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-華物語-
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1:
葵
五つの朱い糸で綴じられた物語
2008-11-20 00:31:00 -
23:
葵
それから数カ月後、私の元に一本の電話があった。それは長い間連絡を取っていなかった祖母からだった。
祖父が亡くなった…ー。
持病だった心臓病が急に悪化し、入院した数日後に亡くなったという。祖母もあまりに急な出来事だった為、私への連絡が遅くなってしまったと受話器の向こうで涙声で嘆くのだった。2008-12-06 23:41:00 -
24:
葵
私はすぐに荷物をまとめ、祖母の元へ向かった。祖母の家までは電車で二時間、さらにバスを乗り継いで行かなければいけないので、明日の朝の出発では遅く、なにより祖父を亡くした祖母に寂しい思いをさせたくなかった。私は最終の一本前の電車に乗り、祖母の元へ急いだ。電車の窓から見える景色が懐かしい風景に変わり始める。両親を亡くしてからの三年間、まるで自分たちの子供のように育ててくれた祖父のことを思い出し、涙が溢れ出た。
2008-12-06 23:56:00 -
25:
葵
久しぶりに会った祖母は見るからにやつれていた。人生の大半を共に過ごした人を亡くしたのだ。その悲しみと喪失感が痛いぐらいに伝わってくる。
「私が来たから、大丈夫だよ」
そんな言葉しか出てこない自分が情けななくて仕方なかった。2008-12-07 00:01:00 -
26:
葵
祖父の葬儀は身内だけの密葬となった。祖母の負担を少しでも軽くするための計らいだったが、葬儀から数日後、今度は祖母が病に倒れた。やはり祖父を亡くしたことのショックが大きく、みるみる痩せて遂には食事も喉を通らなくなった。
私は祖母の看病のためにバイト先に連絡し、一ヶ月の休みを貰うことにした。2008-12-07 00:09:00 -
27:
葵
医者を呼んで診てもらったが、精神的にかなり弱っていることが原因で、薬で治るものではない、この歳ではどんな状況になってもおかしくないから今すぐ入院が必要だと言われたが、祖母は断固として入院を拒否した。
「私はこの、おじいさんと暮らした家で静かに死にたい」
ただそれを繰り返すばかりだった。2008-12-07 00:17:00 -
28:
葵
私は祖母の側にいよう、精一杯看病しようと決めた。私に残されたたった一人の肉親、一人ぼっちになってしまった私に深い愛を注いでくれた人。せめて、最期を迎える時は私が側にいてあげたい…そう思った。
2008-12-07 00:26:00 -
29:
葵
昨日から降り続いていた雨が嘘のように止み、綺麗な夕焼けに空が染まったある日の夕方、祖母は私を枕元に呼び、か細い声で話し始めた。
「桜…あんたは今年いくつになったんだい?」
目を閉じたまま、顔だけをこちらに向けてそう聞いた。
「21になったよ…」
「そうかい…もう21かい…そら私がこんな歳になったんだものな。大きくなるはずだよ。」2008-12-07 00:36:00 -
30:
葵
祖母の閉じた目からは涙が流れ、夕日が当たってキラキラと輝く。私も自分の頬に涙が伝っているのを感じた。
「あんたが21なら、あの子はいくつだ…確か五つ違いの…」
そこまで言うと祖母は急に咳込み始めた。
「おばあちゃん!?」
私は皺だらけの小さな手を取り、強く握り締めた。2008-12-07 00:46:00 -
31:
葵
咳込み、か弱いながらも祖母は必死に何かを伝えようとしている。私は必死にその声に耳を傾けた。
「あんたの…為…と…思って…ずっと言わ…なか…た…ど…」
「あんた…には…きょ……がいて…今も…どこ…かで…生き………」
「なま…え…は…はる…」2008-12-07 01:04:00 -
32:
葵
細過ぎる祖母の声は後の言葉を私に伝えきれないまま、空気に溶け込んでいった。気付いた時には祖母の体は冷たくなり、私はその布団の側で涙が枯れるまで泣いた。
2008-12-18 18:22:00