小説掲示板3Ldkの城・?のスレッド詳細|夜遊びweb関西版

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3Ldkの城・?

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  • 1:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    ?は、↓です。
    http://bbs.yoasobiweb.com/test/mread.cgi/yomimono/1132987687/-5

    2005-12-19 14:05:00
  • 2:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「俺、寄るとこあるから‥先帰っといて」
    2人の握手を穏やかに眺め、陽平は笑顔で手を振った。
    「え、夕飯食べるやろ?」
    花は、彼にあわてて声をかける。

    2005-12-19 14:12:00
  • 3:

    名無しさん

    は?なんでなん

    2005-12-19 14:15:00
  • 4:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「おう!豪勢に作っといてや。すぐ帰るから!」
    陽平は2人に明るく答え、駅の方向へと走っていった。
    残された花と千草は、たわいない会話を繰り返しながら‥帰宅する。
    陽平が帰ってきたのは、夕飯を作り終えた頃。

    2005-12-19 14:15:00
  • 5:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    2005-12-19 14:16:00
  • 6:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    テーブルに並べた料理を前に、陽平は千草に小さな紙袋を手渡した。
    千草は、頭にはてなを浮かべ‥中を確かめる。
    そして、中を出さずに彼を見上げた。
    陽平は、ニコリとほほえむ。

    2005-12-19 14:19:00
  • 7:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    袋から出てきたのは、水色のリボンを通した‥家の鍵。
    花は、それを見て‥笑みをこぼした。自分のことのように喜ぶ彼女に、千草は熱い視線を送る。
    そのときの陽平は、彼の花に対する気持ちを薄々‥感じていた。
    だが、2人を心から受け入れることで‥不安をもみ消していた。

    2005-12-19 14:24:00
  • 8:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    【つづく】

    2005-12-19 14:26:00
  • 9:

    名無しさん

    >>3さん、1000いってないのになんで?なん?て疑問やったら、なんか1000いったら倉庫行きって事を教えてくれた人がおって主さんはそれを心配して1000いく前に新たに?を出したと思われます。>>3さん勘違いやったらごめんなさい。 m(__)m

    2005-12-19 16:13:00
  • 10:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    >>9さん説明ありがとうo(_ _*)o

    2005-12-20 00:11:00
  • 11:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    狭い玄関の靴箱の上に飾られた‥鍵かけの板。
    そこには、黄色と赤色と‥水色のリボンが信号のように並べられている。
    同じ鍵が‥3つ。
    3LDKの部屋、ここは‥たった1つの居場所。

    2005-12-20 00:18:00
  • 12:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「おい!何してんなよ?主役が来な、始まらんやんか」
    リビングから、呼びかけてくる陽平。
    「電気消す方がいい?」
    ジュースのペットボトルをリビングに運びながら、陽平に問いかけている千草。

    2005-12-20 00:25:00
  • 13:

    杏子

    これからどうなってくんかめちゃ楽しみ??主さん頑張ってねっ?

    2005-12-20 00:29:00
  • 14:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    ジャージ姿にお団子頭の花は、鍵かけから彼らに視線を移し‥微笑んだ。
    そして、リビングの電気がパッと消される。同時に、テーブル上でローソクの火が灯り出す。

    ‥そう、今日は花の誕生日。

    2005-12-20 00:33:00
  • 15:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    杏子さんありがとう。頑張りますo(_ _*)o

    2005-12-20 00:34:00
  • 16:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「誕生日おめでとう!!」
    暗い部屋に‥ほのかな灯り。テーブルいっぱいに飾った料理を前に、2人は花を祝う。
    花は、照れくさそうに口元を緩ませ‥ローソクに向けて息を吹く。
    真っ暗になった部屋を確認し、拍手と共に‥電気がつけられる。花は、2人の笑顔の中で‥22歳を迎えた。

    2005-12-20 00:43:00
  • 17:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「やっと、花も22かぁ。俺は夏生まれやからなぁ」
    ケーキに刺さったままのローソクを抜き取り、千草は花に微笑んだ。
    「もう、段々‥歳とってくわぁ」
    彼女は、不満げな言葉を並べながら‥情けなく笑った。

    2005-12-20 00:49:00
  • 18:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「陽平はいつ?もう終わったん?」
    「‥俺は、来月。3月31日」
    「うっわ、めっちゃキワやん!」
    料理を食しながら‥流れていく2人の会話に、花は嬉しそうにケーキを切っていた。

    2005-12-20 00:52:00
  • 19:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    なぜなら、今日は‥母親の命日やから。
    病気持ちの母親は、あたしを産むと同時に‥命を落とした。
    そんな日を、父親は祝ってくれるはずがない。
    毎年‥誕生日には、たくさんの親戚が家に訪れ、仏壇に手を合わす。

    2005-12-20 01:00:00
  • 20:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    ‥誰も祝ってくれない。
    誰も、あたしを見ない。
    みんな‥真剣な顔で、用を済ませば帰っていく。
    だから、あたしには“誕生日”なんて‥なかった。

    2005-12-20 01:03:00
  • 21:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「はい、主役っ」
    皿に移したケーキの上に、板チョコを乗せる陽平の手。
    “はなちゃん お誕生日おめでとう”
    花は、陽平に満面の笑みを見せた。

    2005-12-20 01:06:00
  • 22:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    板チョコに書かれたメッセージが、自分の存在を認めてくれている。
    この暖かい空気が、生まれてきたことを‥受け入れてくれている。
    花は、嬉しかった。
    初めて、自分の出生を喜ぶことが出来た。

    2005-12-20 01:10:00
  • 23:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    微笑み合う2人を静かに見上げる千草は、気をそらすかのように‥夢中で料理を頬張っていく。
    ‥イライラする光景。
    「板チョコ食べるん‥勿体無いなぁ」
    「いらんやったら、食ったろか?」

    2005-12-20 01:16:00
  • 24:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「あかん!最後にゆっくり食べるんやから!」
    気まずさも無くなり、2人は再びジャレ合うようになった。
    千草は、黙々と口に料理を放り込んでいく。
    2人は、そんな彼の空気さえも気づかない。

    2005-12-20 01:22:00
  • 25:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    すると、千草の側にある包み紙に‥陽平の手が伸びてくる。
    「これ、俺と千草から」
    陽平は、2人で選んだプレゼントを花に手渡した。
    千草の表情が、次第に曇り出す。

    2005-12-20 01:24:00
  • 26:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「わぁ!ネックレス!?」
    花は、これ以上ないというかのような笑顔で‥チェーンを手に取った。
    「俺ら2人共、一応トップを争う営業マンやしな」
    得意げな口調で囁く陽平。

    2005-12-20 01:29:00
  • 27:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「ありがとうな!2人共っ」
    花は、ネックレスを首に飾りながら‥笑いかけてくる。
    千草は、イライラした顔を瞬時に消し‥彼女に合わせる。
    しかし、不満は募るばかり‥。

    2005-12-20 01:33:00
  • 28:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「はぁー!食った食った!」
    あんなにも沢山あった料理は、すべて綺麗に無くなった。
    花は、空いた皿を集め‥その場を立ち上がろうとする。
    千草は、彼女の代わりを勤めようと思い‥口を開きかける。

    2005-12-20 01:36:00
  • 29:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「あ、俺洗うで」
    その言葉は、先に陽平が声に出す。
    千草は、開きかけた唇をキュッと閉じた。
    「あ、洗うよ」

    2005-12-20 01:39:00
  • 30:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「えぇって!お前は主役なんやから」
    遠慮する彼女の手から、皿を奪い‥立ち上がる彼。
    千草の眉は、みるみると歪んでいく。

    2005-12-20 01:42:00
  • 31:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    シンクの前に立ち‥蛇口をひねる彼を、そわそわしながら‥眺める彼女。
    千草は、そんな2人の姿に耐えられず‥口を開いた。

    ‥誕生日やから、困らせたくなかったけど。

    2005-12-20 01:45:00
  • 32:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「俺、花のこと‥冗談抜きで好きになった」
    ‥それは、最近‥気づいた気持ち。
    千草は、2人の背中に向けて‥声を張り上げる。

    2005-12-20 01:48:00
  • 33:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    汚いことばかりしてきた俺を、花は‥受け入れてくれた。
    こんな俺と、ちゃんと向き合ってくれる女。
    最初は、どうでも良かった。
    どっちかって言うたら、うざい存在。

    2005-12-20 01:52:00
  • 34:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    “挫折も知らんくせに、へらへらと笑いやがって”って。
    陽平と“幼なじみごっこ”を楽しんでる‥バカな女。
    そう思っていた。
    でも、実際は‥孤独を知ってて。俺よりも、つらい経験してて。

    2005-12-20 01:56:00
  • 35:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    強い女だった。
    守りたいと思った。

    いつの間にか‥愛してほしいと思ってた。

    2005-12-20 01:58:00
  • 36:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    突然の告白に、2人は体を凍らせた。
    時間が止まったかのように、2人共‥振り返らない。
    千草は、真っ直ぐ彼女の背中を見つめる。
    ‥耳にはいるのは、蛇口から流れていく水の音だけ。

    2005-12-20 02:02:00
  • 37:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    【つづく】

    2005-12-20 02:03:00
  • 38:

    名無しさん

    2005-12-20 02:51:00
  • 39:

    名無しさん

    >12-40

    2005-12-20 02:52:00
  • 40:

    名無しさん

    2005-12-20 02:53:00
  • 41:
    2005-12-20 03:46:00
  • 42:

    名無しさん

    頑張ってください。

    2005-12-20 20:14:00
  • 43:

    名無しさん

    2005-12-21 00:51:00
  • 44:

    名無しさん

    2005-12-21 03:46:00
  • 45:

    名無しさん

    長い 完結まだ ?

    2005-12-21 05:07:00
  • 46:

    >>46
    そんな事言いなや!!ウチらが読むために書いてくれてはるんやから!!

    芽衣さんへ
    初めて書き込みします。?突入ですね(^o^)
    書き込み控えた方が良いのは、私も小説書いてたんでわかりますが、応援したくてつい書いちゃいました(笑)
    完結目指して頑張って下さい☆★

    2005-12-21 07:27:00
  • 47:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    読んでくださったり、応援の言葉ありがとうございます。
    ほんま励まされますo(_ _*)o

    2005-12-21 12:00:00
  • 48:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE


    “花のこと‥冗談抜きで好きになった”

    それは、勢いよく流れる水の音に絡まった台詞‥。

    2005-12-21 12:03:00
  • 49:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    突然の告白に、花と陽平は黙ったまま‥動けない。
    花は、頭が真っ白になっていた。
    ‥これって、あたし‥告られてる?
    脳内は混乱し‥開いた口が塞がらない。

    2005-12-21 12:05:00
  • 50:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    千草があたしを‥?
    水を流しっぱなしにした陽平の背中を眺めながら、ツバをゴクリと飲み込む。
    「陽平、俺‥本気や。お前は、どうなんよ?」
    後ろにいる千草が、前に立つ彼に問いただす。

    2005-12-21 12:10:00
  • 51:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    その言葉で、陽平の体はやっと動き出す。
    「‥どうなんよって、」

    2005-12-21 12:11:00
  • 52:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    その言葉で、陽平の体はやっと動き出す。
    「‥どうなんよって、何が?」
    スポンジで皿を洗いながら、平然と答える彼。
    千草はまっすぐ彼を見つめ、もう一度声を出す。

    2005-12-21 12:13:00
  • 53:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    ※52は間違えて打ちました。

    2005-12-21 12:13:00
  • 54:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「花のこと‥好きなんやろ?でも、俺‥引く気ないから」
    やっと見つけた‥女を、簡単にあきらめたくない。例え、2人が両思いやったとしても‥。
    千草は、強い思いを堂々と口にする。
    陽平は、まだ背中を向けたまま。

    2005-12-21 12:17:00
  • 55:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    何も答えない彼に、千草はしつこく聞き続けようとした。
    すると、その時‥陽平は振り返る。
    2人の目に映る‥陽平は、毅然とした態度で微笑んでいた。
    「好きやよ」

    2005-12-21 12:20:00
  • 56:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    ニッコリと笑いながら囁く。
    その4文字の台詞に、花の胸は大きく波を打つ。
    千草は、険しい表情で彼を眺めた。
    だが、陽平は続けて言った。

    2005-12-21 12:23:00
  • 57:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「幼なじみとして」
    平然と言いきる彼に、花は静かに視線をおとしていく。
    「‥じゃあ、俺は好きにさしてもらうで」
    彼の姿から目を放さず、千草は強い口調で言葉を吐いた。

    2005-12-21 12:30:00
  • 58:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「好きにしたら」
    再度‥シンクに向かい、陽平は皿を洗い出す。
    花の眉間は、深く歪みを見せていく。
    数秒間の‥沈黙。
    千草は、視界を彼から花へ移した。

    2005-12-21 12:35:00
  • 59:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「‥花っ」
    真剣な声で、彼女の名を呼ぶ。
    花は、肩に力を入れて‥ゆっくりと振り返った。
    陽平は、黙々と皿を洗い流している。

    2005-12-21 12:38:00
  • 60:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「誕生日やのに、困らせて‥ごめんな。でも、軽い気持ちじゃなく‥マジで好きやから」
    瞳を逸らすことなく、千草は彼女を熱く見つめる。
    花は、緩んだ唇をきつく噛んだ。
    「返事はまだいらん。これからの俺みて‥考えて」

    2005-12-21 12:44:00
  • 61:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    そう言って、千草は自分の部屋へと入っていった。

    残された花は、陽平を横目にその場を離れようとした。
    「花、何かあったら‥言えよ」

    2005-12-21 12:46:00
  • 62:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    陽平は、ドアノブに手を伸ばす彼女に声をかける。
    花は、何も答えず‥部屋へと入った。
    蛇口をキュッと閉め、陽平はため息をついた。
    こらえる思いを表すかのように、濡れた手は強くシンクを掴んでいた。

    2005-12-21 12:51:00
  • 63:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    千草は、部屋の電気もつけずに‥布団に寝転がった。
    そして、目元に置いた腕を‥ゆっくりと剥がしていく。
    暗い視界に、ぼんやりと広がる天井。
    千草は、まぶたを閉じた。

    2005-12-21 12:55:00
  • 64:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    ‥陽平は、気持ちを誤魔化してる。でも、俺はわざと‥それを鵜呑みにした。
    ‥遠慮なんか、絶対したくない。素直に引き下がるほど、適当な気持ちじゃないし。
    やっと見つけた女や。遠慮なんかして、手放したくない。
    絶対、花がほしい。

    2005-12-21 13:00:00
  • 65:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    千草は、どうしても花を手に入れたかった。
    陽平が本音を言っていないことも、花が困っていることも、全て気づいている。
    でも、遠慮なんかしたくない。
    枕元に置いていた煙草に手を伸ばし、千草は気持ちを落ち着つかせようとしていた。

    2005-12-21 13:05:00
  • 66:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    一方、花は部屋のテーブルに頬をつけ‥瞳を閉じていた。
    冷たい感覚が、混乱を溶かしていく。
    深いため息が漏れていく。
    花は、捨てきれない思いに胸を苦しめていた。

    2005-12-21 13:09:00
  • 67:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    “幼なじみとして”
    陽平の言葉が‥つらかった。
    やっぱり、あたしたちは‥それ以上へは進めない。
    期待なんか‥してなかった。

    2005-12-21 13:12:00
  • 68:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    ‥解ってた。
    でも、なんでやろ。
    「なんで‥泣いてんやろ」
    テーブルへと流れていく‥一筋の涙が、本音を知らせていた。

    2005-12-21 13:15:00
  • 69:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    ‥消したつもりやった。陽平への想いは、捨てたつもりやった。
    でも、消えてない。‥捨ててなかった。
    あたしは、陽平の優しさや笑顔に期待をしてた。
    こんな気持ちに気づいても、何か変わるわけでもない。

    2005-12-21 13:20:00
  • 70:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    花は、首にかけたネックレスを手のひらで包み‥息を漏らした。
    こらえても‥こらえても、溢れ出す気持ちは粒へと化して‥頬に水たまりを作る。
    花は、声を小さく震わせながら‥泣いた。
    【つづく】

    2005-12-21 13:25:00
  • 71:
    2005-12-21 14:16:00
  • 72:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    10代の時は、22歳って‥もっと大人やと思ってた。

    2005-12-21 17:44:00
  • 73:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「あああーっ!めっちゃ可愛いっ!」
    翌朝‥ロッカーの前でネックレスを外していると、リンリンがパタパタと駆け寄ってくる。
    「誰かにもらったんですかぁ?」
    チェーンに飾られた“ダイヤの花”を手に取り‥うらやましそうに問いかけてくる。

    2005-12-21 17:48:00
  • 74:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「‥あぁ。同居人の2人から」
    花は、ネックレスを眺め‥ポツリと呟いた。
    ダイヤで作られた花ビラは、きっと‥あたしの名を意識して買ってくれたもの。
    でも、今のあたしが‥これをつけても、きっと綺麗な花ビラには見えない。

    2005-12-21 17:53:00
  • 75:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「なぁんや、彼氏からかと思いましたよぉ!あたしも、彼氏から‥なんか欲しいなぁ」
    リンリンは、ネックレスから手を放し‥ブツブツと独り言を言っている。
    花は、ロッカーの中にネックレスを直しながら‥ため息をついた。
    ‥誕生日が来ても、まったく成長しない自分。いつまで経っても、あたしは陽平に期待を持ち続けている。
    そして、現実を見て‥勝手に傷ついてるアホな女。‥陽平は、昔からずっと‥あたしを女として見てないのに。

    2005-12-21 17:59:00
  • 76:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    花は、ロッカーを閉めて‥駅へと向かった。
    「あ、同居人の人ら来ましたよ!」
    トイレでバケツに水を入れていると、リンリンが声をかけてくる。
    花は、バケツを手にトイレを出た。

    2005-12-21 18:03:00
  • 77:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    眠たそうな顔をして歩いてくる2人。
    花は、深呼吸をして‥彼らに挨拶をした。
    「おはよ」
    いつも通りに挨拶を返す陽平。

    2005-12-21 18:05:00
  • 78:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    花は、苦しくなる胸を抑え‥笑顔で見送る。
    「花、今日‥デートしよう」
    明るく振る舞う彼女に、千草は誘いを持ちかけた。
    その言葉に、陽平は振り返る。花は、驚き‥ポカンと口を開いた。

    2005-12-21 18:11:00
  • 79:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「‥いいやろ?」
    千草は、立ち止まる彼に問いかけた。花も、彼の反応を伺う。
    2人の視線に、陽平は目を背けた。
    「勝手にしたら?」

    2005-12-21 18:13:00
  • 80:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    そう言って、彼はトントンと階段を降りりていく。
    去っていく陽平の背中を眺め、花は唇を噛んだ。
    「いや?」
    うつむく彼女の顔をのぞき込み、問いかける千草。

    2005-12-21 18:16:00
  • 81:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    恐る恐る返事を待つ‥千草の顔。
    花は、彼を見て‥小さく微笑んだ。
    「‥うん。しよっか」
    いい加減、陽平のことを想うのは‥やめにしよう。
    花は、前に進みたい一心で‥彼を受け入れた。

    2005-12-21 18:20:00
  • 82:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    みるみると嬉しさを顔に表し、「やった!」と言って‥拳を作る彼。
    花は、喜ぶ彼を眺め‥小さく笑った。

    ‥陽平、あたし‥ちゃんと諦めるから。

    2005-12-21 18:23:00
  • 83:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    約束を交わし、花は彼を見送った。
    「常盤千草と松浦さんって、付き合ってるんですかぁ?」
    千草に手を振る彼女の隣に並び、リンリンがひそひそと問いかけてくる。
    花は、彼女に優しく微笑んだ。

    2005-12-21 18:27:00
  • 84:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「‥どうやろな」
    曖昧に答える彼女。
    リンリンは、その返事に興奮し‥冷やかしてくる。
    バケツの中にモップを入れて、花は彼女の言葉にケラケラと笑っていた。

    2005-12-21 18:31:00
  • 85:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    あたし、いつから‥嘘の笑顔を覚えたんやろ。
    嬉しくないのに、笑顔が作れる。
    本音を隠した顔。

    花は、頭の中にいる陽平の顔をもみ消すかのように‥笑みを振りまいていた。

    2005-12-21 18:35:00
  • 86:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    【つづく】

    2005-12-21 18:36:00
  • 87:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「飯食う前に、行きたいとこあるねん」
    夕方‥駅で待っていると、千草は嬉しいそうに片手を上げて現れた。隣にいる陽平と離れて、花の元へ駆けつける。
    花は後ろめたさを感じ、陽平の目を見ることが出来なかった。
    2人で街に繰り出すと、千草は照れた様子で声をかけてくる。

    2005-12-22 11:22:00
  • 88:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    何かを秘めているかのような彼の言葉に、花は頭の上にハテナを浮かべる。
    そして、彼に連れて行かれたのは‥華やかな光を放つ宝石店。
    千草は、マフラーをまき直し‥店内へと入っていく。
    「2人で買ったネックな‥陽平が渡したから、俺の手で何か渡したいねん」

    2005-12-22 11:27:00
  • 89:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    ケースの中を覗きながら、千草は口を尖らせて‥呟いた。
    花は、慌てて遠慮をする。だが、彼は口を“への字”に曲げて‥身を引かない。
    周りを見渡せば、白い店内には‥肩を並べて寄り添うカップルがチラホラといる。
    そして、ケースの中を見る。そこには、“0”が沢山書かれた数字ばかり。

    2005-12-22 11:31:00
  • 90:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「ちょっ‥、ちゃんと貰ったから‥もういいって!」
    花は、困った顔で彼の腕を引く。
    すると、千草の目は一点に集中した。
    「これ、いいやん」

    2005-12-22 11:34:00
  • 91:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    そう言って、彼はケースに人差し指を当てた。
    花は、冷や汗をかいたまま‥指が差す先に目を向ける。
    目に映ったのは、ネックレスと同じ“ダイヤの花”の指輪とピアス。
    その隣には、今‥首にかけているものがあったかのように、スペースが空いていた。

    2005-12-22 11:38:00
  • 92:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「金なら、気にせんでいいから。‥俺、自分の手でプレゼント渡したいねん」
    彼女の頭に軽く手を置いて、彼は満面の笑顔を見せてくる。
    店員がケースから出したのは、指輪とピアス。
    千草は、そこから指輪を手に取り‥花の右手に手を伸ばす。

    2005-12-22 11:48:00
  • 93:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「左手は嫌やろ?だから、右手」
    そう言いながら、千草は指輪を指に通していく。
    ‥ひんやりと冷たい感覚が、指先から伝わってくる。
    「マ‥マジでいいから!指輪とかっ」
    唇をきつく噛み、花は声を張り上げた。

    2005-12-22 11:53:00
  • 94:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    静かな店内に、彼女の声が響きわたる。
    同時に、指輪を持つ‥千草の手がピタリと動きを止めた。
    花は、困った表情でうつむいている。

    2005-12-22 11:56:00
  • 95:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    ‥きつく言い過ぎた?
    花は、すまなさそうな顔で彼を見上げた。
    「じゃあ‥ピアス」
    千草は、苦笑いで指輪を元の場所へ戻した。

    2005-12-22 11:58:00
  • 96:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「ピアスやったら安いし、いいやろ?」
    耳に飾るピアスを眺め、千草は口元をクイッと動かした。
    鏡に映る‥小さな耳。耳たぶには、ネックレスと同じ‥ダイヤの花ビラ。
    チラッと隣を見れば、千草は寂しそうな笑顔で見つめてくる。
    花は、コクリと頷き‥礼を言った。

    2005-12-22 12:06:00
  • 97:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    きっと‥さっきの言葉に傷ついてる。
    宝石店を出て‥街を歩く彼を横目に、花はため息をついた。
    ‥気持ちは嬉しいけど、指輪って‥なんか特別な気がするから。
    だから、指の根元まで‥通されたくはなかった。

    2005-12-22 12:11:00
  • 98:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「何食いたい?」
    “何も気にしていない”と言うかのように、彼は明るく笑いかけてくる。
    我に返り、花は慌てて考える。
    千草は、そんな彼女を見下ろし‥クスクスと笑った。

    2005-12-22 12:14:00
  • 99:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「えっ、なんで笑っ‥」
    自分を見て笑い出す彼に、花はポカンとした顔で問いかけようとした。
    すると、目の前に黒い色が広がる。
    彼は、ふわりと首にマフラーを巻きつけた。

    2005-12-22 12:19:00
  • 100:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「強引なことして‥ごめんな。俺、なんか‥張り切りすぎたっ」
    自分のマフラーを彼女の首に通して、彼は恥ずかしそうに目を伏せた。
    毛糸に残っている‥わずかな体温。
    花は、髪の毛をかきあげ‥彼にピアスを見せた。

    2005-12-22 12:28:00
  • 101:

    ?チャン?

    今初めヵラ一気に読んだょッッ??この小説めたスチなったァ???頑張ってねぇ?完結までずっとぉ供しますぅ?

    2005-12-22 15:34:00
  • 102:
    2005-12-22 19:42:00
  • 103:

    名無しさん

    2005-12-22 22:54:00
  • 104:

    名無しさん

    2005-12-22 23:01:00
  • 105:

    密子

    初めまして☆友達からこのサイトを教えてもらって今、読み終わりました。あまり長い感想はここでは好ましくないみたいですが、本当に面白かったので言わずにいられなくて書いちゃいました(>_

    2005-12-23 01:50:00
  • 106:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    チャンさん、密子さん、あと読んでくれてる方。本当にありがとうございます。

    2005-12-23 15:38:00
  • 107:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    花と千草が街でデートをしている頃、陽平は家に帰ってきた。暗い表情のまま、タンスの前に立つ。
    カタン‥。
    引き出しの奥を見て、彼は唇に力を入れた。
    ‥手元にある写真は、この1枚だけ。
    離婚して、自分に残されたものは‥孤独と屈辱感。

    2005-12-23 15:52:00
  • 108:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    写真立てを持つ手に、怒りがこもっていく。
    陽平は、再度‥それを引き出しの奥にしまい込んだ。
    そして、テーブル上にあるリモコンを手にし‥テレビをつける。
    ‥箱の中から流れてくる笑い声。
    陽平は、表情を変えることなく‥それを眺めていた。

    2005-12-23 15:57:00
  • 109:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    目とテレビの間に浮かび上がるのは、帰り際‥デートに繰り出した2人の後ろ姿。
    陽平は、目を伏せて‥煙草をくわえた。百円ライターが灯す小さな炎が、そっと先端を燃やしていく。
    “お前は、どうなんよ?”
    白い煙を吐くと、同時に千草の台詞が頭の中に流れる。
    陽平は、煙草をくわえたまま‥床に寝転んだ。

    2005-12-23 16:08:00
  • 110:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    ため息をついて、まぶたを閉じる。

    “陽平っ”

    親鳥からの餌を待つ‥雛のように、純粋な目をする花。

    2005-12-23 16:12:00
  • 111:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    “‥陽平”

    彼女の涙は、幼い頃から‥ずっと見てきた。
    流さないように‥こらえても、溢れ出す涙は頬を濡らしていく。
    強がって‥人に見せたりしない涙を、俺の前では素直に流してた。

    2005-12-23 16:18:00
  • 112:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    “また遊ぼうっ”

    1度突き放した俺を、彼女は‥優しく受け入れてくれた。
    その日から、俺は“幼なじみ”として‥花を守り続けることを決意する。
    もう2度と‥中途半端な手は差し伸べないことを誓って。

    2005-12-23 16:25:00
  • 113:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    恋愛感情なんか‥持つ必要はない。
    その方が、絶対いい。
    “幼なじみ”という関係は、何年経っても‥崩れたりはしないから。
    下手に恋愛へと踏み込めば、きっと‥花は涙を見せたりしなくなる。
    彼女の唯一の逃げ場として、俺は存在したいから。

    2005-12-23 16:30:00
  • 114:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    “陽平、聞いて聞いて”
    “陽平っ‥”
    “もぉー!陽平のアホ!!”

    部屋中に広がる白い煙を、彼はぼんやりと眺めていた。

    2005-12-23 16:40:00
  • 115:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    嬉しそうに‥駆け寄ってくる姿。
    今にも泣き出しそうな顔で‥名を呼ぶ声。
    からかうと、彼女はいつも‥頬を膨らませて怒る。

    「‥うるさい」

    2005-12-23 16:47:00
  • 116:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    陽平は、煙草を灰皿に擦り付け‥目を閉じた。
    だが、彼女の面影は‥まぶたの裏に焼き付いている。

    陽平は、決意とは裏腹な感情に狂いかけていた。

    2005-12-23 16:50:00
  • 117:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「‥俺には、恋愛してる余裕なんか‥ないねん」
    彼は、自分に言い聞かすかのように‥つぶやき続けた。
    俺には、恋愛よりも‥せなあかんことがある。じゃなきゃ、ここに住み続けてる‥意味がない。

    余計な感情を捨てるために、陽平は前髪をきつく掴み‥歯を食いしばっていた。

    2005-12-23 17:06:00
  • 118:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「おいしいっ!」
    細長いスプーンを持ちながら、満足げにニカッと微笑む花。
    「そんなんばっか食ってるから‥ブクブク太るんやでぇ、はなぶぅ」
    彼女の笑顔をクスクスと笑いながら、千草はホットコーヒーを静かに飲む。
    2人は、宝石店の近くにある‥飲食店に足を運んでいた。

    2005-12-23 17:16:00
  • 119:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    テーブルの上には、先に平らげた料理の皿が‥数枚並んでいる。
    「太ったら、ダイエットすればいい話やん」
    生クリームをすくったスプーンを口に放り込み、花はツーンとした顔をした。
    「じゃあ、今ダイエットせなあかんやん。パフェとか食ってる場合ちゃうで」
    余裕を見せる彼女に、千草は皮肉を口にする。

    2005-12-23 17:27:00
  • 120:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「うるさい!」
    ムゥっと口を尖らせ‥膨れる彼女。
    コロコロと表情を変える彼女に、千草はケラケラを笑い出した。
    花は、ブツブツと文句をこぼしながらも‥パフェを頬張っている。

    2005-12-23 17:37:00
  • 121:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「怒んなって、機嫌直せよっ。冗談やん」
    視線がかち合うと、花は頬を膨らませて‥プィッと顔を背ける。
    千草は、クシャッと笑顔を作り‥機嫌を取った。
    彼女は、チラリと彼を見る。

    2005-12-23 17:56:00
  • 122:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「‥チーズケーキ」
    にこやかに見つめてくる彼に、花は一言囁いた。
    千草は、あごを乗せていたヒジを‥ガクッと倒した。
    「まだ食う気!?」
    「デザートは別腹やの!」

    2005-12-23 18:02:00
  • 123:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    呆れ果てる千草を無視して、花は店員を呼ぶ。
    ため息をつき‥コーヒーのお代わりを頼む彼を眺め、花は口元を緩ませた。
    最近、こんな風に‥時間を楽しんだりしてなかったな。
    千草とおったら、しんどい気持ちが‥少し楽になった。
    憎まれ口を言い合いながら、花は千草の笑顔に癒されていく。

    2005-12-23 18:13:00
  • 124:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    【つづく】

    2005-12-23 18:15:00
  • 125:

    名無しさん

    2005-12-23 22:20:00
  • 126:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    129サン(TдT)読んでくれてありがとぅ!!今日は頑張って更新しますょ!!!!

    2005-12-23 23:27:00
  • 127:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    時計の針は、午後11時を表している。
    2本の針を眺め、陽平は深く息を吐いた。
    テレビの音さえも‥苛立ちを増していく。
    彼は、荒々しく画面を黒くした。

    2005-12-23 23:35:00
  • 128:

    名無しさん

    2005-12-23 23:38:00
  • 129:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「ただいまぁ」
    長針が“3”にたどり着く頃、笑い声と共に帰宅する2人。陽平は、彼らを迎えることもなく‥手元にある新聞を開いた。
    「あ、起きてたん?返事ないから、寝たんかと思った」
    リビングのドアを開けた千草は、彼を見下ろし‥声をかけてくる。
    陽平は、平然を装い‥軽く返事を交わす。

    2005-12-23 23:43:00
  • 130:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    132サン
    ありがとぅ(>д

    2005-12-23 23:44:00
  • 131:

    あゆみ

    はじめて書き込みするケド、ずっと読んでるょ?読みやすくて、書き方がすごぃ情景が想像できるからハマってます?頑張ってね?

    2005-12-24 00:08:00
  • 132:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    上着を脱ぐ彼は、幸せそうに笑いかけてくる。
    ざわめく‥胸。
    陽平は、表情を曇らせた。
    「ただいまっ」
    夜風で赤く冷え切った頬に手を当て、花がリビングに入ってくる。

    2005-12-24 00:17:00
  • 133:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    あゆみチャン(_

    2005-12-24 00:20:00
  • 134:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    相当‥楽しかったのだろう。2人は、勢いよく会話を続けている。
    陽平の手は、新聞紙にシワを作っていく。
    「あ、千草。これ‥ありがとう」
    追い打ちをかけるかのように、花は首に巻いたマフラーを彼に手渡した。
    その光景を眺める陽平は、ある物を目にし‥目が点になる。

    2005-12-24 00:26:00
  • 135:

    名無しさん

    しおり

    2005-12-24 00:34:00
  • 136:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    モヤモヤとした感情が、背後から覆い被さってくる。
    たった数時間で、こんなにも近くなって‥帰ってくるなんて。
    微笑み合う2人を見つめ、陽平は冷や汗をかいた。
    ‥付き合ったん?
    口には出せない質問が、頭の中をグルグルと回っていく。

    2005-12-24 00:40:00
  • 137:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    139サン(>д

    2005-12-24 00:41:00
  • 138:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    ‥30分後。
    「ん?‥どうしたん?」
    千草が体を暖めている頃、先に風呂から上がった花は‥コットンを化粧水で濡らしていた。
    彼女は、いつもと変わらないジャージ姿で‥髪の毛をお団子に結いでいる。
    しかし、どこか楽しげで‥明るい表情が目立っていた。

    2005-12-24 00:58:00
  • 139:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    陽平は、表情を1つも変えずに‥彼女のスッピンを眺めている。
    「‥何よ?‥肌荒れてる?」
    手前にある鏡に顔を近づけ、花は不安げに問いかけた。
    そんな彼女の態度に、陽平は目つきを鋭くする。

    2005-12-24 01:06:00
  • 140:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「似合ってるよ、ピアス」
    刺々しく、皮肉を口にする。
    「あ‥うん。‥ありがとう」
    花は、耳に向けられる視線から逃れるかのように‥目を逸らした。

    2005-12-24 01:10:00
  • 141:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「楽しかった?デート」
    気まずそうな彼女の振る舞いが、余計に苛立たせていく。
    陽平は、無表情のまま‥質問を投げ続けた。
    シーンと静まり返ったリビングでは、逃げ場など‥見つからない。
    花は開き直り、彼を見た。

    2005-12-24 01:18:00
  • 142:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「なんやぁ?妬いてんのかぁ?」
    彼女は、明るい口調で彼をからかった。ニカニカと歯を見せて、笑いかける。
    しかし、視界に映るのは‥真面目な顔。
    花は、言葉を失った。次第に、笑顔も乾いていく。

    2005-12-24 01:26:00
  • 143:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    陽平は、鋭い視線で彼女の体を凍らせた。張り詰めた沈黙が、彼女の体に突き刺さっていく。
    「マフラーまで借りて、えらい仲良ぉなったんやな」
    囁かれる言葉は、彼女の不安を増していく。
    「好きになった?千草のこと」

    2005-12-24 01:37:00
  • 144:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    陽平は、震える唇に力を込めて‥問いかけた。
    「そんなんじゃ‥」
    花は、慌てて否定しようとした。だが、開きかけた唇を‥再び閉じる。
    頭の中によぎった‥千草の笑顔。振り向かせようとする‥必死な姿。
    花は、視線を落としていく。

    2005-12-24 01:52:00
  • 145:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    戸惑う彼女の姿に、陽平の苛立ちは頂点へと達した。
    次の瞬間、彼はテーブルの上にヒジを置き‥身を乗り出していく。
    急な彼の行動に、花は驚いて‥動けない。

    2005-12-24 01:57:00
  • 146:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    後頭部に触れる‥大きな手。
    近づいてくる‥真剣な顔。

    乾いた唇に重ねられた‥柔らかい感触。

    2005-12-24 02:00:00
  • 147:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    ‥彼の前髪が、左目を撫でていく。

    花は、1度‥まばたきをした。
    だが、思考回路は停止し‥何も浮かばない。

    2005-12-24 02:07:00
  • 148:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    閉じていた彼のまぶたは、ゆっくりと開いた。
    そして、まばたきもせず‥静かに唇を離していく。
    数センチ離れた距離から、陽平は彼女の顔を眺めた。
    花は、一点を見つめたまま‥凍り付いている。
    彼は視線を逸らし、リビングを後にした。

    2005-12-24 02:15:00
  • 149:

    ぁ?チャン

    リァルタイム????初??カキコだぁ???頑張ってね??

    2005-12-24 02:16:00
  • 150:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    1人‥残された彼女は、呆然とする。
    そして数秒後、右手の中指で‥そっと触れた部分をなぞった。

    ‥キス‥された?

    2005-12-24 02:19:00
  • 151:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    アーチャン(o^ー^o)ありがとうです!!!!

    2005-12-24 02:20:00
  • 152:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    状況を把握しようとしても、脳内は混乱し‥はっきりと読みとれない。
    彼女は、両手で口を塞いだ。
    波打つ鼓動は、急な早さで動いていく。

    ‥突然のキスに、花の思考は混乱の渦に巻き込まれていた。

    2005-12-24 02:29:00
  • 153:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    【つづく】

    2005-12-24 02:32:00
  • 154:

    きさ

    めっちゃ更新されてうれしい???これからどぅなるんかめっちゃ気になる??

    2005-12-24 02:49:00
  • 155:

    闇読者

    また、ええとこで
    終わっとるがな?(OДO;)

    BOOKMARKOK(゚∀゚)ъ

    2005-12-24 02:54:00
  • 156:

    名無しさん

    2005-12-24 04:09:00
  • 157:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    きさサン、闇読者サン、読んでくださっている方々へ。いつもありがとぅです(>∀

    2005-12-25 04:49:00
  • 158:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    パタン‥。
    部屋へと移動した陽平は、閉めたドアにもたれ掛かる。
    真っ暗な部屋の中で呆然と立ち尽くし、彼は瞳を閉じた。
    自己の突発的な行動は、彼自身も驚いていた。
    彼女に触れた唇を前歯でなぞり、荒々しく髪の毛を乱していく。

    2005-12-25 05:10:00
  • 159:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「‥‥何やってんねん、俺は」
    今更‥悔やんでも、消すことの出来ない行為。
    髪の毛を掴んでいた手のひらは、スルスルとずれ落ちていく。
    ‥びっくりしていた彼女の顔が、目に焼き付いて‥離れない。
    陽平のため息は、六畳一間の闇に吸い込まれていった。

    2005-12-25 05:39:00
  • 160:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「ちょっとぉ‥ちゃんと聞いてくれてますぅ?」
    日中‥あくびばかりする彼女に、リンリンはムッとした顔をする。
    「‥あ、うん。‥聞いてるよ」
    花は、すまなさそうに両手を合わせた。
    「‥でねっ、何回も電話したんやけど‥拒否られてて‥連絡取られへんようになってねっ」

    2005-12-25 05:55:00
  • 161:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    リンリンは、気を取り直して‥再び語り出す。
    昨夜‥彼氏に振られた彼女は、朝からずっと彼氏への未練を訴えかけてくる。
    ところが、花は睡眠不足で‥話の大半は耳を通していない。
    目に涙を浮かべるリンリンの隣で、彼女はぼんやりと昨夜の出来事を思い出していた。

    2005-12-25 06:14:00
  • 162:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    ゆうべの‥キス。
    昨晩、花は一睡も出来なかった。
    なんで、あんなことするん?
    どんなに考えても、答えは出てこなかった。
    そして‥どんな顔をして接しればいいのかわからず、明け方から用意をして‥足早に家を出てきた。

    2005-12-25 06:28:00
  • 163:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    彼らが出勤する時間には、それとなく女子トイレに閉じこもり‥姿を隠す。
    花の頭の中は、いまだに整理が出来ていなかった。
    「もぉーっ!!また聞いてないでしょぉ!!」
    ぼんやりと考えごとをしている彼女を見て、リンリンは泣き叫ぶ。
    その声で我に返り、花は慌てて彼女に謝った。

    2005-12-25 06:44:00
  • 164:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    一方、静かな社内で千草は彼女に異変を感じていた。
    「俺‥なんかしたかな?」
    ポツリとつぶやきながら、首を傾げる。
    起きた頃には、彼女はとっくに出勤していた。そして、駅でも姿は見あたらなかった。
    どう考えても‥おかしい。

    2005-12-25 06:57:00
  • 165:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    あの花が早起きしたり‥見送ってくれへんとか、絶対‥おかしい。
    千草は、昨日の言動を振り返り‥考え込む。
    ‥だが、特に思い当たることはない。
    「‥俺じゃなかったら」
    彼は、ふと陽平を見た。

    2005-12-25 07:04:00
  • 166:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「花のやつ、何かあったんかなぁ?朝‥見送ってくれへんとか、おかしいと思わん?悩み事でもあるんかな?」
    千草は、彼の隣に並んで‥カマをかける。
    案の定、彼の表情はかたくなる。
    千草は、それを見逃さなかった。

    2005-12-25 07:10:00
  • 167:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「‥‥さぁ」
    陽平は素っ気なく返答し、スタスタと去っていく。千草は、鋭い瞳で彼の背中を眺めた。
    「‥ビンゴ」
    ‥花が避けてるのは、コイツか。
    千草は“2人に何かあった”と確信した。

    2005-12-25 08:51:00
  • 168:

    名無しさん

    略‥ナシ。
    【つづく】

    2005-12-25 08:52:00
  • 169:

    かな

    しおり?
    完結楽しみにしてます?

    2005-12-25 15:53:00
  • 170:

    名無しさん

    2005-12-25 17:26:00
  • 171:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    かなサン、名無しサン、ありがとぅです(_

    2005-12-25 23:20:00
  • 172:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「でも今思えば、あの男‥“梅子”って名前で引いてたし。スッピン見て、機嫌悪くなるし。別れて正解かもっ」
    リンリンの悲しみが怒りに変わる頃、花の気持ちも落ち着きを持ち始めていた。
    窓ガラスを拭きながら、花は昨日の彼を思い返す。
    ‥あんな真剣な顔。
    千草とデートしたことを、妬いているかのような発言。

    2005-12-25 23:33:00
  • 173:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    ‥陽平は、あたしのことが‥好き?
    自惚れ‥かもしれない。
    でも、やっぱり‥期待してしまう。
    口元は緩み、身の動きも軽くなる。
    花の心は、陽平への想いを再発させていた。

    2005-12-25 23:42:00
  • 174:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「お姉ぇさんっ、上の方‥ちゃんと拭けてないでぇ」
    ぼんやりと外を眺め‥ガラスを拭いていると、背後から注意を受ける。
    聞き覚えのある声に、ピタリと動きが止まる体。
    花は、恐る恐る‥振り返る。
    「代わりに拭いたろか?」

    2005-12-25 23:49:00
  • 175:

    名無しさん

    2005-12-25 23:51:00
  • 176:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    驚く彼女に、彼はケラケラと笑っている。
    「‥千草」
    声の主は、ベンチに腰掛け‥ネクタイを緩めていた。彼の姿を見て、花の胸は複雑になっていく。
    「なんで?まだ4時過ぎやで」
    彼女は、時計を眺め‥問いかけた。

    2005-12-25 23:58:00
  • 177:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    ‥まだ仕事中じゃないん?なんで、こんなところにおるん?
    頭の上で、ハテナを浮かべる。
    すると彼は、彼女に近づき‥スプレーと雑巾を奪い取る。
    「基盤先に行くついでに、寄った。‥今日、まだ会ってなかったから」
    そう囁きながら、スプレーを片手に‥届かなかった場所を拭いていく。

    2005-12-26 00:05:00
  • 178:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    179サン、ありがとぅです(T_T)

    2005-12-26 00:06:00
  • 179:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    花は、彼の横顔を眺め‥うつむいた。
    「‥陽平から聞いた」
    ぎこちない彼女の態度を横目に、千草は再びカマをかける。
    その台詞で、彼女は複雑な表情で顔をあげる。
    ‥やっぱり。‥何があったんなよ?

    2005-12-26 00:10:00
  • 180:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    千草は、平然を装いながら‥ツバを飲む。
    彼女が流す沈黙に、不安が増していく。
    彼は、静かに彼女の声を待った。
    「‥陽平、何て言うてた?」

    2005-12-26 00:15:00
  • 181:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    花は、頬をほんのり赤く染め‥問いかけてくる。
    「‥別に‥何も言うてなかったけど」
    ていうか、何があったんか聞いてないし。
    千草は、当たり障りのない答えを出す。
    ‥なんなよ?何があったんなよ?

    2005-12-26 00:19:00
  • 182:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    ‥2人のことやから、直接聞いても‥答えるわけがない。だから、遠回しに聞き出している。
    だが、なかなか見えてこない真相に、千草は苛立ち始めていた。
    「‥そっか」
    花は、がっかりした顔をする。
    千草は、窓ガラスから雑巾を放し‥彼女を眺めた。

    2005-12-26 00:23:00
  • 183:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    1つだけ、わかることがある。
    ‥2人の反応からして、今から聞き出そうとしていることは、きっと‥俺にとって良くないことだということ。
    ‥嫌な予感がする。
    「花は、どう思ってんの?」
    千草は、意を決して‥問いかける。

    2005-12-26 00:27:00
  • 184:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    すると、彼女は‥チラリと千草を見た。そして、気まずそうに口を開いた。

    「‥キスした‥理由を知りたい」
    その言葉は、途切れ途切れにつぶやかれた。

    2005-12-26 00:33:00
  • 185:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    千草は、目を見開いた。
    目の前が暗くなり、気が遠くなっていく。
    見下ろせば、彼女は切なさに溺れた顔をしている。
    彼は、ゆっくりとまぶたを閉じた。
    震える手に力を入れて、拳を作っていく。

    2005-12-26 00:56:00
  • 186:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「‥俺、基盤行かな」
    千草は、平然を装い‥時計を見た。そして、彼女に背を向け‥ベンチに置いていた鞄に手を伸ばす。
    今‥口開けたら、絶対あかん。絶対、きついこと言うてしまう。
    「気ぃつけてな!」
    見送る彼女の声に、千草は振り返らなかった。無言のまま、その場から逃れていく。

    2005-12-26 01:07:00
  • 187:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    【つづく】

    2005-12-26 01:08:00
  • 188:

    名無しさん

    2005-12-26 03:22:00
  • 189:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    192サン、ありがとぅですm(_ _)m

    2005-12-26 03:42:00
  • 190:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    小さくなる背中を眺め、花は振っていた手を下ろした。そして、再度仕事に取りかかろうとする。
    「‥キスってマジですか?」
    「ひっっ」
    突如、目の前に現れたリンリンの顔。花は驚いて、肩に力を入れた。
    「そんなトロピカルな気分なんですか!?」

    2005-12-26 03:50:00
  • 191:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    羨ましそうな顔を近づけて、目をウルウルとさせる彼女。花は、ハァッとため息をついた。
    「そんな‥えぇもんちゃうよ」
    なんでキスされたんか‥わからんし。
    そう呟いて、花は淡々と仕事を続行していく。
    そんな彼女を眺め、リンリンは冷静を取り戻した。

    2005-12-26 03:57:00
  • 192:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「“陽平”って、あの人でしょ?いつも常盤千草とおる‥」
    ゴミ箱の袋を交換しながら、リンリンは彼女に問いかけた。
    だが、花は何も答えず‥背を向けたまま。
    「あたし、てっきり松浦さんは‥常盤千草と出来てんやと思ってました。‥もう1人の方やったんですね」
    リンリンは、彼女の後ろ姿から視線を外し‥囁いた。

    2005-12-26 04:05:00
  • 193:

    名無しさん

    >>1-200
    リアルタイム?頑張ってね??

    2005-12-26 04:08:00
  • 194:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    彼女の言葉で、花の表情は一変する。

    “千草”

    ‥最低や、あたし。自分のことばっかで、全然‥千草のこと考えてない。

    2005-12-26 04:12:00
  • 195:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    197サン、ありがとぅです(>д

    2005-12-26 04:13:00
  • 196:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    千草は、あたしのことが好きやのに。キスのこと‥相談するとか、最低やん。
    「‥ごめん」
    ポツリとつぶやき、花は目をぎゅっと閉じた。
    ‥あたし、千草の優しさに‥甘えてる。

    2005-12-26 04:18:00
  • 197:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    優しいから、どうしても甘えてしまって。‥そして、傷つけてる。
    「返事‥せな」
    ‥このままで良いわけがない。ちゃんと、答えを出してあげないと。
    花は、窓の外を眺めた。
    ‥町はオレンジ色に染められ、華やかに飾られている。

    2005-12-26 04:44:00
  • 198:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    それは、まるで‥花の心を映しているかのようだった。
    彼女は、はっきりと‥自分の気持ちが見えていた。

    “陽平のことが‥好き”

    2005-12-26 04:48:00
  • 199:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    キスされて‥思った。
    あたし、もう隠されへん。‥これ以上、幼なじみなんか‥続けられへん。

    陽平が結婚したとき‥悲しかった。でも、諦める‥良いチャンスやと思った。

    2005-12-26 04:53:00
  • 200:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    陽平の瞳に映るときは、いつも幼なじみを演じてた。でも、陽平の背中をみる‥あたしの瞳は、いつだって‥中学生んときと同じ色。
    結婚して‥距離が余計に広がって、内心‥ホッとしてた。
    理性を保てる自分に‥安心してた。

    でも、陽平は離婚した。

    2005-12-26 05:01:00
  • 201:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    彼の離婚で、あたしは‥醜い自分を見てしまう。
    『‥離婚してん』
    電話越しに囁かれる言葉に、あたしは喜んでいた。
    途切れながらも言葉を繋げ、理由を語る‥辛そうな声を、あたしは真剣に聞いてた。
    ‥‥真剣なフリをしてた。

    2005-12-26 05:07:00
  • 202:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    本当は、嬉しかった。‥まだ好きやったから。

    でも、また‥傷つきたくない。そう思う気持ちがあった。

    だから、演じ続けた。

    2005-12-26 05:10:00
  • 203:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    執着しないように‥心がけて。

    でも、無理やった。

    一緒に住んでから、あたしは‥演じることが出来なくなっていた。

    2005-12-26 05:13:00
  • 204:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    得意だった泣き真似さえ出来なくなり、無意識に‥本当の涙ばかり流して。
    執着しないって決めてたのに、気がつけば‥求めてる。
    彼の表情や仕草‥ひとつひとつに、ドキドキしてた。

    2005-12-26 05:21:00
  • 205:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    今までは、やばいなって思えば‥離れていた。離れることで、感情は薄らいでいくから。
    でも、同じ屋根の下に身を置いてからは‥心の調節が出来なくなっていた。

    陽平、もう‥無理やよ。
    キスなんかされたら、期待してしまう。

    2005-12-26 05:28:00
  • 206:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE


    ‥好き。
    陽平のことが、ほんまに好き。

    2005-12-26 05:30:00
  • 207:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    数年秘めていた想いは我慢を捨て、彼女の胸に広がっていく。
    花は凛とした表情で、夕暮れを吸い込む月を眺めていた。

    【つづく】

    2005-12-26 05:38:00
  • 208:

    名無しさん

    2005-12-26 07:03:00
  • 209:

    名無しさん

    2005-12-26 12:47:00
  • 210:

    名無しさん

    2005-12-26 15:42:00
  • 211:

    名無しさん

    2005-12-26 20:48:00
  • 212:

    ゅら

    しおり☆頑張ってね(>ω

    2005-12-27 00:53:00
  • 213:

    名無しさん

    2005-12-27 01:29:00
  • 214:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    シオリを付けてくれた『ゅらサン』、読んでくれてる方、ありがとうございます。
    3Ldkも、あと4分の1になりました。
    最後までお付き合いくださると嬉しいですo(_ _)o

    2005-12-27 03:35:00
  • 215:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    数時間後、残業を終えた陽平は1人で会社を出た。強い風が頬を冷やし、彼は身を潜めた。
    そして数歩‥先に目をやり、足を止める。
    「何してん?」
    「‥残業お疲れ」
    ガードレールに腰掛け‥こちらを見る彼に声をかける。‥千草は、陽平の帰りを待っていた。

    2005-12-27 03:45:00
  • 216:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「待っててくれたん?‥コーヒーでも飲んで帰るか?」
    彼の冷え切った白い顔を心配し、喫茶店へと誘う陽平。
    少し先にある喫茶店へと歩く彼を、千草は黙って眺めた。
    そして、軽く浮かせていた足を‥地につける。

    2005-12-27 03:50:00
  • 217:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「さっむいなぁ。だいぶ待っ‥」
    「ぬけがけ?」
    体を縮め、陽平の足は速くなる。千草は、喫茶店へと急ぐ彼の言葉を覆った。
    ‥ピタリと動きを止める足。
    陽平は、ゆっくりと振り返る。

    2005-12-27 03:57:00
  • 218:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    向かい風は追い風へと化し、後ろ首を冷やしていく。
    目の前に立ち尽くす彼は、殺意を込めた瞳で睨んでいた。
    陽平の背筋は凍りつく。
    同時に、彼の台詞が何をさしているのかを‥瞬時に察した。

    2005-12-27 04:06:00
  • 219:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    ‥まばたきもしない瞳。
    千草は、完全にキレている。
    「‥寒いし、とりあえず喫茶店でも行こ」
    弱々しい言葉しか出てこない。
    陽平は、視線から逃れるかのように‥うつむいた。

    2005-12-27 04:10:00
  • 220:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    ‥だが、彼は動かない。
    後ろめたさが、胸を締め付けていく。
    陽平は、戸惑いながら‥再度彼を見上げた。
    すると、千草はゆっくりと近づいてくる。

    2005-12-27 04:13:00
  • 221:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    詰め寄るかのように歩いてくる彼に、陽平はポケットの中で拳を作った。
    すると、千草は彼の隣を通り過ぎていく。そして、背後で立ち止まった。
    殺気を感じ、陽平は振り返ることが出来ない。

    2005-12-27 04:20:00
  • 222:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「俺、引く気ないから」
    その言葉は、勢いよく吹く風の音と交わった。
    「頭悪いみたいやから、教えたるわ。‥幼なじみは、キスなんかせぇへんで」
    向こうを向いたままの彼に、千草は強く言い放つ。
    そして、彼を置いたまま‥木枯らしの中をすり抜けていった。

    2005-12-27 04:31:00
  • 223:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    【つづく】

    2005-12-27 04:35:00
  • 224:

    きさ

    あと?分の?なんやぁ?もぅ少しやね?頑張ってね?完結まじ楽しみ?あたし的には千草と花が付き合ってほしいなぁ??(笑)

    2005-12-27 10:47:00
  • 225:

    名無しさん

    2005-12-27 15:13:00
  • 226:

    陽平と花やろ???

    2005-12-27 17:04:00
  • 227:

    名無しさん

    千草、いいオトコ?     花みたぃな優柔不断な女にゎもったいない?

    2005-12-27 17:29:00
  • 228:

    名無しさん

    花ョリ男子のつくしと花がかぶるぅ??

    2005-12-27 18:39:00
  • 229:

    名無しさん

    この話したしかに引き込まれるけど、ありきたりな筋書きやね?1二人の男が一人の女を取り合う
    2 片方の男はやさぐれててでも次第にヒロインに引かれていく
    3 ヒロインにはつらい過去がある(家庭関係)

    ・・・ほぼ王道な?

    2005-12-27 18:43:00
  • 230:

    名無しさん

    アフォな女が好きそーな話しだ

    2005-12-27 18:50:00
  • 231:

    名無しさん

    2005-12-27 20:45:00
  • 232:

    名無しさん

    2005-12-27 21:05:00
  • 233:

    名無しさん

    アフォな女デス。この話スキ。

    2005-12-27 21:46:00
  • 234:

    名無しさん

    私も好き?ずっとみてるし?文句あるなら見るなや?完結までガンバ??

    2005-12-28 01:00:00
  • 235:

    名無しさん

    完結頑張ってくださぃ??毎日楽しみに読んでましたょぉ???途中で終ゎるのゎ悲しぃょ??

    2005-12-29 10:59:00
  • 236:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    今忙しくて、なかなか書く時間が無いんです(>д

    2005-12-29 11:12:00
  • 237:

    きさ

    主さんがまた書いてくれるまで待ってます????

    2005-12-30 01:34:00
  • 238:

    名無しさん

    2005-12-30 04:53:00
  • 239:

    名無しさん

    2005-12-30 16:54:00
  • 240:

    かな

    主さん、どの小説にも中傷や荒らしはつきもの。ぅちはこの小説大好きです。荒らしなんかに負けずに頑張ってください。応援してます。

    2005-12-30 20:59:00
  • 241:

    名無しさん

    応援してるで?頑張って?

    2005-12-31 08:42:00
  • 242:

    あと2日待ってください。ごめんなさい、仕事に追われてて(>д

    2006-01-03 17:32:00
  • 243:

    名無しさん

    あげ

    2006-01-03 23:55:00
  • 244:

    みぃ

    仕事大変ゃろけど頑張ってねぇ????
    めっちゃ待ってるしぃ???(*´∀`*)ノ゙アゲ?

    2006-01-04 10:07:00
  • 245:

    名無しさん

    2006-01-05 02:32:00
  • 246:

    ぁ?チャン

    茅衣????頑張ってネン???みんな応援してるカラ?ゅっくりでいぃカラさぁ??

    2006-01-05 19:41:00
  • 247:

    名無しさん

    http://xmbs.jp/oooaa/

    2006-01-05 20:35:00
  • 248:

    夜中更新しますんで(>д

    2006-01-05 23:47:00
  • 249:

    名無しさん

    まだぁ―??

    2006-01-06 03:39:00
  • 250:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「あ、おかえりぃ」
    玄関のドアを閉めると、花はスタスタと側に寄ってくる。
    「遅かったなぁ。ご飯あるけど、先に風呂入る?」
    彼女の表情は、夕方会ったときよりも‥すっきりしていた。
    「‥陽平は残業?」

    2006-01-06 12:25:00
  • 251:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    黙ったままの千草に、花は背を向けて‥キッチンへと歩いていく。
    千草は、コンロに火をつける彼女をジッと眺めていた。
    「先、ご飯食べいよ。温めるだけやから」
    いつも通りに振る舞う姿。
    千草の顔は険しく化していく。

    2006-01-06 12:34:00
  • 252:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    なんで‥そんなにスッキリした顔なん?
    “‥陽平は残業?”とか、アイツの帰りを待ってたかのような言葉。
    俺のこと、全然見てくれてない。
    いつも‥陽平ばっか。

    2006-01-06 12:39:00
  • 253:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    千草は、落としていた視点をゆっくりと上げていく。
    そして靴を脱ぎ、キッチンへと向かう。
    淡いピンク色のジャージに、長い髪をまとめ上げた‥お団子頭。
    淡々と夕食を作る後ろ姿を、静かに眺めた。

    2006-01-06 12:44:00
  • 254:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「‥キスしよ」
    千草は、背後から静かに囁いた。
    ‥カタン。
    動揺を表すかのように、物音をたてる彼女。
    彼は、振り返らない背中へと近づいていく。

    2006-01-06 12:47:00
  • 255:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「花‥」
    彼女の体を、後ろから抱きしめる。優しく‥そして強く。
    静まり返った空間には、コンロと換気扇の音だけが響いている。
    花は、肩を震わせて‥うつむいた。
    「‥ごめん」

    2006-01-06 12:52:00
  • 256:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    苦しげにつぶやく言葉が、胸に突き刺さる。
    千草は、彼女の髪の毛に顔を埋めた。そして、彼女を抱く腕に力を込める。
    「俺のこと‥見てや」
    風呂上がりの彼女から薫る‥清楚な匂いが、悲しさを増していく。
    「‥ごめ‥」

    2006-01-06 12:59:00
  • 257:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    唇を噛みしめるかのように、息と共に流れていく‥答え。
    千草は、瞳をまぶたで隠し‥眉間を寄せた。
    「‥そんなに陽平がいい?」
    小さな声で問いかける。

    2006-01-06 13:03:00
  • 258:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    こうやって‥彼女の体を抱きしめることが出来ても、心までは手が届かない。
    千草は、行き止まる自分を悔やんだ。
    花は、少し間を置いて‥口を開けた。
    「‥うん」
    ハッキリと告げられた気持ち。

    2006-01-06 13:07:00
  • 259:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    千草は、そっと目を開ける。
    茶碗を持つ手は‥震えていた。
    彼は、腕の力を緩めていく。
    そして、何も言わず‥彼女から離れた。

    2006-01-06 13:10:00
  • 260:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    素早く洗面所へと向かい、勢いよく水で顔を洗う彼。瞳からこぼれる想いを‥洗い流すかのように。
    そして、タオルで水滴を取り‥鏡を見つめる。
    ‥赤く染まった瞳や鼻は、彼女への気持ちが本気だったことを表していた。
    千草は、深く呼吸を整える。
    そして、再度キッチンへと向かった。

    2006-01-06 13:18:00
  • 261:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    彼はガタンと椅子に腰掛け、彼女を見上げた。
    背を向けたままの彼女を眺めると、顔を見なくても‥表情が目に浮かんでくる。
    「飯、まだぁ?」
    何もなかったかのように、千草は平然と声をかけた。
    花は、黙ったまま‥動かない。

    2006-01-06 13:22:00
  • 262:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    小刻みに震える彼女に、喉は苦しくなる。
    千草は、彼女から目を逸らし‥唇を噛んだ。
    「腹‥減ったし」
    ひじをつき、頬に手を当てる。
    「ごめんっ」

    2006-01-06 13:27:00
  • 263:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    目を手の甲で擦り、彼女は急いで用意をした。
    恐る恐る‥前に出された手料理を、千草は黙々と口に含んでいく。
    「‥うまい」
    千草は、彼女に微笑んだ。
    彼女の出した答えを、飲み込むかのように。

    2006-01-06 13:35:00
  • 264:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    その優しい笑顔を前に、凍っていた彼女の表情は‥柔らかく解れていく。
    花は、最後まで甘えさせてくれる彼に‥胸を痛めていた。
    届かぬ想いは、無理やり作る表情と共に溶かしていく。
    千草は、彼女から身を引くことを決意した。

    2006-01-06 13:41:00
  • 265:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    【つづく】

    2006-01-06 13:42:00
  • 266:

    名無しさん

    2006-01-06 13:46:00
  • 267:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    270サン、ありがとう。今日は、出来る限り更新しますね。ミナサンが優しく待っててくれたので、感謝の気持ちを込めてφ(..)

    2006-01-06 14:57:00
  • 268:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    ‥あの夜、千草は優柔不断なあたしに笑いかけてくれた。
    ミモザの花のような‥優しい表情をくれた彼。
    彼をふったことを後悔しない為にも、あたしは素直にならなあかん。
    あたしは、千草の優しさに誓った。
    自分の本音と向き合うことを。

    2006-01-06 15:08:00
  • 269:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「俺、ツレと遊んでくるわ」
    休日の午後、千草はリビングから離れていく。
    コタツに身を暖める2人は、彼を黙って見送った。
    あの日以来、3人でいると‥千草は絶対離れていく。
    きっと、気を遣ってくれている。

    2006-01-06 15:13:00
  • 270:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    花は、千草の行動を切ない瞳で眺めていた。
    「俺、掃除しよ」
    スクッと立ち上がる陽平。
    花は、自分の部屋へと向かう彼をみた。

    2006-01-06 15:16:00
  • 271:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    あのキス以来、陽平は2人になることを避けている。
    千草の気遣いで2人になる度、彼は何かと離れていこうとする。
    1人になり、花はため息をついた。

    2006-01-06 15:19:00
  • 272:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    ‥何を考えてるんか解らへん。
    彼女は、意を決し‥彼の部屋へと足を運ぶ。
    そして、ゴクリとツバを飲み‥ドアに手を伸ばした。

    2006-01-06 15:27:00
  • 273:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    ドアを開けると、目に映ったのは‥腰を下ろした彼の横顔。
    「‥何?」
    彼は、こちらを見ずに‥問いかけてくる。
    本棚を整理する手が止まらないことに、花は戸惑った。
    ‥どう切り出せばいいか‥わからない。

    2006-01-06 15:31:00
  • 274:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    本を置く音だけが、2人の耳に流れていく。
    花は、開きかけた唇を閉じて‥うつむいた。
    陽平は、淡々と作業を進めている。
    彼から滲み出る‥その空気は、彼女の言葉を封じるかのように壁を作っていた。

    2006-01-06 15:38:00
  • 275:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    どう切り出せばいいのか‥わからない。
    花は、勇気を出して‥彼をみた。

    「‥き」

    2006-01-06 15:43:00
  • 276:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    掠れた言葉が、静かな部屋に落ちていく。
    本を持つ手が、ピタリと止まる。
    彼が初めて見せる自分への反応に、花は胸を熱くした。
    「‥陽平のことが‥‥好き」
    ずっと‥ずっと言えずにいた言葉。

    2006-01-06 15:49:00
  • 277:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    陽平は、ずっと言わせてくれへんかった。
    ‥ううん、違う。
    あたしが、言おうとせぇへんかったんや。
    関係が崩れることを恐れて、前に踏み込めずにいたから。

    2006-01-06 15:54:00
  • 278:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    でも、もう‥無理。
    自分を守る為の我慢も、自分を苦しめているものってことに‥気づいたから。
    ‥伝えたかった。
    ずっと‥言いたかった。

    2006-01-06 15:56:00
  • 279:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    花は、真っ直ぐ彼を見つめた。
    すると、陽平はジュウタンの上に本を置く。
    そして、花を見上げた。

    2006-01-06 15:58:00
  • 280:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    ふたつの視線が‥ゆっくりと合わさっていく。
    張り裂けそうな胸。
    花は、彼への視線に想いを込めた。

    だが、彼の自分を見つめる瞳は‥冷たい氷のようだった。

    2006-01-06 16:03:00
  • 281:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE


    「キスされて、その気になった?」

    笑い声と共に‥言い放たれた台詞。
    陽平は、彼女を馬鹿にするかのような目で見上げた。

    2006-01-06 16:06:00
  • 282:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    黒目を浮かせた‥その白い瞳に、花の表情は曇りを見せていく。
    陽平は、再度手を動かし‥本を取った。
    「悪いけど、あれに意味はないから。‥気持ちなんかない」
    本棚に手をつき、彼女を傷つけていく。

    2006-01-06 16:17:00
  • 283:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「からかっただけ」
    立ち尽くす花を‥再度見上げて、彼は乾いた笑顔を見せた。
    彼女は、彼を見下ろし‥口を開いたまま。
    「てか、寒いから閉めてくれへん?ドア」

    2006-01-06 16:21:00
  • 284:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    冷めきった顔で、彼女を突き放す彼。
    花は、開いた口を閉じ‥部屋から出ていった。
    何も言わずドアを閉め、自分の部屋へと歩いていく。
    彼女は電気もつけずに、ドア際でしゃがみ込んだ。
    真っ暗な冷たい空間に、絶望感が広がっていく。

    2006-01-06 16:29:00
  • 285:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    花は、声を潜めて‥ヒザを濡らした。

    一方、陽平は本棚を見つめたまま‥肩を落としていた。
    そして、閉められたドアを見つめ‥表情を歪めていく。
    【つづく】

    2006-01-06 16:32:00
  • 286:

    りな

    早く,花と陽平くっついてほしいよぉ〜(>_

    2006-01-06 19:23:00
  • 287:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    リナサン(o^^o)イツモありがとう☆☆

    2006-01-07 03:55:00
  • 288:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    窓から差し込む陽射しを、カーテンで覆い被せる。
    陽平は、襟元に通したネクタイを‥慣れた手つきで結いで、鏡の前に立った。
    そして、スーツを手にしながら‥自分を見る。
    枠を通して映す幻影は、目の前にいる男が傷つけた彼女の姿。
    罪悪感が、袖を通す腕を静かに止めた。

    2006-01-07 04:15:00
  • 289:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    身勝手な自分に‥後悔の雨が降り注ぐ。
    だが、胸に秘めた決意を思い出し、鏡から目を背けた。
    今、恋愛なんかしてる暇はない。
    守らなければならない‥大切な存在が、乱れた思考を整えていく。
    陽平は、ネクタイを軽く締め直し‥部屋を出た。

    2006-01-07 04:23:00
  • 290:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    リビングへ足を踏み込むと、そこには‥いつもと同じ光景が流れていた。
    テレビを眺めながら、パンを頬張る千草。そして‥
    「おはよっ」
    せわしなく動き回る花が、明るく自分に微笑んでくる。
    陽平は、屈託のない‥その笑みに戸惑った。

    2006-01-07 04:31:00
  • 291:

    削除

    削除されますた

    あぼ~ん
  • 292:

    名無しさん

    長い

    2006-01-07 06:14:00
  • 293:

    削除

    削除されますた

    あぼ~ん
  • 294:

    名無しさん

    2006-01-07 06:51:00
  • 295:

    ハナ

    頑張ってくださぃ☆彡  1のときから密かに見てました(o^o^o)毎日更新楽しみにしてますッ♪

    2006-01-07 09:41:00
  • 296:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    名無しさん、書くのやめてください。

    2006-01-07 10:21:00
  • 297:

    名無しさん

    2006-01-07 11:01:00
  • 298:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    【読者の皆様へ】
    295と297は違う方です。申し訳ないのですが、落ち着くまでトリップを気にしながら読んで下さい。

    2006-01-07 11:11:00
  • 299:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「ちょっ、占い始まるから“目覚まし”かけてよぉ」
    懐かしのアニメ番組にかじりつく千草に、彼女は足踏みをしながら‥歯を磨く。
    昨日の出来事などなかったかのような‥変わらぬ光景を目にし、陽平は自分の記憶を疑った。
    酷な台詞を並べ、わざと‥彼女を傷つけたはずなのに。
    目の前で動く彼女は、軽快な表情で朝を過ごしている。

    2006-01-07 11:13:00
  • 300:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「今日寝坊したから、パンで許してな」
    唖然と立ち尽くす陽平に、花はパンを入れ平らなカゴを指差した。
    「‥あ、うん」
    彼は、彼女のペースに流されるまま‥動いていく。
    そのぎこちない態度を、千草はパンをかじりながら眺めていた。

    2006-01-07 11:20:00
  • 301:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「俺‥残ってる仕事あるから、先‥行くわ」
    「あ、ほんま?気ぃつけてなぁ」
    調子が狂った陽平は、パンを片手に玄関へと向かう。花は、そんな彼を明るく見送った。
    ‥パタ‥ン。
    彼がドアを閉めると、同時に花は呆然となる。

    2006-01-07 11:24:00
  • 302:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「どうしたん?ボーッと突っ立って」
    コーヒーカップを口の前にし、千草は彼女の様子を伺った。
    「‥あ、何もないよ」
    彼の声で我に返った花は‥平然を装い、テキパキと用意を済ませていく。
    花は、ゆうべ‥眠れずにいた。そして、朝方‥数時間だけ眠り、起きたときに決意した。陽平に、明るく接していくことを。

    2006-01-07 11:30:00
  • 303:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    千草は、2人の間に何かあったことを察知していた。
    だが、見て‥見ぬフリをする。
    これに関われば、きっと自分は‥つらい思いをする。
    彼は、無理やり明るく振る舞う彼女から‥目を逸らした。

    2006-01-07 11:35:00
  • 304:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    【つづく】

    2006-01-07 11:44:00
  • 305:

    みぃ?

    名無しなんか気にせんと頑張ってなぁ??
    めっちゃ応援してるし?

    2006-01-07 17:04:00
  • 306:

    削除

    削除されますた

    あぼ~ん
  • 307:

    削除

    削除されますた

    あぼ~ん
  • 308:

    名無しさん

    昨日、見つけて全部読みました?展開が面白いー?続き楽しみにしてまぁす?

    2006-01-07 17:51:00
  • 309:

    削除

    削除されますた

    あぼ~ん
  • 310:

    削除

    削除されますた

    あぼ~ん
  • 311:

    名無しさん

    あの〜荒らしなんか無視したらいーんぢゃないですか? 反論するから荒らされるんすよ?

    2006-01-07 18:58:00
  • 312:

    名無しさん

    やかましい

    2006-01-07 19:32:00
  • 313:

    名無しさん

    2006-01-07 20:11:00
  • 314:

    名無しさん

    2006-01-07 23:20:00
  • 315:

    アユコ ◆vlwsLLt5WQ

    お久しぶり??ずっと覗きにきてたでぇ?続きが予想できひんくてドキドキやわぁ???頑張ってねぇ?

    2006-01-07 23:42:00
  • 316:

    名無しさん

    2006-01-08 13:25:00
  • 317:

    夏菜

    はじめまして。
    めっちゃハマりました★
    携帯の充電切れる位一気に読んだょ(◎`・ω-)ノ
    完結楽しみにしてます♪

    2006-01-08 16:07:00
  • 318:

    アユコ ◆vlwsLLt5WQ

    頑張れ☆☆☆☆みんな芽衣ちゃんの小説楽しみにしてますよ♪負けないでください☆

    2006-01-08 23:51:00
  • 319:

    きさ

    更新されてる???バリバリ嬉しい?主さん荒らしとかおるけど無視やで?相手にせんときなぁ?完結まで頑張ってネン??応援してるよ?

    2006-01-09 02:12:00
  • 320:

    名無しさん

    前は大好きだったのにちょっと前から読んでてもイライラしかしない‥。すごく残念。でも応援はしてるよ!最後までがんばれ!感じ悪かったけど、最後の感想なので許してください。

    2006-01-09 04:19:00
  • 321:

    削除

    削除されますた

    あぼ~ん
  • 322:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    お久しぶりの方も、はじめましての方も、いつも書いてくださる方も、最後の方も、本当にありがとうございます。様々な感想を肥やしにして頑張りますo(_ _*)o

    2006-01-09 07:36:00
  • 323:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「桜井、流石やなぁ」
    職場の同僚たちが、成績のグラフを眺め‥陽平を誉めている。
    昼食を終えた千草は、デスクから彼に目を向けた。
    最近、陽平は残業をしたり‥基盤先を妙に増やしまくっている。
    がむしゃらに働く彼は、昼食も食べずにパソコンに向かっていた。

    2006-01-09 07:46:00
  • 324:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「常盤さんっ」
    陽平に目を奪われていると、手元にマグカップが置かれる。
    千草は、声の主に振り返った。
    「‥今晩、空いてます?」
    誘いを持ちかけてくるのは、事務員の女の子。

    2006-01-09 07:51:00
  • 325:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    彼は、ニッコリと微笑んだ。
    「空いてるよ」
    最近、千草はこうやって‥日々の予定を女で埋めている。理由は、花のことを忘れるため。
    この事務員の女の子とは、前に1度ご飯を食べただけ。
    いちいち上目遣いで見てくるから‥、花にふられた次の日に誘ってみた。

    2006-01-09 07:59:00
  • 326:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「やったぁ」
    事務員の彼女は、満面の笑みを見せて喜んでいる。
    千草は、彼女に待ち合わせ場所を知らせて、再度パソコンへと目を向けた。
    ‥女って簡単。1度飯食っただけで、その気になって‥身なりが派手になる。

    2006-01-09 08:04:00
  • 327:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    ‥花以外は、簡単に落とせるのに。

    キーボードを触る手は、ピタリと動きを止めた。
    千草は、花の笑顔を思い出す。そして、ため息をついた。

    2006-01-09 08:07:00
  • 328:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「花も‥一緒か‥」
    そう呟いて、指を無理やり動かせた。
    ‥花かって、他の女と同じように浮かれたりしていた。
    ただ‥それは、俺の前ではなく‥陽平に対して。
    千草は、手に入らない彼女に‥虚しさを募らせていた。

    2006-01-09 08:13:00
  • 329:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「基盤先に行ってきます」
    「お。直帰か?」
    「いえ、帰ってきますよ。残業するつもりなんで」
    陽平は、上司に一言を告げて‥会社を出た。

    2006-01-09 08:15:00
  • 330:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    夕焼けが落ちる空の下、彼はポケットから携帯を取り出した。
    そして、アドレス帳から‥滅多に出すことのないメモリを引き出す。
    画面に映されたのは‥元嫁の名前。
    陽平は、深呼吸をして‥発信ボタンを押した。

    2006-01-09 08:20:00
  • 331:

    名無しさん

    2006-01-09 08:24:00
  • 332:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    今の生活に行き詰まりを感じている。
    そろそろ‥動き出した方がいいのかもしれない。
    はっきりさせて、花からも‥離れるべき。

    耳元で鳴り響く呼び出し音に、陽平の胸はざわめき始める。

    2006-01-09 08:25:00
  • 333:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    そして、呼び出し音が切れる。同時に‥懐かしい声が聞こえてきた。
    陽平は、表情を引き締めて‥口を開けた。
    「‥俺やけど、元気か?」

    空には1本の飛行機雲。彼は今‥意を決し、動き出そうとしていた。

    2006-01-09 08:33:00
  • 334:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    【つづく】

    2006-01-09 08:36:00
  • 335:

    名無しさん

    ?

    2006-01-09 09:04:00
  • 336:

    名無しさん

    2006-01-09 13:59:00
  • 337:

    名無しさん

    2006-01-09 14:03:00
  • 338:

    名無しさん

    ギャー??気になる?全部読んできました?主サンいつもかいてくれて本当にありがとう?

    2006-01-09 15:06:00
  • 339:

    名無しさん

    2006-01-10 04:29:00
  • 340:

    あや

    あげ?

    2006-01-10 15:22:00
  • 341:

    名無しさん

    更新まだですか?

    2006-01-10 23:14:00
  • 342:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    更新遅れてスミマセン(>д

    2006-01-11 16:02:00
  • 343:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    もう少し後で書き始めます。

    2006-01-11 16:02:00
  • 344:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「近々、マジで‥出ていってもらいたい」
    数日後、朝食時にその台詞を告げられた。
    静まり返ったリビング、テレビのCMだけが途切れず流れている。
    花と千草は声を忘れ、まばたきだけ繰り返していた。

    2006-01-11 16:58:00
  • 345:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    ここ何日か、3人の生活は派手にずれていた。
    毎日残業の陽平は、日が変わる前後に帰宅する。
    千草は、帰ったり帰らなかったり。帰っても、酔っ払ってて‥すぐ寝てしまう。
    花は、通常通りに‥仕事と家の往復だけ。「夕飯は外で食べてくる」という2人の言葉で、夕食は簡単なものを調理してきた。
    “寝るだけの場所”と化した家で、3人は久しぶりに顔を合わせた。そして、「話がある」と陽平に呼びかけられる。

    2006-01-11 17:07:00
  • 346:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「‥実は、子供を引き取ろうと思ってんや。ずっと前から‥決めてたことやねん。だから、この家から出ていかんと‥生活してた」
    返事を返さない2人に、陽平は理由を説明する。
    花は、引っ越し当時に見た‥あの写真を思い出す。
    「‥すまんな」

    2006-01-11 17:13:00
  • 347:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    うつむき‥謝る彼。
    「‥わかった。部屋探すわ」
    千草は、指で挟んでいた煙草を灰皿にすり付けた。
    以前から、部屋を出ることを考えていた彼は‥すんなりOKの返事を出した。
    そして、チラリと花を見る。

    2006-01-11 17:16:00
  • 348:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    彼女は、一点を見つめ‥沈黙を続けている。
    その姿を、陽平は見て見ぬ振りをしていた。
    そして、彼女の返事を聞かずに話を進めていく。
    「まだ、話は決まったわけじゃないねんけどな。絶対‥引き取るつもり。血ぃもつながってない父親とおるよりは、環境えぇやろ」

    2006-01-11 17:22:00
  • 349:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「まぁ、そうやな。向こうは、手放す気ないん?」
    千草は、彼の決意に頷いている。
    2人の会話の中で、花は胸を痛めていた。
    ‥陽平は、絶対に‥振り向かない。
    彼の思いを耳にし、改めて‥自分の気持ちが無謀なものだったと‥気づかされる。

    2006-01-11 17:30:00
  • 350:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「あぁ。“あんたには渡さへん!”って、キチガイみたいに怒鳴ってた」
    陽平は、冷静に答える。
    「厄介やなぁ」と苦笑いをする千草の横で、花はクイッと顔を上げた。
    「出来るだけ‥早く部屋探すなっ」
    彼女は、明るい笑顔を陽平に向ける。

    2006-01-11 17:35:00
  • 351:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    “明らかに‥無理をしている顔”
    2人の瞳には、そう映っていた。
    だが、陽平は微笑んで‥気がついていないフリをする。
    千草もまた‥彼女の本音から目を背けていた。
    小刻みな震える口元が、この笑顔を嘘だと証明している。

    2006-01-11 17:44:00
  • 352:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    だが‥花は必死で笑顔を崩さぬようにした。
    叶わぬ‥想い。
    でも“理由が子供なら”とホッとしている自分もいる。
    複雑な想いを秘め、納得した態度を彼に示していく。

    2006-01-11 17:51:00
  • 353:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    千草は、自分の目に嫌気がさしていた。
    彼女を好きにならなければ、平然を装っている姿なんか気づかなかったはず。
    きっと‥気づかなかった。
    目を背けても、はっきりと聞こえてくる‥彼女の気持ち。
    千草は、その場から逃げるかのように‥他の女へと誘いのメールを打つ。

    2006-01-11 17:59:00
  • 354:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「じゃあ、あたしも不動産屋いってみよかな」
    先に家を出る千草を見送り、花は外出の支度をする。
    彼女の閉めた鍵の音を耳に、陽平は真顔になった。
    もう2度と‥突き放さないと誓ったはず。なのに、また‥傷つけてしまった。
    中途半端で身勝手な自分に、深いため息しか出てこない。

    2006-01-11 18:07:00
  • 355:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    悔しさが隠る下唇を噛み、前髪を掴む。
    でも‥こうするしかなかった。
    ずっと、決めていたことやから。
    孤独を抱えてきた花を見てきただけに、子供の生活を守りたかった。

    2006-01-11 18:11:00
  • 356:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    花のように、孤独を感じさせたくはない。
    だから、引き取りたい。
    それを目標に、仕事を頑張ってきた。
    この家を離れずに‥生活してきたんや。

    2006-01-11 18:13:00
  • 357:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    陽平は、閉じたまぶたを強く見開いた。
    そして、タンスの中から写真立てを取り出し、以前と同じ場所へと置いていく。
    1度は見失いかけた目標を‥忘れてしまわぬように。

    2006-01-11 18:17:00
  • 358:

    名無しさん

    2006-01-11 18:20:00
  • 359:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「あっ‥あっ」
    指先の動きと共に‥漏れる甘い声。
    電気を消した‥薄暗い部屋で、千草は事務員の女の子と関係を作っていた。
    余計な感情をもみ消すかのように、汗を流していく。

    2006-01-11 18:22:00
  • 360:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    先を待ちわびる‥汗ばんだ手に、千草は無表情に動いていた。
    そして、彼女の中に入ろうとする瞬間、花の横顔が脳内をすり抜ける。
    同時に、凍り付く体。
    彼は、花を振り切るかのように‥行為を進めていく。

    2006-01-11 18:28:00
  • 361:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    だが、振り払っても‥振り払っても、無理をした花の横顔は‥離れてくれない。
    千草は‥自分の思考に苛立ちを覚え、シーツを乱す女から離れた。
    そして、険しい表情で煙草をくわえる。
    息を荒くした女は、不思議そうに彼の背中を眺めた。

    2006-01-11 18:39:00
  • 362:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    千草は、肩を落とし‥煙を吐いている。
    ‥花の悲しみが、痛いほど‥伝わってくる。
    きっと、行き場のない想いに‥今苦しんでいるはず。
    振り向かない女。
    そんな彼女から逃げようとしても、瞳は‥心はまだ、そこにある。

    2006-01-11 18:44:00
  • 363:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    すると、背に柔らかい感覚がのしかかる。
    「‥常盤さん」
    事務員の女は、千草の名を愛おしく口ずさむ。
    違和感に覆われ、彼はその腕の中からすり抜けた。

    2006-01-11 18:47:00
  • 364:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「出よっか」
    千草は、ベッドの上に座る彼女を‥冷たく見下ろした。
    女は、その顔を前に‥何も言えなくなる。
    ホテルを出た後、千草は女をタクシーの中へと放り込んだ。
    そして、曇り空の下を足早に歩いていく。

    2006-01-11 18:52:00
  • 365:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    【つづく】

    2006-01-11 18:56:00
  • 366:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「うーん‥ないなぁ」
    窓ガラスに貼り付けられている物件を眺め‥呟く。
    今日も、花は部屋を探している。
    バイト生活の彼女にとって、たった一部屋の買い物さえ苦難のもの。

    2006-01-12 04:57:00
  • 367:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    隅々まで見渡すが、これといったものは‥この2週間見つかっていない。
    それに、1番ネックに感じているものは‥。
    花は、ため息をついた。
    「‥誰かおらんかな」
    そう、部屋を借りるには‥保証人がいる。

    2006-01-12 05:00:00
  • 368:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    以前は、家を追い出された形だったから‥父親が保証人になってくれた。
    でも、この前‥一緒に住むことを拒んだだけに、頼みづらい。
    花は、口をへの字に曲げて‥立ち尽くしていた。

    2006-01-12 05:02:00
  • 369:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「千草、もう見つけたんやろか‥」
    最近、彼とも‥ろくに話していない。
    陽平は、ずっと元嫁さんと‥話し合っている様子。
    うまく進んでいないみたいで、機嫌が‥よくない。
    流されていく日々に、花は‥自分の気持ちさえ考える暇がなかった。

    2006-01-12 05:05:00
  • 370:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「子供に選ばす?」
    その夜、風呂から上がると‥千草の声が聞こえてきた。
    花は、バスタオルで髪を拭きながら‥リビングを覗きこむ。
    「あぁ。向こうの旦那が‥そう言うてきた。これで完全に引き取れるわ」
    陽平は、スッキリとした表情で笑っていた。

    2006-01-12 05:10:00
  • 371:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    花の視線は足元へと落ちていく。
    ‥陽平は、子供と生きていく。そうなれば、未だ残っている‥この気持ちも‥捨てらなあかん。
    確実なものへと近づいていく‥失恋という結果。
    花は、胸が苦しかった。

    2006-01-12 05:13:00
  • 372:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「嫁はんは納得してんけ?」
    千草は、テーブルにひじをついた。
    「納得?‥まぁ、してんちゃう?何も言うてなかったし」
    陽平は、知恵の輪を解いたかのように‥軽快な笑みで答える。
    そして、ドア際に潜む人影に目を向けた。

    2006-01-12 05:20:00
  • 373:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「‥花」
    微かに見えた彼女の体。陽平は、立ち尽くす花に呼びかけた。
    彼につられて、千草も目を向ける。
    花は、ひょこっと顔を出した。

    2006-01-12 05:25:00
  • 374:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    弱々しく姿を見せる彼女を、陽平は数秒‥見つめる。
    そして、柔らかな表情で口を開いた。
    「‥ここに来てから、気ぃ使ってばっかやったやろ。ごめんな」
    その言葉に、花は顔を上げる。

    2006-01-12 05:38:00
  • 375:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「‥お前らしさ‥出されへんようにしてたかもな。でも‥楽しかった。ありがとうな」
    子供を引き取れば、この共同生活も終わりを告げる。
    陽平は、心に余裕を取り戻し‥彼女に謝罪する。
    花の唇は、言葉を塞いでいく。

    2006-01-12 05:41:00
  • 376:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    千草は、顔をしかめたまま‥その光景から目を逸らす。
    彼女の寂しさが、痛いほど‥胸にしみていたから。
    見上げてくる‥優しい眼差しに、花は喉を詰まらせる。
    まるで“永遠の別れ”を告げられているかのような感覚が、彼女の体を震わせていた。

    2006-01-12 05:47:00
  • 377:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    ‥2日後。
    「じゃあ、行ってくるわ」
    朝早くから支度を済ませていた陽平は、時計を眺め‥立ち上がる。
    緊張を抱えた顔つきで、玄関へと向かう彼。
    花と千草は、静かに彼を見送った。

    2006-01-12 05:54:00
  • 378:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    ガタンと閉じられたドア。
    暗くなった玄関で、2人は呆然とたっていた。
    花は、苦しくなる胸をなだめるかのように‥深く息を吐く。
    そんな彼女を、千草は哀れんだ瞳で見つめていた。

    2006-01-12 05:57:00
  • 379:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「早く支度しろよ」
    一向に玄関から動かない彼女。
    千草はため息まじりに囁いた。
    花はきょとんとした顔になる。

    2006-01-12 05:59:00
  • 380:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「気になるんやろ?見に行こや」
    千草は、眉を下げて笑いかけた。
    彼の誘いに、花は開いていた口を閉じて‥コクリと頷く。
    ‥別に見に行きたかった訳じゃない。でも、見ておきたい。
    花は、陽平への想いを消化する為に‥出かける用意をした。

    2006-01-12 06:03:00
  • 381:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    子供を引き取ったときの‥幸せそうな顔を見れば、きっと諦めがつく。
    少しはまともな表情で‥祝福できるかもしれない。
    花は、凛とした顔で家を出た。

    2006-01-12 06:07:00
  • 382:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「あちゃぁ‥。ガッチガチやなぁ」
    公園の向かいにある喫茶店の窓際で、彼を眺める千草。
    花は、アイスティーを飲みながら‥ストローを噛んだ。
    ‥よっぽど嬉しいのだろう。
    緊張をしている彼は、どこか期待に溢れた‥少年のような顔をしている。

    2006-01-12 06:31:00
  • 383:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    花は、まだ心の準備が‥完全に出来ていなかった。
    本当に‥諦められるのだろうか?と、傷つくことから恐れている。
    「千草って‥もう部屋きめたん?」
    気持ちを落ち着かせるかのように‥、花は別の話題を千草に振った。

    2006-01-12 06:36:00
  • 384:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「ん?あぁ、部屋?まだやけど。そういや‥そろそろ探さなあかんなぁ」
    思い出したかのように‥視線をあげて、ホットコーヒーを飲み干す彼。
    部屋を探すことを簡単に話す千草が、花は羨ましかった。
    “保証人”
    責任感を被せるかのような‥その重い響きに合う人間が周囲にはなく、刻々と迫ってくる期限に怯える毎日。

    2006-01-12 06:42:00
  • 385:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    アイスティーさえ、ストローを通らなくなっていく。
    千草は、窓の外を眺める瞳を‥花へと移した。
    何か‥悩んでいる姿。
    その理由が何なのかは‥なんとなく気づいている。
    だが、深く関わることの出来ない‥関係。千草は、あえて‥その話題にはふれなかった。

    2006-01-12 06:46:00
  • 386:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「あ、あれちゃん?」
    ふと視界に映る光景に、指を差す千草。
    花は、我に返り‥外を見た。
    そこには、以前‥何度か見たことのある女性がいた。
    花は、千草に頷いて‥再度眺める。

    2006-01-12 06:49:00
  • 387:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「‥千紗っ」
    近づいてくる3つの姿に、陽平は振り返る。そして娘の名を‥呟いた。
    新しい父親と元嫁の手を握りしめた‥小さな体。
    それは、写真に写るものから‥数倍に成長しているものだった。

    2006-01-12 06:54:00
  • 388:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    自分を不思議そうに見上げ‥2人に視線を送る娘。
    陽平は、元嫁に目を向けた。
    すると、2人は彼女の手を離す。

    ‥決断のとき。

    2006-01-12 06:56:00
  • 389:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「あれが‥本当のパパ。ママらとおりたいか、パパのとこ‥行きたいかは、千紗が‥決めていいんよ」
    元嫁は娘と同じ背丈になり、彼女に囁いた。
    娘は、首を傾げながら‥陽平を眺める。
    陽平は、低くしゃがみ込み‥両手を広げた。

    2006-01-12 07:00:00
  • 390:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    その光景を喫茶店から眺める花と千草は、ゴクリとつばを飲む。

    「‥千紗っ」
    陽平は、声を張り上げ‥呼びかけた。

    2006-01-12 07:02:00
  • 391:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    娘は、そんな彼を黙って見つめている。

    そして、怖がった表情で新しい父親へとしがみついた。

    陽平の目は‥点になる。

    2006-01-12 07:05:00
  • 392:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    怯えた顔で、新しい父親のズボンを強く握りしめる娘。
    「千紗っ、パパんところ‥‥おいで!」
    陽平は、眉間にしわを寄せて‥強く呼びかける。
    だが、彼女は逃げるように背を向けた。

    2006-01-12 07:07:00
  • 393:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    予想もつかなかった事態に、陽平は彼女へと身を乗り出していく。
    だが、娘との間を塞ぐかのように‥元嫁は立ちはだかった。
    「怖がってるんやから、やめて」
    冷たく言い放たれる言葉。

    2006-01-12 07:11:00
  • 394:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    陽平は、目の前が真っ暗になった。
    「あたし、ずっと‥出来ちゃった結婚やったこと‥悔やんできた。あんたは仕事ばっかで、あたしらのこと‥中途にしてたやろ。そんな奴を、千紗が選ぶわけないやん」
    元嫁は、歪んだ表情で陽平を見下ろした。
    そして、目を逸らし‥離れていく。

    2006-01-12 07:15:00
  • 395:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    陽平は、一点を見つめたまま‥唖然となる。
    視界をあげれば、そこには‥円を描いたかのような1つの家族。
    下まぶたを縁取る‥淡い涙。
    信じられない結果に、陽平はひざを地につけた。

    2006-01-12 07:19:00
  • 396:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    ポタリポタリとこぼれる粒が、土の色を変えていく。
    ‥偽物に奪われた‥大切な娘。

    陽平は、その場から動けなかった。

    2006-01-12 07:22:00
  • 397:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「マジで‥?」
    コーヒーカップを皿の上に置き、千草は困り果てた様子で前髪をかきあげた。
    ‥予想外の展開。
    喫茶店から観察していた2人は、沈黙になる。

    2006-01-12 07:35:00
  • 398:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    どんな言葉が交わされたのかは‥わからない。
    でも、窓の向こうで流れた光景は‥陽平の期待をはるかに裏切ったもの。
    2人は目を合わせ、何も言わず‥そこを後にした。

    2006-01-12 07:38:00
  • 399:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    「ただいま‥」
    “陽平になんて声をかけるべきか”と話し合った結果、答えは見つからなかった。
    2人は重い足取りで帰宅する。
    予想通り‥リビングには彼の姿はなく、返事も帰ってこない。

    2006-01-12 07:41:00
  • 400:

    芽衣 ◆rd1jJ3btsE

    2人は、そろそろとリビングへと向かった。
    隣にある彼の部屋は、電気がついている。
    花は、その扉を開けようとした。
    だが、千草がその手を止める。

    2006-01-12 07:43:00
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