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恋愛ジャンキー

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  • 1:

    旧掲示板作品です。

    2005-06-02 17:03:00
  • 2:

    涼20才。風俗嬢。風俗歴五年目。
    ぁたしは未だに風俗から抜けれないでいる。
    五年目足を踏み入れたあの時から……


    当時の彼氏伸吾に振られフラフラと夜の東通を歩いていた。
    パチンコで負け所持金7000円。
    『ぃぃ事なぃな〜……』
    家に帰ってテレビでも見ょぅ……

    2005-06-02 17:04:00
  • 3:

    へぇ。ホストってそんな安いもんなんだ。
    ぁのころのあたしには夜の世界の事なんて微塵も知らなかった。

    『なっ、安いしぉぃでょ!!今から一時間飲んでも終電間に合うで!』

    …ならぃぃかな……

    『ぃぃですょ。行きます』

    スーツの男は嬉しそうに笑った。

    2005-06-02 17:06:00
  • 4:

    暗い店内に綺麗なボトル。
    スーツ姿の男前。

    もとから人は顔で選ぶタイプだ。
    素直に楽しかった。


    『俺ユウってゅーねん!名前は?』
    『涼……』

    2005-06-02 17:07:00
  • 5:

    ユウは20代後半。昔はヤンチャだったらしい。
    笑ったら子供みたいな可愛い奴だった。

    酒を飲みほろ酔い。
    気づけばもぅ終電はなぃ。
    テーブルにはビールの缶やジーマの瓶が並んでいる。
    なんだかノリでシャンパンなんかも飲んでしまった

    2005-06-02 17:08:00
  • 6:

    ………ぃくらなんだろぅ
    7000で足りないのは直感で分かった。

    『未収ってゆってな、ツケできるから大丈夫ゃで!!!!』
    そぅなんだ。じゃぁ大丈夫だな……

    これが地獄への一歩となるとも知らず、涼はまだ笑っていた。

    2005-06-02 17:10:00
  • 7:

    時間はだいぶたっていた。もう朝だ。
    伝票を見て涼は倒れそうになった。
    『96000!?』
    『ぅん、いれれる分入れてぁとは未収でぃぃょ』
    その後ユウと何を話したか覚えていない。
    『駅ついたら電話してや!』
    涼は嬉しかった。ホストがみんな客にそれぐらい言うなんて知らなかったのだから。

    2005-06-02 17:11:00
  • 8:

    言われたとおり駅から電話をした。
    『俺とずっと一緒にぉろな!好きゃで。気つけて帰りや!』
    そういえば別れた話をしたら付き合うという話になったんだっけ。

    2005-06-02 17:12:00
  • 9:

    次の日ユウに呼ばれまた梅田へ行った。
    『涼仕事してなぃゃんな?紹介したるわ!』
    ……水商売だ
    怖かったが未収を払わないといけないので従った。

    2005-06-02 17:13:00
  • 10:

    連れて行かれた先はセクキャバ。
    制服はTバックにガーター……
    ひっくりかえりそうになったがみんながその格好なので案外平気だった。
    時給4000円。
    これで未収を返してもぅホストなんてやめよう。涼は決意した。

    2005-06-02 17:14:00
  • 11:

    三日もすれば仕事には慣れた。
    案外夜の仕事は向いているのかも……なんて涼は思っていた。

    2005-06-02 17:23:00
  • 12:

    ホストなんてやめょう、そぅ思っていたのに、ユウは終わる時間になると迎えに来た。
    そしてそのまままた朝まで店で飲む。
    未収は増える一方だ。
    週給制なので単純計算で給料日には20万くらいは入る。大丈夫かな。
    涼はぁまり何も考えていなかった。
    給料日、支払いの額を聞いてみた。
    なんと給料では足りない。
    涼は今頃自分か地獄に足を踏み入れたことに気づいた。

    2005-06-02 17:24:00
  • 13:

    未収の事なんて涼の頭にはなかった。
    金銭感覚が麻痺したのだ。
    働けば何とかなる。
    それくらいにしか考えておらず毎回伝票もろくに見なかった。
    気づけば未収の額は100万を越えていた。

    2005-06-02 17:28:00
  • 14:

    『お前昼も働けへん?俺調子乗りすぎたわ……未収の支払期限は延ばしてもらうから……』

    拒む術はなかった。昼も働くといったってまさかOLなんかをするわけもなく……

    『ここ稼げるし、面接行ってみたら?』

    神戸!?福原!?

    多少夜の世界にも慣れ、業種の違いもわかってきた。

    ………ソープだ。

    2005-06-02 17:29:00
  • 15:

    いつものように仕事の後に飲みにゅき、眠い体を引きずり神戸ゆきの電車に乗る。
    面接のためだ。

    電車にゆられ半分寝かかった時、ユウ専用の着メロが鳴った。

    『辛いと思うけど俺たち二人やったら何でも乗り越えていけるから。涼に迷惑かけるけど二人で幸せになるためやから。俺も頑張るし、涼も頑張ってな。』

    2005-06-02 17:30:00
  • 16:

    この頃から涼は疑問を抱いていた。
    この男は本当に自分の事を好きなのか?
    はじめは涼はユウが大好きだった。
    しかし未収の額が増えるにつれユウはキツくなってゆく。
    逃げ出したい。
    そんな気持ちが涼の中に芽生え始めた。

    2005-06-02 17:31:00
  • 17:

    ユウに渡された印のつけられた求人誌。そこに載っている番号に電話をかける。

    せっかく神戸まで来たと言うのにソープは18では働けないと言われた。水商売はいけるのになぜだろう。

    2005-06-02 17:32:00
  • 18:

    ソープのイメージはけして良いものではなかった。むしろ悪いイメージしかなかった。働かなくてすんで良かったと思う反面、ユウの反応が怖かった。
    なんて言われるのだろう。
    どきどきしながら電話をかける。
    出ない……
    寝ているのだろう。
    一緒に頑張っろうったって、頑張ってんのはぁたしだけでは……?
    そんな気がしてきた。

    2005-06-02 17:33:00
  • 19:

    『面接どぉやった?』

    ユウからの電話で目が覚めた。
    開口一番面接かよ……涼は悲しくなった。
    『18やったらソープ無理やねんて……』
    『あーやっぱ無理か〜』

    2005-06-02 17:34:00
  • 20:

    いつものようにセクキャバに出勤し、またユウが迎えに来た。
    店に入るなりまた求人誌を持ってきた。
    ユウがなにやら裏表紙に書いている。

    2005-06-02 17:36:00
  • 21:

    【保証三万以上】
    【昼からか朝から】
    【週三日以上】

    など条件を書かれた。
    結局表紙をめくってすぐのピンサロに朝一で面接に行く事になった。

    2005-06-02 17:37:00
  • 22:

    18才以上なら働けると書いてあった。

    今度は落ちることはないだろう。


    とぅとぅ風俗デビューか……

    2005-06-02 17:38:00
  • 23:

    【明日受かるように景気づけ】と称してまたシャンパンがおりた。

    この男は未収を減らす気があるのだろうか?

    涼はだいぶ疑問だった。

    2005-06-02 17:39:00
  • 24:

    思った通り面接は受かった。そのまま体験する事になった。
    働く理由もホストの未収を返すためだと正直に言った。店長は涼を気に入ってくれたらしく他の子より保証を少しあげてくれた。

    五時半まで働き七時半からセクキャバに出勤。二時半に終わりまたユウが迎えに来た。

    2005-06-02 17:40:00
  • 25:

    『疲れたやろ〜今日は店でゆっくりしーな!!』

    ゆっくりしろと言うなら帰らせてくれ、と思ったがそんな事は言えない。涼は店でほとんどのまず寝てしまった。
    目を覚ますとテーブルにたくさんの空き瓶。
    何もしていないのに今日の稼ぎ以上の額の伝票。泣きたくなった。
    そのまままたピンサロへゆき、六時に梅田へ向かった。今日は先輩の祐子と出勤前にごはんに行く約束なのだ。

    2005-06-02 17:41:00
  • 26:

    『涼ちゃん最近しんどそうやけど大丈夫?』
    『大丈夫ですよ〜しんどそうですか??』
    笑顔で答えたがしんどくないわけがない。
    祐子はユウと涼が付き合ってるのを知っている。祐子に限らず店の先輩はたいがい知っていた。
    『涼ちゃんあのユウって子と別れたら??』
    唐突に祐子が言った。
    『純ちゃんも心配してんで』
    店の先輩はみんななぜか涼を心配してるらしかった。

    2005-06-02 17:42:00
  • 27:

    先輩の忠告をよそに涼は毎日ピンサロ→セクキャバ→ユウの店を往復する毎日だった。
    いっこうに未収は減らない。
    でもユウと過ごす時間は楽しくてやめられなかった。
    とうとう未収は200万を越えた。
    毎日ピンサロの給料を入れているのに増えるとは……そろそろ涼も焦ってきた。

    2005-06-02 17:46:00
  • 28:

    『未収減らんなぁ〜』
    当たり前だよと思いつつ適当に返事をした。
    金の話をするときのユウは嫌いだ。別人のようだ。
    『涼が店入らんかったらいいんちゃうの?未収は入れにくるからさ』
    次の瞬間目の前が真っ暗になった。
    ユウに殴られたのだ。

    2005-06-02 17:47:00
  • 29:

    涼はちっちゃい。ユウは180近い背でもと総長。
    加減はしてるだろうが結構きた。頭がくらくらする。
    ユウが何やらどなりちらしているがまともに聞けない。店に来ないと言った事に対して怒っているのはわかった。

    『ごめん、店くるから……』
    殴られた一発で完璧にユウへの気持ちは冷めた。
    でも未収が終わるまでユウと切ることは出来ない……

    2005-06-02 17:49:00
  • 30:

    『ごめんな、痛かった?』
    痛いに決まってるだろ……と言いたいところだが『大丈夫』と言っておいた。
    『ワビでイッキするわ!!』
    またシャンパン。
    この時初めて涼はユウが嫌いになった。

    2005-06-02 17:50:00
  • 31:

    次の日のユウは涼の好きなユウだった。昨日嫌いになったはずなのに……やっぱりユウが好きだ。

    ユウは昔にもホストをしていたらしい。辞めて会社を興したが失敗し、またホストに戻ってきたのだ。

    『もぅすぐ周年あるねんけど涼いくらぐらいいける??』
    かなりまとまった額を使うのだなと思ったが、好きな気持ちが復活したためいくらでもいいよと言ってしまった。

    周年の日が来た。

    2005-06-02 17:51:00
  • 32:

    その日、祐子が一緒にユウの店に行くと言い出した。祐子は子持ちなのになんでかな?と思ったが一緒に行った。あとから聞いたが純が涼を心配して祐子を行かせたらしい。

    店内には花がいっぱい。バルーンもあってやたらと華やかになっていた。

    祐子と一緒にテーブルに座るとアイスやグラスといっしょにガラスのボトルが来た。

    ルイ13世。

    2005-06-02 17:52:00
  • 33:

    その日の伝票は怖くてみれなかった。

    オーナーがついて『涼ちゃん、あんまりよそでユウと付き合ってるってゆうたらあかんで〜』
    どうしてこの人が知っているのだろう……??初対面なのに……でもなーんか見た事あるような……

    2005-06-02 17:53:00
  • 34:

    あ!!!!

    自分の店の店長に似ているのだ。涼は無邪気に言った。
    『うちの店長にそっくりですね〜』
    『あれ俺のお兄ちゃんやからなあ』

    えっ……
    店で話したことは全て筒抜けだったのだ。

    2005-06-02 17:54:00
  • 35:

    その日ユウはいろんな席で飲みつぶれていた。
    いつものように伝票に【全未】と書き店を後にした。
    店長とオーナーがつながってたなんて……これから迂闊な事は言えないな…と思いながらピンサロに出勤した。

    2005-06-02 17:55:00
  • 36:

    ピンサロの先輩のヨシノも涼を心配していた。よく待機室で相談したりしていた。
    ある日ユウが怒った声で言った。
    『おまえもう嫌とかゆってるらしいな?』
    セクではそんな話はしていない。どこからもれたのだろう……ヨシノは子持ちで昼勤務のみ。ホストに行ったりするような人ではない。なんとかその場はユウをごまかした。
    その晩真相が発覚した。ピンサロのじゅりがユウの店で飲んでいたのだ。じゅりがいるから涼はその店に入れられたらしい。ヨシノに話したことは全てじゅりから口座を経由しユウに伝わっていた。

    2005-06-02 18:06:00
  • 37:

    店ではもぅヨシノに相談出来ない。かと言ってセクの仕事が終わってからヨシノに電話するのはどうも悪い気がした。そうだ、手紙を書こう。
    ピンサロからセクまでの間に喫茶店に入りヨシノあての手紙を書いた。

    2005-06-02 18:08:00
  • 38:

    この頃になるとユウは迎えに来てはくれなくなり、しかし店に行くのは相変わらず絶対だった。
    ユウと涼は一日にいくら入れるかを紙に書いて涼が持っていた。
    『あの紙出してや』
    【あの紙】も【ヨシノあての手紙】もレポート用紙に書いていた。
    ガサガサかばんを探る。紙が手に当たる。出してみると【ヨシノあての手紙】の方だったので涼はあわててもういちどかばんに押し込んだ。

    2005-06-02 18:09:00
  • 39:

    ユウは見逃さなかった。
    『今直したん何?』
    なんて言おう……
    『なんでもないよ』
    ユウの目つきが変わる。
    かばんを取り上げられ見られてしまった。手紙の中身はもちろんユウの話題であり、いい事を書いているものではない。

    2005-06-02 18:11:00
  • 40:

    わき腹に激痛が走る。ユウに蹴られたのである。もぅそこからは髪をつかまれ顔を殴られ体も殴られ何が何だかわからなかった。自分は人に相談することさえ出来ないのかと思うのとどうしてこんな男に惚れたのだろうと公開で涙が溢れた。
    『ほ〜“あんな店もう行きたくない”?〜“ユウが怖い”?“未収も無理矢理”?“あんなに飲まなきゃいいのに”??えらい好き勝手ゆうてんなあ』
    ガシャン!!!
    涼の頭の上でビール瓶が割れた

    2005-06-02 18:12:00
  • 41:

    頭はさほど痛くはなかった。しかし全身が痛い。少し前ユウが店の従業員に本気でキレて殴ったのを見た事がある。涼より少し大きいくらいの華奢な男の子。ユウに殴られ吹っ飛んだのを涼は見た。きっとその時と同じくらいの力だな、なんて殴られながら考えていた。

    2005-06-02 18:14:00
  • 42:

    涼も昔はヤンチャだったのでまだ多少殴られる事に対し免疫が残っている。が、昔はそれなりに応戦も出来た。例え相手が男でも。今は出来ない。体がもう鈍ってしまっているのと、ユウへの恐怖からだ。何をされるかわからない。おそらく黙って耐えるのが利口だとも思った。

    2005-06-02 18:15:00
  • 43:

    次の日腫れた顔とあざだらけ涼を見て一番心配したのはやはりヨシノだった。他の女の子はろくに喋ったことがなかったせいもあり何も言わなかった。すみっこのじゅりがちらちら見ている。じゅりは言わなくとも原因も誰がやったかも分かっているはずだ。心配するヨシノにもじゅりがいる前では何も言えない。

    2005-06-02 18:25:00
  • 44:

    未収があっても別れることはおそらく出来た。でも涼は【彼氏】というものがないとだめな人間だった。あんなにされたって優しい甘い言葉をかけてくれるユウがいないと無理なのだ。

    2005-06-02 18:25:00
  • 45:

    殴った次の日のユウは優しい。なぐられた事なんか忘れて抱きしめて欲しくなる。

    でも未収は待ってくれない。むしろ追いつめてくる。いろんな事がいっきにあったせいか涼は熱を出した。客に責められるのはもともと好きではないがいつも以上に気持ち悪かった。客にやめてといってもしつこくやめてはくれずとうとう涼は泣き出した。

    2005-06-02 18:26:00
  • 46:

    客が帰って店長が心配して見に来た。38度を超える熱を出したがユウの為に働かなければ……そればかり考えていた。
    でも体はもたず涼は動けない。個室なので店泊した。
    起きるとすごい数の着信。全てユウだ。

    2005-06-02 18:28:00
  • 47:

    まだ熱は下がっていなかったが働くつもりで店長に言ったが却下された。実家に帰ろう。たまには。一ヶ月ぶりの我が家だ。
    日頃家にいない娘がいる事に母親は驚いた。が、体調が悪いと告げるとそこから何も言ってこなかった。やっぱり親は嫌いだ。

    2005-06-02 18:29:00
  • 48:

    夜中ユウからの着信で目が覚めた。家族に会話を聞かれてはまずい。涼はそっとベランダへ行った。
    『おまえ何で昨日電話でんかってん!!』
    一言目から怒鳴られた。

    2005-06-02 18:30:00
  • 49:

    『熱がでて店泊してた』
    『うそつけ!!』
    ユウはまるっきり信じてくれなかった。それどころか未収入金の話ばかり。この人は自分をお金としか見てない……初めて気づいた。

    2005-06-02 18:31:00
  • 50:

    電話を切って涙が溢れてきた。自分に向けられた笑顔も、優しい言葉も、全て金のためにしてくれていたこと……それでもいい。お金だけでもユウと繋がっていたい。もはや涼はユウなしでは生きられなくなっていた。

    2005-06-02 18:32:00
  • 51:

    起きるとすっかりよくなっていた。今日は仕事だ。がんばって稼げばユウは喜んでくれるだろう。

    2005-06-02 18:33:00
  • 52:

    その夜いつものように店で飲む。稼いだ金を見せるとユウは子供みたいに笑った。
    『頑張ったからシャンパンのもっか!』
    頑張ったと思うならやすくあげて欲しかった。でもユウの売り上げを上げたい。喜ばせたい。笑顔がみたい。

    2005-06-02 18:34:00
  • 53:

    『うん!頑張った記念ゃな☆』
    心にもない事を言ってみる。
    『せゃでぇ!!今日は飲むでぃ!!』
    今日もユウの店にはシャンパンコールが響き続けた。
    『おまえセク週三にしてピンサロメインで働いたら?』
    毎日目に見える金が欲しいのかユウはそんな事を言い出した。

    2005-06-02 18:35:00
  • 54:

    ユウの言った通りセクを週三に減らしてもらい毎日ピンサロメインで働いた。未収は少しずつだかへり始めた。
    ユウもいつも優しい。涼は幸せだった。
    『今日店終わったらデートしよか!!』やったぁ!!素直にうれしかった。今までユウと出かけた事はない。初めてのデートだ。わくわくした。行き先がどこだか知らなかったのだから。

    2005-06-02 18:36:00
  • 55:

    『おまえ今身分証ある?』
    『保険証ならあるよ』
    この間病院に行った時から入れっぱなしの保険証。
    『ここの三階行って金借りて来い』
    えっ…?
    デートではなかった。まとまった金を入金しないといけないらしく、連れて行かれた先はサラ金。それでも店以外でユウと一緒にいられるのが嬉しかった。

    2005-06-02 18:37:00
  • 56:

    18で貸してくれるサラ金はなかなかなく数件回って一件30万を貸してくれる所があった。
    『ほんまごめんな、上がうるさいねん……』
    『いいよ』
    月払いの返済は魅力だった。

    2005-06-02 18:38:00
  • 57:

    ご飯を食べてデートは終わり。もっと遊んだりするのかと思ったのにな……でもいつもより長くユウといられたのでサラ金にいった事でさえ涼は幸せだった。

    2005-06-02 18:39:00
  • 58:

    朝九時からピンサロで働き、五時半にあがり、七時半からセク。セクが終わればユウの店。休みなしでそんな生活を二ヶ月ほど続けた。
    そんなある日、携帯に着信。【不在着信あり:パパ】パパといっても実の父親である。なんだろうと思いかけなおした。
    すぐに帰って来い。それだけ言ってパパは電話を切った

    2005-06-02 18:40:00
  • 59:

    ユウの店を出て朝方家に帰る。何日ぶりだろう、顔を合わすのは。店泊したり、マンキで寝たり、というかほとんどろくに睡眠をとっていなかった。
    家ではパパが深刻な顔をして涼を迎えた。

    2005-06-02 18:42:00
  • 60:

    『小林ユウって男、心当たりあるな?俺が何言いたいかわかるか?』
    直感ですべてばれたと思った。
    未収の額の多さにユウが家に電話をかけたらしい。それだけはやめてと頼んだのに。わかった、とユウも言っていたのに。
    『どうすんねん?』とパパは言った。

    2005-06-02 18:43:00
  • 61:

    この人は昔から涼に甘い。娘がホストの未収を何百万を抱えていても、パパは怒りもしなかった。涼がそんな風になったのは、自分にも原因がある、わかっているのだ。
    『がんばって返していくよ。』
    この一言で仕事から何から全部がパパにばれた。その日は家から出してもらえなかった。

    2005-06-02 18:44:00
  • 62:

    ガチャリ。ドアの開く音がした。涼がこの世でもっとも嫌いな人物が帰って来た。母親だ。
    『涼ちゃん!!!!何してたの、家にも帰ってこんと、どこにおったん?何をしていたの?またお母さんにいえないようなことをしてるの?親にいえないようなことをしてはだめって昔から言ってるでしょう??』
    キンキンと母親が怒鳴る。

    2005-06-02 18:45:00
  • 63:

    『うっさいばばぁ。黙れ!』ばたん、とドアを閉める。バン!!すごい勢いでドアがあく。
    『うっさいってなんやの!!誰に向かって物言ってるの!!あんた自分のしてること考えてからそんなん言いなさい!!働きもせんと毎日毎日どこで何をしてるの?』
    教師である母親に、自分が風俗と水商売をしてるなどいえるわけもなかった。

    2005-06-02 18:46:00
  • 64:

    涼は昔からこの女が嫌いだった。
    小学生のときの門限は五時。小遣いは月500円。中学生のときの門限は六時。小遣いは2000円。中学生にもなって2000円て。夜外出するなどもってのほかだった。

    2005-06-02 18:47:00
  • 65:

    バレー部だった涼は試合後の打ち上げでさえ参加させてもらえなかった。《子供だけで夜ファミレスに行くなんていけません。》という理由からだ。それならばと先生も一緒だとうそをついた。学校に電話をされ、あっけなく嘘はばれ、やはり行かせてもらえなかった。

    2005-06-02 18:48:00
  • 66:

    毎回来ない涼を、部員の仲間は打ち上げに誘わなくなった。次の日の部活で話についていけない。『昨日言ってたあれさぁ〜』楽しそうに喋っている。何のことだかわからない涼は話に入れてもらえない。
    とりあえず根っからのまじめ人間なのだ。八時以降のテレビは見せてもらえない。八時を過ぎたら勉強しなくてはいけないのだ。

    2005-06-02 18:49:00
  • 67:

    涼は小学生あたりから、耳がよくなった。自分の部屋で、隠れて遊ぶため、リビングから来る母親の足音や、ドアの音に敏感になったのだ。
    月曜日の学校は嫌い。【めちゃイケ】の話をみんながしている。【めちゃイケ】が何なのか涼は知らなかった。

    2005-06-02 18:50:00
  • 68:

    試合があるから、電車賃500円を頂戴。というと手紙を見せなさいという。学校から、試合があるからどうこう、という手紙を見せろと。そんな手紙がいちいち出るはずがない。
    たった500円やそこらのために毎回母親は学校に電話をかけ確認する。

    2005-06-02 18:52:00
  • 69:

    このころから涼はだんだんと不良になっていく。夜家から抜け出すすべがあった。塾に行くことだ。大手を振って夜外出できる。もちろん勉強などするわけもなく、塾でのクラスはいつも最下位。
    毎日塾に行く振りをして、遊んだ。有名進学塾だったので先生は最下位のクラスのやつなんて、来ても来なくても気にせず、行ってないからといって連絡もされなかった。遊びたい放題だ。

    2005-06-02 18:52:00
  • 70:

    親の財布から金を抜き、ジャスコの閉店時間間際には万引き。小2から窃盗癖のあった涼は、中学時代でおそらく100万はゆうに超えるほどの万引き常習犯だった。
    しかし、11時近くにもなると帰らなくてはならない。嫌で仕方なかった。
    成績がよければ遊べるのでテストをがんばった。がんばって、勉強しても、涼はあまりいい点数は取れなかった。

    2005-06-02 18:54:00
  • 71:

    そんな涼を母親は【頑張ってないから】【授業をちゃんと聞いていないから】だと決め付けた。実際聞いてはいないが、勉強はした。頑張りはしたのに、母親は結果しか見てくれなかった。
    《結果よりプロセスが大事》そんな言葉を聞いた事があるが母親はきっと聞いた事がないのだろう。

    2005-06-02 18:55:00
  • 72:

    だんだん、お金に対する執着心が沸いてくる。ユウのために使って、実際自分はほとんど何も使っていなかったが、大金が手に入るのがうれしかった。風俗を始めたあたりから金のためならなんだって出来ると思うようになった。根性が腐っていった。

    2005-06-02 18:58:00
  • 73:

    頑張れば頑張っただけお金になって返ってくる。初めて頑張りを認めてもらえた気がした。ずっと認めてほしかった。頑張ったねと、言ってほしかったのだ。給料と成って返ってきたお金はみんな涼にささやく。《涼の頑張りの分だよ》と。

    2005-06-02 18:59:00
  • 74:

    家ではパパとおかんが争っていた。パパはおかんを責めた。涼があんな風になったのはおまえのせいだと。涼が家にいると決まって二人は喧嘩する。原因が涼にあるので二人の妹は涼が帰ってきて欲しくなかったらしい。
    『なんで帰ってきたん?』
    いぶかしげに真ん中の妹、はるひが言う。ごめんねと謝り涼は部屋に引っ込んだ。

    2005-06-02 19:00:00
  • 75:

    ユウにあいたい。
    仕事をしていないので会えない。おかしくなりそうだった。家になんかいたくない。ユウの所へ行きたい。親が寝静まったのを見計らって涼は家を抜け出した。
    しかしすぐに見つかってしまい連れ戻された

    2005-06-02 19:01:00
  • 76:

    ユウに会いたい。頭がユウでいっぱいになる。ユウからも【涼に会わな元気でーへん】とメールが来ていた。
    しかしそれから二度とユウに会うことはなかった。パパが残りの未収を一括でユウに払い、二度と涼と会わないと約束させたのだ。

    2005-06-02 19:02:00
  • 77:

    毎日母親との喧嘩でユウに会いには行けなかった。あのまま会えなくなるなんて。しかし監視の目は厳しく抜け出すなど到底出来なかった。

    水商売を始めた理由を聞くと母親は泣き出した。全てあんたのせいだ、何もほめず頑張りも認めず育てたせいだとののしった。

    2005-06-02 19:03:00
  • 78:

    人のせいにするなと母親も負けじと反論してくる。何を言われても全ては過去のこと。幼かった涼が受けた傷は消えることはなかった。
    本当は母親に愛されたかった。

    2005-06-02 19:04:00
  • 79:

    その反動は男に愛される事に反映されていった。自分を好きだと言ってくれる【彼氏】と言う肩書きのある人物がそばにいないとだめになってしまった。涼は彼氏が途切れたことがない理由もそこからだった。

    2005-06-02 19:05:00
  • 80:

    昼間は自由に行動できたのでピンサロには出勤していた。夕方仕事を終えて心斎橋筋商店街を歩いていた。
    最近の密かな楽しみは商店街で何かのキャッチをしているギャル男っぽい男前の子を見る事だった。
    メッシュの入った長めの髪にカラコンの青い目。黒く焼けた華奢な体。はっきりした二重に綺麗に通った鼻筋。あんなに綺麗な男の子は見た事がなかった。

    2005-06-02 19:06:00
  • 81:

    今日も女の子に声をかけては断られ声をかけては断られしている。時間帯から見てもホストではなさげだ。自分にも声をかけてくれないかなと毎日期待して通るのだが、いまだ声をかけてくれた事はなかった。
    しばらく毎日その子に声をかけてもらえるかなとわくわくしながら通っていたある日、メールをしながら歩いているとすいません、と声をかけられた。あの子だ。エステの勧誘らしかった。何も買わなければ大丈夫、とその子に付いて上にあがった

    2005-06-02 19:07:00
  • 82:

    夜家でぼーっとしていると知らない番号からの着信。客の番号を登録し忘れたのかと思い営業用の声で電話にでる。
    『はぁいもしもしぃ?』
    『もしもし?』
    どこかで聞いたことのある若い男の声。あのキャッチの子だ!!

    2005-06-03 15:35:00
  • 83:

    『誰か分かる?』
    『かずやくん?』
    昼間お姉さんに名前を聞いていたのだ。かずやは少し面食らった様子だった。自己紹介をしたり他愛もない話を長々とした。彼氏いるのかと聞かれいないと答えた。ユウときちんと別れ話をしたわけではないが、どの道二度と会うことはないだろう。親に携帯も変えさせられた。連絡手段さえもぅない。
    『じゃあ俺とつきあう?』いともかんたんに和也は言った。

    2005-06-03 15:37:00
  • 84:

    『うん』自分も簡単に返事をしてしまった。あこがれていた男が動機がなんであれつきあうと言ってくれたのだ。断るはずがなかった。
    ユウと会えなくなってから二日しか経っていなかったが最後の方は気持ちが薄れていたためなんともなかった。【涼の彼氏】と呼ばれる人物はユウから和也に変わったのだ。
    和也の仕事が終わる時間と涼の仕事が終わる時間とは同じくらいだった。和也の店まで迎えにゆき毎日終電まで遊んだ。
    男前すぎる和也は連れて歩けばものすごく目立った。すれ違う女の子が振り返ってまで見てゆく。

    2005-06-03 15:38:00
  • 85:

    ある日和也が友達を連れてきた。レゲエ系のドレッドの男。はっきり言って不細工だ。和也と並ぶと不細工具合が一層目立つ。挨拶もしない。涼は和也とレゲエの後ろから着いて歩いた。今日のご飯はレゲエも一緒らしい。和也からレゲエの分もおごってやってほしいとメールが来た。仕方ないのでレゲエの分も出してあげた。和也はよくホストにスカウトされるらしい。
    『俺ホストしたいねん〜あかん?』
    だめに決まっている。あろう事かレゲエも一緒に乗り気になっている。ありえない……
    先輩から呼び出しがかかったからと和也は行こうとした。今日はろくに和也と喋ってもいない。引き留めたが無理だった。

    2005-06-03 15:42:00
  • 86:

    怒ったふりをし、もういい、とひっかけを一人で歩いた。ホストだらけだ。和也は追いかけては来なかった。
    追いかけてくると思ったのに……涼は泣きそうになりながら歩いた。よく考えてみればこんな時間に一人でミナミを歩くのなど初めてだった。スーツの男がわんさか。ちょっと面食らった。梅田にはこんなにホストはいない。
    『なあなあ帰るん〜?』
    案の定キャッチされた。振り向くと犬みたいなかわいい子だった。和也にほったらかされたことにいらだっていた涼は立ち止まって話をした。最近オープンしたばかりの店に勤めているという哲也。番号を交換してその日は帰った。和也からの連絡は寝るまで待ってもなかった。

    2005-06-03 15:44:00
  • 87:

    次の日、いつものように和也におはようのメールをした。返事がない。夕方仕事が終わるころには『お腹すいた〜今日はドンキいこやぁ』とメールが来ていた。
    いつものように二人でひっかけを歩く。和也がいればキャッチをされることはない。ホストも結構見とれている。和也はそのくらい男前だった。
    家に帰ってから和也と電話で話した。涼は今日言おうと思っていたことを切り出した。
    『昨日の子、なんなん?挨拶もせんと初対面で連れの彼女にご飯ご馳走になって礼のひとつもいわれへんの?』

    2005-06-03 15:46:00
  • 88:

    和也は、今地下鉄やからかけなおす、といって電話が切れた。しばらくボーっとしているとメールが来た。
    【俺の連れの文句言う女は嫌いや。もう別れよう。】
    あまりにも急すぎてびっくりした。他にもこういう所が嫌だとダラダラと長文メールが来た。
    簡単に始まった二人は、簡単に終わってしまった。

    2005-06-03 15:48:00
  • 89:

    さぁ困った、彼氏がいなくなった。今思えば和也は顔はかっこいいとは思ったけれど好きだったかといわれたらそうでもないような気がする。付き合いが短すぎてよくわからない。
    彼氏がいないなんて耐えられない。寂しいとき、どうしたらいいんだ。ふと頭に一人思い浮かんだ。大ちゃんだ。
    大ちゃんは一回お店に来ただけのお客さんだ。もう30らしいがどう見ても22,3にしか見えなかった。背も小さいし可愛らしい。こんな30いるもんかと思うくらい若く見えた。
    お店に来たときに番号を交換してそれから大ちゃんは毎日電話をかけてきてた。彼氏がいることも言った。諦めへん、と大ちゃんは言っていた。

    2005-06-03 15:49:00
  • 90:

    『おはよ〜〜〜なんしてる?』昼間にかけても大ちゃんは必ず出る。『仕事に決まってるやろ〜!!』言われてみればそうだ。
    『大ちゃんさぁ、涼のこと好きぃ?』甘えた声を出してみる。
    『好きやで、彼氏から奪いたいもん』大ちゃんも答える。まぁ、こんな様なことは毎日言われている。大ちゃんは馬鹿の一つ覚えみたいにこの台詞ばっかり言うからだ。
    『涼な、毎日大ちゃんがそう言うけん、大ちゃんのほうが気になって彼氏と別れてしもうたよ〜。もろうて!』
    大ちゃんは相当びっくりしていた。ほんまかぁ、ほな今日から俺は涼の彼氏やな!と嬉しそうに言っていた。

    2005-06-03 15:50:00
  • 91:

    良かった、また彼氏ができた。
    嘘も方便、というようにけして本当に大ちゃんが気になったからと別れたわけではない。でも、大ちゃんはそうだと思っているのでいつも嬉しそうに“奪ったんやなぁ”と言っている。かわいい。大ちゃんは社会人なので毎日会うなどは無理だったが、電話は毎日くれたし、仕事中でも電話には出てくれたので寂しくはなかった。
    出勤するたびに、商店街で和也に会う。会いたくなくとも会ってしまう。やはりかっこいいな…最初に逆戻りだ。和也を眺める毎日が過ぎた。
    大ちゃんは、可愛らしいけれど、決して男前の部類には入らない顔だった。涼は、和也の影響もあり大分垢抜けた。自分で言うのもなんだが、並以上のレベルにはいたはずだ。

    2005-06-03 15:51:00
  • 92:

    連れて歩くと、大ちゃんは結構見劣りした。が、やさしい。年の功とでも言うべきか。ただ、18歳の和也よりもお金がなかった。
    少ない給料だけで生活しているのだから仕方ないかなと思っていた。さすがに涼が出すようなことはなかったが、和也と付き合っていたときより食事は質素になった。
    大ちゃんの地元の祭に行ったり、花火大会に行ったり楽しい夏が過ぎた。ただ、花火大会で花火を見ているとき、漠然と涼は思った。来年花火を一緒に見る人は、きっと大ちゃんじゃないな、と。

    2005-06-03 15:55:00
  • 93:

    最近大ちゃんがおかしい。冷たい。寂しい。どうしたらいいんだろう。どうしたん、と聞いても疲れてるだけ、としか答えてくれなかった。疲れてるだけじゃないのは見てればわかる。
    マヤに電話をしてもらった。マヤは大ちゃんとは初対面どころか直接しゃべったこともない。それなのに、涼はマヤにかけさせた。しかも驚いたことに大ちゃんも普通にしゃべった。こいついつか騙されるんでは、と変な不安がよぎる。
    マヤが聞いたところによると、ひとのものだったから燃えたのと、年の差がありすぎてどうしていいかわからなくなってきた。女として見れなくなってきている。でも涼がまっすぐに自分を愛してくれているので余計どうしたらいいのかわからないと。

    2005-06-03 15:56:00
  • 94:

    よくもまぁ、いきなりかかって来た電話にそこまで本音をしゃべるもんだ。
    涼は、愛されなきゃ生きていけない。嘘でもいいんだ。メールとか、電話とか、言葉とか目に見えて、愛してくれたら、たとえそれが嘘でも涼は満足なのだ。
    今度はどうやら自分が大ちゃんを愛してしまったらしい。和也のときとはまったく違う感情だ。
    しかし、自分のせいで大ちゃんが悩んでいる。人のものだったから燃えたって、手に入ればそうでもないと言うこと。年が離れているのなんて出会ったときからわかっていたのに、そんなことで今更悩まれてもどうしようもない。

    2005-06-03 15:57:00
  • 95:

    でも、自分のせいで大ちゃんがつらい思いをしている。それならばと、涼は身を引くことにした。
    大好きな人に自分から別れを告げた。駅で号泣してしまった。大ちゃんはごめんな、と言って涼を抱きしめた。だいちゃん。大好きな大ちゃん。抱きしめられたら余計涙があふれた。
    でも、大ちゃんには幸せになってほしかった。泣きじゃくる涼に大ちゃんはキスをした。大好きな大ちゃんの、大好きな優しいキス。あふれ出た涙はしばらくすごい勢いで出続けた。

    2005-06-03 15:58:00
  • 96:

    今度は、和也のときのようにさぁ次、とはさすがになれなかった。やっぱ、和也のことは好きじゃなかったんだなと実感した。
    大ちゃんの好きだった曲を聴くと涙が出た。思い出が全部あふれてきて涙が止まらなくなった。暇だ。
    物事を昔からはっきり言う涼は正直友達が少なかった。しかもその少ない友達は皆昼間働いたり学校に行ったりしている。やることないなぁ〜〜…ごろん、とベットに横になる。

    2005-06-03 15:59:00
  • 97:

    そのとき着信が入ってきた。昼間、携帯が鳴ることなんか、客からくらいしかなかった。でも、着メロが違う。
    哲也だった。昨日寝すぎて店休んでしまって(起きたらもう朝だったらしい)暇だから遊ぼう、と言う電話だった。
    準備をしてミナミに向かう。今日は仕事が休みだ。そういえば、昼間誰かと遊ぶなんて相当久しぶりだ。
    哲也は昼間に私服で見ると、どう見てもホストっぽくはなかった。

    2005-06-03 16:01:00
  • 98:

    カラオケに行き、四時間ほど歌った。哲也はDragon Ashやジーブラの歌が上手だった。プリクラを撮りに行ったりUFOキャッチャーをしたりして遊んだ。夜になると哲也は出勤していったので涼は家に帰った。ふつうに遊ぶのも楽しいな。なんて思いながら珍しく早く寝た。
    しばらくしたある日の真夜中哲也から電話がかかってきた。
    『営業電話ゃろぉ?』
    『うん!営業電話ぁ〜』

    2005-06-03 16:02:00
  • 99:

    営業電話を営業電話だと認めるホストなんかいるんだ、と多少驚いたが素直さが可愛くて飲みに行った。
    店に行っても昼間と変わらずふつうに喋った。色をかけるわけでもなく、いろんな話をするだけ。それからはちょくちょく哲也の店で遊ぶようになった。
    ホストに免疫も出来、キャッチで気に入った子とは喋ったり、時には店に行ったりもした。
    不思議と哲也に惚れることはなかった。いろんなホストに遊びにいったが誰にも惚れることはなかった。ユウの一件で警戒心が働くのだろうか?

    2005-06-03 16:04:00
  • 100:

    ある日京都までバンドのライブを見に行った。数ヶ月前に友達が遊園地で野外ライブをした時、一緒に行った友達はアトラクションのフリーパスで遊びに行ったがアトラクションで遊ぶ気のなかった涼はそのまま出演バンドを見ていた。
    ちょうど友達の次に出てきたバンドでドラムの男の子に惹かれた。和也のような派手さはないがきれいな顔をしていた。バンドの演奏自体も涼の好みだった。演奏後にデモテープを無料で配るという。演奏後話しかけてデモテープとフライヤーをもらった。そこからちょくちょくホームページでメンバーと話をしていた。そして今日、昔神戸のライブハウスで見た良かったバンドも一緒にやると言うので京都まで足をのばしたのだ。
    ライブハウスに着いた。ドラムの智也を探す。知らない人だらけ。パンクバンドなので妙な身なりの人がたくさん。挙動不審になった。智也発見。智也に駆け寄る。久しぶりやなっと智也が笑う。笑顔も相当かっこいい。ライブハウス内に知り合いなどいるわけもなく、涼はずっと智也の側にいた。演奏も前で見たかったが妙な身なりの人が山盛りなので後ろから見た。ドラムを叩いている智也も相当かっこいい。智也の横にいるといろんな人が話しかけにくる。
    『智ちん

    2005-06-03 16:07:00
  • 101:

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    削除されますた

    あぼ~ん
  • 102:

    期待してしまうじゃないか。この時涼はすでに智也に惚れていた。
    メンバーの真一が涼も打ち上げにおいでと言ってくれた。打ち上げに行ってもやはり妙な身なりの人だらけ。涼は片時も智也の隣から離れなかった。
    床に置いていたメニュー表の上で涼と智也の手が当たった。
    『今手つなごうとしてもたわぁ〜』智也が笑う。

    2005-06-03 16:10:00
  • 103:

    『つないでもいいよ?』勇気を出して言ってみた。智也は本当に繋いできた。顔が真っ赤になる。恥ずかしい。ドキドキする。
    『涼ちゃん顔赤いでぇ〜』真一がちゃかす。
    『涼お酒弱いからなぁ』酒の席なので容易にごまかせた。
    昼間働いてそのままライブに臨んだ智也は眠いらしくごろんと涼の膝の上に横になった。

    2005-06-03 16:11:00
  • 104:

    『寝るまで手、離さんといてな』
    膝枕だ…ドキドキする。寝たって離したくないよと思いながら、うん、と言っておいた。
    『涼ちゃんて智とつきあってんや?』いろんな人が聞きにくる。智也は人気者らしい。違いますよ、と否定するものの手をつないだまま膝枕をしている状況では説得力が全くなかった。
    真一やほかのバンドの人と話をしたが頭は智也でいっぱいだ。なにを話したのか覚えていない。智也の肩あたりに入れ墨のようなものが見えた。

    2005-06-03 16:13:00
  • 105:

    そうこうしてるうちに居酒屋は閉店になりお開きだ。智也を起こす。寝起きが悪い。何とか起きあがったかぼーっと座ったまま動かない。
    『智也くん墨入ってるん?何入れてんの?』
    返ってきた答えはびっくりするようなことだった。
    『何入ってるか知りたい?ほな今日俺んち泊まりい』
    えっ??智也の家に行ける!嬉しかった。

    2005-06-03 16:15:00
  • 106:

    真一の車に乗り智也の家で降りる。緊張はピークだ。智也は実家だった。さらに緊張した。幸い誰も起きていなかった。
    部屋にはいると智也はすぐにベットにもぐりこんだ。
    『涼、こっちおいで寒いやろ?』
    ベットの中で智也に抱きしめられた。あったかい。ドキドキが智也に聞こえそうなほどドキドした。

    2005-06-03 16:17:00
  • 107:

    TVをつけると日曜の朝なので仮面ライダーの最新のみたいなのがやっていた。智也とくっついたままTVを見る。仮面ライダーはなぜか内容がものすごく難しくそれでいて馬鹿馬鹿しかった。智也とつっこみどころ満載やな、こんな難しい内容子供わからんよなぁ〜なんて言いながら二人で仮面ライダーにつっこみを入れていた。
    『俺多分あと30分もつかもたんかやわ……』眠いのかなと思いそっか。と返事をした。
    『涼俺我慢できへんわ…』
    智也が首に吸い着いてきた。びっくりしたのと気持ちいいので声が漏れた。

    2005-06-03 16:19:00
  • 108:

    『そんな声出したら俺もぅ我慢できん!』
    智也が涼に被さってきた。
    智也は優しく涼を抱いた。幸せだった。軽い女だと思われたかもしれないが、幸せだった。その日も昼から仕事のある智也は終わるとすぐに寝てしまった。寝顔を見ていると彼女になれたような気がして嬉しかった。
    智也が起きて仕事に行くついでに駅まで送ってくれた。帰りたくない。智也とずっと一緒にいたい。また連絡するわなっと言って智也は仕事に行った。

    2005-06-03 16:20:00
  • 109:

    帰りの電車で思い出してにやけてしまった。多分相当気持ち悪い人になっていたと思う。でもそれくらい幸せだった。
    昼の仕事の間は電話にはでれないらしいので夜の仕事に行くまで連絡するのを待った。ちなみに智也はホストではない。
    コンビニの清掃の仕事をしている智也は部長という立場らしく現場には行くけど実労はほとんどしないらしい。日替わりで近畿のコンビニを回るらしい。12時を回って電話をしてみた。
    『おう、どしたあ?』

    2005-06-03 16:22:00
  • 110:

    ふつうの声だったが朝のことを思い出して一人で恥ずかしくなった。
    途中で何度か切ったが結局朝まで電話を繰り返した。
    それからしばらく毎日今日はどこの清掃なのかを電話で聞いて近かったら会いに行こうと思ったがなかなか近くはなかった。
    智也はいつでも電話に出たし、寂しくはなかった。でも会いたい。顔が見たい。皮肉なことにライブの予定もその月はもうなかった。

    2005-06-03 16:23:00
  • 111:

    獅子座流星群がくる日、いつものように電話をした。
    『今日はどこなん?』
    『今日は西淡路やで!』
    近い!!…事はないが今まで桂だったり富田林だったりとうてい行けない所ばかりだったが西淡路はまだ行ける。

    2005-06-03 16:25:00
  • 112:

    『西淡路のどこ?行く!!!!!』
    え!?と智也は驚いていたがチャリを飛ばして西淡路を目指す。空では流星がきらきら輝いている。30分ほどチャリを飛ばして到着。コンビニを見渡し智也を探す。コンビニの端でたばこを吸っている智也発見。
    『智也!!』
    『涼!!ほんまに来たんか!?なにで来たん??』

    2005-06-03 16:26:00
  • 113:

    『チャリ』『そんなに俺に会いたかったんか??』
    おそらく智也は冗談で言ったのだろうが、涼は本気で答えた。
    『うん!会いたかった』
    智也はそうか、と笑顔で答えた。

    2005-06-03 16:28:00
  • 114:

    従業員に指図する智也もかっこいい。結局仕事が終わるまでコンビニにいた。智也の仕事が終わったので帰ろうとした。
    『俺こいつ送っていくわ。先にここ(涼の家の近く)まで車で行っといて!!』
    え!?と涼は驚いた。チャリを全速力で飛ばして30分以上かかった距離だ。それを智也は歩いて送ってくれると言う。相当長い時間智也と一緒にいれる。チャリを押して二人は涼の家に向かって歩いた。
    歩きながらいろんな話をした。涼は嬉しさが大きすぎてあまり覚えていないが幸せだった。

    2005-06-03 16:30:00
  • 115:

    『寒いなぁ〜』
    と涼が言うと智也は手をつないでくれた。手を通してドキドキが智也に伝わりそうだ。作業着の智也はライブとはまた違ったかっこよさがあった。作業着で一緒に手を繋いで歩くなんてはたから見ればすごくラブラブのカップルのようだ。そう見える状況に涼は満足だった。
    涼を送って智也は京都に帰って行った。家に帰って寝ようとしても興奮して眠れない。
    それからまた毎日電話で勤務先を聞いたがそれから近くはなかった。

    2005-06-03 16:33:00
  • 116:

    ライブに行っては智也のそばにずっといた。毎回いろんなひとが“彼女?”と聞いてくる。ショートカットの綺麗なお姉さんが智也に近づいてきた。
    『智彼女変わったん?』
    変わったん?と言う言葉が引っかかった。智也に彼女がいるかもしれないなんて考えてもみなかった。
    『智也彼女おるん??』

    2005-06-03 16:34:00
  • 117:

    『涼は俺が大好きやもんなぁ!』
    好意を持っていることは気づいているのだろう。事実だ。智也の事が好きでたまらなかった。
    毎日夜中智也と電話し、その度好きだと言うが伝わらない。はじめてこんなに長い間【彼氏】というものがいない。でも平気だった。久しぶりの片思いだが、楽しかった。また智也の家に行った時思い切って聞いてみた。
    『彼女どんな子?』

    2005-06-03 16:39:00
  • 118:

    彼女はふつうの事務をしている智也と同い年。プリクラを見せてもらったがたいして可愛くない。勝てる。
    智也は今日も涼を抱いた。優しい。彼女はどんな風に智也に抱かれるのだろう。自分とは違うのだろうなと少しさみしくなった。
    『彼女と別れて涼とつき合うとかない?』真剣に言ってみた。
    『俺な涼の事可愛いとは思うしつき合うのは全然いいねんけど、俺なバンド関係で知り合った人とはつき合うとかしーひんって決めてんねん…』涼の思いは叶わなかった。

    2005-06-03 16:41:00
  • 119:

    いつかそのうち気が変わるかもしれない。智也に一度振られているが諦められなかった。智也を独り占めしたい。あの笑顔を自分だけのものにしたい。思いは募るばかりだった。
    最近智也は電話にあまり出ない。仕事がしんどいので部長という立場を捨てバイトに降格したらしく実労しなければならないのだ。たまには電話に出てくれるしライブに行けばあえた。あきらめがつかなかった。しかしそろそろ智也は涼が本気で自分の事を好きだと自覚しはじめたのか期待させまいとしているらしく、少しずつ冷たくなっていった。ライブに行っても家に連れて帰ってはくれなくなった。寂しくて、切なくて胸が苦しかった。
    会えない分、余計に気持ちが募る。月に3,4回のライブが何よりの楽しみだった。元から結構社交的な涼は妙な身なりの人たちともすぐ仲良くなった。仲良くなったといってもライブで顔をあわせれば喋るだけ。もう、ライブハウスに行っても一人じゃない。智也のそばにくっついているのは状況的に無理になった。
    やはり、今日も連れて帰ってはくれなかった。もう、自分には望みはないのだと、この時なぜか実感した。この頃からだんだん付き合いたいという

    2005-06-03 16:44:00
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    あぼ~ん
  • 121:

    彼氏がほしい。また始まった、涼の彼氏ほしい病。誰かがそばにいてくれないと。常にかまってくれなきゃ寂しくてつぶれそうだ。今、誰もよさげな人はいない。哲也の店には相変わらずちょくちょく行っていたが完全に哲也は《男友達》になっていた。
    どこで出会おう。大ちゃん以来、ろくな客もいない。そこまで気に入ってるホストもいない。不思議と、ユウ以外に色をかけられたことはなかった。

    ネットでよくみる恋愛相談サイトで今日もチャットで朝まで喋った。もちろん相手はどこの誰だか全く分からない人だ。今日は暇だったのでリンクも覗いてみた。出会い系サイトがランキング形式で載っている。生まれて始めて、出会い系というものをやってみた。

    2005-06-03 16:45:00
  • 122:

    削除

    削除されますた

    あぼ~ん
  • 123:

    バイト先の島田君と言う男前の子と仲良くなりよく一緒にスロットに出かけた。島田君にも彼女がいるので、ほんとにただの《スロット友達》だった。剛には愛されていると思っていたし、その愛も涼のコップからは溢れそうなくらい、多大なものだったから…

    2005-06-03 16:52:00
  • 124:

    ある日電話でいきなり剛が言った。
    『ごめん、俺浮気してん』目の前が真っ暗になった。浮気って…まだ付き合って二ヶ月しかたっていない。そんなに早く浮気するもんなのか?っていうか普通浮気を自分から言うか!?いろんなことを一瞬で考えた。
    なんと剛は出会い系をやめてはいなかった。そして浮気した理由は【25歳だったから】。剛は極度の年上好きだった。
    嵐のように切れ、三日後その女を呼び出させた。剛は渋っていたが『お前のこと好きって言うてんやったら、《こないだ会ったばかりやけど又会いたい》とか何とか言うたら来るんちゃうんけ!!』いつもの涼ではない切れ具合に恐れをなしたか、しぶしぶ承諾した。

    2005-06-03 16:53:00
  • 125:

    JR三田に向かう。今日はいつもより化粧も濃い目、服装もフェロモン全開。戦闘態勢だ。駅について剛発見。うつむいている。
    ほんとは自分で話をつけたかったが、自分から言うと言う。とりあえずそれを見届けなければ。駅のホームに剛と少し距離を置いて立ち、その女を待つ。駅なんだから、自分の男の隣に女が立っていたって、何も不思議はない。
    しばらくして、電車が来たのか改札からぱらぱらと人が出てゆく。Gジャンにデニムのロンスカの変な女。センスなさ過ぎやろ…と思っていたら、なんとそいつが剛に駆け寄る。
    おいおい…なんだか怒りを通り越して呆れた。相手はあんなのかよ…いくら25歳だからってあれはないだろ。

    2005-06-03 16:54:00
  • 126:

    センスの悪い女は甘ったれた声で剛に話す。
    『ごめんねぇ、待ったぁ?乗り換え間違えちゃって時間かかっちゃったぁ』キャバ嬢のような甘い喋り。顔と全く似合っていない。剛にべたべたと引っ付く。やめて。離れて。しばくぞ。結構限界だった。
    『今日は仕事もう大丈夫なん?』剛の声が震えている。どうやって話を切り出すか困っているのだろう。50cmと離れず、横でブチ切れの涼がいるので余計困惑しているらしい。
    蕎麦屋の娘らしいセンスの悪い女は又甘ったれた声で答える。

    2005-06-03 16:56:00
  • 127:

    バキ。剛の頭をどつく。
    『お前、さっさと話せや、いつまで待たせる気やねん。もう30分は経ったぞ!?』
    女は鳩が豆鉄砲食らったみたいな顔をした。
    『・・・誰???』めはまっすぐ剛を見ている。

    2005-06-03 17:00:00
  • 128:

    『・・・・・俺の彼女・・・』ボソッと剛が答えた。
    『さっさと話し終わらして、ご飯行こうねってゆったやろ。もうお腹すいて限界やねん。もうちょっと横で待ってたるから、はよせぇ。』
    その場を離れた。
    だらだらと、話をするのかと思えば意外にあっさり剛は言った。

    2005-06-03 17:01:00
  • 129:

    『そういうことやねん。こいつは俺の彼女でお前は浮気やねん。彼女にばれたしもう別れてな。』
    センスの悪い女は泣きながら改札の中へ消えていった。
    『ごめんな。ほんまごめんな。』強がぎゅっと抱きしめた。よしよし。頭をなでてやる。
    『よう言ったね。もう浮気しやんといてや?』うん、と涙目で剛が答え、キスをした。

    2005-06-03 17:03:00
  • 130:

    そこからデートしたのだが、剛の携帯はセンスの悪い女からメール、電話が鳴りっぱなし。
    【あんな女のどこがいいん】【剛はあの人にだまされてるよ】など、涼の文句ばかりだ。相手が、綺麗なお姉さんとかなら、そんなメールも気になったかもしれない。だが、センスの悪い女はお世辞にも可愛いとはいえない顔だった。浮気した自分の彼氏の相手の女を見て、情けなくなるほどに。
    『またメール来た…もう、ほんまうっといわ…』お前、あいつのことを好きで浮気したんじゃないのか?
    メールの剛の反応になんだか違和感を覚えた。

    2005-06-03 17:04:00
  • 131:

    甘甘な愛をくれる剛に涼はのめりこんでいった。寝てもさめても剛のことを考えた。電話とメールではいつも聞いてるこっちが恥ずかしいようなせりふを剛は恥ずかしげもなく言った。
    ある日いきなりたった一言【もう終わりにしよ。バイバイ】とメールが来た。ありえない。昨日寝る前まであんなにラブラブだったのに。今週末は梅田でデートしようねと約束したのに。慌てて剛に電話をかける。受けない。涼は震える手でメールを打った。

    2005-06-04 01:13:00
  • 132:

    『なんでいきなりそんなん言うん?何があったん?』
    なかなか返事がこない。何が原因なんだろう。何を言われるんだろう。本当に終わってしまうのか。不安ばかりが頭をかけ巡る。まだ返事が来ない。不安に押しつぶされそうだ。

    2005-06-04 01:18:00
  • 133:

    ライターをつける手が震える。うまくつけられない。それほどまでに動揺していた。剛のいない毎日など考えられない。やっと火をつけられたタバコも考えているうちに長い灰となり足に落ちてきた。熱さで我に返る。
    剛専用の着メロがなる。さらに手が震える。怖くてメールを開くことが出来ない。内容を読む勇気が出ない。覚悟を決めてボタンを押す

    2005-06-04 01:20:00
  • 134:

    【いつか涼が俺から離れていきそうで怖い。そんな思いをするくらいならもう離れた方がましやから。さよなら】
    【離れたりなんかしない!涼は剛がおらな生きて行かれへん!離れたりしないから剛から離れたりしんといて!涼には剛しかおらんねん!】手は震えていたが驚くほどの早さで返事を返した。また返事が来ない。頼むから離れていくなんて思いとどまって……祈るようにつぶやき続けた。

    2005-06-04 01:21:00
  • 135:

    【でも一生気持ちが離れていったりせえへんて保証ないやん。そうなった時が怖いねん。だからもう涼の前から消えるから】思いとどまってくれてはないようだ。
    【だから涼には剛しかおらんの!!離れたりされたら涼が無理なん!好きじゃなくなったわけじゃないやろ!?】と返事を返した。返って来る返事は同じ。怖いから無理だと。水掛け論だ。お互い言葉を変えて同じ事を主張するだけ。……どうすれば剛に伝わるのだろう。どう表せば離れたりしないと信じてくれるのだろう。言葉は使い尽くした。三時間ほど同じやりとりを続けやっと剛が信じた。信じたと言うか、口では【信じる】と言ってくれた。
    良かった。思いとどまってくれて本当に良かった。涼は言い合って疲れたが剛の深い愛を感じた。愛されてると実感した。

    2005-06-04 01:22:00
  • 136:

    剛はMだった。セックスの時も縛られたりするのを好んだ。
    また別れ話をされた。前ほど動揺しなかった。きっと原因は前と同じだと思った。が、内容こそ同じもののなんだかエスカレートしている。涼は離れないと説得するが聞かない。ものすごいメールが来た。
    【俺は涼がそばにおらな生きていかれへん。毎日明日は涼に振られるんじゃないかってびくびくしながら生きてんねん。涼の愛が欲しい。絶対的な愛をちょうだい。縛り付けて、殺してでも側にいてくれな嫌やねん】

    2005-06-04 01:24:00
  • 137:

    さすがにちょっと面食らった。殺されるのは困る。でもそれだけ自分の事を愛してくれているのだと思うと嬉しさで涙があふれた。狂気的なほどに自分の事を愛してくれている。ここまでストレートな愛情は初めてだった。
    情緒不安定なのか、不安なのか剛は別れ話をしょっちゅう切り出すようになった。内容はやっぱり毎回同じ。本当は別れたいんじゃないかと不安になる。剛の事は大好きだ。いい意味で空気のような存在。だからこそ怖い。剛がいなくなってしまったら…考えるだけで涙がでそうになる。もう別れたいんじゃないなら気持ちを確かめるために別れ話をするのは辞めて欲しかった。辞めさせよう。そう考えてこう言ってみた。

    2005-06-04 01:25:00
  • 138:

    『そんなに信じられへんのやったら別れていいよ。剛がそうしたいんやったらしたらいいやん。涼死ぬわ。そしたらあんたの望み通りやろ?どこにもいかへんくなるで』
    『涼が死ぬことないよ。最低なんは俺やから。俺が死ぬから。確かめたりしてごめんな。』プツ…
    しまった……逆効果だ……

    2005-06-04 01:26:00
  • 139:

    プルルルル…プルルルル…プルルルル電話にでない。まさか本当に死んでしまったのか??剛ならやりかねない。何度も何度もリダイヤルを押す。いっこうに出ない。どうしよう。本当に死んでいたら……電話に出てくれない事が余計に不安を煽る。直接確かめようにもとうてい真夜中に行ける距離ではない。切羽詰まって香織に泣きながら電話をかける。相当取り乱していただろう。自分でも何を言ってるかよくわからない。号泣しながら喋るのでえづく。それでも涼は香織に伝えようと頑張って喋った。

    2005-06-04 01:27:00
  • 140:

    プップップッ……
    香織の声が途切れる。キャッチだ。こんな時に誰だよ!?と思いながら耳から離し画面を見る。
    【着信中:剛】
    びっくりして香織の電話を切ってキャッチに出る。今出なければ一生話せないかもしれない。

    2005-06-04 01:28:00
  • 141:

    『もしもし……ひぃっ…うっ……』
    さっきまで号泣していたのだからいきなり普通に話せるわけがない。剛はちょっと驚いた様子だった。
    『いっいぎでで(生きてて)……涼……じっ…死なへんがらっ……』やっとの思いで話す。
    『ごめんな、俺ホンマに死のうと思った。でも涼のそばにいたいから…涼の事考えたら死なれへんかった。でもそんなに泣かせてごめん。やっぱ俺ホンマ最低やな……そばにおったら涼を悲しませるだけや……やから別れた方がいい……』

    2005-06-04 01:29:00
  • 142:

    話が振り出しに戻ってしまった。涼は泣き崩れた。別れたくない。離れないで。別れ話をしてもいいからそばにいて……言いたいことは山ほどあるのに言葉が出ない。ただただ泣くばかりだった。泣くだけで何も話さない涼に剛は言った。
    『泣くなよ、めんどくさいなぁ!!』
    ……?????
    自分の耳を疑った。

    2005-06-04 01:31:00
  • 143:

    めんどくさいなぁ!?!?!?あまりにもびっくりして涙は止まった。
    『やっと泣きやんだか。耳元でうっさいねん』
    今自分は誰と話していたんだっけ?剛のはずだ。剛は自分の事を愛しているはずだ。うっさいなんて言ったのは幻聴。他の電波を拾ってしまっただけだ…なんて無理矢理な理由をつけて落ち着こうとした。

    2005-06-04 01:32:00
  • 144:

    『俺はホンマに最低な男やから。涼に愛される資格なんかないねん。だからもう別れて。』
    また別れ話に逆戻り。
    『最低な男や、って何があるん。ゆうてくれやな最低かどうかわからんやん。涼に愛される資格なんかないって言うんなら最低かどうかは涼が決めたらいいんちゃうん!?』
    剛はしばらく黙っていたが重い口を開いた。

    2005-06-04 01:33:00
  • 145:

    今まで付き合った女はみんな涼よりはるかに年上だったらしい。さっきまで暗い口調で話していたのに急に剛は明るい口調で話し始めた。
    『女は20代後半が狙い目やねん、特に独身の地味なやつな。金ため込んでるし、甘い言葉なんか言われたことないからホイホイ騙されよんねん。将来結婚しよ、やから二人で貯金しようゆうて架空口座教えたら一発や。ホンマに振り込みしよるからなあ!』

    2005-06-04 01:36:00
  • 146:

    死ぬと言ったのも本心ではなかった。ちょっとした脅しのためだ。しかし日をおうごとに剛に対する気持ちは大きくなってゆく。剛がいないのなら死んだ方がマシだと思うようになってきた。あれからも剛は別れ話をたびたび切り出す。前まで【不安だから】が主立った理由だったがあの日を境に【愛される資格がないから】というのも増えた。いくら説明しても剛は別れ話を繰り返す。その度号泣し泣きわめき泣き叫んだ。

    2005-06-04 01:38:00
  • 147:

    完璧に自分が情緒不安定だ。この頃になると本気で『死ぬから』と言っていた。必ず剛は『俺が死ぬから』と言い返してくる。それを言われると毎回絶望感に襲われ涙は一層勢いを増す。毎日夜中になればまた別れ話をされるんじゃないかと不安が募る。悲しいまでに毎回不安は的中し死ぬだの死なないだの泣き叫ぶ毎日が続いた。

    2005-06-04 01:39:00
  • 148:

    しばらくしてから剛は別れ話をしなくなった。【結婚しよう】と言い出すようになり涼は幸せだった。結婚詐欺をしたと言っていたのが引っかかったが幸か不幸か涼は全く貯金がなかった。結婚詐欺の話を聞いた時は【(当時)16の奴に騙される20代後半ってありえへん】と思っていた。が、今なら剛に金を巻き上げられていった女たちが剛にはまった気持ちがわかるような気がした。

    2005-06-04 08:01:00
  • 149:

    春になり剛は大学生になった。三田の実家から京都の大学に通うのは無理なので一人暮らしを始めた。生活用品を一緒に見に行ったり、京都まで鍵を受け取りに行ったり幸せな日が過ぎた。春休みだった事もあり頻繁に家に行った。帰りたくない、とワガママを言って四日間泊まった事もあった。

    2005-06-04 08:04:00
  • 150:

    春休みが終わり大学が始まる。デートは週一ペースに逆戻り。春休みあれだけ一緒にいた分寂しさが募る。三田も京都もさして距離は変わらないのでそう易々と会えるようになったわけではなかった。

    2005-06-04 08:05:00
  • 151:

    新学期が始まり剛は宿泊研修に行った。親睦会のようなものらしい。この頃になると剛もすっかり垢抜けていたので心配だった。
    その年、涼も専門学校に行き始めた。秋あたりに受験して決まっていた。自分もなんだかんだと忙しかったので連絡も前よりは減った。しかし何もする事がなくなると剛の事ばかり考えていた。
    剛は京都の大学は滑り止めだった。本命には落ちたのだ。京都の大学には行く気がしない、自分より低脳しかいないとしょっちゅうこぼしていた。宿泊研修も行かないと単位がないから、としぶしぶ行ったのだった。今頃何をしているのだろう。ちゃんと友達が出来たかな??この宿泊研修が後から最悪の事態を招くなんてこれっぽっちも考えていなかった。

    2005-06-04 08:06:00
  • 152:

    今日は剛が帰ってくる日だ。わくわくしながら連絡を待つ。剛専用のメール着信音が鳴る。
    『もう俺と別れて。俺の事は忘れて。楽しかった。じゃあな』
    目の前真っ暗だ。久しぶりの別れ話は涼の心に傷を作るには大きすぎた。『なんで??理由は??納得出来やな別れへん!!』
    ふるえる指でメールを打つ。涙で霞んで画面が見えない。
    『もう涼の事好きじゃないねん!!』
    自分の周りから音が消える。今度は頭が真っ白になる。別れ話は何度もしていたが好きじゃないなどと言われたのは初めてだった。どうすればいいのかわからない。体が固まったまま動かない。瞬きをすることさえ忘れ開けっ放しの目からは大粒の涙がぼろぼろと転がっていった。

    2005-06-04 08:08:00
  • 153:


    自分の周りから音が消える。今度は頭が真っ白になる。別れ話は何度もしていたが好きじゃないなどと言われたのは初めてだった。どうすればいいのかわからない。体が固まったまま動かない。瞬きをすることさえ忘れ開けっ放しの目からは大粒の涙がぼろぼろと転がっていった。

    2005-06-04 08:09:00
  • 154:

    好きじゃない……?
    どう返事を返していいのかわからない。というより何も考えられない。
    『理由はなんなん??好きじゃないっていつから思ってたん??』
    ちょっと我に返り返事を打つ。“送信完了”と出てからほんの一瞬で返事はやって来た。
    『最初から』
    このひと言で完璧に涼は狂気をおびた。奇声を発し泣き叫ぶ。叫びすぎて喉が切れ血を吐いた。手当たり次第物を投げ、壁を殴り窓も割った。家は強盗に入られたかのような大惨事だ。涙はすごい勢いで出続ける。えづき、血を吐きながらも叫び続けた。自分を保つことが出来ない。

    2005-06-04 08:10:00
  • 155:


    このひと言で完璧に涼は狂気をおびた。奇声を発し泣き叫ぶ。叫びすぎて喉が切れ血を吐いた。手当たり次第物を投げ、壁を殴り窓も割った。家は強盗に入られたかのような大惨事だ。涙はすごい勢いで出続ける。えづき、血を吐きながらも叫び続けた。自分を保つことが出来ない。

    2005-06-04 08:12:00
  • 156:

    最初から!?剛は自分のことを愛してはいなかったのか??あの言葉は??剛の笑顔や愛してるとささやく声などが頭をかけめぐる。愛してはいないなんてそんなわけがない。そう信じたかった。
    ふっと気づくと電話が鳴っている。剛だ。自分で破壊した家具のがれきの中に座り込み電話に出る。
    『あ゛い……』
    切れているので話すと痛い。うっ…とえづきながら剛が言葉を発するのを待った。

    2005-06-04 08:13:00
  • 157:

    『また泣いてんのか、ほんまめんどくさいなぁ…。もう好きじゃないっつってんねんからわかったーゆうて別れろや』
    口振りはまるで別人だが声は剛だ。ショックが大きすぎて何もいえない。ただただ泣くばかりの涼に剛が言った。
    『別れたくないんか??』
    『別れたくない!!!!』
    『わかった。じゃぁ俺に貢げや。』

    2005-06-04 08:14:00
  • 158:

    ………????????
    ハテナが頭に大量発生したが剛と別れないですむなら貢いでも構わなかった。そばにいられるならそれでいい。剛がいなければ生きていけない。
    『わかった。貢ぐから別れんといて……』
    最後の方でまた泣き出してしまった。
    『泣くなうっとい。貢ぐんやったら別れんとくわ。じゃあな』
    プツ…プー……プー
    別れずにすんだ……安心して力が抜けた。

    2005-06-04 08:15:00
  • 159:


    プツ…プー……プー
    別れずにすんだ……安心して力が抜けた。

    2005-06-04 08:17:00
  • 160:

    またすぐに電話がかかってきた。
    『俺、バイトとかしたくないし、生活費で週10万ずつな。後、プレステ2とソフト。』
    通販の電話受付になった気分だ。でも、剛と別れるくらいなら貢いだほうがましだ。週10万…パチ屋の給料では到底無理だ。パチ屋をやめ、また夜に逆戻り。学校の課題なんかもあるので個室待機のマンヘルにしてみた。スタイルはいいと言われている。昔の客はみんな切れていたが、涼は新しい客を次々捕まえ、まぁそこそこ稼げた。

    2005-06-04 08:18:00
  • 161:

    夜中まで仕事をし、店泊、店から学校に行く。週一のデートには10万入った封筒。当たり前のように受け取る剛。貢いでいるからか、別れ話はされなかった。
    よくよく考えれば週に10万は多い。でも、その10万で安定が買えると思えば安かった。
    『お前、どうやってこの金作ってるん?』さすがに剛も疑問なんだろう。一般人に風俗をしているなどとはいえなかった。
    『おばぁちゃんちが金持ちで、家も広くて、そこの掃除とか、庭の手入れとか。』そうなんや。と剛は答えた。
    いくら金持ちだからって、そんなことで週10万もくれる親族がいるかよ、と思いつつ、突っ込んでこられなかったので安心した。

    2005-06-04 08:20:00
  • 162:

    週に現金10万、デートのときの費用、そしてまた、何かをねだられたら買う。いくら使っても、そうしていれば別れ話は出ない。安定を買うためだと、自分に言い聞かせた。
    安定を買ってでも一緒にいたかった。でも、買ってまで得たかった安定はすぐに崩れた。
    『そうやって、涼にお金をもらったり、おねだりしたりする自分が嫌や。最低やと思う。もう別れよう。』
    お金まで出したのに、別れ話をされた。どうすればいいんだろう。
    もう、自分の事を金としてしか見なくてもかまわなかった。それでもいいからそばにいてほしかった。

    2005-06-04 08:21:00
  • 163:

    『いくら払ったっていい、ほしいものも何でも買うから別れるなんか言わんといて!頼むからそばにいて!』
    『そんなんしてる自分が嫌やねん。自分の彼女に金ねだるとか最低やん。だから俺は、俺は好きじゃなくても俺のことを好きで金だけくれる女捜すから。』
    『涼がお金あげるから、ほかの女捜すとかやめて!!!』
    毎日毎日こんなやり取りが続いた。

    2005-06-04 08:23:00
  • 164:

    というか、涼の事は好きじゃないけど、貢ぐなら別れないといわれたはずだ。別れ話をされる理由が分からない。条件は十分すぎるほどに満たしているのに。
    『涼のこと、最初っから好きじゃなかったって言ってたやん。』
    『そんな訳ないやろ。あんなん嘘や。好きやから、辛いねん。』
    嬉しかった。やっぱり嘘だったんだ。ほっとしたのもつかの間、好きだといわれたって、今は別れ話の最中だ。条件を満たせていない…

    2005-06-04 08:24:00
  • 165:

    結局結論はいつものように、別れないでまとまり、またデートの日が来た。10万入った封筒を握りしめ、京都へ向かう。大好きな剛。駅で待ち合わせて家へと向かう。スーパーへ買い物に行き、ご飯を作る。ご飯を食べて、H。幸せな時間が過ぎる。
    Hが終わると、ぽつりと剛が言った。
    『もう、会うの今日で最後な。』
    頭の中で何かが切れる音がした。せきを切ったように涙があふれる。何も言葉が出ない。何度も別れ話をされ、そろそろ免疫ができてもいいはずなのに、毎回受けるショックは相当なものだった。

    2005-06-04 08:30:00
  • 166:

    『涼の事好きやから、お金とかもらうん、辛いねん。もう辞めたいねん。でもお金は欲しいねん。そんな男嫌やろ?』
    嫌ならとっくに切ってるだろうが。何でこいつはそれが分からないんだ?
    だんだん辛さよりも苛立ちが大きくなる。どうすれば伝わる?そればかり考えるようになった。
    『涼がお金もあげるから。そんな男でもいいねん。涼は剛じゃないとあかんねん!!』分かった、ごめんな、といって剛は涼を抱きしめた。

    2005-06-04 08:34:00
  • 167:

    このところ仕事が暇だ。お客さんも、たまにしか来なくなった。お金が足りない。あと何日かしたら、また10万もって行かなきゃ行けないのに財布には2万しかなかった。
    ぱらぱらとヘブンをめくる。後ろのほうまで来たとき、出会い系サイトの広告が目に留まる。
    援交すればいいんだ。店で働くより手っ取り早い。そこのサイトにアクセスした。
    案外あっさり会えて、簡単に二万手に入った。これを繰り返せば、剛に渡すお金ができる。嬉しかった。

    2005-06-04 08:35:00
  • 168:

    梅田で待ち合わせて、ホテル行って、エッチして二万。楽だ。はまった。いつものように終わって、ぶらぶら梅田を歩く。今日は早い時間にしたのでまだ終電がある。ヘップとナビオの間をボーっと歩いていると前に黒い集団。ホストだ。
    『俺今日女に振られてんやん』………びっくりして振り向いてしまった。今風の髪形をした目がきれいな子がそこには立っていた。

    2005-06-04 08:36:00
  • 169:

    タケシというそのこと連絡先を交換し帰った。今日はゆっくり寝よう。明日は剛とデートだ。
    今日は剛の家にお泊りだ。わくわくする。お風呂に入って、台所でタバコをすう。(剛はタバコを吸わないので部屋では吸えなかった。)
    ブブブブブブブ…カウンターで携帯が震えている。
    『誰から〜?』『タケシって出てる』『ぁ、いいわー。ほっといて』どうせ営業電話だ。
    手をつないで眠り、朝が来た。
    『お前さぁ、俺に隠してることあるやろ?』起きるといきなりもう起きていた剛が言った。とりあえず、寝起きはタバコをすわなきゃ目が覚めない。台所へ向かう。
    『隠してることなんかなんもないで?』『絶対ある。自分の口から言ってみろ。』

    2005-06-04 08:37:00
  • 170:


    手をつないで眠り、朝が来た。
    『お前さぁ、俺に隠してることあるやろ?』起きるといきなりもう起きていた剛が言った。とりあえず、寝起きはタバコをすわなきゃ目が覚めない。台所へ向かう。
    『隠してることなんかなんもないで?』『絶対ある。自分の口から言ってみろ。』

    2005-06-04 08:39:00
  • 171:

    言ってみろといわれたって本当に何も心当たりはない。心当たりがないのだから、何もいえない。しかし剛はそれをやましいと言った。
    『携帯見てんからな。俺。』
    そう言われて一瞬、援交のことが頭をよぎった。そのサイトはブックマークしてある。見られたら一発だ。ダイヤルロックもかけていないので、見ようと思えば簡単だ。まずい。

    2005-06-04 08:40:00
  • 172:

    『何のことか分からんって。何もないって言ってるやん。』言い通そうと思った。
    『携帯見たっつってるやろ。そう言われても、本間に何も心当たりないねんな?俺に見られて困るメール、入ってないって言い切れるねんな?』
    もう終わった…と思った。サイトを通してメールのやり取りをする。もちろん、いちいち消したりはしていなかった。
    でも、カマをかけられているのかも…もうしばらく言い通そうと思った。『見られて困るもんなんかなんもないわ!!!』
    『俺、もう見たから。メールも全部。どういうことか説明しろや。』…カマじゃなかったのか…見られたなら仕方ない、と重い口を開いた。

    2005-06-04 08:41:00
  • 173:

    『10万、足りそうになかったから援交してん…』もう、見られたなら言い訳はできない。これで、別れるかもしれない。そう思うと涙が出た。しかし次に剛が言った言葉は意外なものだった。
    『は!?!?!?援交って何やねん!!!!!!』逆にこっちがびっくりした。携帯見たんじゃないのかよ!?自爆したと思った。

    2005-06-04 08:42:00
  • 174:

    どうやら剛はタケシのことを疑ってカマをかけたらしい。昨日知り合ったばかりの男とは知らず、電話を取らなかったので前々からタケシと浮気していると勘違いしたのだ。
    よりにもよって援交がばれてしまった。どうしよう。『今週はおばあちゃんち手伝う用事少なくて……足りなかったから一回だけ……だって10万なかったら振られると思ったんやもん……』本音と言えば本音だが、一回は嘘だ。剛に渡した金のほとんどが知らないオッサンと寝て手に入った金だ。

    2005-06-04 08:44:00
  • 175:

    『辛い思いさせてごめんな。もうせんといて?10万なくても、五万以上あれば大丈夫やから』優しいんだか優しくないんだか……すべて援交で得たとは思ってないようだ。辛い思いさせてごめんなと言うならなぜもう金はいらないからと言わないのか。自分の彼女が援交したと知っても反応の薄い剛に疑問がわいた。

    2005-06-04 08:45:00
  • 176:

    その日はそのまま泊まり、また朝が来た。昨日寝すぎたらしく妙に早く目が覚めた。外はまだ薄暗い。起こすといけないのでそぉっとベッドを抜け出す。
    『んん……大丈夫??優ちゃん………』小さな小さな声だったが静かすぎる家の中でははっきり聞こえた。

    2005-06-06 08:03:00
  • 177:

    優ちゃん………
    確か宿泊研修の時に出来たと言っていた女友達の名だ。あとは斉藤、山田、大西と何人か男友達も出来たと言っていたが【優ちゃん】は一人名字ではなかったので記憶に残っていた。
    なぜその子の名を寝ぼけながら呼ぶのか。何かあるのか。台所でタバコを吸いながら考える。同じ大学なうえに剛の家は大学から徒歩五分ほどだ。来たことがあっても不思議ではない。

    2005-06-06 08:05:00
  • 178:

    落ち着こう。もう一度寝よう。ベッドに潜り込もうとする。パイプベッドがきしむ。
    『ん……?どうしたん?優ちゃん……』
    ……二度目だ。ありえない。絶対何かある。女の勘ってやつだ。もう我慢ならない。
    『残念!!優ちゃんじゃないんだな〜ぁ』
    わざとおどけながら剛の頬を軽くつねる。ひどく驚いた様子で剛が目を開ける。

    2005-06-06 08:06:00
  • 179:

    『うわっ!!涼か……優ちゃんがなんて??』
    『なんて??じゃないわこのアホ!!二回も呼んだってどおゆう事よ。』
    いつもなら泣き叫んで発狂してもおかしくない事態だが、なぜかひどく落ち着いていた。

    2005-06-06 08:06:00
  • 180:

    聞けばこの間飲み会をした時に優ちゃんがひどく酔っぱらい、その夢を見ていたと言う。そんなわけあるか!と思ったが喧嘩してまた別れ話をされるのが嫌なのでそっかぁと明るく答えた。
    しかし剛が【誤魔化しきれた】と思ったのかほっとした表情を浮かべたのを見逃さなかった。でもやはり別れ話をしたくないので見逃したふりをしてやった。

    2005-06-06 08:07:00
  • 181:

    数日後電話で話しているとまだタケシの事を疑っていたようで浮気の話になった。あまりにも自分ばかり責められるので腹が立って『寝ぼけて名前間違えたお前の方がよっぽど怪しいんじゃバカ!!』と言ってしまった。
    剛はあははと笑い明るいトーンでこう言った。
    『あ〜だって前の日優ちゃん泊まりに来てたし。間違えたんはしゃーないって』
    どのへんがしゃーないのか。とりあえず詫びるべきだろうが。と言うかだからなんで言わなきゃ分からないことをこいつは自己申告するのか。疑問で頭がいっぱいになった。

    2005-06-06 08:08:00
  • 182:

    多分これを聞いた時が今までで一番涼がトチ狂った時だと思う。非常階段のザラザラした壁を殴る。手は擦れて血塗れ。泣き叫ぶ涼の耳元で電話の向こうから聞こえる脳天気な剛の笑い声。友達もいっしょにいるらしい。

    2005-06-06 08:17:00
  • 183:

    『優ちゃんの事ゆったら発狂しとんねんけど〜あ、お前それそっちじゃないって!!』
    ゲームでもしているのか電話の向こうの涼なんてまるで存在しないかのように、友達と話をする剛。自分は一体この男の何なのか。というか剛はあたしを何だと思っているのか。剛の気持ちはもう優ちゃんにいってしまったのか??切なくて、やるせなくて、剛の心を取り戻す術も見つからなくて、泣き叫んでいるしかできなかった。

    2005-06-06 08:19:00
  • 184:

    『さっさと別れてよ!!』それくらいしか言葉がでない。返ってきた言葉で涼はさらに狂気を増す。
    『いやいや、優ちゃんと別れるんやったらお前と別れるわ。別れたくないんやったら別れへんけど、お前と別れへんかったら優ちゃんとも付き合い続けるで』
    なんというむちゃくちゃな……と言うか優ちゃんとも付き合ってんのかよ…今にして思えばその時別れれば良かったのだが当時の涼にはそれはできなかった。

    2005-06-06 08:20:00
  • 185:

    二番目だろうが、金蔓だろうが二股してようが別れなくてすむなら何だって良かった。
    『どっちの方が好き?』
    なんて愚問を問いかける。
    『涼に決まってるやんか。今までだって浮気したって最後には涼のとこに帰ってきたやろ??』

    2005-06-06 08:21:00
  • 186:

    さっきまで散々に言ってたくせにうって変わって甘い声。冷静な時に考えれば全く理屈が通っていないが、発狂した涼が元に戻るには十分すぎるほど甘い言葉。
    『じゃあ早く涼の所にかえってきてね』
    今思い返しても当時の自分がなにを考えてたのかわからない。

    2005-06-06 08:22:00
  • 187:

    その後もふつうに付き合いを続けた。頑張って【余裕のある彼女】を演じ続けた。本当は余裕なんてかけらもない。早く優ちゃんと別れて、口を開けばそればっかり出てきそうだ。
    ふっと気づいたが、剛は優ちゃんが来ているとき自分の荷物をどうしているのだろう。剛が風呂を掃除している時に音をたてずにクローゼットを開ける。すぐに目に飛び込んできた教科書の山。ダサイ服。涼の荷物は奥に突っ込まれていた。ぱっと見では確実に見えない。
    隠されている……優ちゃんは涼の存在を知らない。自分だけが剛に愛されていると思っているはずだ。そこはあたしの場所なのに…。剛を返して……あたしのなの。あんたのじゃないの……何も答えない荷物に向かって呟き続けた。

    2005-06-06 08:23:00
  • 188:

    『涼〜今日入浴剤何にする??こないだのお湯がとろとろになるやつにする??』
    はっと我に返る。あたしはこんな思いをしているというのになんと脳天気なやつだ……
    『ん〜、それのお湯がピンクになるやつにしよ♪』
    剛に悟られないようになるだけ明るく答える。風呂場でわかった〜という声が響く。たばこを吸いに台所へ向かう。ふっと目をやると冷蔵庫の上に小皿。置いた覚えはないし、今日の夕飯にも使っていない。

    2005-06-06 08:24:00
  • 189:

    『これ、なんでここにあるん??』
    『あ〜優ちゃん歯磨き塩でやるねん。たぶんそん時塩入れたやつやわ』
    確かに公認の浮気だが……というか認めざるを得ない状況にされたのだが、そんなにぬけぬけと普通に答えられては立場なしだ。もうちょっと申し訳なさそうに言えよ…と思いながら、平静を装ってあ〜そう、と答えた声は少し震えていた。

    2005-06-06 08:25:00
  • 190:

    何をしていても優ちゃんがちらつく。優ちゃんにもこんな風に優しくしたのかな……こんな風に言ったのかな……会ったこともない【優ちゃん】の陰に押しつぶされそうになる。
    その夜顔は見えなかったが【優子】と名乗る女に『早く負けを認めなさいよ』と言われる夢を見た。剛の家が優ちゃんが一時でもいた空間だとわかったとたんに、剛の家はあたしの中で【幸せな時間を過ごす場所】から【優ちゃんの陰に押しつぶされそうになる場所】に変わった。気持ちを落ち着かそうと、また台所へ向かう。たばこに火をつけふーっと息をはくと心なしか落ち着いた気がした。冷蔵庫の上に小皿ある小皿がまた優ちゃんを思い出させる。
    今時塩で歯磨くかフツー……なんて思いながら目に入らない食器棚に押し込んだ。

    2005-06-06 08:26:00
  • 191:

    月曜日の朝、剛は学校へと行く。あたしは学校に向かう大学生の群に逆らって駅へと向かう。今朝のバイバイは特別辛かった。あたしと分かれたすぐその後に、優ちゃんと顔を合わすのかと思うと嫌で嫌で仕方なかった。だが、そんなわがままは言ってられない。あたしも学校だ。
    20才で専門学校に入った為、クラスメイトはほとんどが18。顔も見た事のない優ちゃんとかぶる。彼氏とどこへ行っただとかそんな話ばかり。幸せな休みの日を満喫したようだ。羨ましいと思う反面妬ましくて仕方なかった。

    2005-06-06 08:27:00
  • 192:

    あたしは上に兄弟がいなかった上に、下が離れすぎているので同年代の子と比べても昔から精神面は大人びていると言われていた。二つも年下の子たちは話していると中身はもっと下のように感じた。【ガキ】だと思っていたクラスメイトにはあまり馴染めず、見下している相手に相談などする気にもなれなかった。

    2005-06-06 08:28:00
  • 193:

    おそらく剛と優ちゃんは平日にデートをしているだろう。次の日はこいつらみたいにきゃあきゃあと友達に話すのだろう。そう考えると何の罪もないクラスメイトに無性に腹が立った。始業のチャイムが鳴る。戻りたくないのでもう一本タバコに火をつける。一本吸い終わって仕方なしに教室に戻る。タバコの臭いを全身に纏ったままのあたしに『ばれるよぉ』と隣の席の恵理がおろおろしている。

    2005-06-06 08:29:00
  • 194:

    『涼ちゃんなんかあったの?イライラしてない?』
    『してないよ』
    本当はしてるが、口を開けば無意味な八つ当たりをしてしまいそうだったので、それだけ言って目線をそらした。
    しかし好奇心旺盛というか野次馬根性というか次々みんながどうしたのどうしたのと集まってくる。ああ、誰か助けて。こいつらにほかのことに気を移してもらうには最善策だと思っていた。

    2005-06-06 08:30:00
  • 195:

    そんなに不機嫌なのが顔に出てたか……と反省しながらあった事を話した。
    【絶対別れた方がいいって!!】
    【そんな男最低やん!!】
    口を揃えてみんなが言う。そんな事はわかっている。嫌いになれたらどれだけ楽か。あたしだって嫌いになれるもんならなりてぇよ……やっぱ言うんじゃなかったと後悔した。

    2005-06-06 08:31:00
  • 196:

    言われなくても最低な男だということはよくわかっているし、別れられるものなら別れたかった。精神的に限界が近づいているのが自分でもよくわかる。でもそれとは裏腹に世界中に存在する何よりも剛の事を愛していた。

    2005-06-06 08:32:00
  • 197:

    この頃になると【優ちゃんとも付き合いながら涼とも付き合って、しかもお金までもらってる自分が最低やから】という理由で毎晩別れ話をされていた。薬は飲み続けるとだんだん効かなくなるというが、別れ話は毎日されても慣れることはなく、毎夜泣き叫び、ものに当たり続けた。別れたくないと必死にすがる自分が我ながら情けなかったが、そんな事言ってられない。『涼の事お金としか見てなくてもいいから』とまで言うようになっていた。毎晩電話のたびに泣き続けた娘を母親も心配していた。

    2005-06-06 08:33:00
  • 198:

    人間は泣くと痩せるらしい。痩せる成分が分泌されるのだとか、何かで読んだ。本当らしい。毎夜なき続けたおかげで体重は一ヶ月で11キロもおちていた。

    2005-06-06 08:34:00
  • 199:

    別れ話は毎晩していたが本当に別れたことはなかった。今日は久しぶりのデートだ。また10万を握りしめて京都へと向かう。
    ご飯を食べてからビデオをみたのでえらく遅くなってしまった。二人とも明日の一限は落とせない。起きておくためにカラオケに行った。
    カラオケからの帰り道、『いつなったら優ちゃんと別れるん??』と聞いたらはぐらかされた。
    家につくと剛の態度は急変した。

    2005-06-08 20:53:00
  • 200:

    『お前いつ別れんのいつ別れんのってうるさいねん!!付き合ってやってんねんからそれでいいやんけ!!』
    ……付き合ってやってるって……どうしてそこまで上からものを言うのか。どう考えても悪いのはこっちじゃない。また泣き出してしまった。どうやら最近涙腺がイカれてるらしい。

    2005-06-08 20:53:00
  • 201:

    今まで余裕ぶっていたがもう無理だ。思ってる事を素直にぶつける。
    剛は黙って台所へ向かった。
    キィ…パタン
    シンクの下の収納スペースの開く音と閉まる音。
    ??何をしてるんだろう。

    2005-06-08 20:54:00
  • 202:

    (-"-;)!!!
    手には包丁。涙が一瞬にして止まる。何をする気なのか皆目検討がつかない。
    『俺ホンマに最低やな。俺、前浮気したとき涼に悪いと思ったから言ったんじゃなくて、あいつがダルなってきたから、お前にゆったら、あぁなると思って、あいつと別れたくて涼を利用したんやし……』今そんな事を言われても……まぁあの時感じた違和感は解決したが……なんて思ってる場合ではない。

    2005-06-08 20:55:00
  • 203:

    『…………何する気?』
    『俺なんか死んだ方がいいねん。浮気してごめんな。俺がほんまに好きなんは涼だけやで。春休み毎日おったからよけい寂しくて浮気してしまってん。ほんまに辛い思いさしてごめんな。もう涼の手で殺して。愛する人に殺されて人生終わるんやったらそれでいい。ほら心臓ここやし。なんやったら憎しみ全部込めてメッタ刺しでもいいで』
    そう言って剛はベッドにごろん、と横になった。

    2005-06-08 20:56:00
  • 204:

    メッタ刺しにしてやろうかと思った。浮気を繰り返して、あたしの事をボロカスに言う憎い男。
    でもあたしのたったひとりの愛する男……
    無抵抗で目の前に転がっている。でもあたしは刺せなかった。殺人罪をくらうとか、人を殺してはいけないとかそういう道徳観念の前に、剛のいないこの先など考えられなかった。あたしには剛の存在が全てだ。

    2005-06-08 20:57:00
  • 205:

    『死ぬとかやめて……涼は剛の事殺すなんか出来ないよ……剛がいなきゃ生きていけないよ……』涙ながらに言った。
    『無理ゆってごめんな。涼に人殺すとか無理やんな。自分で死ぬから見ててや。な?』剛が自分の手で包丁を腹に突き立てる。素早く手から包丁を奪い取る。剛なら本当に刺しかねない。ぼろぼろ涙が溢れる。

    2005-06-08 20:58:00
  • 206:

    『返せって!!』
    大きな声にびっくりして一瞬ひるんだ。その隙に包丁を取り返されてしまった。

    2005-06-08 20:59:00
  • 207:

    言葉を発している余裕はない。剛の手首めがけて勢い任せに足を伸ばす。命中。カランと音を立て包丁が転げ落ちる。すかさず拾う。すかさず剛があたしから取り返そうとする。今度はお腹めがけて足を伸ばす。ど真ん中に命中。剛がうずくまる。マトモに入ったっぽい。と思ったらうずくまった剛があたしの頭めがけて拳を伸ばす。よけきれず頭に命中。あたしが倒れ込んだ拍子に包丁が転がる。拾い上げられてしまった。さっきあたしが蹴ったお腹が痛いのかまだ押さえている。とりあえずわき腹めがけて蹴りを入れる。こけた拍子に剛の手から包丁が飛ぶ。男と体使って喧嘩したのなんて久々だ。

    2005-06-08 21:01:00
  • 208:

    『なんで死なせてくれへんねん!!』
    好きだからに決まっている。愛してるのに……目の前で死なれるなんてたまらない。

    2005-06-08 21:02:00
  • 209:

    口で言ったって聞くはずがない。泣きながら喧嘩をすると疲れる。
    『どうしても死ぬって言うんなら涼が先に死んでやる!!!!』もうほぼ悲鳴だ。あたしは自分の首に包丁の刃を当てる。
    『もう死ぬなんて言わないって約束して!!!!何でもするから!!!!死ぬのだけはやめて!!!』
    叫びすぎてむせる。むせた拍子に刃が当たってうっすら切れた。ツーっと血が流れる。さっきの喧嘩の拍子に指も切れていた。首から流れた血を見てか剛はぺたんと座り込み、黙って首を縦に振った。ほっと体の力が抜ける。思いとどまってくれた………良かった………

    2005-06-08 21:04:00
  • 210:

    『じゃぁ来週30万な』

    あたしの想いはこの男にはちっとも届いてないようだ。

    2005-06-08 21:04:00
  • 211:

    その日は朝から学校の親睦会だった。これに出ないと課外授業の単位が取れない。泣きはらした腫れぼったい目のまま電車に乗り学校へ向かう。
    学校に着くとクラスメイトが駆け寄ってくる。
    『どぉしたん!?涼ちゃんスッピン!?目赤いよ!?なんかあった!?』
    ああ、そういえば今日の親睦会はティータイムクルージングだ。みんなでお洒落して行こうねって言ってたんだっけ……。そんな事すっかり忘れてた。

    2005-06-08 21:06:00
  • 212:

    『朝から彼氏と包丁奪い合いの喧嘩してさぁ〜化粧する暇なくなってもたわぁ〜』とおどけながら話す。本当はそんな軽く言えたもんじゃない。でも、根ほり葉ほり聞かれるのは嫌だった。
    『ってか今日の三宮での自由時間どこ行くよ!?』誰かがつっこんでくる前に自ら話をすり替えた。
    『あ、あたしな行きたいトコあんねんかぁ、雑誌で見てんけどさぁ〜』
    二つ年上の恭子が話にのってくる。恭ちゃんは多分あたしが話したがってないのを感じ取ってくれたのだ。みんなが恭子の話しにのる。良かった。話さないですんだ。何もなかったかのように化粧しながらみんなの話しに加わった。

    2005-06-08 21:07:00
  • 213:

    ティータイムクルージングと洒落た名前がついたお茶会はさんざんだった。波で微妙に揺れる船体。とてもじゃないがゆっくり紅茶を飲める状態ではない。もとから揺れには弱い。窓から景色を見て紛らわそうにも、窓の外も揺れている。船体が揺れているのだから当然だ。限界……そう思いタバコを握りしめ甲板へと向かった。
    風が当たる分いくらかましだ。
    タバコに火をつけ煙をはく。あたしも煙になりたい……空気に薄められて目には見えなくなった煙が羨ましかった。

    2005-06-08 21:08:00
  • 214:

    『こら!!タバコ没収です!!』
    げっ先生!?うちの学校は美容系なので基本的に喫煙は校則で禁じられている。たとえ未成年じゃなくても関係なかった。やっば……と思いおそるおそる振り向くとそこに立っていたのは先生ではなく、タバコをくわえた恭子だった。

    2005-06-08 21:10:00
  • 215:

    『ひひっ、びっくりしたべ!?』恭子が笑う。
    『恭ちゃんかぁ、びびったしやな、ホンマ!!』
    『なんあったんよ?』
    唐突に話を切り出された。もとから恭子には話そうと思っていたので全部話した。
    恭子はふーっと煙と一緒に深いため息をついた。

    2005-06-08 21:11:00
  • 216:

    『涼ちんさぁ、そいつの事好きなんめっちゃ分かるけど、別れた方が涼ちんの為やで??恭子、初めのうち年上やからみんなに馴染めへんかったから、涼ちんともあんま喋ってなかったけど、初めに比べてめっちゃ痩せたで!?涼ちん見てたら聞いてほしくなさげやったから、恭子に話してくれるん待ってたけど……今話してくれてめっちゃ嬉しい。でも恭子は涼ちんが心配やわ。いつかそのままやったら涼ちん壊れてまうよ……そうなってほしくないねん……』
    恭子は何語ってんねやろ、うち。と、八重歯を覗かせてへへっ、と照れくさそうに笑った。
    話さないことによって自分の傷を深くしないようにしていたが、それによって恭子にこんなにも心配をかけた。謝るのは苦手なので心のなかでごめんね、と謝った。

    2005-06-08 21:16:00
  • 217:

    恭子の思いはわかったがやっぱり剛を嫌いになる術は見つからない。偽物だったとしても、あたしにあんなに愛をくれた人は今までいない。そんな剛を忘れるなんて出来るはずがなかった。
    30万どうやって作ろう……頭の中はそればっかりだ。一人二万と考えて15人。一日約二人。まぁ、なんとかいけないことはないかな……でも毎日やんなきゃいけないのか……なんて考えながら今日一人目の客との待ち合わせ場所へ向かう。

    2005-06-08 21:17:00
  • 218:

    30万………こんなタイミングのいい事ってあるんだろうか。でも……中だし……下手すりゃ妊娠だ。妊娠すると決まったわけではないが、妊娠しない保証はない。大博打だ。一生一大の賭に出るかでないか……立ち止まってしばらく考える。

    2005-06-08 21:19:00
  • 219:

    頭の中で悪魔が囁く。
    “行けばいいじゃん??妊娠すると決まった訳じゃないよ?30万、渡せなかったら剛に捨てられちゃうよ??”
    理性がなだめる。
    “だめだよ、妊娠したらどうするの!?お金のためでも中だしなんかしちゃだめだよ!!地道にやって稼げない額じゃないじゃん!!中だしはだめだよ”

    2005-06-08 21:19:00
  • 220:

    地道に援交するのも、十分おかしいが、どうやら葛藤は悪魔が勝ったらしい。
    あたしはその書き込みに
    【先払いで30万くれるならいいですよ。梅田ですがあえますか??】
    と返信した。

    2005-06-08 21:21:00
  • 221:

    HEPとNAVIOの間を歩く。……しまった、ここはホストがあほ程いるんだった……金曜日の夜だからかいつもより多い。遠目に見てもスーツの男がウヨウヨ。はぁ……と少し歩く速度をあげる。声をかけてくるホストをシカトし歩き続ける。

    2005-06-12 00:30:00
  • 222:

    『なぁなぁ、俺の髪型変!?』
    は!?と思わず振り返った。どうしてこう意表をついたキャッチにいつも振り返ってしまうのか自分がなさけなかったが、そこに立っていた男は本当に髪型が変だった。

    2005-06-12 00:31:00
  • 223:

    天パなのか前髪がうねっている。というか前髪が特にうねっている。ちょっと吹き出しそうになったが『変ってか天パっしょ?』と言うと
    『変か変じゃないかでゆうたらどっち!?』とその男が髪をかき上げながら聞いてきた。
    !?!?
    前髪が邪魔してよくわからなかった顔はびっくりするほどに整っていた。しかも、モロあたし好みだ……

    2005-06-12 00:32:00
  • 224:

    削除

    削除されますた

    あぼ~ん
  • 225:

    『じゃあ俺の髪型についてゆっくり話そう!店おいでや!!』
    『今からちょっと用事あんねんか、それ終わって気向いたらね。』
    『マジで!?じゃ番号教えてや!』
    番号を交換し待ち合わせ場所へ向かう。待ち合わせの時間は少しすぎているが電話はない。こっちからかけてもコールは鳴るが、受けない。

    2005-06-20 00:51:00
  • 226:

    時々電話をかけながら15分ほど待った。かかってもこない。コイツはもう来ないな……。30万手に入れ損ねたショックもあったが中だしされずにすんだ……とホッとした。
    もう二時になろうかとしている。今から新しい客を捜すのは面倒だな…
    そう思ったのでさっきの子に電話をかけた。

    2005-06-20 00:53:00
  • 227:

    『もーしー??なんしてんの??誰かわかる〜?』
    『お〜、キャッチやでえ。用事終わったん??』
    ……中だしして30万貰う用事がありましたがなくなりました、なんて言えるわけがない。
    『終わったよ〜』
    『ほな、店くる??』
    そういやホストなんて久しぶりだな……と思いながら うん。とうなずいた。

    2005-06-20 00:53:00
  • 228:


    そういやホストなんて久しぶりだな……と思いながら うん。とうなずいた。

    2005-06-20 00:54:00
  • 229:

    財布の中には剛の為にさっき稼いだ二万と、千円札が数枚。初回だし大丈夫……そう思い彼との待ち合わせ場所に向かった。着いて姿を探す。いない。電話をかけようとしたその時走ってくる彼が見えた。

    2005-06-20 00:55:00
  • 230:

    『ごめんな、待った?』
    『ううん、大丈夫。今来たとこやで★』
    『そっか〜店ちょっと遠いけどごめんな〜』
    他愛もない話をしながら店へ向かう。本当に遠い……

    2005-06-20 00:56:00
  • 231:

    店にはいると黒を基調とした広い店内。今まで行ったどの店より広かった。広すぎるせいかよけい空席が目立つ。案内された席に座る。
    『俺口座でいいやんな?』もちろんだ。今まで男前は多数見てきたがその中でも一番あたしの好みの顔だった。

    2005-06-20 00:57:00
  • 232:

    『あんな、今日下の子の誕生日やねんけど、客集めれへんぽいからイベントもやってないねんけど……可哀想やしドンペリおろしたってくれへん!?月末俺誕生日やけど、そん時なんもいらんし頼むわ!!』
    初回からドンペリをねだられてしまった……でもどうせならこんなあたし好みの顔の男の為に働いた方がマシな気がしたのでOKした。

    2005-06-20 00:59:00
  • 233:

    『未収できるよね?』
    『おう、できるで!!』良かった。それなら大丈夫。朝方、お客さんが増えてからおろす事になった。ちらほらお客さんが入りだし、健二と篤はヘルプや雑用のために席から去っていった。
    『てかさ、おまえ何でさっきからずっと無理して笑ってるんな??』
    タバコに火をつけようとした手が止まる。
    ……見抜かれた!?

    2005-06-20 01:00:00
  • 234:

    初対面の、ほんの数時間前に出会ったばかりの男に……彼の言うことはビンゴ。頭のなかは剛でいっぱいで、あたしはこの男に出会った時から作り笑いしかしていなかった。仕事柄数年間作り笑いをしてきたのに、客も見抜けていないのに、たかだかホストを初めて三ヶ月の男に見抜かれた……
    『なんかあるんちゃうん??俺で良かったらきいたるで。』

    2005-06-20 01:01:00
  • 235:

    ぽつりぽつりと彼に話す。出会った時のことから全て…思い出したくないことばかり。楽しい思い出もたくさんあったはずなのに、記憶に蘇ってくるのは辛かった事ばかり。思い出して涙が溢れる。話す声が詰まる。泣いてるのに気づかれた。彼はそっとあたしの頭からスーツのジャケットをかぶせ、自分の肩に抱き寄せた。そしてぽんぽん、と頭を撫でて優しい声で言った。
    『辛かったな。』

    2005-06-20 01:02:00
  • 236:

    彼にとっては何気ない一言かもしれないがなんだかすごく嬉しかった。
    『他の人を好きになったら??忘れられるんちゃうかなぁ??』
    『好きになろうとしたけど、誰のこともあいつ以上には好きになれへんかってん……』
    『じゃぁ、俺のこと、好きになってや。』
    初回で色恋かよ……と思いながら
    『なれたらいいねぇ。どんなに楽だろ…』と軽く答えた。

    2005-06-20 01:03:00
  • 237:


    『なれたらいいねぇ。どんなに楽だろ…』と軽く答えた。

    2005-06-20 01:04:00
  • 238:

    『俺のこと、好きになろうとしてみて?本気でゆってんねんで。そんなカスみたいな男に俺は負けへん。絶対お前は俺のこと好きになるはずや。そいつより、俺のこと好きになって、別れられたら、お前は変われると思うで』
    いい事を言っているが、初対面で好きになれと言われても困る。黙っていると彼はこう続けた。『決めた。俺お前の彼氏になるわ。』

    2005-06-20 01:06:00
  • 239:

    は!?!?!?!?
    『俺と付き合って。一緒におったら、好きになるかもしれんやん。だからって今すぐ別れろとは言わんから。俺は二股でいいから。もし、向こうの男以上に俺のこと好きになられへんかったら、捨ててくれていいから。あんたじゃ無理やわって言ってくれたら、俺すっぱり諦めるから。な?俺を彼氏にしてや』 
    初対面なのにこんなに心配してくれている…正直他の人を好きになって剛の事を忘れたかった。

    2005-06-20 01:07:00
  • 240:

    黙っていると彼はずっといい続けた。
    『な、ホンマ嫌やったら別れてくれていいから。俺とつきあお。』
    もしかしたら好きになれるかもしれない。なんてったって顔がモロ好みだし。そんな軽い気持ちで、わかった。付き合うよ、と答えた。すると彼は携帯を取り出し、時間を見て
    『ほんじゃ、来月から三日が記念日なっ♪』と笑った。日付を確認してたのか。

    2005-06-20 01:08:00
  • 241:

    【彼氏】がいるのにもう一人【彼氏】が出来てしまった。また、出会ってたった数時間で。つくづくあたしって適当だなぁ…なんて思いながら、タバコに火をつける。どうせ、剛以上に好きになれはしない。適当に飽きたら捨てよう、そんな軽い気持ちだった。

    2005-06-20 01:09:00
  • 242:

    恋愛ジャンキー作者涼です。この作品が再び新しい掲示板にぁるとぃぅことはどなた様かがコピペして下さってぃるのでしょぅか?どのような事になっているのか、何処を見ればわかるのかわからず直接書き込ませて頂きます。移して下さるのは大変有り難いです。返信頂きたいのでよろしくお願いいたします。

    2005-06-20 02:05:00
  • 243:

    名無しさん

    夜遊びついに規制するみたいやね!
    って言うスレ見たらわかるよ☆

    2005-06-20 02:10:00
  • 244:

    コピペ人

    涼ちゃん どーも☆最初誰かがコピペしてて、旧掲示板が削除されてコピペ出来なくなったというので、バックアップとってた私が続きをしてます。
    このまま最後までコピペしていいですか?
    それと、☆厄介物語☆http://bbs.yoasobiweb.com//test/mread.cgi/yomimono/1116692559/l5

    2005-06-20 02:31:00
  • 245:

    コピペ人さん、ありがとうです♪作者本人、バックアップ取ってません(・・;大変ありがたいです。
    しかも今見たら厄介物語のほうまで!今から続き書きますね♪
    本当にありがとうございました☆

    2005-06-20 02:55:00
  • 246:

    『携帯、貸して』
    ぱっと、携帯をとられた。剛のメモリーを消されるかもしれない。慌てて取り返そうとする。
    『そいつのメモリー消したりせぇへんて』と彼が苦笑い。何でもお見通しなようだ。
    慣れた手つきであたしの携帯をいじり、源氏名で、【ホスト】のグループに登録されていた自分の名を、新しく【ダーリン】というフォルダを作り、本名で登録しなおした。
    『俺、お前にとってはホストちゃうし、ダーリンやからな』っと照れくさそうに笑った。
    本名は誠司。今日から彼氏の仲間入り。

    2005-06-21 00:40:00
  • 247:

    略 本名は誠司。今日から彼氏の仲間入り。

    2005-06-21 00:43:00
  • 248:

    援交は主に梅田でしていたので、ちょっと控えようと思った。誠ちゃんの店の従業員にでも見られたら困る。本人に見られたらもっと困る。前までいたマンヘルに戻ることにした。
    待機中に携帯がなる。誠ちゃんだ。【好きハート】……・・・いきなり!?と思ったが可愛かった。【涼も好きハート】とメールを返す。そういやこんなメール、長いこと剛とはしていないなとちょっと寂しくなった。

    2005-06-21 00:44:00
  • 249:

    誠ちゃんはバイトホストだったので週三日しか出勤がなかった。でも、毎日毎日電話をくれて、メールもたくさん送ってくれた。
    『俺に隠し事はなしな。あいつんとこ、行く時も、行くってゆっていけよ。でも、金はもう渡すな。絶対やぞ。』
    そんな約束をしたが、いくらなんでもほんとに【剛に会いに行ってくるね】なんて言えるわけがない。曲りなりにも誠ちゃんも彼氏だ。【今日は京都の友達と遊ぶね】といって、剛の元へ向かう。

    2005-06-21 00:46:00
  • 250:

    行きの電車で誠ちゃんから電話があったが、本当のことは言えなかった。どうせ、そのうち切るんだし。なんて思ってるうちに剛のいる駅へと到着した。

    2005-06-21 00:48:00
  • 251:

    いつものようにご飯を食べて、Hして、お風呂に入って、今日もカラオケに行くことになった。カラオケの最中に誠ちゃんからメールがきた。剛に見られないようにこそこそと操作する。何回かやり取りをしていたが剛は熱唱中で気づかない。良かった。
    珍しく、喧嘩をしなかった。でも、帰り際精算するときに出した剛のカラオケ屋のポイントカードのポイントが前より増えているのに気づいた。優ちゃんと来たんだろうな、と直感で思ったが何も言わなかった。誠ちゃんの存在があるおかげで、心に余裕が出来たんだろうか。
    朝方帰って、そのまま学校へ向かった。

    2005-06-21 00:49:00
  • 252:

    そういえば、今回はお金を渡していない。剛からも要求されなかったのですっかり忘れていた。
    昼休みになり、コンビニへ行く。灰皿の周りで同じ学校の生徒がみんなタバコを吸っている。校内禁煙の意味が全くねぇじゃん…と毎回思うが、恭子らと一緒にそこに混じる。春の陽射しがあったかい。のほほん、とタバコを吸っているとポケットの中で携帯が震えた。
    【着信中:剛】
    剛が昼間に電話をしてくることなんてほとんどない。嫌な予感がする・・・

    2005-06-21 00:50:00
  • 253:

    出たくない。おそらくいい話ではない…と思っていると電話は切れた。ほっとしていると間髪入れずにまた携帯が震えだした。恭子たちから少し離れ電話にでる。
    『はい……』
    『お前金置いてかえらんかったやろ!!家賃払われへんやんけ!!』
    『あ、ごめん…』
    予感は的中。いい話ではなかった。剛は学食にいるのだろうか、まわりが騒がしい。よく友達の前でそんな話をするなぁ……と思いながら、反射的に謝った自分が情けない。

    2005-06-21 00:52:00
  • 254:

    『涼ちーん!!何も買わんの〜??恭子らもう教室帰るで〜!!』
    『ごめん、またかける』
    『あ、待てって……』
    何か言ってたが気にせず切った。
    『待って待って!涼も戻るって!!』
    慌てて恭子を追いかける。教室に戻ってお弁当を広げたものの、食べる気がしない。佐里がお腹空いたけど、財布を忘れて何も買えないと言っていたのでお弁当をあげた。悩むと昔からものが食べられない。体重はおちていく一方だった。

    2005-06-21 00:53:00
  • 255:


    慌てて恭子を追いかける。教室に戻ってお弁当を広げたものの、食べる気がしない。佐里がお腹空いたけど、財布を忘れて何も買えないと言っていたのでお弁当をあげた。悩むと昔からものが食べられない。体重はおちていく一方だった。

    2005-06-21 00:53:00
  • 256:

    『あかーん、涼ヤニ切れゃぁ〜屋上行ってくる!佐里、それ涼の手作りやし残すなよ〜』
    出来るだけ不自然じゃないように教室をでる。うちのクラスは比較的可愛い子が多く、彼氏のいない子はたった六人だった。女の子は恋愛話が好きだから、昼休みも当然彼氏の話。幸せそうな友達が妬ましい。あたしは彼氏に金をせびられて風俗までして稼いでいるのに、TIFFANYのペアリングを買ってもらっただとか、GWに旅行に行っただとか、聞いてるだけで悲しくなってくる。誠ちゃんとつき合えばあたしもあんな風に話が出来るのかな…なんて考えていたら、誠ちゃんからメールが来た。

    2005-06-21 00:54:00
  • 257:

    “おはようハニィ(ハート)俺とはいつ遊んでくれるんや??”
    ハニィ…そういえば昔剛もそんな風に呼んだことがあったっけ…今じゃすっかり“お前”呼ばわりだけで名前さえ久しく呼ばれていない。絵文字のハートだって最近全然ない。というか、金の催促の電話か、別れ話のメールかしかしていない……こんなんでつき合ってる意味あるのかな…もう完璧にあたしだけが剛の事好きなんだな……ぼーっとしていると気づけばタバコは無意識に四本目だった。消したのも、新しく出して火を付けたことも全く意識がなかった。口には五本目。ぶっ通しで吸ってれば喉も乾く。ジュースでも買いに行こう……立ち上がったその時また手の中で携帯が震えた。

    2005-06-21 00:55:00
  • 258:

    【着信中:誠ちゃん】
    あ、メール返してなかった……
    『はぁい』
    『おぉっ、出た!昼休み終わってるかと思ってドキドキしたよ〜』
    ……ひるやすみ……??
    三限目の始業のチャィムはとっくに鳴っていたらしい。やばい。

    2005-06-21 00:56:00
  • 259:

    略 三限目の始業のチャィムはとっくに鳴っていたらしい。やばい。

    2005-06-21 00:57:00
  • 260:

    と思ったけど、授業なんかどうでもいい。一回休んだくらいなんてことない。
    『あは〜さぼっちゃった。てかチャィムが聞こえんかったわぁ。喋っとこ』
    『なんかあったんかぁ?今日俺出勤ちゃうし家くる?てか金なくて飯三日くらい食ってないねん、飯作りに来てやぁ』
    ……彼女っぽい!!!
    なんだかとても幸せな気持ちになった。

    2005-06-21 00:58:00
  • 261:

    四限は落とせなかったので仕方なく出た。でもずっと誠ちゃんに何を作ってあげようかと考えていたのであっというまに終業。学校を飛び出し誠ちゃんの家に向かう。誠ちゃんの家の横のスーパーで材料を買い、階段を上る。ドキドキする。軽く付き合って捨てるつもりの相手にドキドキ!?自分でもおかしい。あたしが好きなのは剛だ。誠ちゃんは暇つぶし……ホストなんだし好きになっちゃいけない……自分に言い聞かせながらインターホンを押す。
    ピンポーン♪

    2005-06-21 00:59:00
  • 262:

    ガチャ……
    無言でドアが開く。
    !?!?!?!?
    ドアの中には眼鏡にボサボサ頭、シミだらけの白のTシャツに汚いスウェット。スーツの誠ちゃんとはえらく違う【素】の誠ちゃんがたっていた。
    『あがって〜』

    2005-06-21 01:00:00
  • 263:

    ………汚い………
    A型でやたらと綺麗好きであたしに掃除をしろとうるさい剛の部屋とは正反対のB型の誠ちゃんの部屋。“男の子の家”って匂いがプンプンする。でもなぜか落ち着く不思議な空間。あたしが片づけ嫌いで、自分の部屋も汚いから同じような部屋に居心地の良さを見出しただけ……?それとも。。。一緒にいるのが誠ちゃんだから……?

    2005-06-21 01:01:00
  • 264:

    お世辞にもきれいとは言えない部屋。吸殻が山盛りの灰皿。おそらく洗濯していないであろう服。いつ使ったのかわからないシンクの中の食器。大半の女の子が引きそうなくらい汚い部屋。
    そんな中にいても、不思議と、汚いというより幸せな感情のほうが大きかった

    2005-06-21 01:03:00
  • 265:

    『涼〜何作ってくれんの?』
    『肉じゃがと、焼き魚。』
    相当ベタだが普通の料理にしておいた。
    『皮むきは?』
    『え、俺料理せんからそんなんないで!?てか皮むきって何?』
    よく見れば魚焼きグリルもない。・・・・・前途多難。出来上がるのだろうか。

    2005-06-21 01:06:00
  • 266:

    略 よく見れば魚焼きグリルもない。・・・・・前途多難。出来上がるのだろうか。

    2005-06-21 01:07:00
  • 267:

    仕方がないので包丁でジャガイモを剥いていると誠ちゃんがじゃれてきた。
    『何してんの、それ、俺もやりたい!!』と、包丁をもうひとつ取り出し鉛筆を削るようにジャガイモを剥く。なんとむちゃくちゃな。皮がその辺に飛び散る。できた!と満面の笑みで言った誠ちゃんの手にあるジャガイモは元の半分くらいの大きさになっていた。
    なのに誠ちゃんは楽しかったのか次々ジャガイモを剥いていく。床が皮だらけになる。3個だけ使う予定だったのに、気がつけば袋の中の8個のジャガイモはみんな無残な姿になっていた。

    2005-06-21 01:11:00
  • 268:

    『あ〜!!!こんなにつかわへんのに!!』
    芋なくなったから、次これ!と今度はニンジンを剥き始める。見る見るうちに短くなっていく。結局ニンジンも三本可哀相な姿になった。
    散々ひっちらかして、飽きたのか誠ちゃんはもう終わり〜とテレビのほうへ行った。

    2005-06-21 01:13:00
  • 269:

    『キュウリの漬けもん、買ってきた?』
    ご飯の炊き上がりのタイマーが鳴ると嬉しそうに誠ちゃんが言った。
    『買ってきたよ?古漬けでいいんしょ?』切って切って、食べたい!と子供のようにねだる。可愛い。誠ちゃんはキュウリだけでご飯を二杯も食べた。
    今日はじめて、家に来たのになんだか、もうずっと付き合ってるような不思議な感覚になった。誠ちゃんがなつっこい性格なのか、あたしが基本的に誰とでもすぐ仲良くなるからなのか。それともあたしは誠ちゃんが好きなのか??

    2005-06-21 01:13:00
  • 270:

    そんなことを考えながら肉じゃがの煮え具合を確かめる。・・・味が濃い・・・
    『味見したい〜〜肉ちょうだい、肉♪』たった一つ下なのに、まるで子供だ。
    『濃い!!!』・・・やっぱり。
    『でも俺これくらいのほうが好き。食べよ♪』
    『魚焼くから誠ちゃん先に食べてていいよ』器によそい、ご飯をよそって渡す。

    2005-06-21 01:16:00
  • 271:

    略 なし

    2005-06-21 01:17:00
  • 272:

    フライパンで鯖を焼いたことなどない。焼けたんだか焼けてないんだかわからない。苦戦しているとおかわり!と誠ちゃんが言った。早!!!!
    何とか魚を焼き上げ、やっとあたしもご飯だ。さっき、鍋ごと誠ちゃんに渡したので器を持ってテーブルへ行く。炊飯器をあけると・・・空!
    『俺三日飯食ってないって言ったやん?全部食べてもた』三日飯食ってなかったからって、ご飯二合も一人で食べれるもんなのか!?

    2005-06-21 01:18:00
  • 273:

    仕方がないので炊きなおした。フライパンで焼いた鯖は生煮えで、やり直して炊き上がりを待つ。結局誠チャンはその後鯖でまたご飯を食べ、あたしも食べたがまた二合が空になった。
    食べ終わって、テレビを見る。食べた食器はテーブルの上にそのまま。二人でタバコを吸いながらテレビを見る。剛の家ではありえない光景。
    それが居心地いいと感じてる自分がいた。何でだろう。誠ちゃんに惹かれていってるんだろうか。これは恋愛感情なんだろうか。こんなに簡単に違う人を好きになれたのか!?頭の中でぐるぐるそればっかり考えていた。

    2005-06-21 01:20:00
  • 274:

    ロンドンハーツが始まった。“魔性の女リナ”が、男と買い物をしている。バーキンを買ってもらっていた。
    『いいなぁ〜涼もバーキンほしい』別にバーキンが欲しい訳ではなかったが、なぜか口からそう出た。
    『俺が売り上げ上がったら、バーキンくらい買うたるがな』と、普通に返してきた誠ちゃんにびっくりした。剛があたしにものを買うなんてありえなかった。物をねだることさえ、許されなかった。たとえそれがバーキンじゃなく、安物の何かであっても。

    2005-06-21 01:21:00
  • 275:

    結局、リナを買い物に連れて行った男はヤラセで、リナはバーキンから何から全部取り上げられていた。
    『こいつ、もの買ってくれるんやったらなんでもええんかな。あほやな』
    ・・・・・・剛はあたしのことをやっぱりそう見ているんだろうか。物を買うから、お金を渡すから、一緒にいるんだろうか。そんなこと、薄々気づいていた。気づいていても、認めたくなかった。現実を見たくなかった。

    2005-06-21 01:22:00
  • 276:

    誠ちゃんのリナに言った一言で、認めたくなかった現実が、認めざるを得ないんだと実感した。剛にとってあたしは金。それ以外の何者でもない。見ようとしなかった現実がのしかかってくる。
    『涼さ、もう俺かあいつかどっちにするか決めた?家来てくれたってことは俺の可能性もあるやんな?』

    2005-06-21 01:23:00
  • 277:

    心を見透かしたかのように誠ちゃんが言った。正直傾いている。でもまだ、決める気にはなれなかった。自分のことが、金目当てでしかないことに気づいたくらいで別れられるのなら、とっくに別れている。それでも、あたしは剛が好きなのだ。
    誠ちゃんは、あたしの事をお金としてしか見なくなったりしないのだろうか。誠ちゃんに傾きそうになるたび、そう思って心にストップがかかる。
    だって、誠ちゃんはホストだ。たとえバイトで週三日であろうとも、ホストなことに変わりはない。ユウのときのようにならないだろうか。不安のほうが大きい。

    2005-06-21 01:23:00
  • 278:

    『うん、可能性はぜんぜんあるよ。でもまだちょっとね…ごめんね…』
    『そっかぁ。でも俺選んでくれるって信じてるしなっ』照れくさいのか、テレビのほうを向いたままの誠ちゃんの耳は真っ赤だった。

    2005-06-21 01:24:00
  • 279:

    連日外泊していたのでそろそろ親の目がやばい。今日は帰らなくちゃ。本当はもっと誠ちゃんといたかった。
    駅まで送ってもらい、タバコを吸おうとした時に気づいた。
    ・・・Zippoがない。
    誕生日に剛にもらったZippo。後にも先にもたった一つの剛からのプレゼント…誠ちゃんちに忘れて来たらしい。慌てて電話をかけるが出ない。やばい…明後日は剛が珍しくこっちにくると言っていた。ないのがバレたら…どうなるんだろう。でも終電なので取りに行けないし、何より誠ちゃんが電話に出ない。諦めて帰ることにした。明後日来るのはどうせ金の為だけだ。家賃分を取りに来るって言ってたし。バレませんように……そればかりが頭の中にあった。

    2005-06-21 01:25:00
  • 280:

    いつもと同じ昼休み。今日もコンビニでみんなでタバコを吸う。学校内では吸えないからここぞとばかりに何本も吸う。
    『涼があのダメ男と別れられたらクラスみんなでなんでも好きなもんおごったげんで!!』
    『その誠ちゃんて子にしいやぁ、なんで剛がいいん??』

    2005-06-21 01:26:00
  • 281:

    ここ最近休み時間の話題はあたしの恋愛話ばかり。自分の周りにはなかった波瀾万丈な恋バナを、おそらくみんな楽しんでいるんだ。そう何人もが経験するような内容じゃないのはよくわかっている。他人の不幸は密の味。遠い昔から変わらない人間の心理だ。もう好奇心でも興味でもなんでもいい。誰かに話さなければあたし一人で抱え込むには大きすぎる現実。
    『ホンマになんでも?をうたな〜!?たっかいもん食べさしてもらうわぁ』
    明るく話していれば、重すぎる悲しい事実が少し軽くなるような気がした。

    2005-06-21 01:27:00
  • 282:

    剛は今日こっちに来る。まだライターは誠ちゃんの家だ。お金を渡して、帰るんだと思っていたのに
    『ラブホ行こうや』と普通に誘われいってしまった。彼氏なんだから何もおかしくはないんだが…なんだか変な感じがした。

    2005-06-21 01:28:00
  • 283:

    部屋に入って、タバコに火をつけるあたしの手には100円ライター。剛が気づくか気づかないか、あたしの小さな冒険。
    『あれ、涼俺のあげたライターは?』・・・気づいた。家を出る前に思いついた取って置きのごまかしを使う。

    2005-06-21 01:29:00
  • 284:

    『今日タバコケースごと忘れてきちゃってさ、タバコもライターもさっき買ったんよ』そうなん、と剛は指して関心ないようだった。また、別れ話をされた。
    どうしてだろう、こんなに自分が保てなくなる。
    どうしてだろう、涙があふれて止まらない。
    やっぱり、あたしは剛のことが好きなようだ。

    2005-06-21 01:30:00
  • 285:

    結局、いつものように仲直り。涙でぐしゃぐしゃの顔のままHした。
    『もうはなさへんから』
    『ずっと俺の事好きでおってな。』
    『俺から離れていかんといてな。』
    あたしの上で、腰を振りながら荒っぽい吐息とともに吐き出される言葉。毎回、そう言っては、次の日平気な顔でまた別れ話をする。
    『涼…好きやで、愛してる・・・あぁっ・・』安っぽい愛の台詞と一緒に剛は果てた。

    2005-06-21 01:31:00
  • 286:


    『涼…好きやで、愛してる・・・あぁっ・・』安っぽい愛の台詞と一緒に剛は果てた。

    2005-06-21 01:32:00
  • 287:

    その、安っぽい台詞がほしかった。剛に愛されたい。その一心でオッサンに触られるのも舐められるのも、入れられるのもすべて我慢してきた。でも・・・剛は【あたし自身】を愛してはくれない。【あたしの持ってるお金】を愛した。
    愛してるなんて久しぶりに言われた。嬉しくて仕方がなかった。そのせいか、2限目の授業の片づけが遅くなって、みんなより一足送れてコンビニへ向かう。
    手の中で携帯が震える。

    2005-06-21 01:33:00
  • 288:

    【着信中:剛】
    ・・・・・・なんだろう??
    『はい?』
    『ちょ、お前明日までに七万用意できる??』。。。は!?
    お金なら昨日渡した。10万はなかったけど、8万くらいは入ってたはずだ。

    2005-06-21 01:34:00
  • 289:

    『昨日のお金は?』
    『帰ってから、連れと遊んで使ってもーたわぁ。家賃はらわなあかんねん!だから七万用意しろって!』
    『使ってもーたわぁ、ってお前どんな遊び方したら8万も一晩で使えんねん??』
    『は!?お前誰に口きいてんねん!!俺が用意せぇっつったら用意したらええんじゃ!!』

    2005-06-21 01:36:00
  • 290:

    金をもらってる側の人間がなぜにそこまで偉そうなのか。あたしはあんなに尽くしたのに。やっぱり、あたしのことお金としてしか見てなかったんだ。頭の中で何かが切れる音がした。
    『お前どこまで偉いねん。金もらってる側の癖になんでそんな偉そうやねん!もう知らんわ!愛しの優ちゃんにでも払ってもらえや!涼はもう知らん!!今後一切連絡してくんな!!』
    電話の向こうでまだ何かしゃべっていたが、かまわず切った。そして速攻着信と、メール受信の拒否設定をした。

    2005-06-21 01:37:00
  • 291:

    今までで初めてここまで好きになったのに、終わりはあっけなかった。
    もう、いいよね?あたしもそろそろ、あたし自身を愛してほしいんだ・・・。
    非常階段で怒鳴ったので、ほかのクラスの生徒がびっくりしている。基本的に学生は階段使用なので結構な人数が、上から下からあたしを見ていた。
    あぁ、別れてしまった。何であんなやつ好きだったんだろう。最初に愛してくれた、偽りの姿がいつまでも忘れられなくてしがみついてた自分が情けなくなった。
    剛が、お金のために初めからすべて計算していたことなのか、お金を渡したときから変わってしまったのか・・・

    2005-06-21 01:38:00
  • 292:

    今となってはわからないけど、あたしは剛を愛してた。何をしてでも、剛からの愛がほしかった。お金で買ってでも、愛がほしかった。そんなの本当の愛じゃないのに。わかっていても、それしか手段が見つからなかった。
    さようなら。今までで一番愛した人。あたしは本当にあなたを愛してました。伝わらなかったけどね・・・

    2005-06-21 01:40:00
  • 293:

    自分からはじめて別れを告げた。もういいと、思ったはずなのに涙があふれる。ふと携帯に目をやると【不在着信10件】すべて剛だ。拒否ってるので携帯は鳴らない。剛を忘れなきゃ、あたしは前には進めない。そのとき手の中で今度はちゃんと震えた。誠ちゃんからメールだった。

    【おはよう!学校?俺今日カレーめっちゃ食いたい気分☆作りに来てやぁ(^−^)】
    この人は、あたしを愛してくれるだろうか・・・???

    2005-06-21 01:40:00
  • 294:

    誠ちゃんには別れた事を直接言おう。そう思って“じゃぁ、学校終わったら行くね”とだけ返事を返した。
    注目の的から早く外れたくて、駆け足で階段を下りる。降りたものの、自分が何をしようと思って外に来たかを忘れた。とりあえずコンビニに入ってみたがわからない。仕方なしに何もせずに教室に戻った。

    2005-06-21 01:42:00
  • 295:

    『はぁ〜い、お知らせっ!!なんと涼ちん、剛と別れましたぁ!!』無理に明るく言ってみた。クラスメイトが一斉に振り返る。
    『マジで!?』『おぉ、ようやったなぁ、涼!!』『良かったよかった』みんなが口々に何かを言っている。“別れました”と口にすると、なんだか吹っ切れたような気がした。
    誠ちゃんに言ったらどんな顔するかな・・・と考えるとちょっとわくわくした。

    2005-06-21 01:43:00
  • 296:

    今日は3限までだったので、早めに誠ちゃんの家に向かう。言ったらどんな顔するだろう…そればっかり考えていたら、あっという間に家に着いた。
    ピンポーン♪
    中から出てきたのは、やっぱり汚い格好の誠ちゃんだった。今日から、この人だけが、あたしの【彼氏】だ。
    メールを入れてきてからまた寝たらしく寝ぼけた顔の誠ちゃんはまたベットにごろんと転がった。

    2005-06-21 01:44:00
  • 297:

    『涼〜カレー…』まるでお母さんの気分だ。
    『じゃぁ、買い物行って来るね』と言うと俺も行く〜〜と、体を起こした。
    ジーパンはしんどかったので、誠ちゃんのスウェットに着替え二人ともなんだか汚い格好。でも、一緒にスーパーへ行くと、はたから見たら同棲している二人のように見えるんだろうな、なんて考えながら買い物をした。

    2005-06-21 01:45:00
  • 298:

    ふと気づけばかごの中にはお菓子がいっぱい。さっきからちょろちょろいなくなると思ったら、お菓子を取りに行ってたのか。
    『誠ちゃん!!』というと、びくっとしてへへ、と子供みたいに笑った。そしてまたどこかへ行きポテトチップスを手に戻ってきた。
    『これで最後にするからぁ。いい??』ほんとに、お母さんになった気分だ。

    2005-06-21 01:46:00
  • 299:

    誠ちゃんは、こないだので楽しかったのか、帰るとまた芋をむき始めた。とりあえずこの汚い部屋を、せめてごみだけでも捨てよう、と片付けているときに、はっと気づいた。しまった、遅かった・・・ジャガイモはまた無残な姿にされていた。
    『飽きた〜〜ゲームする!!』一個だけ残して誠ちゃんはテレビの前に来た。一個だけ残ってもなぁ、と思い最後の一個も剥く。下ごしらえを終えて後は煮えるのを待つだけ。誠ちゃんはゲームに夢中だ。

    2005-06-21 01:47:00
  • 300:

    『誠ちゃん、涼な、別れてきたで。今日から、涼は誠ちゃんだけやで』と言うと、よほど驚いたのか口にくわえていたタバコがぽろっと落ちた。
    『ほんまに?マジでゆうてん?うわぁ、めっちゃ嬉しい!!』
    別れた理由は、剛の言動に心底腹が立ったのもあったが、涼は確実に誠ちゃんに惹かれていっていた。

    2005-06-21 01:48:00
  • 301:

    『あぁ〜明日出勤やぁめんどくさいなぁ…』
    『がんばりよ。誠ちゃん人気あるやろ?』
    『俺、あんまお客さんおらんねん。』
    意外だった。それと同時にいやな予感がした。
    『涼、俺のこと支えようって気持ちある?』
    ・・・・支えるってどういう意味で?と思ったがとりあえずそこは口に出さないでおいて、あるよ、とだけ答えた。

    2005-06-21 01:48:00
  • 302:


    ・・・・支えるってどういう意味で?と思ったがとりあえずそこは口に出さないでおいて、あるよ、とだけ答えた。

    2005-06-21 01:49:00
  • 303:

    剛はホストでもなんでもない、ただの一般人だったけどユウ以上に酷い事をしてくれた。ユウのように暴力的なことはないが精神面でいたく傷つけられた。
    【ホストなんか信じるもんじゃない】と言うけれど、あたしからすれば、それはホストだからとかじゃない。相手による。現にホストでもなんでもないただの大学生はあたしから金を引っ張り、騙した。

    2005-06-21 01:51:00
  • 304:

    職業で、くくりが付けられるなら苦労しない。ベテランホストだったユウと、大学生の剛がしたことは、ほとんど同レベルだ。そんな男に引っかかったあたしが悪いのはわかってる。
    でも、愛されたかった。誰かに、必要としてほしかった。たとえそれがあたしのお金であっても。というかあたしが選んだ相手が悪かった。この二人のおかげであたしの価値観は大きく変わった。おそらくあたしは、誠ちゃんの店に行くだろう。

    2005-06-21 01:52:00
  • 305:

    今日は誠ちゃんの誕生日。お店に行く約束をした。今日は智也のライブもある。マヤは最近ボーカルの真一にハマッていたので今日は二人でライブだ。誠ちゃんの店には三時頃に行くね、とだけ言った。
    ライブで久しぶりにみる智也は前より一層男前になっていた。ふと気づいた。誠ちゃんに似ている。いや、誠ちゃんが智也に似ている。付き合いたいとかそーゆー感情は智也に対してはもうない。

    2005-06-22 00:06:00
  • 306:

    『涼やんけぇ〜!!久しぶりやなぁ!!』
    大好きだった声がする。あたしの手の届かない人。あたしには今誠ちゃんがいる。でも久しぶりに会った大好きな智也の笑顔に胸が締め付けられる。極めて普通に接したが内心ドキドキしっぱなしだ。ふと見るとマヤと真一は仲良く酒を飲んでいた。

    2005-06-22 00:07:00
  • 307:

    『あっちぃ〜!!クーラーついてんか!?』と言いながら智也は汗でびしょびしょになったTシャツを脱いだ。線の細い智也の上半身があらわになる。あぁ、あの体に抱かれたんだ……と一人で恥ずかしかった。妹に接するように優しい智也。この人と付き合えていればあんな目には遭わなかったかも…なんて考えてるうちにライブは終わり、みんなで打ち上げに行った。知らない人ばかりが一緒に出演していたので久々にずっと智也のそばにいた。ここがあたしの居場所なら、どんなに良かっただろう。

    2005-06-22 00:09:00
  • 308:

    みんながワイワイ騒いでいる中、時計は二時半を指していた。そろそろ誠ちゃんの店に向かわなければ。智也に次いつ会えるかわからないからほんとはちょっと帰りたくなかった。でも今、あたしの彼氏は誠ちゃんだ。
    『いらっしゃ〜ぁせぇ!!!』入り口で大きな声が響く。特にイベントをしているわけではないらしく花はなかった。案内された席に座り誠ちゃんの姿を目で探す。いた。ベロベロに酔っぱらっている。まともに歩けていない。シャンパンを頭からかぶったのか髪もペッタンコだった。

    2005-06-22 00:10:00
  • 309:

    『りょぅぉ〜!!』ドサッとあたしの上に誠ちゃんが降ってきた。
    『シャンパン持ってこいシャンパン!!カフェパリちゃぅぞぉ〜ドンペリ!!ピンクじゃぁ〜』
    ロゼ!?!?!?あたしの席でロゼを飲む気なのか!?自分の誕生日はなにもいらないからと言うから、初回のあの日、未収してまで見知らぬ子の誕生日にドンペリをおろしたのに。

    2005-06-22 00:11:00
  • 310:

    『ドンペリロゼいただきゃしたぁ〜!!ありやっす〜!!』ぞろぞろとシャンパンコールの為にホストがあたしの席の周りに集まる。おろさないなんて言えなくなった。仕方ない……誠ちゃんは比較的下の方だったので上の人間ばかりが席についた。緊張する。雑誌でみた事ある顔が、あたしの前に並んでる。はっきりいってロゼをおろされた事に腹が立っていた。もちろん金額的なものもある。何より勝手におろされたのが許せない。十何万もするような酒を……
    でもここで上の人間にあたるわけにはいかない。この先誠ちゃんが仕事しにくくなるかもしれない。ヘラヘラと作り笑いを浮かべ上の人間と話をする。気を使って、なんだか自分が接客してるみたいだ。誠ちゃんは日頃あまり飲まないがいったん飲むと酒乱になるらしく、面白がったお客さんたちがあっちでもこっちでもシャンパンをおろす。誠ちゃんはどんどん酔っぱらっていく。フラフラになって帰ってきた。とおもったらあたしが飲んでた烏龍茶をいっきに飲み干しまたよその席へフラフラと行った。

    2005-06-22 00:13:00
  • 311:

    だんだんお客さんも増えてきた。上の人たちは自分のお客さんのもとへ、下の子は雑用やヘルプに大忙し。あたしの席には誰もいなくなった。
    誠ちゃんを支えると言った日の事を思い返す。負担にはさせない、無理はさせない、来てくれるだけでいいと、言っていたはずだ。それは別に今日に限った事ではなく、この先店に来るときも含め、だ。少なくとも、今日のロゼはあたしにとっては負担だ。

    2005-06-22 00:14:00
  • 312:

    『入ってきて速効シャンパンとかカッコィィっすねぇ〜』見るからにアホそうな奴が前に座る。空気を読めないのか、ベラベラ喋っている。あたしは今それどころじゃない。どうあがいたって、未収は払わなければいけないし、誠ちゃんは席に来ないし、イライラしてきた。喋っているのに一言も返事をしなかったので、やっと空気を読んだのかそいつは灰皿交換してきます、と言ったまま戻って来なかった。

    2005-06-22 00:15:00
  • 313:

    『りょぅぉぉ!たばこぉ〜』どこから帰ってきたか、全身にカフェパリの甘い匂いを纏って誠ちゃんが帰ってきた。顔は真っ赤で酒臭い。どれほど飲んだのだろう。
    『全然涼んとこおらんでごめんな?先輩の席でシャンパン下ろしてもらって、先輩の売り上げあげるんが、可愛がってくれた先輩への恩返しやから……ごめんな?怒ってる?』
    子犬みたいなうるんだ目。酔っているからなのはわかるが、可愛すぎて怒る気が失せた。

    2005-06-22 00:15:00
  • 314:

    『あのショートの人は○○さんの本カノでなぁ、あの向かいの人は○○さんのエース兼色カノやねん笑』とか本カノ情報をペラペラ喋る。その声がまた大きい。慌てて口をふさぐ。ひとしきり喋るとまた大好きな先輩にじゃれついたままどこかへ行ってしまった。あたしの席にいなくても、先輩の為に頑張る誠ちゃんはなんだかかっこよく見えた。

    2005-06-22 00:16:00
  • 315:

    眠たくなってきたので、うつむいてじーっとしていると、横に人が座った感じがした。薄目をあけると………代表だった。
    『ぅわっ!!あっ、ごめんなさい、おはようございます……お、お疲れさまです??』何を言ってるのか自分でもわからない。ははっと代表は笑った。

    2005-06-22 00:17:00
  • 316:

    『あいつが席につかなくて寂しいって顔してんで?ほんとのイイ女ってのは、そーゆーのは顔にださへんもんやで。席に戻ってきても文句はゆうたあかんで?笑顔で“がんばってるね”ってゆうたんねん。それが出来るようになったら、涼ちゃんはイイ女になれるで』
    初めて喋ったのに、寂しがってる事まで簡単に見抜き、嫌みなくアドバイスまでくれた。あぁ、人の上に立つ人はやっぱ器が違うな、と思った。

    2005-06-22 00:18:00
  • 317:

    『はい、頑張ります』
    誠ちゃんの姿を探す。四つ向こうの席でシャンパンコールをせずに直瓶している。
    頑張れ!!心の中でつぶやいた。

    2005-06-22 00:19:00
  • 318:

    代表の言うとおりにすれば、イイ女なんだろうが、勝手に下ろされたロゼはまた別問題だ。とはいえ、誠ちゃんはベロベロで、おそらくまともに話は聞いてくれないだろう。
    『涼、しんどい?帰ってもいいで??』頭からシャンパンをぽたぽたたらしながら、誠ちゃんが戻ってきた。

    2005-06-22 00:20:00
  • 319:

    『あーぁ、びしょびしょやん。大丈夫やで。がんばりよ。涼帰ったら誠ちゃん休むとこなくなってまうやん。ここにおるから。頑張って飲んでおいで。』頭を吹きながら言った。
    『涼優しいなあ〜さすが俺の女やぁ〜』
    だから、声がでかいってば……。隣のお客さんの視線が痛かった。

    2005-06-22 00:21:00
  • 320:

    そうこうしてるうちに閉店だ。ラストソングを誠ちゃんが歌う。綺麗な声だった。帰りのエレベーターで誠ちゃんはぎゅっとあたしを抱きしめた。そしてフラフラした足取りでまたエレベーターに乗り店に戻っていった。店前でタクシーを拾い、家に帰る。“ただいま”誰からの返事もない。両親は共働き、妹二人は学生。誰かがいる方がおかしい。さっきまで、あんなに人が大勢いる場所にいたので、なんだか一人が寂しかった。とりあえずロゼの件は許せない。口で言っても聞かないだろうし、もう寝てるだろうから、メールで送ろう。

    2005-06-22 00:22:00
  • 321:

    “なんで今日勝手にロゼなんかおろしたん!?負担かけへんって、無理はさせへんって、ゆったやんな?あれは涼には負担やで。わかるやんな?あれの為に涼は働かないとあかんねんで?こんなんされてたら、誠ちゃんのゆうてる事なんも信じれへんくなる。”
    文章は強気だが内心怖かった。ユウの時のことが重なる。同じになるのでは…どうせ夜まで返事は来ない。ゆっくり、眠ろう……

    2005-06-22 00:23:00
  • 322:

    目をとじる。眠くはなかったが、目を閉じていれば眠れるだろう。枕元で携帯のアラームがなった。日頃は学校だから、設定したままだった。(こんな時間に起きたのでは確実に遅刻だが)止めなきゃ。手探りで携帯を探す。
    【着信中:誠ちゃん】
    あ、アラームと誠ちゃんの着メロは同じにしたんだった………
    着信中!?!?誠ちゃん!?起きてたのか……

    2005-06-22 00:24:00
  • 323:

    『あのメール、何???』
    『何って、涼が思ったこと。ゆってる事とやってる事違うやん。負担かけてるやん。てか俺の誕生日はいらんからってゆったんちゃうの?それで、初回の日、涼シャンパン卸したやんか。』
    『ごめん・・・』

    2005-06-22 00:25:00
  • 324:

    『ごめんちゃうわ、謝ったってはらわなあかんねんから。支えるって、店で金使ってあんたの売り上げ上げることなん?それじゃ剛と変わらんのんやで!?信用しろったってあれじゃできへんで?』
    『俺…た…誕生日、涼にも……ひっ。。祝ってほしかっ…ぅっ・・たんやぁ・・・』
    ・・・・・泣かしてしまった。

    2005-06-22 00:26:00
  • 325:

    『誕生日。。仕事で、、一緒におれへんからっあっ、会いたかったしっ、祝って欲しかった。。。俺・・・信用してほしいねん。。ぅっ…今日のんは…俺が悪かったから・・・ど、どうしたら。。。信じてくれ、、るん??・・ぇっ・・・』
    ・・・・・号泣している。
    『誕生日、祝うのだってな別に店でやらんかったてええやん?違う日に家で、そりゃ店みたいに華やかなことはできへんけど、お祝いしたって良かったやん?』

    2005-06-22 00:27:00
  • 326:

    『ごめん。。。俺のこと、き、嫌いになったぁ???ぇっ。。。ひっ。。』
    泣きすぎだ。店にまだいるらしく、後ろから男の子の声がする。“えっ何泣いてるんスか??”“どうした〜??”声だけでは誰だかわからないがいろんな人が心配して周りに集まってきたっぽい。泣きやまさないと・・・。

    2005-06-22 00:28:00
  • 327:

    『嫌いにはなってへんよ。でも、これからちゃんと信用させてや?ゆうた事は、守りよ?涼は、誠ちゃん好きやよ。』
    『ごめんなぁっ・・・俺も、好きぃ・・・』何とか泣き止んだ。
    起きたら電話するから、といって電話は切れた。それにしても泣くとは。びっくりした。
    シャンパン代、こないだのと合わせても結構いくな・・・仕事しなきゃ。

    2005-06-22 00:28:00
  • 328:

    仕事といっても、援交である。ベットに転がったまま、カチカチとサイトをいじる。うーん。平日の昼間は、やっぱ中心地まで出なきゃ客がおらんなぁ…なんて考えているうちに寝てしまった。
    はっ、と目が覚めると夕方。誠ちゃんの店は従業員が多いからどこに誰がいるかわからない。今日は梅田では仕事しないでおこう…とりあえずオッサンと待ち合わせをして十三に出た。

    2005-06-22 00:30:00
  • 329:

    駅前でオッサンを待つ。聞いた目印と一致するような人物は見あたらない。“どこですか?”とメールを打つが、返事は来ない。ブチられた。一本あたりの稼ぎがいい分、来るか来ないかわからないというデメリットがあるのが面倒だ。また探しなおしだ。くそぅ。めんどくさい。

    2005-06-22 00:31:00
  • 330:

    十三はなんだか人通りがまばらだ。仕方なしに梅田に出た。JR大阪なら、誠ちゃんの店のキャッチ場には含まれてなかったはず。時刻は7時ごろ。仕事帰りのオッサンが一番多い時間。書き込んだメッセージに返事が続々届く。しかし、届きすぎていったいどれが誰なのかわからなくなってきた。あぁもう。イライラする。

    2005-06-22 00:37:00
  • 331:

    『よっ!!ひさしぶりぃ☆』
    ・・・誰だよ、久しぶりじゃねぇよ・・・誠ちゃんの次くらいに、あたし好みの男がそこにいた。
    オッサンを待つ間、暇つぶしにそいつとしゃべった。笑ったときの八重歯と子供みたいな顔がかわいくてちょっとドキッとした。とりあえずオッサンが来そうなのでその子と番号を交換して待ち合わせ場所へ移動。今度はちゃんとオッサンが来た。

    2005-06-22 00:38:00
  • 332:

    事がすんで、オッサンと別れ、受信メールを見ると、さっきの書き込みに今頃反応してきた人がいたのでそいつと待ち合わせをした。そいつもちゃんと来たのでサクッと2本終わらせ、今日は帰ろうかな、と御堂筋沿いを歩く。時間はまだ10時。終電を言い訳にすれば、次に会った人もさっさと終わらせて帰れるかも、なんて期待を抱きまたサイトに書き込む。

    2005-06-22 00:39:00
  • 333:

    まめにメールも来るが、後10分ぐらいだといって、一向に来ないやつを待つうちに終電はなくなった。タクで帰らなきゃ。と、言うことはもう一人行かなきゃ。こいつはアテにならない。諦めてほかを探す。人通りの少な目の階段に座っていたのに、ふと気づくと横に誰かがいた。若そうなので、怪しくはない。

    2005-06-22 00:40:00
  • 334:

    『なんか用?』
    『きづくんおそっ!何してんの?』・・・お前が何してるのかしりてぇよ。うっとぉしい。引かせれば、そばからいなくなるかと思った。
    『援交待ち。』
    なんと、そいつは引かずにあたしに説教をし始めた。でもなんだか言ってる事がもっともだったので、納得してしまい、どこかの店舗に入ろうかなという気になった。

    2005-06-22 00:40:00
  • 335:

    そいつはあたしにひとしきり説教をして仕事に戻った。今日最後の客が来たので、そいつに送ってもらった。シャンパン代には、まだ足りない。
    次の日、起きてまたサイトをいじる。もうほとんど学校には行かなくなっていた。ほとんど行ってなくても、誰からも連絡はなくて、余計に行く気がしなかった。

    2005-06-22 00:42:00
  • 336:

    いつもなら、先払いは絶対なのに機嫌を損ねて七万逃したくなかったのでしぶしぶ後払いを承諾した。終わって、コンビニによってお金を下ろすという。舐めまわされた洗っていない体が気持ち悪い。トイレにも行きたい。仕方なく車から降りた。最短でトイレから出て戻ると、車はなかった。もちろん、あたしの荷物も。

    2005-06-22 00:44:00
  • 337:

    幸い携帯は自分で持っていた。相手はメアドしか知らなかったのであわててメールを送る。
    『どこ行ってん!?鞄返せや!!!』
    『ファミマの裏に置いてあるから』

    2005-06-22 00:45:00
  • 338:

    置いてあるからったって見知らぬ土地のファミマってどこだよ!?通行人に道を聞きながらたどり着いたファミマの裏に、あたしの鞄はいた。財布も入っている。でも、中身はなかった。もとから小銭しか入っていなかったが、それがすっかりなくなっている。これではキセルさえ出来ない。

    2005-06-22 00:46:00
  • 339:

    人通りは全くなく、途方に暮れた。携帯が鳴った。昨日番号交換した駿だ。迷ったが今の状況をすべて話した。警察に言ったら?と言われ警察に電話をしたら、調書を取られ、現場検証に連れて行かれた。どっちみち誰かに迎えに来てもらわないとあたしは帰れないらしい。誠ちゃんに電話をするが出ない。心配していると思ったのでまた駿にかけた。駿は朝一で迎えに来てくれると言った。

    2005-06-22 00:47:00
  • 340:

    また警察と話をしていると誠ちゃんから電話が鳴った。迷ったが全部話した。誠ちゃんは援交したことに関しては怒らず、遠方に一人で出向いた事を怒った。知り合ったばかりの駿に迎えに来てもらうのは、やっぱり気が引けるので誠ちゃんに頼んだが車もお金もないので無理だという。そうだ、周りに車持ちの奴はたくさんいるが誠ちゃんは免許がなかったんだ…

    2005-06-22 00:48:00
  • 341:

    『誰かおるやろ、来てくれるやつ』
    『わかったわ。来てくれるってゆった子おるけど彼氏でもないのに悪いと思ったから、誠ちゃんに来てもらおうと思ったのに』
    『彼氏でもないのにって……来る奴男なん!?』
    『男やで??なんで?』
    『そいつの事好きなん!?』

    2005-06-22 00:49:00
  • 342:

    急に誠ちゃんの声が半泣きになった。
    『だって彼氏の俺でもめんどくさいのに、お前を迎えに来るって、それ絶対お前の事好きやん…帰って来て涼そいつの方がいいってなるかもしれんやん』
    どうしてそうなる!?てかそこまで言うなら来てくれよ……と思ったけど、可愛い。

    2005-06-22 00:50:00
  • 343:

    『大丈夫だよ、たとえそうでも涼には誠ちゃんだけやよ』
    『ほんまに?迎えに来てもらって、すぐそいつとバイバイしてや?遊んだりしやんとってや?』
    だからそんなに心配なら来いよ…と思ったが言っても無駄なのでわかってるよ、と答えた。
    警察のロビーのソファで一夜をあかし、駿が来た。身元引き取り人のサインをし、警察署を後にした。お金がなかったからキセルしてきた!と駿は笑顔で言った。……と言うことは帰りもキセル……

    2005-06-22 00:51:00
  • 344:

    でもそこまでして来てくれた駿。一瞬、彼氏の選択間違えたかなと思ってしまった。警察のソファは固く、寝にくかったのであたしはウトウトしていた。
    『俺らカップルみたいやなぁ〜』と駿が言った。若い男女が一緒にいれば誰だってカップルに見えるよ、と言いそうになったがそれじゃあまりにもかわいげがなさすぎるかと思って、そうやなぁ〜と答えた。この一言で後々あんな事になるなんて思ってもみなかった。

    2005-06-22 00:52:00
  • 345:

    とりあえず無理してもらったので駿を家にあげた。誠ちゃんに電話をかけ帰って来たことを伝える。
    『迎えに来てくれた奴は?』………(-_-;)
    『もう帰ったよ。駅でバイバイした。』

    2005-06-22 00:53:00
  • 346:

    ごめんね誠ちゃん……あたしの家に奴はいるよ……
    夕方まで寝て駿は仕事に行った。あたしも昨日の穴埋めをしなきゃ。用意をして梅田へ向かう。

    2005-06-22 00:54:00
  • 347:

    二本終わらせ今日は終わり。ふとこの間のやつが言ってた事を思い出し、店舗を探そうとマンガ喫茶へ入った。
    良さそうな店を見つけ、面接に行くとその日に体験をさせてくれた。女の子の人数は三人。待機室にいても緊張する。

    2005-06-22 00:55:00
  • 348:

    『何歳〜?』目がくりくりの真美が話しかけてきた。
    『二十歳です…』
    『同い年やねぇ〜』
    『なぁなぁ、自分ホストとか行く!?彼氏おるん!?』

    2005-06-22 00:56:00
  • 349:

    いきなり会話に入ってきた奈々。どこの店にもこういうホストの話をしたがりの奴は、一人はいる。
    『たまに行きますよ…』
    『どこの店にっ??』
    奈々は話に食いついて来た。

    2005-06-22 00:57:00
  • 350:

    こういう聞きたがりは嫌い。どうせ聞いたことを友達に言いふらしたり、サイトに書いたりするタイプだ。
    『どこ飲みに行ってんの?彼氏何歳??カッコいい??』
    そんな次々聞かなくても…

    2005-06-22 00:58:00
  • 351:

    『○○です・・・』できるだけ彼氏の話題は避けようと思った。深く突っ込まれてきたら困る。ユウのときに、軽々しくしゃべって痛い目を見たから喋る気にはならなかった。
    『今度うちの行ってる店に行こうよ!うちな、口座君に片思いしてんねんやん。涼ちゃんは?口座君のことはホストとしてしか見てないの??』恋愛相談に乗ってほしいのか、自分と同じ立場の人間でも探しているのだろうか…それにしても答えにくい質問だ…と黙っていると奈々は続けた。

    2005-06-22 00:59:00
  • 352:

    『あたしの行ってる店に一緒に行って、口座君の態度見てよぉ。』・・・・・・無理だよ…よその店に行ったらばれるかもしれない。そして、こいつの誘いを断るには、彼氏がホストだとばらさなければいけない。。。
    『あたし、彼氏ホストだから・・・よそには行けないねん。ごめんね。』
    『バレへんバレへん!!』奈々は笑いとばした。

    2005-06-22 01:00:00
  • 353:

    仕事が終わって漫画喫茶で寝ていると誠ちゃんからの着信で目が覚めた。
    『ねとったぁ?今日暇ねん〜俺んち来る?』
    一瞬で目が覚めた。化粧を直して誠ちゃんちへすっ飛んでいった。

    2005-06-22 01:02:00
  • 354:

    家に着くと、誠ちゃんは鍵をあけてくれた後また寝てしまった。相変わらず汚い。飲み会でもしたのかテーブルには酒の空き缶がごろごろ転がっている。食べ残した宅配ピザ、いつのかわからないパックのお茶・・・あたしの部屋も大概汚いが、こういう食べ物系はほったらかさないのでなんだか気になった。虫がわく。そう思って掃除を始めた。

    2005-06-22 01:03:00
  • 355:

    誠ちゃんは起こしてもおきないので、掃除の音くらいでは目を覚まさず相変わらずすうすうと寝息を立てている。部屋を片付け終わって、次は洗い物だ。・・・洗剤がない。もう隣のスーパーは開いている。洗剤を買いに、一人で出た。

    2005-06-22 01:04:00
  • 356:

    『涼!?』
    部屋に戻るとドアの音に反応したのか誠ちゃんが飛び起きた。
    『わっ、びっくりした、起きてたの?おはよ。』
    『さっき、目覚ましたらおらんから…どこ行ったんかと思ったよう〜なんか怒ってんのかと思って…』
    半泣きだ。これじゃ昼寝から目を覚ましたらお母さんがいなかった三歳児だ。可愛い。

    2005-06-22 01:05:00
  • 357:

    『ごめんね。洗剤買いに行ってたんよ〜。』
    『部屋めっちゃ綺麗になってるやん!涼が片付けたん?』あたしがやんなきゃ誰がやるんだよ。
    『そうだよ〜誠ちゃん、食べ残しくらいは捨ててや〜』

    2005-06-22 01:06:00
  • 358:

    だんだん目がさえてきたのか、誠ちゃんはあたしをほったらかしゲームに夢中になった。ほんと、こいつは可愛いのは眠いときと酔ったときだけだな…なんて思いながら、一緒にいられるのが嬉しくて、会話をしなくても苦ではなかった。

    2005-06-22 01:07:00
  • 359:

    『暇やなぁ〜スロットいこか。』
    特に会話もせず時間が経ち、なんだか結婚五年目の夫婦のようなこの関係は周りからも【熟年夫婦】だといわれていた。付き合ってまだ間もないのに、妙な感覚。本当に、ずっと前から一緒だったかのような不思議な居心地。

    2005-06-22 02:58:00
  • 360:

    家の近くのパチ屋へ行くと【海一番全台設定?】と書いたポスターが目に付いた。んなあほな。店内の海一番には本当に全台に?、とかかれた札が刺さっている。まぁ、刺すだけなら誰にでもできるし…とあたしは素通りした。のに、誠ちゃんは座っている。踊らされてんじゃないよ〜と思いながら違う台を打つ。誠ちゃんの様子を見に行くと・・・出してる!

    2005-06-22 02:58:00
  • 361:

    『涼もこれ打てって〜!ぜってー出る!!』言われたとおりに打つと、本当に出た。隣に、カップルが二人で座った。女は打ったことがないらしい。手つきでわかる。?が二つ並んだり、演出が出る度に手が止まる。そんな簡単にボーナスを引けないのは、一人で打てる人なら誰でもわかる。横から彼氏が押してあげる。ほほえましい光景だ。大して可愛くなかったけど、“スロットができない”というあたりがかわいらしく思えた。涼には遠い昔だ。その女の子がちょっとうらやましかった。
    二人で馬鹿みたいに勝って、その日は誠ちゃんちに泊まった。

    2005-06-22 03:00:00
  • 362:

    目を覚ますともう夕方だった。夜中まで桃鉄をして、いつの間にか二人とも寝てしまった。
    ・・・そういえば、Hしてない。同じベットで寝たのに、誠ちゃんは手を出してこなかった。まぁ、疲れてたんだし…。自分にそう言い聞かせた。今日は誠ちゃんは出勤日だ。起こさなきゃ。シャワーからあがって一服しているとマヤから電話がかかってきた。お茶しよう、という誘いだったので梅田についたら連絡する、といって、あわてて用意を再開した。誠ちゃんを起こす、起きない、起こす、起きない・・・・やっとのことで目を覚まし、のそのそとシャワーへ行く。

    2005-06-22 03:01:00
  • 363:

    『お前、昨日とえらい違い』と誠ちゃんが笑った。昨日はぶかぶかの誠ちゃんのジャージにすっぴん。今はぐりぐりに巻いた髪の毛にバッチリメイク。巻いた髪にセットをしていると、誠ちゃんもスーツに着替え、髪をセットしようと鏡の前で悪戦苦闘している。
    『誠ちゃんの方が昨日と違いすぎやし』というと『ホストはスーツでかわんねん』と笑った。

    2005-06-22 03:02:00
  • 364:

    『お前、すぐ出勤?』『ううん、友達から電話あったからちょっと遊んだら出勤』『マジで?俺友達に会ってみたい!』
    普段ならすぐオッケーだ。だが、今日のは相手が悪い…マヤにあたしは今まで何度も男を取られてきた。マヤは外見はあゆそっくりの大きな目をして可愛い子だ。ただ、無類の男好きで、それも、“他人の男”にものすごく興味を示す。

    2005-06-22 03:04:00
  • 365:

    大して可愛くない外見で、男っぽいさばさばした涼と、女の子です!って性格をした可愛いマヤでは勝ち目がなかった。本性はさばさばしていても、男の前では完璧に女を演じるマヤ・・・人は外見じゃないというけど、男という生き物は馬鹿で、すぐに作り物の中身にだまされる。会わせたくないなぁ…

    2005-06-22 03:05:00
  • 366:

    梅田について電話をするとマヤは百貨店にいるから待っててぇ〜と甘ったるい声で言った。あぁ、対面してしまう。
    『ツレに惚れたらあかんで?』というと誠ちゃんはきょとんとしていた。
    『惚れる?なんで?』『可愛いから』『マジで!楽しみやわぁ』イラッとしたのが顔に出たのか『大丈夫やって、冗談やんけぇ』と笑い飛ばした。

    2005-06-22 03:07:00
  • 367:

    『ごめぇ〜〜ん待ったぁ?あっ、彼氏?こんにちは〜はじめましてマヤですぅ』・・・・出た、マヤ得意の必殺スマイル。誠ちゃんのほうを見ると、
    『どうも。彼氏です。』とわけのわからない挨拶をしていた。『俺ほな仕事行くわな。また電話するわぁ。ばいばいマヤちゃん♪』と笑顔で去っていった

    2005-06-22 03:08:00
  • 368:

    『涼の彼氏、超かっこよくない?』あぁ、たぶんマヤにスイッチが入ってしまった・・・とりあえず二人で喫茶店に入り、他愛もない話をした。ブブブブブブブブ・・・携帯が震える。誠ちゃんからメールだ。
    “あれ、可愛いか?”と一言入っていた。・・・B専なのか!?

    2005-06-22 03:08:00
  • 369:

    マヤは誠ちゃんのタイプではなかったんだろうか。とりあえず一安心だ。
    マヤとバイバイして、出勤。今日は奈々は休みだった。うるさくまとわりつかれないですむ、と思うとほっとした。まぁまぁ客の入りもよく、時間を感じさせず仕事は終わった。誠ちゃんの店まで、あたしの店から徒歩5分。案内され、席に座る。

    2005-06-22 03:09:00
  • 370:

    『おぅ、お疲れ』酔っていない誠ちゃんはものすごくクールだった。
    『お前の友達、あれ可愛いんか?俺はあーゆータイプあんま好きじゃないで?なんか、あたし可愛いでしょ、って全身から出てる。』マヤは、あたしの男たちに会ったときにはこんな評価を得たことはない。彼氏であっても、ただの男友達であっても、誰にでも会いたがったマヤの誘いを断れず何人もの男を会わせ、最後にはみんなマヤにハマッてあたしから離れていった。マヤ自身、自分でもそれをわかっているのか、最近はキャバクラをはじめオッサンたちから貢がれまくっていた。

    2005-06-22 03:10:00
  • 371:

    みんな、可愛いって言うもん。涼今までの男ほとんどみんな取られたんやもん。』
    『お前、俺がそんなんで向こうに行くと思った?あほやなぁ。てか俺、そーゆー女めっちゃ嫌い。ちょ、涼、ゲームしようや。』誠ちゃんが目を輝かせていった。
    『お前、今からそいつに電話しろ。んで、俺が可愛い可愛いってゆーて会いたいってゆーてるから、会ったってって言え。俺がはまらせて、捨てたる。痛い目見せてやりたいやん?お前の仇☆』

    2005-06-22 03:13:00
  • 372:

    なんということを思いつくのか。でも、誠ちゃんなら本当にできそうだった。マヤが今まで合わせてとせがんできた男は、あたしの彼氏・男友達そしてそこにもうひとつ条件があった。“男前”。現に誠ちゃんに会った後、マヤはカッコいいカッコいいといっていた。
    店からそのまま電話をかけた。案の定マヤは、騙されてるとも知らずに誠ちゃんの言葉を鵜呑みにした。

    2005-06-22 03:14:00
  • 373:

    次の日もマヤと会うことになった。
    『誠ちゃんて、本間にマヤのこと可愛いってゆーてるん??』・・・言ってません笑 と思ったが『ほんまほんま、もう彼女としてのメンツもへったくれもないわぁ』というと、『マヤ可愛くないのになぁ〜』と鏡を見ながら言った。うそつけ。

    2005-06-22 03:15:00
  • 374:

    その日、偶然にも、キャバクラの帰り道で誠ちゃんに会ったらしい。・・・偶然な訳がない。キャッチ場とさほど離れていなかったからマヤの店のそばでキャッチをさせていたのだ。
    誠ちゃんの店に今から行くという。普通、連れの彼氏だと知ってて行くか!?と思ったが、誠ちゃんの作戦のひとつだろうと思って、ほっておいた。

    2005-06-22 03:16:00
  • 375:

    待機室に戻ると、誠ちゃんからメールが来ていた。
    “おもろい話いっぱいできた〜仕事終わったら電話してなぁ”
    マヤがきっと何かしたんだ。わくわくした。
    お店に着くと誠ちゃんは薄ら笑いを浮かべていた。気持ち悪い。
    『あの女ほんまにアホやな。あいつに惚れる男の気持ちがわからんわ』大爆笑しながら言った。

    2005-06-22 03:17:00
  • 376:

    何でもマヤは、酔った〜といいながら肩にもたれたり、いきなり“マヤ、手ちっちゃいねん”といって手を合わせてきたり誠ちゃんが今度遊ぼうな、というと二人で?マヤ誠ちゃんの家に行きたい!と言ったらしい。あぁ、さすがマヤ。落とす気満開である。
    『あれは一回遊んだら落ちるで』ひゃひゃ、と笑った誠ちゃんの顔が悪魔に見えた。
    『お前の仇、絶対取ったるからなっ♪見とけよ〜』こいつなら、できそう。初めてマヤが男に捨てられることを思うとわくわくした。

    2005-06-22 03:18:00
  • 377:

    マヤは驚くほど誠ちゃんにハマッていった。毎日何度も何度も、メール・電話…誠ちゃんが参ってきていた。
    ある日、仕事が暇だったので、キャッチ中だろうと思い誠ちゃんに電話をかけた。出ない。珍しい、お客さん来てるのかな、と思いほっといた。すると、誠ちゃんからメールがきた。

    2005-06-22 03:19:00
  • 378:

    “今マヤ来てる。出んといて、お前には来てる事内緒にしてって言うから出れへんかった、ごめん。マヤ帰ったら電話するわ。”
    店に来てる!?そこまでして会いたいのか。そこまでハマッたか…。しばらくして誠ちゃんからマヤが帰ったと電話が入った。と同時に、マヤからのキャッチも入った。

    2005-06-22 03:20:00
  • 379:

    『涼、マヤなぁ誠ちゃんやめといたほうがいいと思うで?最近涼のこと客としてしか見れへんくなったって。付き合うんやったらマヤみたいな可愛い子がいいって言ってたで。』カチンときた。何を真に受けてるのか。それはあんたをはまらすために、あたしと誠ちゃんで考えたくどき文句である。

    2005-06-22 03:21:00
  • 380:

    『そうなん、どこで誠ちゃんと喋ってたん?』『道やでぇ。』うそだ。行ってたのは知ってる。それに毎回あんたがメールや電話で遊ぼう遊ぼうと言っているのも知ってる。
    『じゃぁ、誠ちゃんに涼に直接言いって言っといて。』『そんなん言ったら傷つくからできへんのちゃう?でも、誠ちゃんマヤは可愛いってずっといててってゆってたしぃ』この女はどこまでアホなのか。もう限界である。

    2005-06-22 03:22:00
  • 381:

    『店行ってたやろ?』『えっ・・・いってないよぉ?』声が上ずった。
    『あんた、可愛いからって何でも真に受け取ったらあかんで。店行ってたん知ってるし、何でそんな嘘つくん?誠チャンに甘えたことも、家行きたいって言ったことも、あんたが毎日毎日遊ぼうっていってんのも、全部知ってんねんから。全部誠ちゃんから聞いてんねん。何でそうやってすぐ涼の男取ろうとするわけ?』

    2005-06-22 03:23:00
  • 382:

    『あたし別に可愛くないし。涼はそうやってあたしに嫉妬ばっかりしてるから、みんなあたしのほうが可愛いって言うねん。もう男関係であんたと喧嘩すんのこりごりやわ。縁切る。』
    ・・・縁が切れるのはかまわないが、何でそれをお前が言うんだ?あたしのことを見下してたのは知ってた。でも、そこまであらわに言葉で言われたことはなかった。
    友達を一人、失った。

    2005-06-22 03:24:00
  • 383:

    どうしたらいいんだろう…仕事は本当に暇で、考え事をしたくないのにすることがないせいで考えてしまう。どうすればいいんだろう。
    価値観の違う香織に認めさせるのは難しいし、説明したって到底わかってはくれないだろう。どうすれば・・・そればかり考えていると電話がなった。誠ちゃんだった。

    2005-06-22 03:26:00
  • 384:

    『もう仕事終わる〜〜??』『・・・・・・・・うん』『どうした?なんかあった?』誠ちゃんは声の調子でいつも見抜く。
    『友達、いなくなっちゃった…』『マヤか?お前マヤしか友達おらん訳ちゃうやろ?』『マヤともう一人・・・香織だけしか友達なんていないようなもんやってん…でも香織が友達やめるって…』『店来て話きいたるから。終わったらすぐおいでや?』やさしい誠ちゃん。早く会いたい。ぽろぽろ涙がこぼれた。

    2005-06-22 03:27:00
  • 385:

    店は終わり、お給料をもらう順番を待っていると誠ちゃんからメールが来た。
    “周りが誰もおらんくなったって、俺はずっとお前のそばから離れへんから。絶対にな。”
    また、涙があふれた。
    店に着くと、すぐに誠ちゃんが来た。

    2005-06-22 03:28:00
  • 386:

    『なんてメール来たん?』というのでメールを見せた。読み終わると誠ちゃんはぼそっと『俺のせいやんな?これ・・・』とつぶやいた。
    空気を読んだのか今日は誰もヘルプがいない。

    2005-06-22 03:29:00
  • 387:

    『誠ちゃんのせいじゃないよ・・・』『どうしたらいいんやろ…俺がこの子に電話しよか?そんなつもりじゃないって。俺はちゃんとお前との先も考えてるし、今こんなことさせてるけど、ずっとさせるつもりはないって。俺がゆったらわかってくれるかなぁ??』おそらくそんなことをしては、香織の性格上、火に油を注ぐだけだ。

    2005-06-22 03:30:00
  • 388:

    『ど〜したぁ、暗い顔してぇ』軽いトーンで、先輩の聖夜がやってきた。誠ちゃんは、聖夜に事細かに説明した。あたしは、どうしていいかわからなくて、ただ、泣いているだけだった。
    『やっぱなぁ、同じ状況に立たないと人ってわからんからなぁ。でも、涼ちゃん この子とは長いんやろ?時間経ったらわかってくれるよ、きっと。』と聖夜サンは言った。

    2005-06-23 01:45:00
  • 389:

    『んで、お前な、涼ちゃん大事にせぇよ??こんなメール来ても、お前と別れずにおってくれてんねんぞ?極端にゆうたら、涼ちゃんは友達よりお前をとったんやで。これから、友達の分もお前が傍にいてやらな。なっ?』
    『はい。わかってます。』『おう、ほんならええねん。ほんまに大事にせぇよ?』誠ちゃんの肩をポンとたたき、聖夜はどこかへ行ってしまった。

    2005-06-23 01:46:00
  • 390:

    『聖夜サンに先に言われたけど、俺同じ事思ってるから。香織ちゃんにしてたしょうもないメールも俺に送って来たらいいし、しょうもない小さなことでも電話してきたらいいし。俺がお前の、彼氏にも、友達にもなるから。な?俺はどこにもいかへんで。ずっと、お前の傍におるから。』
    日頃はそんな甘甘なことを誠ちゃんは言わない。だから余計に嬉しかった。それが本音でありますように。本当に、ずっと誠ちゃんがあたしの傍にいてくれますように…

    2005-06-23 01:57:00
  • 391:

    あのロゼの件から誠ちゃんはあたしの信用を得る為にちゃんと態度で示してくれるようになった。起きたら必ず一番に電話をかけてくれたし、出勤日は終われば必ず電話をくれた。前もって決まってる営業はすべて教えてくれたし、ちゃんと営業に行く前と帰ってきてからは報告の電話もくれた。
    そんなある日いつまで待っても営業が終わったという報告がない…不思議に思って電話をかけてみた。

    2005-06-23 02:01:00
  • 392:

    『もしもし!?今どこ!?』
    『ん〜っ……寝てたぁ……』
    寝てた!?営業に行ったんじゃなかったのか!?
    『どこで!?帰ってきてたんなら電話ぐらいしてきぃさ!!』
    『寝てたけど……俺んちじゃない…わかるやろ?』
    なんと客の家で寝たらしい。……営業になってない。しかも自分がベットで寝て、お客さんも寝てるが、床でらしい。なんてやつだ…

    2005-06-23 02:03:00
  • 393:


    なんと客の家で寝たらしい。……営業になってない。しかも自分がベットで寝て、お客さんも寝てるが、床でらしい。なんてやつだ…

    2005-06-23 02:03:00
  • 394:

    『営業終わってんねやったら帰ってきて!!涼梅田におるから。』と言うとわかった…と眠そうな声で答えた。そして30分ほど経った時電話が鳴った。
    『どこぉ??』ほんとに帰ってきた!!!

    2005-06-23 02:05:00
  • 395:

    『今日出勤しようかと思ってたけどだるいからやめ〜カラオケでも行くかぁ??』っていうか髪が!!うねうねしていた髪はストパーでサラサラになっていて、しかも若干切ったらしく、“誰が見ても男前”な誠ちゃん……あたしの勘は当たった。あまりのかっこよさににやけてしまった。
    初めて外で誠ちゃんと遊べる!!さらにテンションが上がった。誠ちゃんはミスチルやラルクなどの流行歌ばかりを歌っていたが、その全てがラブソングだった。ミスチルの“抱きしめたい”を歌い終わった誠ちゃんに、冗談めかして『この歌詞みたいな風に涼のこと想ってくれてんのん〜?』

    2005-06-23 02:07:00
  • 396:

    ……だまったまま……しまった、聞くんじゃなかった…と思ったら、小さな声で恥ずかしそうに『……思ってるよ』と言った。嬉しくて嬉しくて、『ラブソング返しッ』と言って“おなじ星”を歌った。誠ちゃんは気に入ったらしく、タイトルを聞いて、あたしの着メロをそれにした。剛の時にはありえなかった幸せな時間。そういえば、最後に剛とカラオケに行ったとき、別れの歌ばかり歌ってやったな、なんて思い出して笑えた。誠ちゃんがごろんと膝に横になる。ドキドキする。サラサラの髪をなでる。“ん?”というように誠ちゃんがこっちを見る。あぁ、心臓が破裂しそう………

    2005-06-23 02:07:00
  • 397:

    日頃誠ちゃんが甘えてくる事なんてない。あたしが甘える事もない。恥ずかしがりだと自分で言う誠ちゃんは甘えさせてはくれない。しばらくあたしの膝の上に寝ころんだまま歌っていたが、起きあがった。勇気を出して誠ちゃんの膝の上に寝ころんでみる。

    2005-06-23 02:08:00
  • 398:

    『どしたん?甘えたくなった??』ひひっと誠ちゃんは笑った。拒否られなかった!!調子に乗ってそのままチュウをせがんでみた。手招きをするので顔をあげると
    『お前からしてこい』
    ………無理だよう……
    初めて誠ちゃんとチュウをした。

    2005-06-23 02:09:00
  • 399:

    奈々はやたらとあたしになついていた。ホストへ行こうと執拗に誘ってくる。真美の誕生日に、一緒に行くことになった。“真美ちゃんのお祝いだよ”と言われては、断る理由がない。新参者のあたしに断る権利なんて、もちろんない。仕方ナシに一緒に行ったが、誠ちゃんにバレないかが気になって気になって楽しめなかった。

    2005-06-23 02:10:00
  • 400:

    その日から、奈々は何かと理由をつけては、あたしをホストに誘う。だんだん“バレなきゃいいや”という感覚になってきた。そう、ミナミに行けばいいんだ!変なところに気がついてしまった。あたしは奈々とミナミのホストの初回に行きまくった。確実に誠ちゃんの目は届かない。誠ちゃんの店では“彼女”というプレッシャーに似た何かがあり、嫌いなヘルプにも愛想良く接したし、誠ちゃんが席にいなくても文句を言わず“いい子”を多少演じた。他店ではあたしはただの客。ホスト達はみんなつなぎ止めるのに必死で、優しい。

    2005-06-23 02:11:00
  • 401:

    ある日奈々が“カッコイイ子みっけたぁ”と雑誌を目の前に広げた。あたしの目が止まったのは、奈々がカッコイイと指さした子ではなく、隣のページに小さく載っていた男前。
    和也だ………
    『うわっ、元彼……』

    2005-06-23 02:13:00
  • 402:

    その一言で今日の行き先は和也の店に決まった。でも、和也はあたし達の席には着いてくれず一言もしゃべれなかった。奈々はここでもお気に入りを見つけたらしく、楽しそうにしている。あたしは帰りたくてたまらなかった。
    しばらく仕事→ホスト→仕事……そんな毎日が続いた。あたしより、男友達を大事にする誠ちゃんはちっとも遊んではくれず、寂しかった。他店のホストたちはそこを少しだけ埋めてくれた。もちろん、誠ちゃんが出勤の日には誠ちゃんの店で飲んだ。毎日どこかしらの店にいた。これではただのホスト狂いだ。もうすぐ、夏がくる……

    2005-06-23 02:13:00
  • 403:

    去年、大ちゃんと見た花火。来年見る人は違うだろうと思ったあたしの予想は当たっていた。しかし……誠ちゃんは行ってくれるのだろうか?この人はいつも突然で未だに約束をした事がない。まだ花火の日程も出ていない頃から花火に行きたいと言い続けた。浴衣を買わなきゃ!でも誠ちゃんの店ではいつも未収で飲んでいたから、その支払いでいっぱいいっぱいだった。仕方ない、久しぶりに援交しよう……

    2005-06-23 02:15:00
  • 404:

    店を少し早めにあがって、相手を捜した。あっさり見つかった。これで浴衣が買える☆誠ちゃんが出勤日だったので終わったら、店に行くつもりだった。
    初めてのウォーターベットは予想以上に気持ちよく、気づけば朝……携帯の充電もいつの間にか切れていた。やばい……

    2005-06-23 02:16:00
  • 405:

    とりあえず浴衣を買って、ママに着せてもらった。約束もしていないのに、とりあえず駅で誠ちゃんを待った。六時…まだ連絡はない。七時…電話をかけても出ない……もうすぐ八時になろうとしている。花火が始まる……

    2005-06-23 02:20:00
  • 406:

    八時を過ぎてやっと電話がかかってきた。
    『お前昨日店ブチッたし、俺は今日ブチる!!』
    言いそうな気はしてた。やっぱりか……。せっかく浴衣を着たんだし、と思って駿を呼び出した。人混みは嫌いだと言っていたが来てくれた。駿の先輩に言われた事がふと頭をよぎった。
    “涼ちゃんの事諦めてない健気な駿をよろしくな”こいつはあたしを好きなのか!?まさかな…なんて思いながら、駿と花火を見た。

    2005-06-23 02:21:00
  • 407:

    あーぁ、誠ちゃんと見たかったな…でも花火はまだある!!それに駿は誠ちゃんと違って甘えさせてくれる。外で普通に手もつないでくれる。電車ではこけないように抱きしめてくれた。空席を見つけたらすっ飛んで行く誠ちゃんとはえらい違いだ。

    2005-06-23 02:25:00
  • 408:

    『駿と付き合えばよかったかなぁ』別に本気で思ったわけではない。ただなんとなく、ちょっとそう思ったから、言ってみた。
    『人混んでるし、ちょっと後から帰ろうか』
    同じ考えの人だろうか、何人かカップルや子連れの家族がいる公園に行った。
    『涼、ほんまは俺のことどう思ってる?』
    (え…やばっ、本気にした!?先輩が言ってた事ほんまなんかいっ…)

    2005-06-23 02:27:00
  • 409:

    困った…本気で言ったわけではないし、誠ちゃんと別れる気などさらさらない。しかし、自分があんな事言っておいてそれはない…どうしよう…
    『駿の事、好きは好きやけど…なんか付き合うとかそーゆー好きじゃないねん…』
    『どっちも好きとかそーゆーオチ!?』…やばい…機嫌が悪くなった…
    『かっ、帰ろうか。人だいぶ減ったしさっ』
    なんとか話を終わらせたい。流すしかない。

    2005-06-23 02:28:00
  • 410:

    店に行く約束をしていたので、駿と別れ、浴衣のまま店へ向かった。
    『何でお前浴衣着てんの?』・・・普通ほめませんか?嘘でもさ(泣)と思いながら店へ入った。同伴したのだろうか、ちらほら浴衣姿の子がいる。いいなぁ…。今同時に店に入ったから、ほかから見れば涼たちも同伴だが、誠ちゃんはさっきまで後輩の家で寝ていた。

    2005-06-23 02:30:00
  • 411:

    『ブチるとか本間ありえへんし!!』誠ちゃんには女友達と行ったことにしておいた。その子と実際さっき会ったので、プリクラも撮っておいた。
    『お前が先ブチッたんやんけぇ。まぁ、いかへん理由ができてよかったけど』と誠ちゃんは笑った。人ごみが嫌いだといってたので、行きたくなかったのは知ってた。でも、行きたかった。
    『淀川は行ってもらうで。』というと、しゃぁないなぁ、と笑った。

    2005-06-23 02:31:00
  • 412:

    名無しさん

    はやく続き?

    2005-06-25 23:20:00
  • 413:

    名無しさん

    涼ちゃん 厄介物語消えた??

    2005-06-25 23:31:00
  • 414:

    ヘルプたちはみんな“花火行って来たんスかぁ?”と聞いてくる。行ってないのに聞いてくんな!と思ったが笑ってその場をやり過ごした。

    2005-06-26 00:04:00
  • 415:

    家に帰って、寝ようと思ったけど、あまり眠くなかったので何気なしに爆弾サイトを開いた。
    誠ちゃんの店のすれをさがしてクリック。前に見たときより明らかに書き込みの数が増えていた。何だろう、と思い開くと、スレはえらい事になっていた。
    “あたし、○○君と付き合ってるんだけど、色とか使う人?”を筆頭に誠ちゃんの事が書かれていた。それも、延々と。しまいにはあたしのことも飛び出し、風俗してるだとか、不細工だとか、挙句に“彼女です”と名乗る人が何人も出てきた。

    2005-06-26 00:05:00
  • 416:

    書き込みをされた時間を見ると、3分おきとか、5分おきとか、ほとんど間が空いていない。でも、絵文字が入っていたり、入ってなかったり“ぁ”とか“ゎ”とか小文字になったりならなかったり…同一なのかどうなのか…時間帯的に、何人もが見そうな時間ではあるけど…と思っていると、誠ちゃんから電話がかかってきた。

    2005-06-26 00:29:00
  • 417:

    『お前サイト見た?』『うん、今ちょうど見てた』『フォロー入れといてくれへん?』と言われ“彼女はいないよ”的な書き込みをした。すぐに突っかかってくる。異常に返事が早い。“お前は色やって”とか、“彼女いないと思うよ”など、ほかにも似たような書き込みはあるのに、あたしが書いたのにだけ、しかもレスナンバー指摘してまで突っかかってくる。なんでだ・・・???

    2005-06-26 00:30:00
  • 418:

    何回か、書き込んだがらちが明かない。もういいや、と思いほっておいた。すると、則之から電話が鳴った。則之は駿の後輩で可愛いやつだ。

    2005-06-26 00:31:00
  • 419:

    『どしたぁ?』
    『あんね、誠さんの店のサイト見ました?』
    『うん、さっき見てた。なんで?どしたの?』
    『あれ書いたんね、駿さんなんですよ…俺、一緒にいたんです。俺の携帯と、駿さんの携帯の二台で書いて…俺、駿さんに言われるまま書き込んで。あれ、全部駿さんの仕業なんですよ…』

    2005-06-26 00:33:00
  • 420:

    なんと、びっくりしたことに後輩使ってまで駿がした嫌がらせだったのだ。
    何でも、あたしに振られたと思っていて別れさせようとたくらんだのか、誠ちゃんに対する嫌がらせかはわからないが、自作したらしい。

    2005-06-26 00:34:00
  • 421:

    『明日の花火は一緒に行くんス!?』
    花火の前日だったのでみんな花火の話をしている。
    『しゃーなしでな』と誠ちゃんは笑った。
    家に帰って則之に電話をした。

    2005-06-26 00:35:00
  • 422:

    『駿にな、明日仕事行ったらあたしと誠ちゃん駅で見たって言い。』と言った。あの後則之を詰めたら、駿が別れさすためにした自作だった事を吐いたので、ちょっと遊んでやろうと思った。

    2005-06-26 00:36:00
  • 423:

    誠ちゃんは今日は絶対行ってくれると言っていた。店泊するから起こしにこいと。
    夕方、用意をして店下へ向かう。私服やスーツのままの従業員達がちらほらいる。浴衣を着てる女の子も数人いた。
    誠ちゃんに電話をかける。出ない。留守電に切り替わるまで数十回かけてやっと出た。従業員達が女の子と出かけていったり、従業員同士でタクシーに乗ってゆくのを見ながら誠ちゃんを待った。花火がもう上がり始めた。やっと下りてきた誠ちゃんは、前と違う浴衣を着てるあたしをみて“また買ったん!?”と、相変わらずほめてはくれなかった。

    2005-06-26 00:37:00
  • 424:

    例年通りのすごい人。歩くのが早い誠ちゃんについていくのが精一杯だ。店泊したから下はスーツのままの誠ちゃん。周りから見てホストだとバレバレだ。お客さんに会わないかとヒヤヒヤした。帰り道、人の流れに逆行しているからか、スーツが目立つのか、男前だからか、すれ違う人が誠ちゃんを見ている。今思えば何人もホストは見たのでやっぱり顔で見られていた。
    なかなか進まない人の波。誠ちゃんはついにギブアップ、一休みしたいと言い出した。

    2005-06-26 00:38:00
  • 425:

    道から少しはなれたところにある小さな植え込みの段に座って話をした。今日が記念日なこと。香織のこと。これからのこと。パチンコのこと。ジュースを飲んだら涼しくなって結構な時間はなしこんでしまった。誠ちゃんは二人だけだとよくしゃべる。
    『そろそろひと減ったかな?』大通りに戻ると、まぁまぁいるものの最初よりは明らかに空いていたので帰ることにした。

    2005-06-26 00:40:00
  • 426:

    電車に乗って梅田へと向かう。何か食べて帰ろうか、ということになり東通を歩いた。
    同じような考えの人や、飲みにいくサラリーマン、キャッチのホストや、カラオケ屋の店員。いつもより少し、東通はにぎわっていた。視線の先に見慣れた顔を発見。則之だ。則之がいるということは…やっぱり。その少し先に駿がいた。まさか本当に会うとは思わなかった。

    2005-06-26 00:41:00
  • 427:

    則之がこっちに気づいた。小さく手を振っている。あたしが手を振ると誠ちゃんにばれるのでうんうん、と頷いた。ちょうどあたしたちが歩いてた側にいた上に、その少し手前にタバコの自販機があった。さっき買ったばかりなのでタバコは全然残っている。嫌がらせの仕返し、と思って誠ちゃんのティーシャツの裾を引っ張った。

    2005-06-26 00:42:00
  • 428:

    『待って、涼タバコ買う!』というと、あ、俺も、と言って戻ってきた。ゲーセンが隣にあったので、元々は行く気なんてなかったのだが『誠ちゃん、あのプーさん取ってぇ』と言うと聞こえなかったらしく、なんて?とあたしの顔に耳を近づけてきた。周りから見れば仲良しカップルだ。
    視線を感じる。駿がこっちを見ている。それも、ものすごい至近距離から。

    2005-06-26 00:43:00
  • 429:

    2000円くらい突っ込んだが取れず、誠ちゃんはあきらめた。あたしも元々別にプーさんが欲しかった訳ではないし、いいや、と思ってゲーセンを後にした。誠ちゃんは手をつないでくれない人。しかも梅田となれば余計だ。でも、駿に見せたかったので誠ちゃんの腕をつかむ。
    何?と誠ちゃんが振り向く。『歩くん早い〜』と言うとお前が遅いんじゃ、そんなややこしいもん着てるから!と言われた。駿の視線が突き刺さる。則之に口パクで“バイバイ”と言い、駿とは一切目を合わせなかった。ざまぁみろ。ちょっと胸がすっとした。則之から後で聞いた話では、その後駿は店で相当荒れてたらしい。誠ちゃんが予想以上に男前だったことにも腹が立ったらしい。

    2005-06-26 00:44:00
  • 430:

    ご飯を食べて帰るころには二人の姿はもうなかった。
    帰ってまたサイトを開いてみた。あたしが嫌がらせで近づいたことがわかったのか、今度はあたしが散々叩かれていた。誠ちゃんには他に彼女がいるとか、騙されてるだとか、バカとか。なんだか逆にかわいそうになった。

    2005-06-26 00:45:00
  • 431:

    それ以降は特に何事もなく、平和な日々をすごした。イベントが多かった月の支払いがまだ終わっていなくて、そこにまた未収を重ねていたので仕事をしてもしても追いつかない。とりあえず前の分だけでも終わらせたかったのだが、そうしてしまうと今月分がまた遅れる。彼女だから、飛ぶことはないです、と代表に説明してくれたらしく遅くなってもかまわなかったのだがユウの時のような事になるのだけはごめんだった。

    2005-06-26 00:48:00
  • 432:

    遅れてもいいとは言っても、もう三月も前の支払いだ。その間はその月の未収だけでいっぱいいっぱいだった。
    『店で稼げへんねやったら援交してくれへん?ちょっと、代表に言われてて…』まぁ、代表だって待つにも限度があるだろう。

    2005-06-26 00:49:00
  • 433:

    彼氏の口から、そんなことを言われた女の子は何人この世にいるだろうか。おそらくあたしだけではないかなと思う。でも、遅れたあたしが悪いし、一本行って7,8000円ではタカが知れてる。店自体そんなに集客数がいいほうでもなかった。
    誠ちゃんの中では援交とソープは変わらないらしい。(ソープの方ごめんなさい)

    2005-06-26 00:51:00
  • 434:

    自由出勤だったのでしばらく休んでひたすら援交をした。2万や3万でちまちまやるのがしんどくなってきた。もっと手っ取り早く稼ぐには…生でやるか、中出ししかない。

    2005-06-26 00:52:00
  • 435:

    2万や3万で、とは言っても、3万の客なんてほとんどいなかった。2万が大概、下手したら1,5万だった。そんな時代に、前のような中出しで30万なんて人はまずいないだろうと思った。疑問系で掲示板に、“中だしオッケーです、いくらくれますか?”と書き込んだ。山のように返事が来た。

    2005-06-26 00:53:00
  • 436:

    中には、50万なんて人もいたが、逆に怪しいのでやめた。2万だと言って来る奴、中だしされるのが好きなの?と聞いてくるバカ、セフレになろうよとか言って来るバカ…でも、大半の人は“五万”と言って来た。中出しは五万が相場なのか。リスクを考えれば安すぎるが、普段の倍以上だ。

    2005-06-26 00:53:00
  • 437:

    二人に会って、一日で10万稼いだ。さすがに、誠ちゃんに中出ししたとは言えず、頑張ったの、と言っておいた。誠ちゃんはそれを信じた。あたしは妊娠してないかどうかが心配で心配でたまらなかった。

    2005-06-26 00:55:00
  • 438:

    生理が来ない…もとから不順だが中だしをした後だ。あっけらかんとはしていられない…店で真美や姫さんに相談した。真美も生理が来ないらしい。でも、真美は相手はわかっている。しかも彼氏だ。かたやあたしは一回だけ金の為に関係を持ったオッサン。出来ていたとして、どうすればいいと言うのか。そんな見ず知らずの人の子供を産むのなんて、するわけがない。しかも、真美は彼氏を結婚したいほど好きらしく、むしろ嬉しそうだった。あたしとは正反対。望まれた子供と望まれていない子供。自分の体には命が宿ってませんように…ひたすら祈るばかりだった。

    2005-06-26 00:56:00
  • 439:

    あたしが妊娠したかも知れない経緯を話した後なのに、真美は自分の妊娠したかもしれないのが嬉しいらしく、キャイキャイ話している。デリカシーというものはないのか?嬉しくても状況的に普通は言えないはずだ。あたしが妊娠しているとしたら、自業自得だが、少しくらい気遣ってくれたって良くないか!?と思うと泣きそうになった。

    2005-06-26 01:00:00
  • 440:

    そしてまた、今日も暇だ。真美のキャイキャイ話す声がイライラする。あぁもうすぐ閉店だ。誠ちゃんに会いに行こう。ちょうど今日は出勤日だ。

    2005-06-26 01:01:00
  • 441:

    誠ちゃんは変に敏感で声ですぐ見抜かれる。いくらなんでも『中だしして妊娠したかもしれません』なんて口が裂けても言えない。気付かれないようにしなきゃ。いい事を思い付いた。寝てしまえばいい。そうすれば最初に声のトーンが低くても、疲れてました、で通じる。
    作戦は上手く行くはずだった。でも予想外に誠ちゃんが酔っていた。誠ちゃんは酔うと人が変わる上に、やたらと喜怒哀楽が激しくなるなんともややこしい奴だ。今日は暇だったからあんまりお金がないよ、と言うと
    『前10万稼いだ日みたいに頑張れョォ』
    …それは、普通の頑張りじゃなぃ…

    2005-06-26 01:02:00
  • 442:

    中だししたからだったなんて、知らないから、誠ちゃんは頑張ればあたしが10万稼げると思っている…それはまずい。それと同時に、嬉しそうだった真美が浮かぶ。やばい、泣きそうだ。もぅこの際、全部話してしまおう…
    『誠ちゃん、涼がどうやってあんだけ稼いだかわかってゆってる?普通の頑張りで、あんだけ稼げると思うん?』
    『えっ!?どうやったん?』
    『中だしさせたんやで』
    『え………』

    2005-06-26 01:03:00
  • 443:

    誠ちゃんは一気に酔いが冷めたようだった。
    『なんで??』
    『だって間に合えへんし…』
    『いや、だからって…』

    2005-06-26 01:04:00
  • 444:

    誠ちゃんはしばらく黙ったままだった。そして小さな声で『俺のせいでそんな事させてごめん…』と言った。
    『それで妊娠したかもしらへん…』言い終わる前に涙がこぼれた。ちょうどよその卓でシャンパンコールが始まった。大音量の音楽にマイク。あたしは誠ちゃんの耳元で泣きながら真美の事を話した。誠ちゃんはずっとあたしの頭を撫でていてくれた。『俺のせいで、せんでもいいような辛い思いさせてごめん…』誠ちゃんの声は震えていた。

    2005-06-26 01:05:00
  • 445:

    結局、真美もあたしも妊娠してはいなかった。あたしはほっとしたが、真美は妊娠したかったようでしゅんとしていた。あたしは地道に、店と援交でがんばった。一回の会計を抑えてもらうようにし、月末の支払いは来月なら余裕なくらいの少額になった。相変わらず誠ちゃんは外ではあってくれない。しんどいだとか、パチンコだとか、店の子と遊ぶだとか。寂しい。また、奈々とホストに狂った。でも、未収はせず、たくさんの店で細客として遊んだ。

    2005-06-26 01:07:00
  • 446:

    しかし、最初に、知り合いがあたしがそいつにお金を借りてることにして、店の上の人間から40万引っ張った。借金を立て替える、みたいな形だ。そのお金で、当時家がなかったあたしの家を借りてくれると。借用書や念書を書き、拇印も押した。あたしは立派に負債を負った。
    そのお金の利子がトイチだと知ったのはしばらくしてからだった。

    2005-06-26 01:11:00
  • 447:

    お金を借りるときには気をつけるようにしていたから、借用書は、隅から隅までどんな小さな字も見逃さない用に読んだし、空白には何もはんこも拇印も押さなかった。後から何を書かれるのかわからないから。どこにも、そんなことはかかれていなかった。利息のこと自体、何も書かれていなかった。風俗店のバンスは利息なんて取らないから普通だと思っていた。
    利息がトイチ!?おいおい、普通に考えて追いつかないぞ??慌ててそいつに電話をした。

    2005-06-26 01:12:00
  • 448:

    ・・・・・・・つながらない・・・・・
    《おかけになった電話番号は、現在使われておりません♪》何度も聞いたことのあるお姉さんが軽快にしゃべる。使われておりませんじゃねぇよ!!おい!!

    2005-06-26 01:13:00
  • 449:

    こいつがつながらないなら組長に電話するしかない。気が進まないが仕方ない。
    『お久しぶりです、涼です』
    『おう、元気にやってるか??』
    『はい、おかげさまで。あの、家の件ってどうなったんでしょうか??』
    組長はしばらく間を空けてこういった。
    『家?何のことや?』
    ・・・やられた・・・

    2005-06-26 01:14:00
  • 450:


    『家?何のことや?』
    ・・・やられた・・・

    2005-06-26 01:15:00
  • 451:

    『健が、組長に知り合いに不動産屋がいるからそこで家を借りてもらう手はずをしてるって…』
    『わしはそんな約束してないぞ?』
    『でも、健はそれでうちの上から40万引っ張ってるんです…あたしがそれを、返していかなきゃだめで…しかも利息がトイチで…』
    『健に確認してみるわ』

    2005-06-26 01:16:00
  • 452:

    そういって電話は切れた。だまされた。やられた。トイチの利息なんて多いにもほどがある。返していけるはずがない。膨らむ一方だ。こんなんならア○フルに行ったほうがまだ良心的だ。
    組長からかかってくるのなんてもう期待していなかった。健と連絡が取れたところでお金は返ってこないだろう。腹くくって返していくしかない。何のいわれもない借金を。

    2005-06-26 01:17:00
  • 453:

    名無しさん

    誠チャンかっこぃぃ…(>ω

    2005-06-27 05:01:00
  • 454:

    誠ちゃんはもぅあがってますょ〜?

    2005-06-27 15:34:00
  • 455:

    474

    涼サンだぁ☆そうなんですか〜(>_

    2005-06-27 16:03:00
  • 456:

    厄介物語早くね

    2005-06-27 17:59:00
  • 457:

    474さん?ファンですか〜ぁりがとぅござぃます??
    477さん?はぁぃ?ごめんなさぁぃ?

    2005-06-27 18:06:00
  • 458:

    名無しさん

    ?

    2005-06-28 09:27:00
  • 459:

    誠ちゃんに、最初に紹介してもらう話をしたときのことを思い出した。
    『お前、そんなヤクザがらみなんて大丈夫なん?』
    『俺、やめといた方がいいと思うねんけど…』
    言う事を聞いておけばよかった。お金に目が眩んだあたしが悪い。
    こうなってしまっては、誠ちゃんの店に行ってる場合ではない。
    『ちょっと話しあんねんか。今日一時間だけ店行くから』
    『ん?おう…わかった』

    2005-06-28 20:59:00
  • 460:

    略 
    『ちょっと話しあんねんか。今日一時間だけ店行くから』
    『ん?おう…わかった』

    2005-06-28 21:00:00
  • 461:

    店に着いた。いつもと同じ、楽しげな店内。今日からしばらくお別れだ。
    あたしは誠ちゃんにすべてを話した。
    『だからお前、俺そんなん信用していいんかってゆうたやんけ…どうすんねん…』
    てっきり怒られると思っていたのに、誠ちゃんは心配してくれた。あたしはまだ心のどこかで誠ちゃんを信用しきっていたわけじゃないから、店に来ないというのは別れるかもしれない、と覚悟してきたのに拍子抜けだった。

    2005-06-28 21:04:00
  • 462:

    『そんなんお前一括で返せ。俺が代表から金借りるから。だから借りれるまではちょっとずつ返していっとって』
    うれしくて涙がこぼれた。

    2005-06-28 21:06:00
  • 463:

    しかし、代表に前借は出来なかった。誠ちゃんはバイトホストな上に時間にルーズで無欠もしたりするので信用がなかった。
    あたしは地道に返していくしかなかった。
    お客さんに嘘を言い、少しずつ、店に入れずにお金をもらった。それを少しずつ貯め、毎日持って帰った給料をためた分だといいまとめて返したりもした。

    2005-06-28 21:07:00
  • 464:

    しかし、トイチの利息はそんなもんでは追いつかない。しかも、増えてたとえば残金が45万になると利息はそれのトイチとなるなんとも恐ろしいシステム。無理がある・・・
    店には3人だけ可愛い子がいた。あたしはその中の一人だった。その3人はほとんど休みがなかった。稼げるから、休ませてもらえない。昼の1時から働いて8時には終わったのでまだよかったが、しばらくすると夜の部が出来てしまった。あたしは昼の一時から朝3時まで働かされた。

    2005-06-28 21:08:00
  • 465:

    体はもうぼろぼろだ。疲れをとる暇がない。休みの日にも誰かが休んだだとか、間違えてシフトを組んでしまっただとか何かしら理由をつけて働かされた。
    もう大分誠ちゃんに会っていない…

    2005-06-28 21:09:00
  • 466:

    しかし働いてばかりではストレスがたまる。店の子に誘われて何回か、ホストにも行った。ボーイズバーにも行ったりした。あたしはそこのボーイズバーの子にはまり、毎日仕事が終わると行った。
    毎日働かされてはいるが、時間にルーズなのと、店の中では稼いでいる方だったので出勤時間だけはわがままが言えた。夕方から出勤、なんてのもありにしてもらった。おかげで遊びに行くことができた。

    2005-06-28 21:10:00
  • 467:

    今までで働いた店の中で、一番女の子が仲良くて、多額の借金があっても楽しかった。
    ある日、いつものように店の子と飲みに行った帰りに『もう彼氏なんかどうでもいい〜〜〜♪』と叫んだ瞬間誠ちゃんから電話が鳴った。
    『お前俺のこと本間に好き?』

    2005-06-28 21:11:00
  • 468:

    びっくりして辺りを見回した。聞かれたかと思ったが、誠ちゃんの電話の後ろからは店の男の子の声がしている。そばにいるわけではないようだ。
    誠ちゃんは妙に鋭くて、ほかの人に気持ちが本気で行きかけた瞬間にいつも電話をしてくる。そしてその電話で、いつもあたしの心は誠ちゃんに引き戻される。

    2005-06-28 21:12:00
  • 469:

    しかし、会わないと気持ちは薄れる。“会えない時間が愛育てるのさ”という歌詞があるが、あたしはそのタイプではない。
    遊んで、働いて、借金も少しずつ減って充実した毎日だった。
    昼に出勤して、お弁当を食べていると非通知で着信がかかってきた。出ないつもりだったが、あまりにもなり続けるのでとった。

    2005-06-28 21:14:00
  • 470:

    『おう、久しぶり、健やけど』
    行方をくらました健だった。
    『おう、ちゃうわ、今あたしがどんなことになってると思ってるん!?お金はどうしたん?あんた家の事も嘘やんか。聞いてんからな、ちゃんと!!』
    『俺も今ヤクザに追われて大変やねん』
    お前が大変かどうかなんて知ったこっちゃない。

    2005-06-28 21:15:00
  • 471:

    また電話するわ、といって電話は切れた。非通知だからこっちからは連絡が取れない。どうせもう借金のことはあきらめた。連絡があったてお金は返ってこないだろう。
    そのまま何ヶ月も過ぎた。特に何もなく、誠ちゃんとも電話しかしないまま。

    2005-06-28 21:16:00
  • 472:

    あたしはたまの休みに真美と遊んでいた。真美が、キャッチされたい〜と言うのでひっかけを歩いた。
    堺筋から道頓堀に入ると誠ちゃんの店の従業員にそっくりな子が植え込みに座っていた。でも、あたしには気づかない。きっと違う子だな、と思って声もかけずに通り過ぎた。
    真美のお望みどおり、引っ掛けにはいっぱいホストがいていっぱいキャッチされた。ふと見るとさっきの子が横を歩いていた。

    2005-06-28 21:17:00
  • 473:

    そのままずっと歩いて清水町のあたりまで来た。ローソンに行くと、その子がまたいた。近くで見たけど誠チャンの店の子ではなかった。あたしがトイレに行って帰ってくると真美はその子と喋っていた。私服だったけど、キャッチ中だったらしいホストだった。
    真美はいたくその子を気に入り店に行くと言い出した。あたしは用事があったので先に真美に行ってもらっていた。用事を済ませ、真美に教えてもらってその店に行った。

    2005-06-28 21:18:00
  • 474:

    失礼だが男前が少ない小さな店で、ホストと言うよりボーイズバーのような感じだった。真美のお気に入りのこのお勧めをつけてもらった。タイプではないが、出身地が同じで話しやすく面白い子だった。
    真美のお気に入りの修二とあたしの席に着いた卓の四人でマクドに行った。恋愛対象にはまったく見ていなかったのでものすごいシモネタなんかも話して、4人で大爆笑だった。その後、二人になって、あたしは、今まであったことをほとんど卓に話した。

    2005-06-28 21:19:00
  • 475:

    料金がほかの店より少し安く、男前はいないもののアットホームな楽しい店だったのであたしと真美はそこによく通った。
    何度か、卓の家に泊まりに行ったりもした。でも、卓はあたしには手を出してこなかった。なんだか、本当に友達って感じで、知り合ったばかりなのに、幼馴染くらいの勢いで仲良かった。

    2005-06-30 02:45:00
  • 476:

    そんなある日、仕事が終わって寮に帰り、一緒に住んでいる子達としばらく喋ってから寝ていると友達がすごい勢いで起こしに来た。
    『涼ちゃん、早く起きて!!!』
    遅刻かと思ったが時計を見るとまだ11時。あたしは昨日夜の部にも出勤したので出勤は4時だ。遅刻ではない。友達の勘違いだと思って寝なおした。

    2005-06-30 02:46:00
  • 477:

    『あぁ、もう、またねた!!!起きて、早く!!』
    友達が体を揺さぶる。あたしは揺さぶられて起こされるのが大嫌いだ。
    『うっさいもう!!!涼今日まだ出勤ちゃうねん!!』
    『いいから、大事なもんだけ持って!!早く家から出て!!』
    ・・・何事だ?

    2005-06-30 02:47:00
  • 478:

    何がなんだかわからないまま友達にせかされ大事な物だけを鞄に入れた。向こうの部屋で友達が電話をしている。
    『どこにいったらいいんですか?』
    誰かの指示であたし達は家から出るらしい。
    『なんあったんな?』
    『店に警察入る!!もぅ上の人等事務所とか行かれてパクられたって。ここは寮やからバレるから逃げな!!』

    2005-06-30 02:48:00
  • 479:

    パクられた!?上の人って誰??とりあえず家からは出なきゃ。店の子同士で連絡を取りSONYタワービルの前で待ち合わせた。集まったのは店の事務所がある場所から家の近い、警察が来るおそれのある子達だった。事務所は二つあったので十数人が集まった。時々逃げれた上の人から電話があり、バタバタしていたがいつまでも大人数でいてもどうにもならない。5、6時間ほどしてバラける事になった。どの事務所からも遠い子の家に行く人、遊びに行く人など様々だった。あたしは毎日ほぼ全額を返済に廻していたので所持金が恐ろしく少なかった。あたしより厳しくとりたてられていた由美がなぜかあたしにひっついてきた。行くところがないらしい。パクられたって、いったいこの先どうなるんだろう??

    2005-06-30 02:50:00
  • 480:

    とりあえず夕方まで由美とそのへんで時間を潰した。卓に連絡したかったから、起きる頃まで待った。誠ちゃんはこんな時電話に出なかったし、出たとしても家に置いてくれたりはしない。遊びに行っても泊めてはくれない事から予想できる。あたりが暗くなりだしてしばらくたった頃卓に電話をした。

    2005-06-30 02:54:00
  • 481:

    『ふぁい……』
    電話で起きたらしい。事情を話すと家においでと言ってくれた。やっぱり卓は優しい。ほっていく訳にもいかないので由美も連れていった。
    卓は初対面の由美ともすぐに仲良くなった。自分は出勤しなきゃいけないけど家にいていいよと言ってくれたので、由美と二人で卓を見送った。

    2005-06-30 02:55:00
  • 482:

    テレビをつけるが落ち着かない。あたしは勝手にしばらく卓の家に居座るつもりだったが、由美には行くところがない。友達いないのか!?卓もおそらく今日だけなら由美と二人でいてもいいだろうが、ずっとはきついはずだ。最初に電話した時も卓ははじめは知らない人は入れたくないと言っていたのを丸め込んだのだ。由美も薄々それは気づいているらしくさっきから電話をかけまくっていた。

    2005-06-30 02:56:00
  • 483:

    卓が出勤してだいぶたった。由美の携帯が鳴った。
    『店つぶれたって!!!』
    店がつぶれた!?それはあの地獄のような借金の終わりを意味した。貸し金業の許可などもちろん取ってないのに一般の人にもトイチで貸し付けていた事や、カード詐欺、戸籍売買、偽装結婚、養子縁組など余罪は多々あった。逮捕の決め手はそっちらしい。やっと解放された。

    2005-06-30 02:57:00
  • 484:

    『でも、しばらくは家に帰っちゃだめだって。いつ警察来るかわからんからって……』
    あたしは卓の家にいられるが由美は困惑した表情だ。近くには行くあてがないから、まだ終電間に合うから実家に帰るね、と由美は出ていった。あたしはあわてて卓に電話した。卓は解放されたことを喜んでくれた。

    2005-06-30 02:58:00
  • 485:

    すると誠ちゃんから電話が鳴った。
    『なんやったん??電話。てか未収月末いけるんけ??』
    しまった、忘れてた……。誠ちゃんは店を飛んだから未収も払わなくていいと思っていたけど、代表が家にきたって言ってたんだ。それをトイチとわかりながらも店から借りようと、頼んでいたところだった。つぶれたと言うことは借りれない。どうせなら借りてからつぶれてくれれば良かったのに……

    2005-06-30 02:59:00
  • 486:

    一瞬でいろんな事を考えたが口から出たのは“大丈夫!!”だった。何が大丈夫なもんか、財布には諭吉一人さえもいないのに……

    2005-06-30 03:00:00
  • 487:

    まとまった大金がいきなり用意できるわけがない。こんな時頼れるのは……“サラ金”。それしかない……
    稼ぐ術はあるが援交では職業にならない。どこか外国では娼婦は職業と認められているらしい。その国に産まれたかった……なんて思いながらどうしようか家の中で考えていると更に落ち着かなくなった。卓の飼ってる犬を連れ散歩に出た。どこかちゃんとした店舗に入ろう。一時間ほどブラブラし、出た結論がそれだった。

    2005-06-30 03:01:00
  • 488:

    朝方卓が帰ってきた。二人でいろんな事を話した。卓が彼氏ならいいのに、と少し本気で思った。一つのシングルベットで二人で眠った。甘えたの卓はあたしを抱きしめたまま深い眠りに落ちていった。それが居心地よくてあたしもまた深い眠りに落ちた。

    2005-06-30 03:02:00
  • 489:

    夕方目が覚めると卓はまだ寝ていた。あたしは大手のサラ金に電話をかけた。
    『職業風俗なんですけど借りれますか?』
    『すいません、風俗の方にはご融資できかねます。』
    風俗じゃあかんのかい!
    また違うサラ金にかけた『すいません水商売してるんですけど借りれますか??』
    『大丈夫ですよ、いくらご入り用ですか?』

    2005-06-30 03:03:00
  • 490:

    略 『大丈夫ですよ、いくらご入り用ですか?』

    2005-06-30 03:04:00
  • 491:

    水商売ならいいのか。あたしはまた電話しますと言って電話を切り、今度は求人誌を開いてセクキャバを探し、面接の段取りを組んだ。ユウの時にセクキャバで審査は通ったんだからいけるはずだ。
    面接に受かり、次の日から働く事になった。

    2005-06-30 03:04:00
  • 492:

    ………だるい!!!
    初日の感想はそれ。もとから責められるのは好きではない。舐められるのが気持ち悪い。風俗の時は“あたし責め派なの”的なノリで客にはほとんど責めさせなかった。そしてキスも嫌いだ。客とするのなんてまっぴらごめんだ。でもセクキャバではキスと舐める事しか客は出来ないから、スケベ心丸だしでキスをしてくるし、胸にむさぼりつく。あぁ気持ち悪い……
    審査が通ったら辞めよう。借りてしまえばこっちのもんだ。

    2005-06-30 03:06:00
  • 493:

    サラ金会社から在籍確認をされるから、名前を覚えてもらえるように三日ほど勤め、四日目に申し込みに行った。在籍確認は余裕で出来た。あとは実家への在籍確認だ。携帯が鳴った。
    『審査が通りましたので今から引き落としが可能になります』
    丁寧なお姉さんの声。あたしはテンションがあがった。さっそく引き出す。これで未収が払える。せっかく店の借金がなくなったのに、また借金を背負う羽目になった。

    2005-06-30 03:07:00
  • 494:

    お金をおろしてからは気が楽になって、友達とご飯を食べに行った。店長から携帯が鳴りっぱなしだ。出るわけがない。もう出勤する気なんてないのだから。次の日の昼になっても店長からの電話はなり続けた。やりすぎだろ……と思い仕方なしに電話に出て辞めることを言った。なんだかんだ言っているがうるさいので切り、着信拒否にした。

    2005-06-30 03:08:00
  • 495:

    やっぱりセクキャバは合わない。あたしは風俗向きだ。と思ったが、本番屋にいた時の稼ぎを考えると、バックを引かれていたから少なかった物の、引かれていなければ相当な稼ぎだ、ということに気づいてしばらくどこにも入らなかった。
    ずっと卓の家にいてしばらくしたころ、あの本番屋の頃に寮で一緒に住んでいた子から電話が鳴った。

    2005-06-30 03:09:00
  • 496:

    『あの家、明後日までに空にしてってゆってるから涼ちん一緒に荷造り行こう』
    明後日までに空にってまた、この人たちは相変わらずむちゃくちゃだ。由美は一足先に荷物をほぼ持っていったらしい。色をかけられていたホストにホイホイだまされてまたどこかの本番屋にいると聞いた。そこでもまたバンスしたらしく、監獄のような生活をしているらしい。あたしは誠ちゃんの家に住む事になったので荷物を箱詰めして宅急便で送った。女三人で住んで物で溢れかえっていた家はもぬけの空になった。

    2005-06-30 03:10:00
  • 497:

    あたしは誠ちゃんの家で仕事もせず毎日過ごした。久しぶりに何もしないでいい毎日が続いた。お金がなくなったら援交して、食いつないだ。元からインドア派なのでどこにも遊びに行かず引きこもりみたいな日々をすごした。
    誠ちゃんの家には誠ちゃんの友達秀が住み着いていた。誠ちゃんと同じ店で働いていた子なのであたしも仲良かった。しかも誠ちゃんはろくに帰ってこなくて毎日秀と一緒だった。これじゃ誰が彼氏かわからない。

    2005-06-30 03:11:00
  • 498:

    忙しすぎる毎日から離れだらだら過ごすのも半月もすれば飽きてきた。やることのない毎日は退屈で仕方なかった。仕事しよう。家にあったヘブンをぱらぱらめくり、適当に探して、入店した。毎日秀に見送られ、帰って来ると笑顔で秀が迎えてくれた。たまに一緒にスロットに行ったりして、可愛い弟ができたみたいだった。

    2005-06-30 03:12:00
  • 499:

    来月には出て行けよ、と誠ちゃんに言われたのは月半ばだった。元から一人が好きな誠ちゃんは誰かが家にいるのが嫌らしい。嫌だといっても聞きそうにないので承諾した。普通のカップルならありえないんだろうが、現役時代も店で会うのを除けば二ヶ月に一回くらいしかあわなかったから、違和感がなかった。
    幸い入店した店がマンヘルだったので店泊して暮らすことにした。

    2005-06-30 03:13:00
  • 500:

    休みの日にブラブラ真美と商店街を歩いていたらキャッチしてくるのは《えっ・・・》と言わんばかりのレベルの男ばかりだった。お金を払って不細工となんか飲みたくない。元から面食いだし、シカトして歩き続けた。
    『なぁなぁどこ行くん?』

    2005-06-30 03:14:00
  • 501:

    とりあえず顔を確認してみた。・・・めっちゃ男前やん・・・あたしは固まった。これがあたしと龍の出会いだった。しばらくそこで話をして番号を交換した。二人でキャッチしてきたが真美をキャッチしたほうは真美が気に食わないらしく真美の番号をゲットできなかった。
    わがままな真美に振り回されもう一度商店街を引き返す。雨が降ってきた。引っかけを渡りきって商店街に駆け込むとそこに龍がたっていた。でも気づいてなさそうだったので声をかけなかった。すると向こうから近づいてきた。

    2005-06-30 03:15:00
  • 502:

    『店来る気になったんかぁ?』
    いやいやそういう訳じゃ・・・と思ったが雨で人通りもなく、寒い外にいるのはかわいそうだな、と思い幸い余裕もあったので真美を説得して店に行った。
    初回料金で十分楽しめたし、何より龍はホストっぽくなくて話しやすかったし、なんといっても顔がタイプだった。これまでも誠ちゃんと付き合いながら時折キャッチで店に行ったりしていたが久々のヒットだった。

    2005-06-30 03:16:00
  • 503:

    あたしはどんどん龍に惹かれた。仕事が終わると毎日龍の店へ行った。店泊していたから龍の店から家まですぐだったし、なかなかに稼げたので毎日遊べた。別に誠ちゃんと会うわけじゃないし、ばれないしいいや。龍にどんどんはまっていった。
    会わないから疑われることもない。稼ぎも使った額も、誠ちゃんには把握できない。旦那が出張中の人妻みたいな気分だった。龍は毎日メールをくれたし電話もくれたし、やさしかった。客って楽だな、と思った。この頃になると、《人を本気で好きになるのってしんどい》と思い始めていた。お金でつながった関係のほうが楽。客であればつなぎとめようと、金を使わそうと、優しくしてくれる。居心地いいし、楽だし。性根まで腐ってきたようだ。

    2005-06-30 03:17:00
  • 504:

    あたしは日替わりで遊ぶ店を変えていたが、龍にはまってからはほとんど龍の店でだけ遊んだ。よく通ってた店の誰かがラストだとか、誕生日だとか言う日以外は毎日行った。よそに行った日でも、ラストまではいずに、一時間だけでも龍の店に行った。頼まれればシャンパンも卸した。ボトルだって入れた。一晩で何十万も使った日もあった。龍のために毎日働いた。そうすれば、優しくしてもらえるから・・・

    2005-06-30 03:18:00
  • 505:

    でも龍の店は基本的にヘルプとあたしがそりが合わなくて、長居するにはちょっとしんどかった。龍がついていればいいがヘルプだけだとしゃべる気にもなれなかった。もちろん気の会う子もいたが、それは店の中でたった一人、しかもナンバーに入っている子だったのでそんなにいうほどヘルプには来ないし、龍がいなければつまらない空間だった。誠ちゃんの店ほど従業員の教育がしっかりしていないのもまた、面白くない原因だった。あたしは龍についてほしいがために、お金を使った。太客になれば大事にしてくれるだろう。そう思ったからだった。

    2005-06-30 03:20:00
  • 506:

    太客になれたのか、そうじゃないのかはよくわからないが龍は優しかった。本気になったらしんどい、そう思っているはずなのに、お金で割り切ったほうが楽だと思っているのに、あたしはだんだん本気で龍のことが好きになってきた。信じたって無駄、相手はホストなんだから。頭ではそう思っていても、心がうまくコントロールできない。

    2005-06-30 03:20:00
  • 507:

    龍と付き合いたい。龍の彼女になりたい。そんな思いが日に日に強くなっていく。歯止めをかけようと思ってもきかない。好きだけど、好きになりたくない。龍が売り上げのために優しいのはわかっているけど、心のどこかでは、そうじゃないと思いたかった。

    2005-06-30 03:21:00
  • 508:

    誠ちゃんが優しかったのは最初だけ。後はほんとにヒモみたいになっていた。彼氏なんだかヒモなんだかわからない。でも、付き合いが長いので情もある。龍のことが好きでも、誠ちゃんの事は切れないでいた。最初の頃の優しさが、忘れられない。愛されてると実感できたあの頃が、続いているとは到底思えないような関係でも、続いていると思いたかった。

    2005-06-30 03:22:00
  • 509:

    誠ちゃんは酔っ払ったときくらいしか電話をかけてこない。そんなときには決まって、好きだよ、と言う。その言葉が本音だと信じたい。誠ちゃんにとってあたしは必要なんだって思いたい。でも、誠ちゃんはけしてそんなことを口に出してはくれないし、酔ってなければ電話さえない。誰がどう見たって、この状況は、あたしのことを好きだとは思えない。

    2005-06-30 03:24:00
  • 510:

    だから代わりに誰か、必要としてくれる人がほしい。お金のためでもいいから優しくしてほしい。誠ちゃんはお金はせびるけど、このごろではまったく優しくなかった。あたしの中で、龍と付き合いたい気持ちが膨らんでいく。
    ある日、めったに酒を飲まないあたしが飲まされ、酔っ払った。あたしは龍にからんだ。《いつになったら付き合ってくれんの?》《どうしたら彼女になれるの?》立派な痛客だ。酔っていても、記憶をなくすことはなく、覚えているから余計に嫌だったが、酔うと止められなかった。思いが溢れて、吐き出してしまう。

    2005-06-30 03:25:00
  • 511:

    酔った勢いに乗って、帰りのエレベーターで龍に抱きついた。龍も酔っていたからか、あたしを抱きしめてくれた。嬉しくて仕方なかった。店では何もできないけど、エレベーターなら誰も見ていない。その瞬間だけは、あたしだけの龍だ。
    一度自分の思いをぶつけてしまったら、しらふでもいえるようになった。この頃から、龍とけんかすることが増えた。二、三日に一回は軽いけんかをし、二週間に一回くらい大喧嘩をした。

    2005-06-30 03:27:00
  • 512:

    軽いノリで『付き合って』と言ってみたりもした。『そんな簡単に言うなよ〜』と流されて終わった。軽く言うんじゃ、伝わらない。今度は真剣に言ってみた。【正直お前より使ってる人もおるし、その人に申し訳ないから無理】という返事が返ってきた。お金で決まるのか!?と思うと腹が立った。ホストらしい返しだな、とも思った。

    2005-06-30 03:28:00
  • 513:

    その人が使う額は、あたしには到底及ばないような額だった。無理に決まっている。
    あたしと、龍の喧嘩はいつも何気ない会話から突然始まる。だから、あたしは喧嘩の内容は覚えていても、何から喧嘩になったかが思い出せない。龍はあたしの一個下だったがあたしも龍も子供だしB型だしで、お互い子供だった。大概はあたしが折れた。でも、どうにも納得いかないときは意地でも折れなかった。真剣に話せば話すほど、どっちも引かない。

    2005-06-30 03:29:00
  • 514:

    『じゃぁお前は何のために店に来てるん?何をしに来てるん?』
    喧嘩の中で言われた。やっぱり、何から喧嘩になったか、覚えていない。でも、そのときすごくいらいらしてたのは覚えている。
    『そんなこと聞いてどうすんの?聞いて、あんたなんか変わるん?答えによって、変わるんか?』
    言いたくなかった。言ったら龍を困らせることくらい、わかっていた。

    2005-06-30 03:30:00
  • 515:

    『なんやねん、言えや。はよ言えや。』
    口調が怖い。こっちは気遣って言わないでおこうとしてるのに。龍を困らせたくない。そう思ってるから言わないのに。あたしの中で何かか切れた。

    2005-06-30 03:32:00
  • 516:

    『あんたに会いに来てんねんやんけ!しんどいやろうし、外で会われへんから、店にこな、会われへんから、店に来て金使ってでも会いたいから来てんねんやんけ!これ聞いて、あんたはどうするん?なんか変わるんか?困ったやろ?だから言いたくないっつってんやんか!』
    龍はびっくりした顔をして、そして、はぁ…とため息をついた。ほら、やっぱり困った。思ったとおりだ。だから言いたくなかったのに。

    2005-06-30 03:34:00
  • 517:

    『だから、色とか使われへんって言ってるやんけ。お前が思ってるよりホストの仕事ってしんどいねんぞ?ここまで上がってくるのに、俺は楽してきたわけじゃない。正直辞めたいけど、辞められへんから働いてんねん!』龍が声を荒げた。
    しかも答えがなんだか噛み合っていない。誰も外で遊べとは言ってないし、今まで楽してきたとも言っていない。ホストの仕事が楽だとも…

    2005-06-30 03:36:00
  • 518:

    思い出した、喧嘩のはじめはあたしが【あんたのエースより使ったら、あんたなんて言って付き合うん断るんやろうね】と言ったからだ。あたしは、お金を断る基準にされたことが気に食わなかった。そして、そんなことで断っておいて、店に来る意味を聞いてくる龍に腹が立ったんだ。

    2005-06-30 03:37:00
  • 519:

    あたしが怒ったところで付き合ってくれるとは思わない。ただ、ああいえば、本当の断る理由が聞けるかもと思ったからだ。
    『お前より使う人がおるから付き合われへんって言うんやったら、そいつと付き合ってんのかって話しになるやん』
    『俺は、今すぐには無理やけど、お前といっぱい約束してるやん。絶対守るっていったやん。お金で付き合うかどうかを決めてるんじゃない』

    2005-06-30 03:38:00
  • 520:

    お金の話を出したのは、彼女がいるってなったら客が切れるかもしれないと言う意図からだったらしいが、あたしはそこまでわからなかった。龍は、何で今ホストをしているかを話してくれた。しかも、泣きながら。正直焦ったが、うれしかった。そして、言いたくないことまでいわなければならない状況を作った自分を反省した。

    2005-06-30 03:39:00
  • 521:

    『お前の好きにしたらいいよ。もう、こんでもいいし。』
    嫌われたかもしれない。
    あたしと龍は、喧嘩の後いつも筆談をするのがお決まりだった。お互い、意地っ張りで素直に謝ったりできないからいつもあたしがノートに書いて、龍にペンと一緒に渡す。そのまま、紙の上で会話する。あたしはいつものように、ノートとペンを取り出した。龍はわかったのか、隣で黙って書き終えるのを待っていた。

    2005-06-30 03:42:00
  • 522:

    紙の上でなら、あたしは素直になれる。言いたくないことまで言わせてごめんね、系の事を、ノートの半分くらいまで使って書いた。
    “もう、あんなに困らせへんから、切るとかやめてな?”恐る恐る書いて、龍に渡した。龍はタバコをくわえたまま笑った。
    “切るとか何やねん笑 考えすぎやって”と返ってきた。ほっとした。

    2005-06-30 03:43:00
  • 523:

    中身を知らなきゃ付き合えない、と言うのは前から言われていたのだが、あたしは【付き合いながら知っていけばいいやん】と思うタイプだったので、どうもほかの理由があるような気がしてならなかった。
    でも、もう今日みたいに、龍にあんな思いをさせちゃいけない。あんまり素直になりすぎるのも問題だな、と思った。

    2005-06-30 03:44:00
  • 524:

    龍は、あたしのことは特別だと言う。
    毎日連絡することなんてないと。ほかの客には三日にいっぺんだったりして普通だと。
    外で会うのだって、みんな断っている。でも、お前とは約束してるやろ?だから、特別だ、と。

    2005-06-30 03:45:00
  • 525:

    二回、あたしの友達が龍の先輩だから、4人でご飯を食べに行ったことはある。龍からすれば、断れる状況なのに行ったんだから、お前は特別だ、と。
    特別だとは言ってくれても、付き合ってはくれない。もどかしかった。そんなに特別なら、付き合ってくれればいいのに、といつも思っていた。
    あたしの頭は毎日龍でいっぱいだった。誠ちゃんのことなんて全く考えなかった。

    2005-06-30 03:47:00
  • 526:

    その日、あたし真美とバーに向かった。昼近くまで開いているそのバーは料理もおいしくよく真美といっていた。その日は、あたしの友達もいて3人で飲んでいた。話の流れからそこのバーテンの子二人とカラオケに行くことになった。
    それからしばらくあたしは龍の店にも行かずに、夜はすぐに寝ていた。
    日曜日、仕事の後に真美とよく行くカフェでまったりしていた。二人ともまっすぐ家に帰るのはなんだか好きじゃなくていつも寄り道して帰っていた。

    2005-06-30 03:48:00
  • 527:

    龍専用の着メロがなった。日曜日なのに?と思いながら電話に出る。
    『おはよう・・・』寝起きなのか、声が重い。
    『おはよ〜、どしたん??日曜やのに』
    『お前さぁ・・・好きな男出来たやろ』
    は???????

    2005-06-30 03:49:00
  • 528:

    『なにゆーてんの?何のことか全くわからん笑 ネタ?』
    『セブンの男とカラオケ行ったやろ』
    何で知ってんねん…ってかカラオケ行っただけで好きな人???
    『行ったけど…二人じゃないで?5人やで?』
    『え、そうなん?』
    明らかに声のトーンが変わった。二人で行ったとでも思っていたのか?てかそもそも誰に聞いたんだ?あの二人と顔見知りだとは思えないし…カラオケに行っただけで好きな人だと思っているとも思えない。

    2005-06-30 03:50:00
  • 529:


    明らかに声のトーンが変わった。二人で行ったとでも思っていたのか?てかそもそも誰に聞いたんだ?あの二人と顔見知りだとは思えないし…カラオケに行っただけで好きな人だと思っているとも思えない。

    2005-06-30 03:51:00
  • 530:

    『俺今日営業行こうかどうしようか迷ってんねん』
    明らかにいつもの龍とは違う。龍はそんなことで悩まない。たとえ誘われても、行かないと即決するはずだ。なんとなく【行かないで】と言って欲しいんだろうなと思った。

    2005-06-30 03:53:00
  • 531:

    次の日、店に行くとデッキを忘れたらしい。
    『も〜明日こそ持ってきいや?』
    『終わったら電話するから。待ってて。』
    びっくりした。初めて言われた。待ってるって事は、店が終わった後に会うって事だ。(当たり前だけど)
    絶対、バーテンの子とカラオケに行ったのが関係してるんだと思った。あの時カラオケ行ったことが、こんな形で幸福に変わるなんて思っても見なかった。

    2005-06-30 03:55:00
  • 532:

    名無しさん

    おぉ?い?

    2005-07-05 00:17:00
  • 533:

    連絡が来るのを待って、合流した。明るいところで見る龍もかっこよかった。デッキをもらって、ゲーセンに寄って、お昼ご飯を食べて帰った。ほんの2時間ほどだったけど楽しくて、幸せな時間だった。
    しばらくは喧嘩もなく、穏やかな毎日だった。毎日は店に行かなかったけど、週4日くらいは行っていた。

    2005-07-05 00:22:00
  • 534:

    土曜日に、誠ちゃんと会うことになった。何ヶ月ぶりだろう。しかも、服が欲しいとわがままを言うので、例のバーテンの子に頼んで着なくなった服を譲ってもらって、それを渡す為だった。

    2005-07-05 00:23:00
  • 535:

    デートと呼ぶには程遠い。しかも、ブランドのものばかり欲しがったので、ただでもらうわけにも行かず、買い取ったのだ。結構な額になった。
    “服くれるときにしゃぁなしであそんだる”と言われていた。前々から思っていた【こいつはあたしのことを好きなのか?】と言う疑問が増長する。

    2005-07-05 00:24:00
  • 536:

    真美といつものように仕事終わり二人で歩いていた。店にいたときから、誠ちゃんのことを話していた。どうしても気になる。お金が目当てだとしか思えない。物をあげる代償に会うという事は、あたしのことを好きなわけではない、と肯定するのに十分だった。
    何時にするかも決めていないのに、昼から何度も電話をかけているが出なかったから、真美とビクドンに入りまたかけた。やっぱりでない。ハンバーグを食べながらどうなんだろう、とずっと真美と討論していると電話がなった。誠ちゃんだった。

    2005-07-05 00:25:00
  • 537:

    『明日何時にすんの?』
    『服もらってくれた?』
    あたしと会うのが目的じゃないのは、明らかになった。服のためだ。あたしは、服のついでだ。悲しさと、怒りがこみ上げた。

    2005-07-05 00:26:00
  • 538:

    『あたしはあんたのなんなん?』長年積もった疑問を、思い切ってぶつけた。
    『は?なんやねんそれ??』
    『金目当てじゃないの?物とか、お金が欲しいから付き合ってんの?』言ってしまった。どうなるだろう。
    『もうお前、そんなん言うんやったら別れよ。』
    別れる・・・???

    2005-07-05 00:33:00
  • 539:

    昔の誠ちゃんなら“誤解させたんやったらごめん、違うで?”と言ってくれていた。やっぱり、もうあたしのことなんてとっくに好きじゃなかったんだ。物やお金をくれるから、この人はあたしと別れなかったんだ。

    2005-07-05 00:34:00
  • 540:

    『そんなんで別れようって言うんなら、あんたやっぱり涼の事なんか好きじゃなかったんな?』
    『勝手にそう思っとけや!!』
    『何で違うって言ってくれへんの?怒るって事は違うんやろ?』
    『俺はそんなんよう言わんのじゃ!もう勝手にどうとでも思っとけや!お前俺の事半分くらい信用してへんかったやろ。いや、半分以上か・・・』

    2005-07-05 00:35:00
  • 541:

    大事なところで、大事なことをこの人は言わない。別れてもいいと思っていた。龍のことが好きだから。でも、涙がこぼれた。
    『ほかのやつに大事にしてもらえや。俺以外の男と付き合ったら、お前の望むようなやつおるやろ。付き合う相手が俺じゃなかったら、お前は幸せなれるんちゃうけ』
    もう、戻れないんだ。と直感で思った。

    2005-07-05 00:36:00
  • 542:

    『俺がホストやめんかったらよかった。そしたらお前もそんなこと気にせんかったやろ。“ホストやししゃぁない”って思ってくれたやろ。俺はホストしてから考え方変わってもうた。辞めへんかったらお前ともずっと付き合っていけたかもな』
    そんなことを言われたのは初めてだった。

    2005-07-05 00:37:00
  • 543:

    『俺、今まで一年以上女と続いたことなかった。お前が初めてやってんで。あんまりあわへんかったんもお前は、あたしやから会わんかったとか思ってるかも知れんけどみんなそうやってんから。誰かと付き合って、幸せなって俺を見返したらいいねん』
    もう、誠ちゃんの心は決まってしまったようだった。
    否定してくれない誠ちゃんに腹が立った。

    2005-07-05 00:38:00
  • 544:

    また、同じ過ちを繰り返した。誠ちゃんの態度は、もうずっと前から、はじめのうちとは変わっていた。
    剛のときと同じ、最初のころの姿にしがみついてたあたしが悪い。
    この人なら、あたしを愛してくれると思った。
    ずっとそばにいるといった言葉は本当だと思いたかった。
    ずっとそばにいてほしかった。

    2005-07-05 00:39:00
  • 545:

    『自分のした悪いことはいつか自分に返ってくるねんで』
    いつだったか真美に言われた言葉を思い出した。

    2005-07-05 00:40:00
  • 546:

    バーテンの子にもらった服は男物でサイズがでかいしあたしが着る訳にもいかない。しかも新品ではないからほかの人にあげるのも気が引ける。本人に返すなんてもってのほかだ。仕方なしに服を渡すのと、置きっぱなしの荷物を取りにいくため次の日誠ちゃんの家に行く約束をした。

    2005-07-05 00:42:00
  • 547:

    誠ちゃんの着信で目が覚めた。
    お風呂に入って用意をしていたら『遅いからスロット行ってくる』と電話がかかってきた。昨日別れ話をした、いや、別れた事などまるでなかったかのように。
    結局、思いつきで行ったスロットが出たらしく、会うのは夜中になった。家につくと、10分くらいして、啓太が来た。啓太はあたしの友達の元彼だ。四人でよく遊んだ。それにしてもなんと間の悪いときに来るのか。

    2005-07-05 00:43:00
  • 548:

    別にやり直したいとは思わなかったけど、あたしは誠ちゃんの本当の気持ちが知りたかった。それを、話したかったけど恥ずかしがりの誠ちゃんが、啓太の前で本音など言うわけもなく、またあたしも啓太の前で本音をさらけ出すことはできない。

    2005-07-05 00:44:00
  • 549:

    3人で前みたいにテレビを見ながらしゃべる。本当にこいつは昨日の事を覚えているのだろうか??あたしたちは、こんなあっさり終わってしまっていいのか?寝起きだったから、まさか覚えてないのか???いろんなことが頭を駆け巡る。
    『そういや涼ちん最近美紀と連絡取ってんの??』美紀というのは啓太の元かの、つまりあたしの友達だ。

    2005-07-05 00:45:00
  • 550:

    『あぁ、今日電話したよ。』
    『何はなしたん??』
    『誠ちゃんと別れる事になったぁ〜って。』
    『えぇ!?!?』
    誠ちゃんは啓太にも話していなかったようだ。しかも、啓太が驚いてるのを見て
    『別れる事になっちゃった』と軽く言った。
    覚えていた・・・

    2005-07-05 00:46:00
  • 551:

    略 
    『別れる事になっちゃった』と軽く言った。
    覚えていた・・・

    2005-07-05 00:47:00
  • 552:

    啓太がいる前ではどっちも本音で話はできない。ちょうどあいのりがやっていたので話題はそこに集中した。そんな話をしに来たんじゃない・・・誠ちゃんの気持ちを聞きに来たのに・・・
    誠ちゃんは啓太の好きな子にいらん事を言って、なんやかんやあったらしく、それどころじゃなかった。あたしはたくさんの荷物を持って、タクシーで帰ることにした。もう、諦めた。気持ちを聞いたら、変に離れられなくなるような気がした。好きだったことを確認しても、誠ちゃんの心はもうあたしには返ってこないだろう。

    2005-07-05 00:48:00
  • 553:

    家のすぐそばにタクシー乗り場があるので、そこまで持っていくのは重いから持って行ってと頼んだら、面後くさいといわれた。しかも、啓太が『俺が持ってったるわ。優しいやろ笑』と言って持ってくれた。『お前啓太に乗り換えたら?』・・・笑えねぇよ・・・。どーゆー神経してんだ こいつ・・・

    2005-07-05 00:52:00
  • 554:

    タクシー乗り場にタクシーはいなかった。片田舎なんだから仕方ないか・・・三人でタクシーを待った。なぜかその間、あたしは啓太とばかりしゃべっていた。
    『もう涼ちんとあわへんのかなぁ・・・』何でお前が寂しそうにそれを言う!?あたしは誠ちゃんからその言葉がほしかった。言ってくれないのも・・・わかっていた。

    2005-07-05 00:53:00
  • 555:

    通りがかったタクシーを止め最後のさよなら。貸りてた金は、返す、といっていたから一回は会うだろうが、それもいつになるやら・・・最後だけど、涙は出なかった。
    啓太が『ばいばい』と言った。誠ちゃんは何も言わず、啓太の後ろからあたしを見ていた。

    2005-07-05 00:55:00
  • 556:

    最後になると思っていたのに、玄関横の棚にまだたくさん荷物があったのを思い出した。う〜ん…電話しにくい…でも仕方ない。
    『もしもし?玄関横の荷物忘れたわ…』
    『また……取りに来たらええやん?』

    2005-07-05 00:57:00
  • 557:

    恥ずかしそうな声だった。真意はよくわからないが、あたしはたぶんもう誠ちゃんのところには戻らない。あたしの為でもあるけど、誠ちゃんの為でもある。価値観が変わった理由はホストを始めたからと言ってもあたしが望む物を全て与えていなければ、あそこまで歪まなかったはずだ。金で人は変わる。剛の時に実感したはずなのに。同じ事を繰り返してしまった。今更気づいたって遅い…植え付けられた妙な価値観はそうそう変わらないだろう…ごめんね誠ちゃん……

    2005-07-05 00:58:00
  • 558:

    あたしはこの頃になると店舗を変え、今度はホテヘルにいた。真美が先にそこに入って、真美の薦めで入った。なかなか回転も良く、スタッフとも仲良くやって楽しい仕事時間だった。
    『優花ちゃん、予約のお客さん来たよ。ホームページでの予約やってんけど…めっちゃ若い子やで!まだ10代ちゃうか??』
    へぇ珍しいな〜と思いながら化粧直しを終わらせエレベーターの前に立つ。

    2005-07-05 00:59:00
  • 559:

    『お待たせいたしました。優花ちゃんでお待ちのお客さま!行ってらっしゃいませ!』
    『初めましてぇ〜優花で……す』
    目の前に立っていたのは剛だった。
    いやいや…なんでコイツがここに!?気づかない振りをして他人と言い通そうかと思ったが無理がある。

    2005-07-05 01:00:00
  • 560:

    『なんでココわかったん…?』
    『適当にエロサイト見てて…いろんな店のホームページ見てたら載ってたから…すげぇ会いたくなって…』
    よくもまぁあんな別れ方をしたのに来れたな…てかエロサイト見てたとかあっさり言うなよ…

    2005-07-05 01:01:00
  • 561:

    『俺らってやっぱ別れたん??』
    寝ぼけているのか!?別れたあの日からもう一年半経っている。
    『えっ、どんだけ経ってると思ってんの!?別れてないんやったら連絡もするやろ?ずっとしてないって事は別れたんやで??まさか別れてないってずっと思ってたん??』
    『あんな風に最後になって…ほんま後悔してんねん…しかも風俗してるとかめっちゃショックやし…』

    2005-07-05 01:02:00
  • 562:

    ショックやし、と言われても隠してただけでずっと前からあたしは風俗嬢だ。さんざん好き放題しといて今更なんなんだ。彼氏が欲しい気持ちは正直あったけどこいつだけはごめんだ。またあんな思いはしたくない。あたしは今度こそ、ちゃんとあたしを愛してくれる人と付き合いたい。

    2005-07-05 01:03:00
  • 563:

    『風俗してるのショックやったら涼とは付き合っていけやんよ。知らんかったやろうけど涼もうこの業界五年目やから』
    『前みたいには…なられへん?』
    話を聞け!と言うか、なれるわけがない。自分のした事考えてみろ!!と言いたかった。でも悲しそうな顔の剛にそんな事は言えない。

    2005-07-05 01:04:00
  • 564:

    そこから延々戻ってきてと言われ続けた。今までのあたしなら、寂しさから戻っているかもしれない。でも今のあたしには龍がいる。片思いで、辛くてしんどいけどほんとに龍が好きだった。
    ピピピピピ…タイマーが終わりを告げる。いくら元彼でも今はタイマーに従うしかない。再会はおしまい。

    2005-07-05 01:05:00
  • 565:

    『よろしかったらまたいらしてくださいね』
    思いっきり営業用の声で言い、剛に背を向けた。そしてもう二度と会わないことを願った。

    2005-07-05 01:06:00
  • 566:

    剛は限りある【嫌いになって別れた】人なのであたしが好きだった頃の気持ちに戻ることはない。はぁ、テンション下がった…時計を見ると12時過ぎ。龍に電話をしてみよう♪
    『はぁい?どしたん?』
    優しい龍の声。特に用事はなかったからちょっとだけ喋ってすぐ切った。わずかでも声が聞けたことが嬉しい。もうすぐ龍の先輩のイベントがある。それまでは少し店に行くのを控えようと思っていた。智也以来の久しぶりすぎる片思い。どうしていいかわからない。それもまた、楽しかった。ドキドキするってこーゆー事だな〜と思った。

    2005-07-05 01:07:00
  • 567:

    龍の先輩のイベントの日が来た。あたしは友達のバーに寄ってから行った。いろんな人からすごく慕われている先輩の最後の日だ。どうせ混んで放置になるだろうからいいや、と思って朝方行った。

    2005-07-05 01:08:00
  • 568:

    案の定、店の前にはすごいスタンドの数。店内は人で溢れ返っていた。隅っこの席に座る。もう、主役の先輩はベロベロだ。龍が来た。
    ・・・・・真っ赤。

    2005-07-05 01:09:00
  • 569:

    龍も酔っていた。嫌な予感がする。案の定シャンパンの話になった。卸したくないといっていたけど、こいつは酔うと厄介なので言うことを聞くしかなかった。別に、そんなに切羽詰っていたわけでもないし、ラストくらい祝ってあげたかった。でも、みんな酔ってるから、ロゼを二本にしようと言う話になった。

    2005-07-05 01:14:00
  • 570:

    あたしもドンペリやクリュグのあの酸っぱい味がネクターを入れてもどうも苦手なので承知した。
    テーブルの周りにみんなが集まってくる。

    2005-07-05 01:16:00
  • 571:

    『まぁたまた続いて涼ちゃんからっ!!ピンドンいただきましたぁ〜〜っ♪』
    コールが始まる。集まってきた中に、先輩の姿はなかった。まぁ、あれだけ飲んでるし、仕方ないか。二本目が空になる寸前に先輩は来た。
    『それでは最後は卓也君の一気〜〜♪』
    先輩は瓶を持っていたが、それを横からジンが取り上げ、飲み干した。

    2005-07-05 01:17:00
  • 572:

    『ではでは、最後に卓也君のために、ピンドン二本!降ろしてくれた涼ちゃんに一言!!』
    『・・・・・飲みたりひん』
    『主役の卓也君もこう言ってますし!どうでしょう、涼ちゃん??』
    周りではもう一本もう一本と言っている。そんなに予算はない。しかし、断れる状況ではない…あたしのほうにマイクが向けられる。こんな状況で、無理ですだなんて言える奴いるのか?そんな人がいるならうらやましい…なんてことを一瞬で考えた。でも、空気を壊すわけには行かない。

    2005-07-05 01:18:00
  • 573:

    『まだまだ飲め〜っ♪』
    『ピンドンもう一本いただきましたぁ〜っ!!!』
    結局そのまま合計5本がおりた。

    2005-07-05 01:20:00
  • 574:

    三本目を降ろす前に、横にいる龍に『こんな状況じゃ断られへんやんけ』といったが、龍も酔っ払っているし、ごめん、だけで終わった。あたしも飲んだし、酔いが回ってきた。
    五本卸したことは別にかまわない。ちょっときついけど。何が納得いかないって、飲みたりひん、と言ったくせに、卓也は三本目にしか口をつけなかった。シャンパンコールが終わる頃には、姿さえなかった。

    2005-07-05 01:22:00
  • 575:

    コールが終わって、静かになった店内。横にいるのは困惑した表情の龍。
    『ごめん、こんないくなんて思ってなかった…』
    『思ってなかったっつーかな、あの状況で断るんは無理やろ!なぁ。あんなけ盛り上がられて、どうかな?言われて、無理ですなんて言えると思うか??』
    酔いが回っていたせいもあり、またなかなかきつい言葉を吐いた。

    2005-07-05 01:25:00
  • 576:

    『だからごめんってゆうてるやんけ!!どうしたらええねん?卓也さん連れてきて謝らしたらええんか?被った奴連れて来て謝らせたらええんか?』
    『そんなことせんでいい!!』
    あたしの言葉も聴かず、龍は卓也のほうへ向かった。あんな怒った顔をしている時はやばい。
    ばか!!!!!!
    あたしは走って龍を追いかけた。

    2005-07-05 01:29:00
  • 577:

    『いいっていってるやろ!!!!』叫びながら龍の手を引き連れ戻す。
    『あほか!?そんなこと本人にゆう奴がおるか!!最後の日にそんな事言われたら卓也がどんな気になるかわかって言おうとしてんのか?涼は、それが納得いかんかったってゆうただけ!!卓也に謝ってほしいなんて思ってない!!』
    『煽り止めれへんかった俺が悪かった…ごめんな?機嫌直して?』
    あたしに怒鳴られてちょっと正気を取り戻したかいつものやさしい龍に戻った。

    2005-07-05 01:42:00
  • 578:

    潤んだ龍の目が子犬みたいでかわいかった。
    『もう怒ってないよ。涼も叫んだら落ち着いたし。』
    『そっか、よかった。ほんまごめんな?』
    ちょっと待っててな、と言い、龍は違う客の席へ行った。

    2005-07-05 01:46:00
  • 579:

    いつものごとく放置プレイ。あたしはズケズケものを言うからここのヘルプから怖がられていた。形だけ、席にはつくものの黙ったままの子も多かった。別に無理に飲ませたりはしない。ただ、面白くない喋りにはなんとも冷たい反応をしていたと思う。そのせいか普段から誰もヘルプに来なかった。だから、誰もついてなくてももう慣れっこだ。ボーっと携帯を眺めて暇をつぶす。

    2005-07-05 02:11:00
  • 580:

    シャンパンコール連発だったのでよその席を眺めたり、お客さんの表情を見たり、よその席で接客している龍を見たり。満席なだけにどこを見てても飽きなかった。
    ふっと龍に目をやる。今まで被ったことのないお客さんだった。

    2005-07-05 02:15:00
  • 581:

    薄暗い店内で、あたしは目が悪いからよく見えなかったけど若い子ではなさそうだ。視線がテーブルに釘付けになった。
    そのお客さんと龍は向かい合って座っていた。手をつないで喋っている。ファミレスによくいる、料理が来るまでの間テーブルの上で手をつないでるカップルのように。

    2005-07-05 02:16:00
  • 582:

    仕事なんだから。酔っているし、別に手をつなぐことにそんなたいした意味があるとは思えない。接客中に無下にやめてくださいとも言えないだろう。気にしない気にしない。
    そうは思っていても気になる。視線はそこにばかり行くようになった。
    まだ繋いでいる。まぁ、繋いでいると言うより、龍の手をお客さんが一方的に持っていると言った感じだが。他の席を見ようと思っても、気になる。まだ繋いでいる。落ち着かない。さっきからもうタバコは消しては付けて、消してはつけての繰り返し。

    2005-07-05 02:17:00
  • 583:

    龍が席を立った。違う子が同じ位置でヘルプにつく。そのお客さんはその子の手も、同じようにした。ただのスキンシップが好きな人か…??ちょっと落ち着いた。

    2005-07-05 02:18:00
  • 584:

    龍が伝票を持ってそこの席に戻ってきた。もう帰るんだ。
    お客さんが席を立つ。龍が前を歩く。お客さんは前を歩く龍の手に手を伸ばし、手を繋いだ。
    『ありあ〜っす!!!』と響く声が、すごく遠くで聞こえたような気がした。

    2005-07-05 02:19:00
  • 585:

    手を繋いだ・・・今度は、ほんとにちゃんとしっかりと。あたしの席の真横を通ったときに。それは偶然だろうけど・・・顔はどっちかと言うと老けていた。30代にも見えそうなくらいに。
    でも、確かに今、手を繋いであの人は出て行った。

    2005-07-05 02:21:00
  • 586:

    あたしだって、龍と手を繋ぎたいのに。繋いだことないのに。店の中でそんなことをしたらいけないって思ってるからしないのに。なんで????あれは誰?
    そればっかりが頭の中を駆け巡る。ショックで倒れそうなくらいだ。それと同時に、龍にものすごく腹が立ってきた。

    2005-07-05 02:22:00
  • 587:

    『ただいま〜♪』
    『仲いいねんな』とぶっきらぼうに答えた。
    『へ?なにが??』きょとんとしている。
    『手、繋いで帰ってたやろ?席でもずっと繋いでたよな。』
    『あぁ、あの人いつもやで。しゃあないねん。嫌とか言えへんし。』
    『ふーん』
    なにがしゃぁないねん・・・だんだん怒りのほうが大きくなってきた。

    2005-07-05 02:23:00
  • 588:


    『ふーん』
    なにがしゃぁないねん・・・だんだん怒りのほうが大きくなってきた。

    2005-07-05 02:24:00
  • 589:

    『使うときはめっちゃ使う人やし、嫌とか言えへん』
    また金!?あたしと、前に同じような経過で喧嘩になったことを覚えてないんだろうか。
    『あ〜そう。悪かったね、細客で』
    龍の一言で、切れモードのスイッチが完璧に入った。その一言で、龍の切れモードのスイッチも入った。

    2005-07-05 02:29:00
  • 590:

    『は!?なにがやねん。あの人は主任のお客さんの枝で俺指名にしてくれた人やねん!主任のお客さんも俺の事気に入ってて、あの人らは一人じゃこーへんねん。二人とも使うときは使うから俺があの人の機嫌を損ねたら主任のお客さんも切れるねん!!それであの人切れたら、俺主任の売り上げどうやって責任取ったらいいねん!?』
    『だから、結局金やろ?使うから文句いわへん、拒否らへん。そうやろ?』
    『お前何が言いたいねん!?』
    卓也に直接言いに行く、と言ったときと同じ本気で切れている顔になった。

    2005-07-05 02:30:00
  • 591:

    『手を繋ぐのも金次第、ってことやろ?どうせあたしは誰の枝でもないですよ。』
    『は?俺が繋ぎたくて繋いでんちゃうわ!!』
    『お前の気持ちがどうやったかなんか知るか!繋いだってゆーことには変わらんやろーが!』
    『なんでやねん。気持ち入ってへんねんぞ!?』

    2005-07-05 02:31:00
  • 592:

    『入ってるも入ってないも関係ないわ!!どっちみち繋いだのは事実やんけ!!』
    『気持ち入ってへんのに羨ましいんか?』
    『羨ましいよ!?涼だって手繋ぎたいよ?』
    『気持ち入ってなくてもか!?』

    2005-07-05 02:32:00
  • 593:

    『お前、涼が本気で好きで店来てるって知ってるやんな!?』
    『知ってるよ。』
    『ほんなら考えたら簡単ちゃうんか?自分のことを好きな女が、他の女とて繋いでるの見て普通におれると思うか!?』
    『だからしゃぁないやんけ!好きでやってんちゃうわ俺だって!!』

    2005-07-05 02:33:00
  • 594:

    『涼も同じ条件にしたらええんか?なぁ。涼の友達で、金持ってる子であんたより上の人間指名さして金使わすわ。涼と一緒じゃなきゃその子はこーへん。そうなったら、あんた涼とも手繋ぐか?』
    『なんでそうなんねん・・・』
    『主任の売り上げのためってゆうたやんけ!』
    お互いいろんな意味でバチ切れていた。

    2005-07-05 02:35:00
  • 595:

    『仕事やろ!何でわからへんねん!!』
    そう言うとはぁ、とため息をついて龍は席を立った。よその席でやっているシャンパンコールのおかげで周りには会話は聞こえない。
    思い返すと、相当むちゃくちゃなことをいっている気がする。・・・いや、言ってるな、確実に。

    2005-07-05 02:39:00
  • 596:

    でも、本当にショックだった。あたしだって、手を繋ぎたかった。この頃からあたしは今まで以上に人を好きになっていた。龍のことをこんなにも好きになるなんて。手を繋いでたくらいでこんなにも取り乱すなんて。また、龍に迷惑をかけてしまった…

    2005-07-05 02:42:00
  • 597:

    そうは思うのだが、容易に気持ちの整理はつかなかった。もし、席に戻ってきたらごめんねって言おう。そう思っているのに、苛立ったままだった。どうしても、売り上げの話を出されたのが気に食わない。だから要約すれば、お金を使ってればいいってことじゃないのか!?あんな言い方やとそうしか聞こえへんし…
    龍も苛立っているのがわかるのかなかなか帰ってこない。

    2005-07-05 02:44:00
  • 598:

    放置されて、周りは楽しそうであたしは一人でぽつんと座っていた。龍が戻ってきたら謝ろうと思っているのに。。。戻ってこない。やっと戻ってきたと思ったらひとことめは『いつまでそんな不機嫌なん?』かちんときた。
    『機嫌悪いの見たくないんやったらどっかよその席行ってりゃいいやろ!!!!』
    あぁ、こんな事言うつもりじゃなかったのに。謝ろうと思ってたのに・・・

    2005-07-05 02:45:00
  • 599:

    『なんやねんそれ。わかったわ、どっかいくわ』
    行っちゃった・・・よその席で楽しそうにしゃべる龍。あたしはまたぽつんと一人。よほどショックだったんだろう。顔を見るとイライラした。どうしても、金の話を出されたのがまだ納得いかない。納得いく説明がほしかった。また龍が戻ってきた。

    2005-07-05 02:46:00
  • 600:

    『お前、絶対誤解してるって・・・日曜あけといて?ゆっくり話しよ。』
    お誘いだ。嬉しかった。あたしのことを気にかけてくれてる。売り上げのためでもよかった。龍と一緒にいれるなら。

    2005-07-05 02:47:00
  • 601:

    単純なあたしはその一言で機嫌が直った。日曜、龍と一緒に居れる嬉しさが勝ったんだろう。そこからは喧嘩する事もなく、普通にいれた。昼前になってもイベントはまだ続いていた。人情が厚いのか、どんどん仕事を終えた同業が集まってくる。いい加減あたしは疲れてきたので帰ることにした。

    2005-07-05 02:47:00
  • 602:

    『日曜、絶対やで♪』
    『おう☆わかってるよ』
    そんなやり取りをして帰るころにはもうすっかり機嫌は直って、日曜が楽しみで仕方なかった。われながらなんと単純な・・・(−−;

    2005-07-05 02:49:00
  • 603:

    えらいことになった未収を考えてそこからは店には行かなかった。それでも龍は毎日メールや電話をくれた。なんでもないやり取り。営業してくるわけでもなく、友達同士のようなメール。まぁ、あんな未収の後では心配性の龍はあたしを店に呼ぶことはできないだろうとも思ったけど。

    2005-07-05 02:50:00
  • 604:

    しかし、日曜の約束は果たされなかった。土曜日が予想外に忙しかったらしく、龍はつぶれたらしい。それでも連絡をちゃんとしてきてくれた。覚えててくれたんだ。嬉しかった。
    誠ちゃんと別れてからはあたしの気持ちは全部が龍に向かっていった。今までいろんな人にばら撒いていた好きという感情が、すべて龍に向いた。何年ぶりかの片思い。手に入らないもどかしさ。あいまいな龍の態度。すべてが重くのしかかってくる。
    誠ちゃんと別れてなかったときの“安定”がなくなって、実るかどうかもわからない片思いはあたしの心に大きな闇を作っていく。

    2005-07-05 02:51:00
  • 605:

    “今おる客めっちゃだるいねんたすけて”
    仕事が終わって家にいるとそんなメールが来た。あらあらかわいそうに。と思って“はいはい、しゃーなしな笑”とメールを返し店に向かった。
    店に入るとちらほらお客さんがいた。

    2005-07-05 02:52:00
  • 606:

    案内されて席に座る。う〜んやっぱりあたしの席には誰も来ない。というか何人かはまだキャッチに出ているらしく、いつもより従業員が少なかった。ボーっと向かいの席でしゃべっている龍を見る。座ってる位置からしてヘルプをしているらしい。
    ず〜っとみて手も面白くないのでカチカチ携帯をいじっていた。

    2005-07-05 02:53:00
  • 607:

    『どうした〜ん、そんな暗い顔して・・・って涼!?』
    放置されてる客だと思いヘルプしに来たつもりだったらしい。気づけよ。
    しばらくしゃべって席を立って、龍が向こうから『涼、あげる♪』と何かを投げてきた。受け止めるとそれは小さなプーさんだった。『これも!』と今度は袋を投げてきた。中には小さなディズニーのぬいぐるみが入っていた。

    2005-07-05 02:54:00
  • 608:

    『どうしたん!?こんなようけ。』『ユーフォーキャッチャーで取れた。』『あんたは何が欲しかったん?』『俺は別になんもいらん。』
    あたしがディズニー好きって言ったから?なんて都合のいいことを考えながら一人で喜んでいた。

    2005-07-05 02:55:00
  • 609:

    店はちょっとクーラーが効きすぎていて寒かった。寒い、と言うと龍はクーラーを切ってきてくれた。それでもまだ寒かったので上着を貸してと頼んだら、もうすぐ寒くなくなるからと言われた。
    そういわれたので我慢していたら、よその席で自分のジャケットを貸していた。それがなんだかあまりにもショックで放心状態になった。些細なことだとはわかっている。たかが上着だ。でも。。。なんだか崖から突き落とされたくらいショックだった。

    2005-07-05 02:56:00
  • 610:

    もう、珍しくついたヘルプの言うことなんてちっとも耳に入らなくてボーっとしていた。トイレに行こう、と思い席を立った拍子に壁からわずかに出ていた釘に手がぶつかり、手の甲に出ている血管が切れ“ぷくっ”と小さく膨らんだ。どうしてだかわからないが、それがすごく面白かった。

    2005-07-05 02:57:00
  • 611:

    何度も何度も釘に手の甲をぶつける。ぷくぷくと小さな膨らみは増えていく。楽しい。無我夢中になった。やがて手の甲はぷくぷくだらけになり全体的に紫色を帯びてきた。ちょっと冷静になると、痛い。でも、ただ単に面白かった。痛いことで、凹んでた気持ちが楽になった気がした。何度も何度もやったので同じところにも何度かヒットし相当痛くなってきた。もう、手の甲にはできない。

    2005-07-05 02:58:00
  • 612:

    体に一つ傷を作る度に少し落ち着くような気がした。リストカットをする人の気持ちが少し解った気がした。グラスを割って切ろうかとも思った。でもそんな事をしたら、たかだかジャケットごときで龍の心に大きな傷を作ってしまう気がしてやめた。ミミズ腫れは意外に傷も深かったらしく少しだが全部の傷から血が流れた。慌てておしぼりで拭き、トイレのごみ箱に捨てた。店は忙しくなってきてヘルプはいつものように来ないし、龍も忙しそうに動き回って帰ってこなかったので誰にもばれずにすんだ。

    2005-07-05 02:59:00
  • 613:

    ラストになっても帰ってこない。照明がつき伝票を持った龍が帰って来た。
    『ごめんなっ忙しくて…ってお前その腕!?どしたん?誰にやられたん!?』
    誰にやられたんって店で誰がこんな事人の客にすんねん…と思いながら黙って自分で自分を指差した。

    2005-07-05 03:00:00
  • 614:

    『自分でやったん!?なんで??』
    真剣に心配している龍。ありがとう。でも今あたし笑えない。
    『明るくなったらこれ目立つねぇ』
    龍は黙ったままだった。
    送りだしをしてもらい外に出る。

    2005-07-05 03:01:00
  • 615:

    『外で見たら一層目立つなぁ…お客さんびっくりしちゃう…』
    おい!と呼ぶ声がする。大好きな龍の優しい声…
    『おい!涼?ほんまに大丈夫なんか?なぁ?』
    うつむいたままのあたしに必死に話し掛ける龍。
    ごめんね…心配させてごめんね…

    2005-07-05 03:02:00
  • 616:

    『これ、猫に引っ掻かれたって言ったらお客さん納得するかなぁ?』
    『いや、無理やろ…じゃなくて!!』
    あたしは龍に背を向け歩き出した。
    『振り向くくらいしろって!おい!涼!』
    遠くで聞こえる龍の声。ごめんね…

    2005-07-05 03:03:00
  • 617:

    今喋ったら嫉妬丸出しの言葉を食ってかかって龍にぶつけてしまう。疲れている龍を余計に疲れさせてしまう。優しい龍はきっと涼がこんな事したのは自分のせいだと自分を責める。そんな思いはさせたくない。やってしまったのは衝動…自分で自分を抑える為…些細な嫉妬で困らせたくなくて…。目に見えて大袈裟に残ってしまったから心配かけちゃったけど…今口をきかないのはあたしなりの優しさなんだよ…そぅ思いながら一度も振り返らずに帰った。

    2005-07-05 03:04:00
  • 618:

    次の日も店に行った。ソフトドリンクとセットだけだったから安くあがった。でも…龍の事を気にしすぎているあたしがいた。もぅいなくなってしまいたかった。悩んでも答えはでないのに悩んでしまう。龍の些細な行動で底辺までテンションが墜ちる。焦点も合わさずに座っているあたしは相当恐かっただろう。話し掛けても答えなかったしぼーっと煙草を吸うだけ。焦点を合わさずに座っている時以外は常に妙な事にハマッて没頭していた。煙草の箱の回りのビニールを綺麗に裂いたり、吸い殻の中の葉を全部掻き出したり、氷を積み上げてみたり。

    2005-07-05 03:05:00
  • 619:

    このままじゃ自分が壊れてしまう…被害妄想が酷すぎるので店にしばらく行かないでおこうと思った。最近毎日つるんでいる恵里とカラオケ行ったりマンキ行ったりとりあえずホストに行かずに過ごした。恵里は最初あたしが自分で付けた傷を見て怒っていたが一度龍に会ってみたいと言い出した。一人で店に行くよりは恵里が居てくれた方があたしとしても楽だ。
    『今日初回の子連れていくね〜♪』
    久し振りに龍に会う。ドキドキした。

    2005-07-05 03:07:00
  • 620:

    恵里には役職の彼氏が居た。あたしが腕を傷だらけにした数日後恵里は腕に切り傷を無数に付けてあたしの前に現れた。彼氏と喧嘩して衝動的にグラスの破片でやったらしい。
    『あんたがあんなんしてアホやなって思ったけど、痛くしたら落ち着くもんなんやなぁ〜』
    恵里は笑ってそう言った。『付き合ってても辛いときはあるけど片思いなんやったらあんたの方が辛いこと多いやろうし、でもあんたも龍に会いたいやろぉ?』そんなこんなで店に着いた。

    2005-07-05 03:07:00
  • 621:

    『おはよう♪』
    龍は笑顔であたし達を出迎えてくれた。
    恵里の彼氏の話をしたり、初回の恵里が居るのでヘルプもたくさんついた。今日は変な被害妄想せずにすみそうだな〜なんて思っていた。
    『龍くんは涼と遊んだりせぇへんの?』
    彼氏と仕事の後には大概会う恵里が不思議そうに龍に聞いた。

    2005-07-05 03:09:00
  • 622:

    『俺は寝たいからなぁ仕事の後は。好きでもない奴と遊んでもしんどいだけやしな。好きやったら付き合ってるし』
    あぁ今日は何もなく終わると思ったのに…。
    泣き出してしまった。言葉でハッキリそんな事を言われては…遠くで恵里と龍の声が聞こえる。

    2005-07-05 03:10:00
  • 623:

    好きやったら付き合ってる…当たり前だけど“今付き合っていない”=“好きではない”。わかっていたけど…目の前で本人からそんな言葉を聞いては…もぅ顔をあげるのも嫌だった。ふと横に人の気配を感じる。龍が横に来た。

    2005-07-05 03:12:00
  • 624:

    『泣くなって…でもそぅやろ?好きやったら付き合うやろ?』………とどめですか!?
    『そんな何回も言わんでいいわ!!!』
    龍におしぼりを投げつける。何回も言わないで。あたしが一番望んでいることをそんな簡単に否定しないで。傷をエグらないでよ…
    『涼?なきやんで?俺の気持ちは何回もゆってるやん?』
    毎回“お前の事は真剣に考えてる”って曖昧なくせに……

    2005-07-05 03:13:00
  • 625:

    『先はわからんやん?好きになるかもしれんやんか。』
    ……なんだそりゃ。下手くそな慰め。今好きじゃないのはもぅわかったよ……無性に腹が立った。何の相づちも打たず龍の話を聞いていたがどんどんみじめになってくる。
    『もういいってば!!好きじゃないのはよくわかったから何回も言わんとってって!!!黙って!!』
    BGMがタイミング悪く途切れた。あたしの声が店に響く。…恥ずかしい……

    2005-07-05 03:14:00
  • 626:

    『好きじゃない奴と遊んでも楽しくないって俺ゆうたやろ?でも俺お前と遊んだやん?なんでお前はそれをプラスにとらへんねや!?俺が営業せえへんの知ってるやろ!?でもお前とは遊んだやん。それは他とは違うって事じゃないんか?』
    何かと言えばすぐそれ。一回遊んだのはそんなに大したことなのか!?

    2005-07-05 03:15:00
  • 627:

    『だから別に楽しくなかったんやろ?好きじゃない奴と遊んだから。』
    『お前な…好きじゃない奴やったら俺がそんなんしーひん事わかってるやろ!?普通に断る奴やって知ってるやろ!?』
    だからなんでそう曖昧なんだよ何もかも……“好きじゃない奴とは遊ばない、でもお前とは遊んだ”からと言って“好き”だとは言ってはくれない。どないやねん!!泣きながら心の中でつっこんだ。掴みにくい。今まであんまり片思いをしていないから、相手を知ろうとかおもわなかったからか、読めない。こんなわかりにくい人は初めてだ。やっぱり誰より龍が好きなんだなと実感した。

    2005-07-05 03:15:00
  • 628:

    『泣きやんで?ごめんな。恵理ちゃんにゆうたんは本音は本音やけどお前の事じゃないで?営業トーク♪』なんの!?今まで何回か友達を連れていった。龍がいいと言った子もいた。でも龍はダブル口座を嫌がった。つじつま合ってねぇよ……
    『あんたダブル口座いっつも嫌って言うてるやん!!恵理に営業トークなんかしたってしゃあないやろ!?あんたの口座にはならんのやから。』
    『ホストとしての意見って事や!そーゆー意味の営業とちゃうわ!』

    2005-07-05 03:17:00
  • 629:

    席を外してた恵理が帰ってきた。
    『仲直りした?』
    あたしはまだ泣きっ面だった。重ね塗りしたマスカラがボロボロだ。
    『今笑わせるから!』と言ってあたしの耳元で『ふとんがふっとんだ』
    …笑ってしまった。下らないにも程がある使い古されたダジャレ。あたしはなぜかいつも大受けしてしまう。
    『笑ったやろ?なっコレこいつにしか通じひんけど必殺やねん♪』
    何を言って笑ったのかわかっていない恵理はキョトンとしていた。

    2005-07-05 03:20:00
  • 630:


    『笑ったやろ?なっコレこいつにしか通じひんけど必殺やねん♪』
    何を言って笑ったのかわかっていない恵理はキョトンとしていた。

    2005-07-05 03:23:00
  • 631:

    もぅ時間は閉店間際だった。あの後あたしはまだいくつかしょうもないダジャレを言われ完璧に泣き止んでいた。前に龍がこの面白くないダジャレを言ったのはお客さんと手を繋いであたしと大喧嘩した時だった。
    『なんで涼笑ったん?』不思議そうに恵里が龍に聞く。こそっと龍が恵里に耳打ちした。恵里は呆れ返った顔で“なんでそんなんで笑えんの!?”と言っていた。
    『これは俺の涼の機嫌直す最終手段やからなあ(笑)前大喧嘩したとき5時間くらいコイツ機嫌直らんかって、めっちゃテンパッてシャレゆったらウケたから♪』と、龍は何だか嬉しそうだった。

    2005-07-05 03:24:00
  • 632:

    チェックをして店を出る。もぅ明るいミナミの町を歩きながら恵里からあたしが泣き出したときの話を聞いた。
    『龍くんめっちゃ焦ってたから、恵里が席外したるからちゃんと話しぃ、恵里が戻って来た時に涼がまだ泣いてたら許さへんでってゆうたんやで☆』それで恵里が戻って来た時龍はギョッとしてたのか。

    2005-07-05 03:26:00
  • 633:

    『掴みにくい人やなぁ…』やっぱり恵里から見ても掴みにくいようだ。
    『あれじゃぁ涼が毎日テンション上がったり下がったりすんのわかるわぁ』と恵里は笑っていたが、あたしからしたら笑い事ではない。
    『でも良い方に向かいそうやね☆』……マジで?

    2005-07-05 03:27:00
  • 634:

    とりあえず未収が終わったら一旦引いてみようということになった。恵里は“あの人絶対引いたらスグ落とせるタイプ”だと言い切った。龍の気にしぃな性格からして引けば気にかけるのは確実だが、それが駆け引きだったとバレたら気まずい。とりあえず何にせよ、全ては未収が終わったら、という事で仕事まで寝ようと二人でマンキに行った。“泣いてごめん”系の内容のメールを作りながら、恵里がいたお陰で意外な龍の一面も見れたしな…と、二人とも意地っ張りで喧嘩したらなかなかどっちも謝らない、て話していた時の事を思い出した。

    2005-07-05 03:28:00
  • 635:

    『俺もお前も謝らへんよなぁ〜(笑)』
    『なんでょ、涼謝るやんかぁ!?』
    『お前いっつもメールか紙に書いてでしか謝らへんやんけ(笑)俺が謝っても許してくれへん方が多いし』

    2005-07-05 03:29:00
  • 636:

    そう、あたしはごめんなさいを口で言うのが苦手だ。何故か謝れない。見抜かれていた。も些細な事だがとても嬉しかった。段々あたしの性格を掴んでくれてる。龍の性格はあたしからして掴みにくいが、他人からはあたしも“掴みにくい”とよく言われる。なんだか解ってくれたような気がして嬉しかった。そんな事を思いながらメールを作っているといつの間にか寝てしまっていた。

    2005-07-05 03:30:00
  • 637:

    ハッ、と気がつくともう夜だった。慌ててシャワーを浴び支度をして出勤。なんでかどうにも最近暇だ。なんとか数日で10万貯まったので入金しに行った。それを何度か繰り返していたが、タイミング悪くこんな時に大金を返さないといけない相手から連絡があったりする。しかもそこから二、三日物凄く暇な日が続いた。店の子達もスウェット持参で待機室でくつろぐ気満々だ。あたしも一緒になってプレステをしたりDVDを見たり、のんびり過ごした。たまには暇な日だってある、とのんきに構えていたがそんな日が続いた。やばい!?締日が近づいてくる。

    2005-07-05 03:31:00
  • 638:

    龍の店にも行かず、どこにも遊びに行かなかったがこのペースでは確実にヤバい。サラ金は延滞しているのでどこも貸してはくれないだろう。残りの額を締日までの日数で割っても、もぅなんとかなる金額ではなくなっていた。やばいやばいやばい!!!焦りだけが募る。昼から出勤したりもしたが相変わらず暇だった。給料日だというのに客足は普段と変わらず、給料日だからと出勤してくる女の子も多くて下手したら普段を下回るくらいの勢いだった。なんとか残りを10万代まで減らしてはいたが、締日に残りを綺麗にする事は出来ない。とうとう締日が来てしまった。

    2005-07-05 03:32:00
  • 639:

    『こぼれるん?なんぼくらい?』
    龍は、もしもしも言わずいきなり話し出した。どうしよう。
    『まだわからんねんけど…こぼれるんやったら全額こぼれるし、こぼれへんかも知れへんし、まだわからへんねん…』

    2005-07-05 03:34:00
  • 640:

    自分の客の金融屋なんかにもみんな電話したが、なんと間の悪いことに出張に行っていたり、電話に出なかったりで、お金のアテがなかった。一人の客が、出張には行ってるけど、大阪の知り合いに聞いてみてあげるから、と返事待ちをしている状態だった。返事はいつになるかわからないし貸してもらえる保証もない。はっきりしたことは何もいえなかった。出勤しても未収分全額を稼げないことだけが、はっきりしていた。

    2005-07-05 03:35:00
  • 641:

    『まぁ、しゃぁないし…どうなるかまた電話してな。』そういって電話は切れた。
    出勤してみるものの、また暇だ。給料日後なのになんでだ?何のための給料日やねん!!とぶつけようのない怒りがたまっていく。客からの電話もない。違う客は、予定を繰り上げれそうだったら早朝大阪に帰るようにするよ、と言っていたが朝方になっても電話はなかった。客なんて妻帯者がほとんどだ。朝4時や5時に電話をかけるわけには行かない。どうしようどうしよう・・・結局知り合いに聞いてみると言った人も、無理だった。

    2005-07-05 03:37:00
  • 642:

    6時ごろ、龍からの電話が鳴った。
    『どうなりそう?』
    『ごめん、無理っぽい・・・』
    『わかった、忙しいからまたかけるな。』

    2005-07-05 03:37:00
  • 643:

    一瞬で電話は終わった。うちに恵理が泊まりに来ていて、二人でもう寝ようとしたときだった。あたしは何とかして早くお金作らなきゃ・・・と思っていたのでなかなか寝付けなかったがふと見ると恵理はもう寝ていた。ソファでごろんと横になり、寝ようとしても夜中緊張状態だったせいか眠れない。ボーっとしていると、龍からのメールが来た。何だろう、と思いメールを開いた瞬間、携帯はあたしの手からゴトッと音を立てフローリングの床に転がり落ちた。入っていたメールの内容は目を疑うものだった。

    2005-07-05 03:38:00
  • 644:

    拾い上げて、震える手でメールを読み返す。《お前のこと好きやし来月払うの信用してるから無理せんでええで。給料なくても何とかがんばるから》

    2005-07-05 03:39:00
  • 645:

    好きって、好きって・・・・!?!?!?頭はパニックだ。未収こぼしたのに好きって!?!?それが手なのか何なのかわからないし、《好き》だと言われたのは初めてだ。一度寝たら起きない恵理は起こしても、ん〜〜・・・と言うだけだった。あわてて真美に電話をするが出ない。誰か、何とかして、話聞いて〜〜!!!かけまくって5回目くらいにやっと真美が出た。話すと真美もびっくりしていた。電話を切っても、あたしはずっと興奮状態だった。好きって・・・そればっかりが頭をかけめぐる。

    2005-07-05 03:40:00
  • 646:

    どういう意味なんだろう?頭にはハテナが大量発生していた。いつの間にか寝てしまっていて、3時ごろ恵理に起こされた。
    『あんたなんか朝大騒ぎしてた?』
    うすうす起きかけてたが恵理の言葉にはっとなって一瞬で目が覚めた。もう一度メールを読み返す。夢じゃない。本当に、好きだと今日見ても入っている。

    2005-07-05 03:41:00
  • 647:

    とりあえず恵理と、ぶらぶらしにミナミへ出た。仕事に行って、夜中はいつものカフェでまったりだ。
    『何で、龍好きとか入れてきたんかなぁ?』あたしは多分今日恵理に何十回と、この質問をしている。
    『だから龍くんにどういう意味なんって聞きって何回も言ってるやろ〜』恵理は呆れ顔だ。
    聞いてなんて返ってくるのか。ある意味怖い。でも、今までの龍との関係よりは一歩前に進んだような気はする。でもやっぱり・・・聞くのは怖い。

    2005-07-05 03:42:00
  • 648:

    『もぉ、携帯貸して!恵理がきいたるわ!!』
    恵理があたしの携帯をさっと奪い取った。
    『!!!!!涼自分で聞くからぁ〜〜』
    恐る恐る龍にメールを打った。《昨日のメール、どういう意味?》
    返事が来るまでの数分が何時間にも思える。何度も問い合わせをしてしまう。あぁ、恐い・・・・

    2005-07-05 03:44:00
  • 649:

    ♪♪♪♪来た!!!!!!開けるのが恐い。意を決してボタンを押す。《人間としてってことやで》でた〜!曖昧!ものすごく曖昧。ちょっとムッとしたあたしの顔を見て恵理は何々??と興味しんしんだ。その曖昧な答えに腹が立った。一人で大騒ぎして馬鹿みたいじゃないか。と思い《あ〜そう》と返した。

    2005-07-05 03:46:00
  • 650:

    すると《お前意味わかってる?つまり客じゃなく真剣に考えてるってゆうことやで?》・・・うーんこれまた返しにくい・・・恵理のほうに画面を向け“どうしたらいい?”という顔で見てみた。恵理はまたもやあたしから携帯を奪い《それは客じゃなくて女として見てるって意味にとっていいの?》と打ってあたしに返してきたのでそのまま送信した。すると《ちゃんと見てるよ。まえからゆうてるやん》と返ってきた。確かに前から言われてはいるけど・・・そこから一歩も進んでない。まぁ“好き”と一度きりでもいわれただけ進歩したのかな・・・

    2005-07-05 03:48:00
  • 651:

    遅れながら、少しずつ未収入金をして、ちょっと飲んだり・・・とチョコチョコ顔は合わせていた。好きと言ったからって、龍はなんら変わりないようだった。またしてもあたしが一人で有頂天だったみたいでむなしくなった。

    2005-07-05 03:51:00
  • 652:

    そんなある日、あたしの客電が止まってしまった。客電と、龍の携帯は同じ機種なのでメールに絵文字を入れたいがために龍とは客電でいつも連絡を取っていた。もう片方の電話で龍に電話をかける。『はい』と誰かわからない様子だったが、もしもし?と言うとすぐにあたしだとわかってくれた。そんな些細なことがうれしい。片思いだから余計かもしれない。しかしその日から二日、龍から連絡がなかった。三日目に、痺れを切らしてかけてみた。『ハァ…ハァ…はい・・・』なんだか様子が変だ。後ろでは大音量のトランスや従業員の声が聞こえているので店にはいるらしい。

    2005-07-05 03:53:00
  • 653:

    名無しさん

    ?

    2005-07-05 04:45:00
  • 654:

    『はい?』『あんな・・・病院いくからついてきて。。。』・・・は!?!?!?わかった、ととりあえず返事をすると、お前んちの下着いたら電話するから。と言って電話は切れた。
    病院着いてきて??何であたし??またしても頭はパニックだ。あわてて化粧を直し用意をする。しんどいときに、ただの客になんてそんなこと頼まへんよな??近いからか??(あたしの家から龍の店まで歩いて5分ほど)いろいろ考えていたら、余計こんがらがりそうだった。その反面、ちょっと期待もしていた。

    2005-07-05 08:10:00
  • 655:

    『着いた・・・』と電話がかかってきた。下へ降りると真っ赤な顔で龍が立っていた。タクシーを拾い病院へ行く。病院に電話して、保険証がないけどいけますかって聞いたから、と龍の指定した病院へ向かった。
    一つ目に行った救急病院は、先ほど電話した安田ですけど・・・と言っても『そんな電話かかってきてないですよ?』と言われてしまった。どうやら龍は、店の人にその病院を強く薦められ、そればっかりが記憶に残ってしまったようだ。

    2005-07-05 08:11:00
  • 656:

    とはいえただの風邪。『診てもらえないですか?保険証はないですけど。。。』と言ったら『診れないことはないんですが…今いる当直医が研修医でしかも専門が整形外科なんですがいいですか?』…それはちょっと・・・いくら医者麻酔科と歯科以外は全分野診れるとは言っても研修医じゃぁな・・・と言うことで龍が電話したほうの病院へ向かった。

    2005-07-05 08:28:00
  • 657:

    そっちの病院は何も言わなかったが、またしても内科医ではなかった。診察室に入ったと思ったら五分と経たずすぐに出てきてびっくりした。しかも、医者に『専門じゃないからね〜薬だけ出すわ』と言われたらしい。診ろよ!診ないなら診察室入らんでええやんけ。。。しかも看護師もタメ口で喋って来るしでなんとも感じ悪かった。

    2005-07-05 08:30:00
  • 658:

    会計のときにお金貸して、と言われ何で自分が連れてこられたかがわかったような気がした。給料は!?と思ったが、あたしが未収をこぼしたせいでお金がないんだ、と気づいたのであわてて口をつぐんだ。でも、お金なら代表にだって借りれるはず。病気のときにまでへこんで迷惑かけたくない、と言う思いから無理やりプラス思考にもっていった。
    龍を家まで送り、あたしも家に帰る。病院ついてきてとか、なんだか彼女みたいでちょっとうれしかった。

    2005-07-05 08:32:00
  • 659:

    しかしそこから一ヶ月ほどあたしは店に行かなかった。と言うより行けなかった。風邪っぽい体調がいつまでも良くならず、仕事の後にいくら寝ても疲れが取れない。飲みに行く元気がなかった。龍からの連絡も、店に行ってた頃より少なくなった。龍があたしと付き合えない理由を《まだお前の事よく知らないから》と言ったのはもう何ヶ月前になるんだろう…その為にあたしの事を知ろうと努力をしてくれているようには見えない。遊びに行ったりして中身を見ないと付き合えないと言ったのは龍だ。しかし一回しか遊んだ覚えはない。

    2005-07-05 08:33:00
  • 660:

    未収の件はあたしを信用しているらしくガタガタ言わないけど、連絡もないし、だんだんはぐらかされているんじゃないかと思いだしてきた。思い返せば全てが曖昧だ。《先の事はわからんし》とか《客として見てるんじゃない》とか…具体的な事って何一つない!!……気付くの遅いかも……絶対はぐらかされてるんだ…確かめずにはいられなくなった。『今日一万入金して一時間だけ飲むわ』とメールを入れ、店に向かった。

    2005-07-05 08:33:00
  • 661:

    席に座りいつものように何気ないはなしをする。
    『なぁ、もぅ冬やし寒いしィィ加減淋しいし彼氏なってよー。』
    話がイキナリ飛ぶのはあたしならいつもの事。別に不自然じゃなかったはず。何て返答してくるのかドキドキしながら待つ……

    2005-07-05 08:35:00
  • 662:

    『なんやー?また急に。どないしたん?』
    ……チーン……
    はぐらかされた。好きだとずっと言ってきたし、付き合いたいとも言っていた。なにも急に言ったわけではない。この人に、あたしと付き合う気はない…。

    2005-07-05 08:36:00
  • 663:

    まだるっこしいと言うかもどかしいと言うか…何とも言えない関係をハッキリさせたかった。あたし的には一世一代の賭だった。返事次第では諦めるつもりだった…
    結果は諦める事になった。もぅこの人を追い掛けても無理だ。あたしには手が届かない。《男》としてじゃなく《ホスト》として見よう。そう決めた。
    実は他に気になってる人がいた。龍にはない、男らしさに惹かれかけていた。龍との関係をハッキリさせたくなったのは、その人の事があるからかもしれない。

    2005-07-05 08:37:00
  • 664:

    あたしは誰かに愛されていたい。あたしもあなたに愛をあげるから、あたしにも愛をちょうだい……二ヶ月近くも彼氏がいない。淋しくてどうしようもなかった。あたしにとって恋愛は麻薬。愛されてると実感したくて仕方がない。龍はあたしのものにはならない…もう諦めなきゃ。楽しかった事もいっぱいあった。いっぱい喧嘩もしたけど、愛はひとかけらさえ貰えなかった。彼女じゃないんだから当然だ…諦めたら楽になれる。そしてあたしに愛をくれる人を探そう。

    2005-07-05 08:38:00
  • 665:

    〜完結〜

    2005-07-05 08:38:00
  • 666:

    コピペ人

    コピペ終了( ´ー`)フゥー...
    コピペしながら思ったけど、文章表現が豊かだと思いました。
    ☆厄介物語☆頑張って下さい 

    2005-07-05 08:44:00
  • 667:

    名無しさん

    >>1ー690

    2005-07-29 01:42:00
  • 668:

    名無しさん

    2005-07-29 01:43:00
  • 669:

    名無しさん

    2005-07-29 01:43:00
  • 670:

    名無しさん

    2005-07-29 03:00:00
  • 671:

    名無しさん

    2005-07-29 04:18:00
  • 672:

    名無しさん

    2005-07-29 05:34:00
  • 673:

    名無しさん

    2005-07-29 06:30:00
  • 674:

    名無しさん

    2005-07-31 08:11:00
  • 675:

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    削除されますた

    あぼ~ん
  • 676:

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    あぼ~ん
  • 677:

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    あぼ~ん
  • 678:

    名無しさん

    そんなん言わんでも…まぁ恋愛依存症かなとは思うけど、女は多かれ少なかれそんなとこあるやん

    2005-08-05 16:56:00
  • 679:

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    削除されますた

    あぼ~ん
  • 680:

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    あぼ~ん
  • 681:

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    削除されますた

    あぼ~ん
  • 682:

    BLACK LOVE

    なんで会うたびに金渡してんの?早く気付けょ???かっこぃぃとかならまだしもブサイクなんゃろ????まぢ金の無駄無駄無駄??

    2005-08-06 00:34:00
  • 683:

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    削除されますた

    あぼ~ん
  • 684:

    終わってだいぶたってからェラィ事なってますね…?
    上の方々はなんだかんだ言いながら最後まで読んで下さったょぅで…お目汚し大変失礼致しました?
    ちなみに…不細工だったのは大ちゃんのみですょ。だから大ちゃんには貢いでません笑 今となっては親に払わせた事など反省しております。そぅカッカしなぃでください。そして、出来ればそのような内容は胸の内に秘めておくか、友達に言う等、今後このような場には書かないで頂きたいです。

    2005-08-12 11:22:00
  • 685:

    名無しさん

    ぁげ

    2005-08-13 15:52:00
  • 686:

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    削除されますた

    あぼ~ん
  • 687:

    名無しさん

    691〜698 てどういう意味があるの?

    2005-08-13 17:06:00
  • 688:

    名無しさん

    2005-08-26 23:20:00
  • 689:

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    削除されますた

    あぼ~ん
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