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〜INORI〜
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1:
叶子
なぁ祈…
あんたに出会えてほんまによかったよ。口は悪いし性格も変わりもんやし女ったらしやし…
いいとこなんて絶対ないって思ってた。
でもあんたに教えられた。本気で人を好きになった時、人は変わるんやってこと。祈…?私は世界で一番幸せな女になる。あんたに幸せにしてもらうから…2006-04-12 03:16:00 -
51:
叶子
「じゃあ10万円払うんで…いいですか?」
「え?いらんいらん。そんかわり一週間位夕方から晩まで店手伝ってくれへん?お取り置きのお客さんも来るし」2006-04-14 00:27:00 -
52:
叶子
「は…い?」
「いやぁちょっと従業員の子辞めたとこで…ってゆうても一人しかおらんかってんけど。夕方からはバタバタするからバイトの子入れるまで手伝ってほしいねん。それでソファーのことはチャラにするし」2006-04-14 00:29:00 -
53:
叶子
「ほんまに大丈夫?」
「なんとかなるやろ」
帰り道、美香と話しながら帰ってたけど、私はなんとなくワクワクしてた。
あんなドキドキ感は久しぶりだった。まさかこのことがきっかけで将来が大きく変わるなんてことは知らずに…2006-04-14 00:34:00 -
55:
叶子
家に帰って父と母にそのことを話した。
「勝手にすればいいけど勉強にさしつかえのないようにな」
「そんなのお金を払えば済んだやろ?納得しなかったら倍額払っておけばよかったのに」2006-04-14 00:38:00 -
56:
叶子
私の勉強や進む道以外に興味はない父と、何でもお金で解決しようとするお嬢育ちの母。
「とりあえず明日から帰り遅くなるから」
私はそう言って部屋へと逃げるように入った。あぁ…息がつまる。今日楽しかったなぁ…結局食器買えなかったけど。2006-04-14 00:41:00 -
57:
叶子
まぁこんな家であの食器を使いたいとも思わないけど。そう思いながら眠りについた。
次の日は大学に行き、そのまま帰りに堀江に行った。約束の5時よりも2時間も早く着いてしまった。
しかたない。行こう。2006-04-14 00:43:00 -
58:
叶子
CHARMに入ると男の人も誰もいなかった。あれ?何で誰もいないんだろ?
そう思いながらカバンを奥に置いて店内をゆっくり見て回った。
可愛い…ここにある家具や雑貨は全部がおしゃれで、見る人を引き付けるようなそんな感じがする。2006-04-14 00:46:00 -
59:
叶子
その時、ガラスの扉が開きベルの音がカランカランと鳴った。
「あのーすいません。カーテンを見に来たんですけどソファーが赤だと何色のカーテンがいいと思います?」
私と同じぐらいの女の子がそう聞いてきた。2006-04-14 00:48:00 -
60:
叶子
「いや…あの、私…」
「あ、店員さんじゃないんですか?」
「そう…あ、違…うんですけど…店員といえば…店員です…」2006-04-14 00:50:00 -
61:
叶子
「なにそれー。どっちでもいいけど店員さんでしょ?一緒に選んで下さいね」
女の子はそう言ってにこっと笑った。
私は慣れない初バイトだったけど、女の子と一緒に部屋のレイアウトを考えながらカーテンを見たりしたことがすごく楽しかった。2006-04-14 00:52:00 -
62:
叶子
その時奥からあの男の店員さんが出てきた。
「あー永井ちゃんもう来てくれたん?早いなぁ」
いやいや早いじゃないから。私いてなかったらお客さん困ってたし。てゆうかあなた口周りにミートソースついてますから。2006-04-14 00:55:00 -
63:
叶子
「ちょっと早く着いてしまったから…」
心では突っ込みをいれつつ普通に返した。
「やっぱりさっき選んだやつにするわ。これ一番いいんちゃう?ってうちら意見あったやつあったやん?あれちょーだい」2006-04-14 00:57:00 -
64:
叶子
「え…あ、はい」
「永井ちゃんどれ?品番見てきてくれる?カーテン裏に付いてると思うから」
私は言われたとおり、番号を確認して伝えた。奥からは真新しいカーテンが袋に入れられたまま出てきた。2006-04-14 01:00:00 -
65:
叶子
「8600円になります」
女の子はレジを済ませると私の顔を見てまたにこっと笑ってた。
「表まで送ってきて。うちはいつもそうしてるから」男の人にそう言われて私は女の子と一緒に店の外に出た。2006-04-14 01:03:00 -
66:
叶子
「ありがとうございました」私は初めて人に頭を下げた。
「ありがとぉ。一緒に選んでくれてめっちゃ楽しかった。また来るねー」
女の子は手をふりながら帰って行った。なんなんだろうこの気持ちは…。2006-04-14 01:05:00 -
67:
叶子
嬉しいような照れ臭いような…気分がすごくよかった。初めての接客を私は一生忘れないと思う。あの女の子のことも…
お店に入ると男の人は座りながら雑誌を読んでいた。てゆうかお店暇やん…
「あー永井ちゃんも適当に座ってていいで」2006-04-14 01:08:00 -
68:
叶子
「あ…はい。………………あのぉ…」
「なに?」
「名前…お名前なんておっしゃられるんですか?」
「あーごめんごめん。ゆってなかったか。楢崎涼。涼でいいで」2006-04-14 01:14:00 -
69:
叶子
「涼…ですか…?涼さんでもいいですか?」
「なんでもいいよ。ここは俺しかおらんし俺の店やし。オーナーも店員も全部俺やから」
雇われじゃないとゆうことを知ったのはこの時が初めてだった。すごいなぁ…若いのに2006-04-14 01:17:00 -
70:
叶子
「涼さんっておいくつなんですか?」
「26。永井ちゃんは」
「19です」
「若っいなぁー。俺が19の頃はもてまくりで遊びまくりやったわぁ…懐かしいわほんま」2006-04-14 01:20:00 -
71:
叶子
涼さんと話してると自然と笑いがたえなかったしリラックスできた。
手伝いで来ていたけど、楽しかった。あの時コーヒーをこぼしてよかったな…なんて思ってしまった。
「もう今日はいいよ。お疲れ様。また明日頼むね」
9時過ぎにそう言われて私は帰ることにした。2006-04-14 01:24:00 -
73:
叶子
帰り道の足取りが軽く感じた。楽しかったなぁ…
家に帰るのが憂鬱だった。あの家にいると鳥かごの中にいるような気分になる。出たくて出たくてしょうがなくなる。
思いっきり羽ばたきたくなる…2006-04-14 01:26:00 -
74:
叶子
「ただいまぁ…」
家に帰ると静かだった。電気もついてない。リビングに行くとメモが置いてあった。
愛子が仕事でこっちに来たみたいだから優子とパパとおじいちゃま達で一緒に夕食たべに行ってきます。ママより2006-04-14 01:29:00 -
75:
叶子
へぇー。家族だんらんってやつですか。
私には誘いの電話すらなかった。いくら手伝いのバイトがあるからって連絡の一本くらいよこすやろ…。
まぁいい。誰もいないほうが気が楽だ。2006-04-14 01:31:00 -
76:
叶子
広すぎる家の中はシーンとしていた。
《ブーブーブー》その時急にテーブルの上の携帯が鳴り、びくっとした。
誰やねん…知らない番号からの電話だった
「もしもし」2006-04-14 01:38:00 -
77:
叶子
「永井ちゃん?俺!涼やけど」
「あっ涼さん?どしたんですか?びっくりしたー」
「番号聞いたしかけとこーと思って。もう家?」
「はい。涼さんはまだ店ですか?」
「あぁ。もうすぐ帰ろうかなぁと思って。今日疲れたやろー。明日大丈夫?」2006-04-14 01:42:00 -
78:
叶子
「だ!大丈夫です」
「ほんま?じゃあ明日は店はよ閉めて飯でもごちそうするな」
「本当ですかー笑」
「ほんまほんま。とりあえず明日待ってるわ。ゆっくり寝てな」
「はーいおやすみなさい」2006-04-14 01:44:00 -
79:
叶子
電話を切ったあと、やけにテンションが上がってる気がした。
涼さんと話すと元気になってるような気がする…気のせいかな…
私は頭の中がいっぱいになりそうだったし自分の部屋に戻ってすぐに眠りについた。2006-04-14 01:47:00 -
80:
叶子
翌朝、朝早くに目が覚めた私は大学に行く用意を済ませるとすぐに一階のリビングにおりた。
ソファーには愛子ねぇと優子ねぇが座ってた。
「あ!叶子ぉー。おはよ。久しぶりやね。元気?」愛子ねぇが私にそう聞いた。2006-04-14 01:51:00 -
81:
叶子
「うん…まぁ」
「愛子姉ちゃん聞いてくれるー?叶子雑貨屋でバイトしてんねんで。しかもタダ働き」
「なにそれ?」
「まぁ話せば長くなるんやけどさ。こんなんじゃ弁護士なんて到底無理やんな」2006-04-14 01:54:00 -
82:
叶子
「え?叶子本気で弁護士目指してんの?」
ちょっと笑いながら愛子ねぇと優子ねぇが私を見た。キライ…この顔…
人を見下すような目、馬鹿にした笑いそうな口。もう爆発しそうだった。2006-04-14 01:57:00 -
83:
叶子
黙った私を見てさらに言葉は続く。
「まぁ私が悪いもんなぁ。私がアナウンサーなったから弁護士なる子おらんくなってしまって。優子は医者目指してるし…」
「だっておじいちゃまの病院継いだら院長なれるねんで♪」2006-04-14 02:00:00 -
84:
叶子
「…ほちゃう」
「え?叶子なに?」
「あほちゃうあんたら…優子ねぇ頭おかしいやろ?医者はそうやって目指すもんちゃうやろ?人の命助けたり人のために何かをしたいって思うからなりたいと思うもんやろ?」2006-04-14 02:02:00 -
85:
叶子
「なによあんた」
「あんたこそおかしいおちこぼれやんか」
「テレビの中ではぶりっ子してるくせに!姉ちゃんら最悪やわ…私は地位とか職業なんかどうでもいい。お金なんかいらんもん。腐った人間になんかなりたくない!」2006-04-14 02:09:00 -
86:
叶子
子供もブランドと同じような扱いだ。見栄をはるため。世間体を気にしてるだけ。
馬鹿らしい…もっと大切なことが生きていたらたくさんあるはずなのに。
もうやめよう…無理をするのは。等身大の自分でいいじゃない?私は私なんだから。2006-04-14 02:16:00 -
87:
叶子
遊びに行くところもなかった。美香は大学だし…
結局私は気付けば堀江まで来ていた。CHARMの近くまで歩いたけど、なんとなく行くことができなくて引き返そうとした時、涼さんの声がした。
「永井ちゃーん」
振り返ると本当に涼さんだった。2006-04-14 02:21:00 -
88:
叶子
「てゆうか何やってんの?学校は?」
走ってきながら涼さんは私にそう聞いた。
「さぼ…っちゃいました」私が答えると涼さんはクスって笑って私の頭をクシャクシャっとした。2006-04-14 02:23:00 -
89:
叶子
「モーニング行こか」
「はいっ」
時間はまだ10時半だった。堀江にはおしゃれなカフェがたくさんある。そのうちのとあるお店に涼さんは入って行った。
「俺はいつもので」2006-04-14 02:25:00 -
90:
叶子
「永井ちゃん何する?これ見て決めー」
メニューを渡された。モーニングセットだけでA〜Hまでの8種類もあった。ちょっと迷ったけど、私はCのサンドイッチセットのミルクティーにした。
「ちょっと運命感じたわ」2006-04-14 02:29:00 -
91:
叶子
「はい?」意味が分からなかった。
「俺いつもCセットのミルクティーやねん」
「あ…はい…」
「そんだけやねんけどな」2006-04-14 02:31:00 -
92:
叶子
「なんですかそれ笑」
私も涼さんも笑ってた。どうでもいいことで笑えることがすごく気持ちよく思った。
「永井ちゃん彼氏とかおんの?お兄さんにゆうてみ」2006-04-14 02:33:00 -
94:
叶子
「いないですよー」
「ほんまか?」
「本当ですよ」
「へー。可愛らしい顔してんのにもったいないな」
ドキッとした。なんとなく…。2006-04-14 02:38:00 -
95:
叶子
彼氏…かぁ…。ため息がでる。今まで散々だったから。
彼氏ができてもすぐに別れることになってたから…。父や母にすぐに紹介しろと言われて家に連れてきたら、どこの学校だのご両親は何のご職業だの根掘り葉掘り聞かれた。2006-04-14 02:41:00 -
96:
叶子
思い出しただけで嫌になる。自分の付き合う相手にまで嫌な思いをさせてしまう。
だからもう彼氏なんていらない、そう思ってた。
「永井ちゃん?」
「あ…ごめんなさい」2006-04-14 02:47:00 -
97:
叶子
「どうしたん?ぼーっとしてたけど」
「何でもないです。大丈夫ですよ」
「ほんならいいけど」
結局カフェを出たのは12時前だった。イコール今日は12時オープンってことか…2006-04-14 02:50:00 -
99:
叶子
「永井ちゃん今日は多分忙しいでー」
「何でですか?」
「分からん(笑)なんとなくそう思うねん」
涼さんのわけの分からない予想を聞き流していたけど、お昼すぎからは本当にお客さんがたくさん来て大忙しだった。2006-04-14 02:53:00 -
100:
叶子
おそるべし予想的中…結局夜8時までお客さんはたえなかった。
「よっしゃそろそろ閉めよか。看板と照明消してきて。飯行くぞ」
「分かりましたぁ」2006-04-14 02:55:00