く支度しろよ」
    一向に玄関から動かない彼女。
    千草はため息まじりに囁いた。
    花はきょとんとした顔になる。

    2006-01-12 05:59:00
  • 380:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「気になるんやろ?見に行こや」
    千草は、眉を下げて笑いかけた。
    彼の誘いに、花は開いていた口を閉じて‥コクリと頷く。
    ‥別に見に行きたかった訳じゃない。でも、見ておきたい。
    花は、陽平への想いを消化する為に‥出かける用意をした。

    2006-01-12 06:03:00
  • 381:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    子供を引き取ったときの‥幸せそうな顔を見れば、きっと諦めがつく。
    少しはまともな表情で‥祝福できるかもしれない。
    花は、凛とした顔で家を出た。

    2006-01-12 06:07:00
  • 382:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「あちゃぁ‥。ガッチガチやなぁ」
    公園の向かいにある喫茶店の窓際で、彼を眺める千草。
    花は、アイスティーを飲みながら‥ストローを噛んだ。
    ‥よっぽど嬉しいのだろう。
    緊張をしている彼は、どこか期待に溢れた‥少年のような顔をしている。

    2006-01-12 06:31:00
  • 383:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    花は、まだ心の準備が‥完全に出来ていなかった。
    本当に‥諦められるのだろうか?と、傷つくことから恐れている。
    「千草って‥もう部屋きめたん?」
    気持ちを落ち着かせるかのように‥、花は別の話題を千草に振った。

    2006-01-12 06:36:00
  • 384:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「ん?あぁ、部屋?まだやけど。そういや‥そろそろ探さなあかんなぁ」
    思い出したかのように‥視線をあげて、ホットコーヒーを飲み干す彼。
    部屋を探すことを簡単に話す千草が、花は羨ましかった。
    “保証人”
    責任感を被せるかのような‥その重い響きに合う人間が周囲にはなく、刻々と迫ってくる期限に怯える毎日。

    2006-01-12 06:42:00
  • 385:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    アイスティーさえ、ストローを通らなくなっていく。
    千草は、窓の外を眺める瞳を‥花へと移した。
    何か‥悩んでいる姿。
    その理由が何なのかは‥なんとなく気づいている。
    だが、深く関わることの出来ない‥関係。千草は、あえて‥その話題にはふれなかった。

    2006-01-12 06:46:00
  • 386:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「あ、あれちゃん?」
    ふと視界に映る光景に、指を差す千草。
    花は、我に返り‥外を見た。
    そこには、以前‥何度か見たことのある女性がいた。
    花は、千草に頷いて‥再度眺める。

    2006-01-12 06:49:00
  • 387:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「‥千紗っ」
    近づいてくる3つの姿に、陽平は振り返る。そして娘の名を‥呟いた。
    新しい父親と元嫁の手を握りしめた‥小さな体。
    それは、写真に写るものから‥数倍に成長しているものだった。

    2006-01-12 06:54:00
  • 388:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    自分を不思議そうに見上げ‥2人に視線を送る娘。
    陽平は、元嫁に目を向けた。
    すると、2人は彼女の手を離す。

    ‥決断のとき。

    2006-01-12 06:56:00
  • 389:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「あれが‥本当のパパ。ママらとおりたいか、パパのとこ‥行きたいかは、千紗が‥決めていいんよ」
    元嫁は娘と同じ背丈になり、彼女に囁いた。
    娘は、首を傾げながら‥陽平を眺める。
    陽平は、低くしゃがみ込み‥両手を広げた。

    2006-01-12 07:00:00
  • 390:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    その光景を喫茶店から眺める花と千草は、ゴクリとつばを飲む。

    「‥千紗っ」
    陽平は、声を張り上げ‥呼びかけた。

    2006-01-12 07:02:00
  • 391:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    娘は、そんな彼を黙って見つめている。

    そして、怖がった表情で新しい父親へとしがみついた。

    陽平の目は‥点になる。

    2006-01-12 07:05:00
  • 392:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    怯えた顔で、新しい父親のズボンを強く握りしめる娘。
    「千紗っ、パパんところ‥‥おいで!」
    陽平は、眉間にしわを寄せて‥強く呼びかける。
    だが、彼女は逃げるように背を向けた。

    2006-01-12 07:07:00
  • 393:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    予想もつかなかった事態に、陽平は彼女へと身を乗り出していく。
    だが、娘との間を塞ぐかのように‥元嫁は立ちはだかった。
    「怖がってるんやから、やめて」
    冷たく言い放たれる言葉。

    2006-01-12 07:11:00
  • 394:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    陽平は、目の前が真っ暗になった。
    「あたし、ずっと‥出来ちゃった結婚やったこと‥悔やんできた。あんたは仕事ばっかで、あたしらのこと‥中途にしてたやろ。そんな奴を、千紗が選ぶわけないやん」
    元嫁は、歪んだ表情で陽平を見下ろした。
    そして、目を逸らし‥離れていく。

    2006-01-12 07:15:00
  • 395:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    陽平は、一点を見つめたまま‥唖然となる。
    視界をあげれば、そこには‥円を描いたかのような1つの家族。
    下まぶたを縁取る‥淡い涙。
    信じられない結果に、陽平はひざを地につけた。

    2006-01-12 07:19:00
  • 396:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    ポタリポタリとこぼれる粒が、土の色を変えていく。
    ‥偽物に奪われた‥大切な娘。

    陽平は、その場から動けなかった。

    2006-01-12 07:22:00
  • 397:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「マジで‥?」
    コーヒーカップを皿の上に置き、千草は困り果てた様子で前髪をかきあげた。
    ‥予想外の展開。
    喫茶店から観察していた2人は、沈黙になる。

    2006-01-12 07:35:00
  • 398:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    どんな言葉が交わされたのかは‥わからない。
    でも、窓の向こうで流れた光景は‥陽平の期待をはるかに裏切ったもの。
    2人は目を合わせ、何も言わず‥そこを後にした。

    2006-01-12 07:38:00
  • 399:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「ただいま‥」
    “陽平になんて声をかけるべきか”と話し合った結果、答えは見つからなかった。
    2人は重い足取りで帰宅する。
    予想通り‥リビングには彼の姿はなく、返事も帰ってこない。

    2006-01-12 07:41:00
  • 400:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    2人は、そろそろとリビングへと向かった。
    隣にある彼の部屋は、電気がついている。
    花は、その扉を開けようとした。
    だが、千草がその手を止める。

    2006-01-12 07:43:00
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